FSA リサーチ・レビュー 第8号

FSAリサーチ・レビューとは

FSAリサーチ・レビューは、金融研究センターに所属する研究官・特別研究員等の研究成果として公表したディスカッション・ペーパー(DP)のうち研究論文として所収するにふさわしいものを、すべて外部のそれぞれの分野の専門家の方々による査読手続きを経て、金融研究センター長の責任編集のもと所収しています。(注)

なお研究論文の内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。

  • (注)FSAリサーチ・レビューは、平成21年度(第6号)までは、年度中に1回、研究論文の他に、当センターにて開催した国際コンファレンス概要や研究会の報告書を年間活動報告としてとりまとめておりましたが、平成24年度(第7号)から、研究論文のみを年1回程度不定期で掲載するウェブ・ジャーナルとして再刊することとなりました。

FSAリサーチ・レビュー第8号(平成26年(2014年)3月発行)
-吉野直行金融研究センター長(慶應義塾大学経済学部教授) 責任編集-

(「Article」をクリックして本文を、「題名」をクリックして要旨を閲覧することができます。)

【Article 1】
PDF:2,291KB
「欧米における金融破綻処理法制の動向」
執筆者: 森下 哲朗 元金融庁金融研究センター特別研究員

(上智大学法科大学院教授)

コメント: 山本 和彦 一橋大学法学研究科教授
【Article 2】
PDF:1,691KB
「マクロストレスシナリオをリスクパラメーターに変換するための信用リスクモデル」
執筆者: 菅野 正泰 元金融庁金融研究センター特別研究員

(神奈川大学経営学部准教授)

コメント: 山下 智志 統計数理研究所 総合研究大学院大学

統計科学専攻 教授、リスク解析戦略研究センター長

【Article 3】
PDF:930KB
「証券市場における情報公開が市場参加者の行動と社会厚生に与える影響」
執筆者: 中村 友哉 元金融庁金融研究センター研究官

(大阪大学社会経済研究所講師)

コメント: 内田 浩史 神戸大学大学院経営学研究科教授

FSAリサーチ・レビュー第8号 掲載論文要旨

【Article 1】
「欧米における金融破綻処理法制の動向」

森下 哲朗 元金融庁金融研究センター特別研究員(上智大学法科大学院教授)

欧米では金融機関の破綻処理法制の整備に向けた努力が重ねられている。たとえば、米国ではDodd-Frank法Title IIにおいて、新たにOrderly Liquidation Authorityというシステム上重要な影響を与える金融会社の破綻処理のための法制が整備されており、また、欧州でも欧州レベルでの金融機関破綻処理制度の整備のための作業が大詰めを迎えている。これらの法制の特色としては、破綻処理に際しての納税者負担を回避しつつ、金融機関の破綻によるシステミック・リスクの発生を回避するために、破綻金融機関等に生じている損失については、株主や無担保債権者等に負担させる、いわゆるベイルイン手続によって吸収することが予定されている点、破綻金融機関の資産・権利等の承継金融機関への円滑な移転を可能にするための措置が整備されている点等を挙げることができる。

また、これらの法制のもとで、金融機関グループを実際に破綻処理するための代表的な戦略としては、グループ構造の頂点に位置する持株会社・親会社が傘下の子会社の損失を吸収し、持株会社・親会社のみを直接の破綻処理手続の対象とするSingle Point of Entry戦略が提案されている。

これらの法制や戦略は、国際的な金融機関グループを秩序あるかたちで破綻処理するうえで、有用なものであると考えられ、今後、我が国において国際的な金融機関グループの破綻処理に関する検討を深めていく際にも参考になる点が少なくない。但し、欧米でも未だ議論が対立している問題もあり、また、実際の破綻処理を円滑に行うための様々な課題も存在する。

キーワード:破綻処理、ベイルイン、銀行及び投資サービス業者の再生及び破綻処理のための枠組みを創設する指令、Dodd-Frank法Title II

【Article 2】
「マクロストレスシナリオをリスクパラメーターに変換するための信用リスクモデル」

菅野 正泰 元金融庁金融研究センター特別研究員(神奈川大学経営学部准教授)

本稿は、信用リスクのボトムアップ・アプローチ型マクロストレステストにおいて、監督当局から提示されるマクロストレスシナリオを、参加銀行が信用ポートフォリオリスク計量モデルで使用するリスクパラメーターに変換するための汎用的なベンチマークモデルを提案する。このモデルは、説明変数として、「個社の財務変数」「マクロ経済変数」「業務変数」の3種類を考慮し、「個社の財務指標」「マクロ経済指標」のパネルデータ・時系列データを使用する。多重積分を含む尤度関数の最尤推定により、自行の信用ポートフォリオに影響のあるマクロ経済変数を選択するアプローチである。

キーワード:マクロストレステスト、ストレスシナリオ、信用リスクモデル、パネルデータ

JEL分類コード:E37, G21, G28, G32

【Article 3】
「証券市場における情報公開が市場参加者の行動と社会厚生に与える影響」

中村 友哉 元金融庁金融研究センター研究官(大阪大学社会経済研究所講師)

本稿は、情報公開が社会厚生に与える影響を扱った研究を紹介することによって、証券市場の安定的運営に向けた情報公開政策に示唆を与えることを目的としている。はじめに、証券市場の誘導型として扱うことができるケインズ型美人コンテスト・ゲームを詳解し、公共情報公開による過剰協調問題を考察する。その上で、過剰協調問題を緩和する情報公開方法を扱った文献を紹介する。

キーワード:情報公開、公共情報、戦略的補完性、ケインズ型美人コンテスト

JEL 分類コード:C72, D82, D83, E58

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