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柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年7月23日(月)13時45分~14時07分)

【閣議案件等】

本日は、繰り延べの閣議でございますけれども、閣僚の発言は平成13年版青少年白書の発表、それから沖縄における米兵の事件、事故のことについての報告、ジェノバ・サミットへの総理の御出席の報告、これは福田外相臨時代理からございました。次いで文部科学大臣のIOC総会への出席、オリンピックが北京市に決定した会合への出席の報告がございました。

次いで閣僚懇に移りまして、規制改革の推進についての中間取りまとめがあった旨の報告、それから明石市における事故の報告がございました。総理から最後にジェノバで風邪も治ってしまって体調はすこぶるよろしいと、皆さん方においても酷暑の折から健康に注意されていろいろ問題の取り組みに精励するようにというお話がございました。以上でございます。

【質疑応答】

問)

株価が下がっていまして、日経平均株価ではバブル後の最安値を更新、あるいはTOPIXでも年初以来安値ということなんですけども、金融機関の経営に与える影響等どのように御覧になっておりますでしょうか。

答)

これは当然のことながら時価会計の導入を控えていることでもありますので、いい影響というわけにはいかないわけでして、私自身も注意深く、また、いろんなことを考えて見ておるということでございます。いろいろなことを考えているということ、いずれ質問が次に出てくるでしょうから、引き続いて申し上げますと、我々としてはですね、かねて申し上げている通り、直接金融へのウェイト、比重を高めるということ、まあ特に個人の家計の資金を、資本市場に導入したいとこういうことで、それに相応しい環境創りをするということが大事だと思っておりまして、こうした措置をきちっとしかるべき時期に制度改正が必要なものはそういう制度改正ができるように検討していいものを作り上げていくと、そういう環境整備ということに取り組んでいくということにいろいろ今、考えを巡らせているということでございます。いずれ成案が得られ次第、皆さんにも報告をしたいと、このように考えております。

問)

環境整備というのは証券関連の税制が中心になるということでしょうか。

答)

まあそういうことですね。それと、やはり証券市場に対する信頼ということのためにですね、特に証券取引の監視委員会のいろいろな活動というものもより活性化していくと、こういうことに尽力をしたいと、こういうことでございます。

問)

その証券取引等監視委員会の機能強化に関連して、かねて自民党の金融調査会等ではですね、資本市場担当部局を集約して独立行政の委員会にしてはどうかと、あるいは準司法的な機能を持たせたり、公認会計士や弁護士を民間から採用しやすくするように公務員法を見直したらどうかと、そういう提言をしておりますけれども、大臣はこのような、いわゆる日本版SEC構想についてどのようにお考えでしょうか。

答)

まあこれは一つの考え方であることは言うまでもないのですけれども、現在の証券市場、あるいは金融資本市場全体を考えた時にですね、そういうセグメンテーションというか、部門部門に細分化していくという方向が正しい方向なのか、いやそうではなくて金融サービス自体がまあユニバーサルなものになるし、それからそれを提供する経営主体というのもコングロマリット化していくと。こういう状況に、どうやって応えていくべきかということが大事であって、そこからにわかにそういう結論が出てくるということはちょっと理解しにくいこともあるのではないかと、こういうように考えています。今、私が言ったことは機能の強化ということであるし、体制の強化ということに繋がることでありますけれども、それがすぐ組織形態の問題になるというふうには、むしろ私は捉えておりません。

問)

体制の強化ということで米国のSECは約3000人、日本が150人ですか、かなり人員に差があると思いますけれども、その辺りは見直しを考えていかれるということでしょうか。

答)

これは、これまでもですね、随分いろいろ行政改革、公務員の規模の縮減という一般原則の中ではあるんですけれども、随分いろいろ理解をしてもらって拡充を図ってきたのですが、それで十分ということは到底言えないわけでですね、今後とも努力をしていかないといけないと思っています。

問)

関連してこの後、新旧の証券取引等監視委員会の委員長の会見が予定されておりますので、何か新委員長に対する言葉がございましたら宜しくお願いします。

答)

まさにですね、今言ったような株式市況ということもあるし、同時にこのところ頻々と監視委員会が動かなければならないような不公正な事件というようなものも起こっていますので、国民が期待する監視委員会の機能、あるいは活動というのは非常に高いレベルのものになっていると思います。そういうことで、新しい体制がスタートするこの機にですね、更にそうした国民の期待に応えるようなですね、しっかりした計画と要員の見る目の錬磨ですね、そういうようなことで先程言ったように国民の期待に応えるようなものになってもらいたいと、これは強く私も期待しているところです。

問)

先週の講演で大手行に対して年一回は必ず検査をするようにしたいと仰っていたと思いますけれども、もう少し具体的なスケジュール等、お考えがございましたら宜しくお願いします。

答)

これはいろいろ金融監督庁から金融庁に参りまして、正直言って検査の方もですね、いろいろその時その時の要求に目一杯応えてきたわけですけども、例えば保険について世間の信頼がどうのこうのという時は保険をやらなければならない、更にまたペイオフを1年延ばしてその間、信用組合についてもですね、全部検査を終えなければならないということで、その時々の積み上がってきた課題に応えるということをしてきておりますので、考え方としては大手行は2年に1回というくらいの原則を念頭に置いてやってきてはおりますけれども、今言ったような緊急の事務処理要請にも応えていかなければならないということの中で、いろいろ難しい日程上のやりくりをしなければならなかったというのが実情です。

そういう中で率直に言って日本の金融機関の資産内容、特に不良債権と言われるものについてですね、いろいろ世間で心配をする向きがあると、それも我々は自己責任の下における自己査定、それから公認会計士・監査法人による外部監査、それから検査と、こういうものを一体として捉えて、そういった言われる筋合いのものはないということを申し上げて来たわけですけど、もちろんそれに間違いないのですけれども、同時にですね、では例えばそういう3重のチェックの中でそれぞれがどんなチェックの効果を挙げているんだということも、この際ある程度皆さんにお話しした方が全体の信頼ということにも資するのではないかということで、質問もあったのでですね、予て不信の目を強く持っておられる方との質疑応答でもあったものですから、あそこで実は検査に入ると、リスク管理債権の規模で25%程度と言っておきましたけれども、乖離もあるんです、ということも申し上げたんです。 それと同時に、そういう機能を果たしている検査というものをここでしっかりと入れて、早く信頼回復をしたいと、こういうふうに思うところから、今回1年1回入ると。それで1年1回入れるということはですね、特に信用リスクの側面を重視してですね、全体検査というものを1年1回やっていたら今のマンパワーでは到底なかなかできかねることなものですから、そこは臨機に濃淡を付けてやって、とにかく信用リスクの点については必ず1年1回入る。入るのみならず、検査はある期の決算が対象になって検査をするわけですけど、検査をした後に、決算をしたものを検査するのですが、その検査の結果というものはどこにも明らかにならないわけですよ、その検査の結果がですね、次の決算にどう反映するかという問題なわけですね。それで私は今回、それを更に徹底するために、検査の結果が、今までもそういうことがあったというわけではないのですが、うやむやにならない、検査の結果が確実に次の決算に反映されるということを確保するためにですね、検査のフォローアップということで、次の決算についても決算を組む過程で立入の検査をするということも明らかにしたわけです。 それはまあ決算を組んでいる間中ずっとということでは到底マンパワーの点から言ってそんなことをやるつもりもないし、それはまあ、逆にまた自己責任による自己査定ということの趣旨にも反しますのでそういうことはしませんが、しかし少なくとも検査結果が次の決算に忠実に反映される、こういうことを確保したいということで1年に1回の検査とそのフォローアップということで、この前ちょっとお話をしたと、こういうことです。

問)

確認ですけれど、1年1回の検査というのは、いわゆる都銀、長信銀のことですね。

答)

そうです。主要行です。

問)

現在、まさに参院選の中にありまして、与野党のいろいろな討論等を見ていますと、やはり不良債権の処理を起点とした景気の一層の悪化、あるいは中小企業や失業といった影響を懸念する声がかなり強いように感じるのですけれども、大臣ご自身はどのように考えていらっしゃいますか。

答)

まあ、我々の方は、直接私どもが一つのスキームの下でこの問題の処理に当たるのは、大手行の問題としかも破綻懸念先以下のことということであることは、もう既にご承知の通りです。もちろん、要注意先については健全化の方向とか、そういうようなことでできるだけ不良債権の残高が縮減の方向に進むようにということを言っているわけですが、そういうことを申しているわけです。

そういうことですから、しかもあるいは皆さんご承知かとも思うのですが、不良債権の固まりを業種別にちょっと分類すると、何と言うか構造的に問題があるとされている、これは世の中でもそうなっているのですが、構造不況と言ってしまっていいのか、そういうような業種にかなり固まっているわけです、不良債権というものがですね。そういうことからいたしますと、広がりというようなことについて申しますと、そんなに大きな影響というものが出てくるという見方になるのかなあという気が、我々金融サイドから見てはそういうふうに思います。

従って、何か今の議論というのは、かなり抽象論になっているのではないかなあと、感覚的な抽象論になっているのではないかなと。今選挙中でお互い政治的な物の言い方をしているわけですから、そんな時にその政治的な物の言い方を止めろとか、そんなことを言っても詮無いことなんです、実際は。私も役人の立場でも選挙をずっと見てきましたけれども、役人だと言いたいことばかりなんですね、そういう物の言い方は間違っているとか。だけども、それは詮無いことなんですね、選挙戦なのですからね。ですから、それは別に気にしませんけれども、少し抽象論というか観念論が強いのではないかと、こんなふうに思っています。

問)

先程の株価の話で、銀行の保有株の観点からお話いただいたのですが、逆に銀行株が下落することで全体が落ちているという側面もあると思うんですね。銀行の株が売られるということは、なぜ売られるのかということについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

答)

まあ、不良債権問題の最終処理ということを言っていますが、これには短期的にはデフレ効果があると言われ、中長期的には逆に成長への貢献があるということなのですが、やはり不良債権の処理というものが、世の中としてはやはり収益にそれなりに負担になるのではないかというような見方が当面出ているというふうになっているのではないかなと、こういうように思うのですね。

しかし、これはいずれ健全化計画とかその他の自分達の状況の説明資料というようなことが発表され、私は非常にメリハリがついたものであれば、それがマーケットで逆に評価されて、しかるべき株価になっていくはずであると、こういうように思っています。

問)

先程、株について税制等で考えていることがあると、それで成案を得たら報告したいと仰られましたけれども、その時期についてですが、例えばもし税制を変えるなりということをやるとすれば、それは毎年度の税制改正の中でやっていく話なのか、あるいはもっと前倒しで機動的にやるべき話なのか、どういうふうにお考えでしょうか。

答)

これは何と言うか、今までのやり方で税制については党の税制調査会の発言力というのも従来これは非常に強いものがありまして、やはり特に政策税制ということになれば、党の人達の意見も十分聞いた上でやるというのがよろしいというふうに私も思うんですよね。

そういうことでありますけれども、我々としては、税制改正の要望を8月中にまとめて、それで9月以降どのくらいのタイミングでやってもらうかということは、むしろそちらに委ねざるを得ないと、こういうのが我々の立場ですが、客観状況がこういうことになっていますので、年末にインテンシブにやるということに初めから決めておくと、いつでもそうなのですが、「そんな根本論をやるわけにはいかんよ、時間的な制約から」というようなことになりがちなんですよ。

そこで、特に今度の証券税制については、若干根本論も当然出てくるというふうに我々は思っていますから、従って少し前倒しで論議を始めてもらわざるを得ないし、強くそのことを期待したいというように思っています。

(以上)

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