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柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年8月3日(金)18時21分~18時53分)

【閣議案件等】

本日18時から閣議がありました。閣議での閣僚の発言は、パキスタンの洪水災害への支援、ペルー大統領就任式典への出席の報告。それから、たら等のはえ縄漁業について、すごい漁獲高の制限がありますので、いわゆる国際減船対策を実施するという旨の発言がございました。大体以上でございます。

【質疑応答】

問)

昨日発表されました経営健全化計画ですけれども、不良債権の積み上げですとか、あるいは収益力向上策等、全体的に大臣はどのように評価していらっしゃいますでしょうか。

答)

そうですね、不良債権の処理を早期に終えてですね、我々としては早く日本の金融機関、特に大手行等は、従来、かつてあったような国際的な評価をもらえるような状況に復帰したいという気持ちが私としては非常に切でございます。そういう目から見て、今回の経営健全化計画というものは、いわば基礎作りの段階ということかと思いますが、それぞれの各行のですね、特に先般来のいろいろな政府の側の施策、骨太の方針、あるいはその前の緊急経済対策に盛り込まれた方針を受け止めていただいて、いろいろ努力をした結果を計画として表してもらっていると、こういうように思います。

評価は非常に難しいわけですけれども、まずこの計画を完全に実現するということを強く期待するということとしたいと、このように思います。

問)

計画を出した中で、足利銀行が来年3月期に優先株の配当が現状では難しいというような見通しを計画の中に明記しておりますけれども、このような計画をある種認めるに至ったことについて大臣からお願いいたします。

答)

こういう計画を出す方も苦渋の決断というか、そういうことだろうと思います。それと全く同じで、我々受け取る方も、本当に苦渋の受け止めということになるわけですが、大事なことは、やはり不良債権というものの処理を優先的に、かつ確実に表に出してやっていくということが最もプライオリティの高いことであると。こういうことから、ああいう姿になったということでございます。

そういうことで、この点についてはですね、昨日も長官から皆さんに、特に話もしてくれたはずで、私もそのようにお願いしておきましたが、市場が間違わないように、また預金者とかその他の関係者が間違わないような、間違いのない判断をしていただくということを期待したいと、このように思ってます。

問)

足利銀行のことについて伺いますけれども、来年の3月期決算の見通しが出ていると思うのですけれども、資本勘定は公的資金を上回っている。その分、繰欠が出ますよね。その繰欠をそこから差し引いた場合ですね、それは1,050億円ちゃんと残っているのでしょうか。

答)

そういうことになっていると思います。

問)

そこは間違いなく毀損していないということですか。

答)

毀損してないです。はい。

問)

もう一つ伺いますけれども、大臣は今日、日経新聞のインタビューで、「議決権の回復や、普通株への転換に踏み切るのにやぶさかでない。」というような仰り方をしておりますけれども、議決権の回復というのはですね、大臣のご意向に関わらず、配当が無配になれば自動的になると思うのですけれども、それはそれでよろしいのでしょうか。

答)

結構です。

問)

普通株の転換に踏み切るということについてはですね、すでに基準、考え方が出ていますけれども、市場のアタックを受けた場合というのがその中に一つ条件で入っていると思うのですけれども、株価の水準としてはどういうところを念頭に置いてらっしゃるのでしょうか。

答)

別に念頭に何か特別なことを置いているということではありません。それはもう、既定のルール、それから今指摘された点については、これはもうケースバイケースの判断にならざるを得ませんけれども、そういうことについて格別のことを何か考えて、そういう答弁をしたということではなくて、私がそこで申し上げたかった点はですね、むしろ何か我々の側、政府の側がですね、そうしたことに対して腰が引けているというか、臆病であるとか遠慮しているとかいうようなことは一切無いですよということを、我々は然るべき条件があった場合にはやるべきことをやりますということを申し上げたかったと、こういうことに尽きます。

問)

普通株の転換のところで、あと二つ条件が確かあったと思うのですけれども、自己資本比率の低下、これが4%近傍であると。それからもう一つは市場での信認低下ということだったと思うのですけれども、まあ6%台の自己資本比率というのはですね、4%近傍とはなかなか言えないと思うのですが、その一方で市場の信認が急速に低下するということもあり得ると思うのですが、その場合はどういうふうに対応されるのでしょうか。

答)

6%近傍でですね、だから私はさっき言ったように、マーケットの関係者の皆さんも、間違いのないように判断してもらいたいということは、そういったことも含めて申し上げているわけでありまして、国内基準行で6%を、かなりと言うべきか、上回っているところに、今言ったような状況がマーケットで出現するというようなことは、私共の念頭にはありません。

問)

先程のインタビューの記事の話に戻りますけれども、「議決権の回復と普通株転換は、民間企業としては成り立っていかないということである。これは市場から退出するということだろう。」と、このようなご発言になっているのですけれども、これは私が考えたわけではなくて、今日実際我が社に問い合わせがあったことを伺うのですが、要するに金融庁としてはですね、議決権の回復というのを破綻だと、事実上の破綻であると、こういうふうに見ているのですか。

答)

いやいや、そうじゃないんです。それはちょっと私もですね、言葉が不用意だった、不用意というか舌足らずだったかと思いますが、質問そのものも一緒に質問をされて、実は割とたくさんの質問をされたものですから、いきおい集約した質問になってまして、それに対して私は、もっと截然と、そこはきちっと分けて議論をすれば良かったということを、今ここでそういう質問に出会って思いますけれども、それはそういうことを私は考えてはおりません。

私がさっき言ったことは、要するに、特に普通株の転換等のことですけれども、何と言うか、政府の側はそういったことについてはヘジタントである(躊躇がある)ということでですね、そういうことを見越したいろいろな活動があるとしたら、「そんなことは間違ってますよ」ということを申し上げたということに尽きるわけです。

問)

市場の、金融の関係者ですけれども、なかなか私も一理あるなと思うのですが、普通株に転換した場合ですね、国が、あの銀行の場合は過半数に近いところを持つと。そしてここからもう一回民営化するにはですね、その受け皿を探して株を売却しないといけないと思うのですが、そうするとこれは事実上ですね、特公バンクとは言わないまでもですね、相当それに近い作業が必要になるなと。そういう意味では当然人も送るのでしょうし、事実上の破綻処理に近いのかなという気がしますけれども、その点についてはどういうふうにお考えなのでしょうか。

答)

私の現段階での認識というか、そこで特に言っていた時の気持ちというのは、まさに今言われた通りでありまして、それをその後、「市場から民間の金融機関としては市場にフルの資格での存在と見られなくなりますね」と、こういうことを話しの続きとして言ってますけれども、そこに表れているように、今言ったような考え方、そういうことを私は想定してそういった答弁をしたと、こういうことです。

問)

法律の問題を一つ伺いたいのですけれども、新しい預金保険法を作る時にですね、金融整理管財人を送るのは74条だったと思いますけれども、破綻処理条項がありまして、債務を完済出来ない場合、ないしは、そのおそれがある場合ということになっているんですけれども、資本注入した公的資金についてはですね、あれは資本性が強いもので入れているわけですけれども、将来の返済が予定されているという点では債務性もあると、負債性もあると。この74条の解釈ではですね、公的資金の返済が見込まれないとなった場合には、この条項は適用できるのでしょうか。どういうふうに理解したら良いのですか、そこは。

答)

それはやはり資本性の強いものは資本であり、債務というふうには捉えるべきではないと思いますね。

問)

長くなって申し訳ないのですが、最後にちょっと一つ伺いますが、足利銀行の株価が、昨日が180円だったのが、今日の終値は165円。最近の安値は98年7月の155円であると。今日の終値についてどういうふうにご評価されていますでしょうか。

答)

個別の株価について、私がこれを云々すべきではないと思います。

問)

今日の経済財政諮問会議で、改革の工程表、ひな型案というのが出まして、最初に不良債権処理ということが出ています。まず、秋までにできること、それから臨時国会で法改正し、できること。それから、それ以降にすることの3つのジャンルに分けて書いていただくといった趣旨のようです。最初にどうしても不良債権処理がありますので、もしお考えがあればお願いします。まあ、来週諮問会議が2回あるようですけれども、もうかなり詰めた議論になると思いますので、お考えがあればお願いします。

答)

まだ、その様式も見ていないんですよね。どれがどうなるかと、別にその工程に対応した施策について何か想定したこともないので不用意なことを申し上げない方がいいかと思いますね。

ただ、全体としては何か格別のことをしなくてはならないということではなくて、今まさにやっているようなこと、不良債権の情報開示であるとかというようなことを粛々ととにかく進めていくと、政府側はですよ。それでそこに出していただいた健全化計画等に沿った不良債権の処理を粛々と進めてもらうことというようなことで、今、私どもは格別何か施策として頭に浮かぶものはありません。

問)

今回、主要行は25%以上の不良債権の処理額がアップしてターボエンジンがかかったのかなあと、そういったようなことなんかは、あまりこういうところには書くものではないのでしょうか。

答)

こっちの施策ですからね、多分。全然様式を見ていないので何とも言えないのですけれども。

問)

健全化計画の中で、それは完全に実施することが必要だと仰ったのですけれども、そうなると、やはり今、出された健全化計画には満足しているという受け止め方でよろしいのでしょうか。

答)

それを避けて今言ったように申し上げたんですね。まあ全体として先程言ったように、各金融機関ともに骨太の方針で示された不良債権の処理というようなことを、ここ1~2年、3年の間にかなり傾斜的にやるというようなこと等ですけれども、それをできるだけやれるだけの業務純益を上げるというようなことについて努力をしてくれたという姿が認められると、こういうことでそれを実現するようにと、こういうことを申し上げたわけです。

問)

分からないですよ。ですから、一応それを達成すれば、かなり進展になりますけれども、過去8年間を見ると、やはり不良債権の処理で業務純益では足りないということになっているのですけれども、ですから今の計画が実施されれば大臣は満足するということでよろしいでしょうか。

答)

満足ということは、なかなか…何と言うのでしょうね、そもそも先程言ったように満足というのは、そういうことが全て本当に済んで、従来のように日本の金融機関、特に大手行等は国際的な評価がきちっとなされるという、そういう事態になって初めて満足ということだろうと私は思っているわけで、今、後ろ向きの負の遺産を懸命になって処理している段階で、満足という言葉はちょっとそぐわないのではないかなと、こういうように思って、先程からその言葉を使うのを逡巡しているわけですね。

問)

そうなれば国際的に各行がこれから評価されれば、満足ではなくてもハッピーということでしょうか。

答)

もちろん、そうですよ。そういう状況が実現することが私にとってハッピーなんです。

問)

以前伺ったと思うのですけれども、6月の日経の記事で、要注意債権の要管理とか破綻懸念に落ちる確率が、あれは7割ぐらいだったと思うのですけれども、それ以降、大臣はそれを調べて、その記事がどういう実態に基づいているかどうかについては如何ですか。その時、あとで話ができると仰っていたのですけれども。

答)

まず一つは、あの様式を健全化計画の中になぜ入れているのかということですね。これは、あの様式がちょっといろいろ、早々の間に私どもが最後に入れたということもあって十分練られたものでなかったということに恨みが残るかもしれませんが、基本的に我々はそういうこともメルクマールにして、「しっかりした資産の査定をしなさいよ」ということのインセンティブになればという意味で入れたと、こういうことが一つございます。

そういうことで、それに着目されて一つの分析を出されたということについては、それなりに敬意を払うわけですけれども、ややいろいろな、行内の格付けというようなことを言った所為で、なかなか横並びというようなことで平仄がとれているとも言えないわけですね。それをトータルするということが、また益々ちょっと混乱をするのではないかと。おそらく時系列的に見たら何が言えるかということは一つあり得るかと思うのですけれども、まあそんなことをちょっと私としては考えているわけです。

そのことをどういうふうに評価するかというようなことで言うと、まあこれは事務当局もいろいろそう言ったことがあって少し調べたようですけれども、今のような、非常に経済の状況の変化というもの、それが各個別企業の業況に影響するわけですけれども、非常に足が早いというか変化が急速だということがあるようで、例えば、これを半期前のものと比べたらどうかというようなことを調べた者がおりますが、その者から聞いたところでは、その比率が逆になるというか、破綻をしてしまったものの半年前は、およそ1年前とは違う評価・査定がなされているというようなことがあるようで、この1年前というのをどう考えるのかということですね。しかも、どうもその行内格付けの変更などというのは期中にやるというようなことが現実の処理としてはあるようですので、そういう意味では何と言うか今日の経済状況と、それの速さ、それからそれが及ぼす業況の変動というものの速度というものを考えると、ああいうふうに1年前が良かったのかということについても、ちょっと反省しているのですが、いずれにせよ、もうちょっとエラボレートした方がいいという思いはありますが、ああいうものはかなり微妙な受け止め方もされるので、あまりこれを変更するのもどうかなあという感じもしてですね、ちょっと苦慮しているところですね。

いずれにせよ、答えとしてあえて言えば、要約して言えば、半年前と比較をするということをやると、むしろ7割が破綻懸念先以下に区分されているというようなことがあるということでした。ですから、これはもう全く経済情勢が個別企業の業況に及ぼす影響が、非常に足が早いので、そういう結果になっているというか、なったようだと、こういうことですね。

問)

昨日の事務方の説明だと、要注意債権の1割以上が正常債権に戻るというような調査をしたと仰ったのですが、それで8.4%が破綻懸念以下になっていると言ったのですけれども、7割と8.4%は、かなり乖離があるんですよ。ですから、その二つの…。

答)

あのね、ちょっとこれはね、私も今ここでスパッと説明できるほど、今ちょっと頭が整理できていないのですが、要するに破綻したものはどこに区分されていたものから破綻に至ったかというものと、今ここで要注意先に区分されているものが次の期なり何なりに、1年後にどういう状況になったかというのは、必ずしもどうも数字がピタッと一義的に引っつかないというか、これはもうちょっと算術をきちっと整理すれば、あるいはできるのかもしれないけれども、そういうことのようですね。

ちょっと、それは皆さんそれぞれに算術の問題ですけれども考えてみていただけますか。私もちょっとトリッキーだと思いますよ、非常に。つまり、どう言うのだろうね、要注意先というのは非常に信頼がおけないのかというと、逆にそうではなくて上がるようなものもあるのだから、やはり要注意先だよという議論もできるし、どこに着目してやるかによっていろんな見方ができる数字が出るということです。

問)

そういうものが出ることで、やはりマーケットの参加者が見ると、「やはり政府の言っていることがちょっと違うのではないか」という疑念を持つんですよね。

答)

全部政府が言っていることですよ。あの日経新聞の記事だって、政府が言っていることのデータですよ。

問)

ですけれども…。

答)

多分ですよ。

問)

データの見方に、かなりトリッキーと仰ったのですけれども、解釈によってそういうものが出るということが…。

答)

トリッキーというのは、何と言うかまあ言葉が、あるいは貴方のようなネイティブ・スピーカーと我々が使う言葉のニュアンスが違うのかもしれませんけれども、つまり要注意先の約10%が正常先になりますと、なったという実績がありましたということと、先程言った破綻してしまったところが1年前にどこに区分されていたかということとは、整合的に説明できる数字なのかどうかは、私は今ここでにわかに頭が整理できないということを言っていることを、ややコンフュージングですか、数字がいろいろ出てきて。そういうことを言っているんですね。

そんなことで政府の言っていることのクレディビリティーというか、信用がならないというのは、およそそれは逆のことですよ、それは。全て我々はできるだけオープンにしようということでやっていますから。

(以上)

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