柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年8月7日(火)9時30分~9時52分)

【閣議案件等】

おはようございます。今朝の閣議ですけれども、彬子女王殿下の英国御留学について報告がございました。

それから、閣僚懇の方に行きまして、平成13年度上半期の犯罪情勢についての話がございました。それから、やや概算要求絡みの話が続きまして、特殊法人等の個別事業は14年度予算からということですので、概算要求段階からその見直し方を反映するようなものにしてもらいたいという話がありまして、それから一連の話があった後で、総理からは「特殊法人等に対する財政支出を1兆円削るということを念頭に置いてやってもらいたい」と。それから「特殊法人の不良債権問題にも心すべきように」と、こういう話がありまして、「安心・安全の人員を確保してくれ」という話が出始めたところで、これらの概算要求に対する閣僚の意見については別途閣僚懇を開くという話がございました。等々でございます。

大体以上で、経済情勢やら概算要求絡みの話が少し出ましたけれども、これは発言された方がご紹介されるかと思います。以上です。

【質疑応答】

問)

特殊法人の不良債権処理の話ですけれども、民間金融機関にも影響があると思われますが、大臣はどのようなお考えでしょうか。また、金融庁としてはどのような対処をお考えでしょうか。

答)

政府関係機関の特殊法人の中には、金融を主にやっているところがある。その主にやっている金融というのも大体これは民間の補完というようなこともあるので、民間金融機関と協調して融資をしているというケースが当然多いわけですね。従ってその不良債権ということは、民間の金融機関にとっても不良債権ということで重なっているということは十分あるわけでございます。

しかしこれについては、民間の方はしっかり債務者区分をし、そしてそれに相応しい引当等の処理をしておるということでございます。従ってその処理が進めば当然、民間の側もこれにお付き合いする、あるいは民間の側の処理が進めば政府関係金融の方にもお付き合いを願うと、こういう形で今後進んで行くというふうに考えています。

問)

与党3党の政策責任者会合がございまして、その中で自民党が中小企業向け融資の不良債権処理に関連して、負債額が10億円未満の中小企業の不動産担保債権は当面処理を猶予するというような案を示されたようですけれども、大臣はこの自民党案についてどのようにお考えになりますでしょうか。

答)

これはですね、何と言うか、まず第一に、その与党案なるものを正式には見ておりません、正直言って見ておりません。見ておりませんが、いわゆる最終処理の対象というものについてですね、正確なご理解があるのかなという感じもしております。報道等で見た限りではですね、そういう感じがしております。いずれにしても、正確な理解をしていただく中で、ご理解が行くんじゃないかと、破綻懸念先でほとんど債務超過に陥ってなかなか回復が出来ないというようなケース、当然そういうようなものが対象になっているわけですから、その辺りのことはご理解した上で方針をご決定なさるなり、こちらに提案してくださるなりということを期待したいと、こう思ってます。

問)

最終処理の対象に関連して2点ほど確認したいのですけれど、まず1点目は、政府が現在考えているのは、主要行の破綻懸念先以下の不良債権について2~3年以内に最終処理ということだと思いますが、それは大企業向けの貸出であっても、中小企業向けであっても、それは同様に扱うのかどうかという点が1点。もう1点は、中小金融機関の破綻懸念先以下の不良債権の最終処理については、明示的な方針というのは示されていないと思うのですけれども、その点については大臣はどのようにお考えになっているのか。この2点についてお願いします。

答)

第1点は、緊急経済対策ではそこのところは、やはり地域の経済であるとか、あるいは経済合理性、この経済合理性というのはなかなか難しいのですけれども、横文字で言うとreputational riskみたいなものがありまして、金融機関として非常に評判が悪くなるというようなことは、やはり避けるというのは商売の観点で当然なんですよ。そういうことが縷縷に書いてあったわけでございます。その後また骨太の方針が出てきたということなんですが、基本的に緊急経済対策で書かれていることというのは、生きているというふうに言っていいかと思います。

そういうものを総合的に考えて、私共としてはそれぞれの金融機関、大手行のバランスシートを不良債権との関係できれいにして行くということ。それからその場合に必要とあらば、RCCを大いに使ってくださいと、こういう格好になってですね、そこは杓子定規に詰めきっているというわけではない。ただ、まさに骨太に方針が示されているというふうに考えていただくのがよろしいのではないかと。

これは別に、またそういう言い方をすると皆さんまた「後退か」とか「自民党に配慮した物の言い方」だとか、すぐそういうふうに思われるかも知れませんが、私も言いながら多分そういう反応が出てしまうのではないかと思うのですが、そこのところがやはりですね、最終的には経済は生きているということなんですよ皆さん。大理石の彫刻を作っているのではないんだということは、これはもうよくよくまず皆さん当初から我々は一貫しているんだということでご理解をいただきたいと思います。

ただ、こういうことを言うと、非常にそこは曖昧模糊としているというふうに取られるのも困る。だって、破綻懸念先というのはもうほとんど、まさに破綻が懸念されているくらい悪くなって、再起の見込みもほとんど無いというようなことですから、それらについては、これはもうかなり厳しくですね、やはり中小企業の場合でもいろいろ整理の対象になっていくということも、これも我々の方針なんですね。ただ、生きた経済を相手にする話なんですよ、ということはですね、皆さんも一つ理解をして、それこそ銀行がそれぞれの経営判断でなすべきことなんだということですね。甘くてもいけない、それから杓子定規には当然いかないと、こういうことであります。

それから、中小というのはおそらく地域の金融機関のことだろうと思うのですけれども、これは主要行がそういうことをやれば当然競争上やらざるを得ないものはやらざるを得ないという形で波及していく、政府が直接言わなくても当然波及していくものだというふうに期待をしているし、そういう声が我々のところにも届いているということで、これでうまく回るなという感じがいたしております。

問)

2~3年以内というようなリジットな目標を設けないけれども、当然主要行が最終処理を進めて行く過程で、地域金融機関も進めるということが期待されるということでしょうか。

答)

私の地元なぞでもですね、貸出先の方からそういうことを聞きます。こういうことを言って来てますよということでですね。だから当然、地域金融機関、しかもそれもかなり小規模な、まさに中小の金融機関もそういう動きにもあるということを話として聞きますけれども、私は予想通りの経過を辿っているなと、あるいはベクトルが働いているなと、こういうふうに受け止めています。

問)

以前、証券市場の活性化策について、税制等も含めて検討を進めたいというお話があったかと思いますけれども、その検討状況は現在どういう状況でしょうか。

答)

これはですね、いろいろ党側の動き等も前倒しというようなことで、つまりそれがどこまで本当に実現できていくかということは、これからの党の中でのご検討にもなるんでしょうけれども、そういうような勢いが示されておりますので、我が方としては、当然そこに議論としての叩き台になるのか、あるいは政府側の意見として参考にしてもらうのか、とにかく最終的には我々がこの問題は議員立法というより、やはり閣法というようなことになろうかと思うので、我々としても主体的にこれについての見解をまとめておくことが必要だと。それは当然与党の理解も得なければいけないと、そういう性格のものだろうと思います。従って作業を急いでいるわけですが、現在検討中で、近々、我々なりの意見をまとめたいと、こういうふうに思っております。

問)

先程、地域金融機関の不良債権についてのお話があったと思いますけれども、先日森長官は、「大手行と協調融資している部分については仕方ないことなんだけれども、地域銀行が単独でとか、地域銀行同士とかですね、そういうところで持っている部分については、2~3年の処理ということに限ったものではない」というようなご発言があったんですけれども、その辺りの区別というのはされているんでしょうか。

答)

要するにマーケットフォースで行われる分野ですから、当然そういう期限の点なんかで、何か決まったものがあるかと言えば、当然決まったものはないわけですが、さればといって、そこのところはかなり遅れても構わないんだと、そういうことはないわけで、どんどん比較されるということになりましょうから、かなり地域の方でも主要行を見習った動きになるのだろうと私は思っています。

問)

総理の靖国参拝が問題になっていますので、ちょっと例年ながらのご質問ですが、15日は大臣ご自身は靖国に参拝されるお考えがおありかどうか、もしおありの場合はその形式等についてはどうお考えかということが一点と、それから総理が参拝をされるかどうかまだ分かりませんが、各方面の意見を聞くというふうに仰っていますので、総理の参拝ということについては賛成か反対か、またその理由についてお聞かせいただければと思います。

答)

私自身の問題は、ちょっとやはり考えているということです。例年になく非常に関心を集めているし、いろいろ国際的、近隣諸国の反応も例年になく敏感になっているというようなこともありますし、私の国に殉じた方への思いというのもありますので、もうちょっと時間がありますので考えてみたいと思っているわけです。

総理のことについては、これはもう総理が仰っている通りだろうと思っています。総理の場合には余計に、今私自身が感じていることより大きな立場で考えなくてはいけないということですので、当然熟慮をされているのだろうと、こういうふうに見ているわけです。

問)

特殊法人の不良債権処理の問題についてですが、大臣は民間がやれば、政府系もそれにお付き合いするだろうと仰いましたが、これは例えば税金を投入すべきだというお考えなのですか。

答)

どういうことを仰っているのか、ちょと分からないのですが。

問)

特殊法人そのものは引当金とかの制度はありませんよね。それをやるということは何らかの資金源が必要なのですよね。その資金源というのはどこからというお考えなのですか、特殊法人の不良債権処理に関してですが。

答)

これはそれぞれ引当金は、あるいはなかったかもしれませんが、非常に内部留保の厚い金融機関もありますからね、それがすぐストレートに追加的な国民負担ということにはならないケースもあると、一概になかなか言えないのだろうと思います。ただ、私が何でそういうことを言ったのかというとですね、例の私的整理に関して政府関係金融機関側が一歩も話に入ってこないということによる円滑な処理の支障というようなことにどう対応して行くんだという話がかねてありましてね、これはやはり政府関係金融機関といえども話には乗ってもらうべきだというふうに思っているということ、そういう意味もあって申したわけであります。

問)

靖国の問題ですけれども、国立墓苑の新設論とかですね、A級戦犯の分祀問題についてはどういうご見解をお持ちでしょうか。

答)

もちろん靖国も、招魂社の時からいろいろ私も坪内雄三という人の本を読んで、こういう経緯だったのかと初めて知らされたようなことも実はありましたので、なかなかそう簡単に考えられるような経緯だけでもないというふうにも思いますけれども、やはりその後の遺族あるいは本当に亡くなっていった人達の靖国への思いというのが、靖国の社というかそういう所に積み重なっているという歴史の事実ということに対して、そう簡単にそれをまた別の所へ動かして行けるというようなものでもないのではないかというふうに思います。

そのようなことで、国立墓苑を作れば非常に割り切れるということでもないというふうにもちょっと思うものですから、なかなか私自身まだ結論を見出し得ておりません。

それから、A級戦犯の分祀は靖国の方があるいは合祀してしまった人達がどうお考えなのかということがあろうかと思うのですが、ごく素朴に考えさせていただくと、もちろん日本人の心情は、棺の蓋が帰されば、これは全て仏様であるし、あるいは神様ですね。そういうようなことであるというのは日本人の心情なのですが、いろいろな国際的なことも考えると、何と言うか理解が得られればちょっと別の考え方をしていただいた方がよろしいかなとこういうように私は思っています。まさに、ごくごく個人的な気持ちとしてそういうように思っています。

(以上)

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