柳澤金融担当大臣経済財政諮問会議後記者会見の概要

(平成13年8月28日(火)19時29分~19時51分)

【会議案件等】

ただ今5時から経済財政諮問会議が行われまして、私ほか5大臣、全部で6大臣だったのでしょうか、それぞれの役所からいわゆる基本方針と申しますか、骨太の方針を時系列に展開した工程というものを中心として、それぞれ自らの所掌の事柄につきまして説明を致しました。

その後、常任の議員が質問をすると、あるいは、場合によっては臨時の議員も相互に質疑応答するというような形でディスカッションが進んだわけであります。

私からは、お手元に配布してございます資料のうち、むしろ12頁以降のレジュメでもってお話を致しました。割り当ての時間が非常に短こうございました。5分ということでございましたので、そこに書いてあるようなことを目で追いながらの説明ということでございました。

しかしその中で、私が特に改めてご紹介をさせて頂いたのは、6頁に、ちょっとこれは元の本紙の方に返っての資料説明であったわけですけれども、2~3年の集中的な処理の期間を含めて、そういう私共が予て申しているような努力をした場合に、その結果はどういうイメージになるのかということについて、私から説明を致しました。要約すれば、6頁の末尾にあります表の形をとったものがその姿ということになるわけですが、ちょっと目で追って頂きますと、平成12年度末の実績は、不良債権残高は17.4兆円であった。それを基に計算をすると、不良債権比率は5.72%であった。そして、不良債権処分損は4.3兆円であり、与信費用比率は1.4%であった。こういうことでございますが、それがどういう形になるかということをご説明させて頂いたのですが、途中は端折りまして、私からは平成16年ないし19年、まあ後から事務的に細かい数字は説明を致しますが、大体2005年度に私共としては不良債権比率が2~3%、2ないし3%、それから、与信費用比率が0.2ないし0.3%になると、こういうことを申し上げました。

ただ、これを申し上げてもですね、何も闇雲で何か予め座標がないと意味がわからないという感じも当然するわけですので、私としては、不良債権比率が2%とか3%と、まあ5.72%というのは1991年頃のアメリカよりも若干多いわけですが、2%~3%というのは、大体1994年くらいのアメリカということで、現在のアメリカは非常に好況でありましたので、最近これがちょっと反転上昇しているけれども、「1コンマ何がし」と、こういうような数字に対応するものが、2ないし3%ということになるんですと。ただ、アメリカの場合は皆さんご承知の通り、不良債権の処理が非常にスピーディに行われるという、融資の形がそういう案件ベース、プロジェクトベースの融資形態なものですから、そういうふうになるということからすれば、日本のコーポレートファイナンスの融資形態をとるところの不良債権比率としては、2ないし3%というのが、ある種目標の定常状態というふうにも言えるのではないかと。それが2005年頃に実現すると、こういうことになります。それから与信費用比率の0.2ないし0.3というのは、これはまあ我々が貸倒引当率というものを、主として税の観点からいろいろ論議した当時、まあ昔のことですけれども、思い出すと0.3%を巡る攻防とかなんとかというようなこともあったように記憶しているわけでございまして、0.3というのは引当の率ですけれども、まあそんなところということでございます。従って償却をやれば0.2ないし0.3という、むしろ0.3以下のところというのが、やはり昔の平時における日本の与信費用比率ということで、これもまあ割と一つの安定期のメルクマールではないかと、こういうように思いますので、それらがいずれも2005年頃に実現されるということになるのでございます。こういう話を申し上げてきました。

いずれ議事録が出ますので、ここで論議について申し上げますけれども、日本銀行総裁は私のこういう説明に対して非常に納得をしてくれました。ただまあ、いつものことかもしれませんが、要注意先のことについてメンションをされて、引当率というようなことについて工夫がないだろうかというようなことで、一昨日の日曜のテレビを見て、「大臣が何か言ってくれたようで」と言って、まあ分かっていただいているのか、分かっていただいていないのか、ちょっと分からないのですが、別にこれは皮肉でも何でもなくてですね、ああいう程度の説明でしたから、本当に良く説明しないとご理解を十分していただくということは、これはまあ当然、難しいことですが、それが必要だという留保付きですが、しかし、何となく少し「日本銀行の意を汲んだような話として受け止めたよ」というような趣旨の話がございました。

それからもう一つは本間議員なんですけれども、本間議員は、これを見ると、要するに集中的な調整期間というこの2~3年の不良債権の処理期間に残高が横這いということについて、やや不満というか、もうちょっと何とかならないかというような趣旨からの質疑とも、意見とも言えるようなお話がございました。しかし私はそれについては、若干立ち入った説明もし、これは要するに、例えば要注意先債権から、いわゆる不良債権の領域に落ちてくるようなものについては、一定の遷移率というものを使って追っかけてあるんだと。それから、要管理先については特に構造不況の業種に属するようなものは、ほとんど全てが遷移確率1というようなことでですね、破綻懸念先以下に落ちるんだというような、非常に傾斜的というか思い切った推定を置いてですね、推計をした数字であって、そういうもののトータルとしてほぼ横這いという結果が出ている。それでしかも、破綻懸念先に落ちたものはすぐに3年で処理ということをやって、それでこういうものであるわけなので、これを何か縮減しろと言われても、いわば打つ手が無いのではないでしょうかと。本間議員はやや概念的に早く仲介機能を回復して、必要なところに資金が行くようにしたいということを盛んに仰るわけですが、私はそれは概念としては分かるんだけれども、具体的にどういうふうにすればそういうことになるかと、これはまあ、例えば要管理先を法的整理にかけると言っても、それは債務超過でもないものをそんなことは当然出来ないわけで、打つ手が無いんですね、話として。ということを申したと。そうしましたら、吉川洋議員からはですね、「柳澤さんの言うことは分かる。分かるのであえて意見として言うんだけれども、その計算の基礎をディスクローズしたらどうですか。」というようなサジェスションがありました。

これに対しては、また事務的にいろいろ検討して結論を出したいと、こう思っていますが、まあそんな意見というか質疑の形をとった場合もありますが、交換があったということでございます。以上です。

【質疑応答】

問)

証券市場や株取引に関してはあまりやり取りは無かったのですか。

答)

証券市場につきましては、一つ長谷川慶太郎さんの個人投資家協会というのでしょうか、そのグループがあって、その人達がサッチャーさんの政策、つまり年間百万なら百万円の投資をした人については、その果実であるとか譲渡益については、一切税と関係ないことをある種保証したというようなスキームがあるんでしょうか、そんなことを言いつつ、「是非、それは柳澤さんに検討してもらいたいんだ」と、こう言っておりましたので、まあそれは予て尾身大臣のご持論だということも知っておりましたので、それはとにかく、またいろいろ話し合いましょうということにしておきました。そのくらいのものです。

問)

不良債権の部分をかなり活発なやり取りがあったようですけれども、全体としては何分くらいかかったのでしょうか。

答)

2分くらいではないでしょうか。

というのは、私が一番最後の発言者で、質疑も一番最後に受けたんですね。従ってそれはもう、ほとんど時間切れの時でしたので、時間的にはそんなに長くないと、こういうことです。

問)

本間議員から13年度から15年度は残高が減らないということで、不満が示されたということですけれども、2~3年の最終処理という公約との整合性についてはどうなのですか。

答)

恐らくそういうことが頭にあったのでしょうね。ただ、2~3年で最終処理をするんだけれども、正常先からも要注意先からもある程度降ってくると。こういうことですから、我々は別に2~3年をいい加減にしているわけではないのですけれど、そういう前提に立つとこういう計算、推計結果しか出てこないんですということなんですね。しかし、そういう努力の後ですね、急速にそれが、今言ったような形で割と定常状態といわれるような状況に到達するということだという話を申し上げたわけです。

だから、ちょっと観念としてはそういうことがあるのかもしれないと。そこでガクンと減ると。

問)

集中調整期間は相当厳しいものになるんだろうと思ってですね、逆の考え方なんですが、処分損3兆円ずつやっていくと9兆円くらいあると。先程のどういった設定か分かりませんが、株価もそれほど低迷するとですね、どれくらいの業務純益を稼ぎ出していればこのままやっていけるのかと。相当儲けないと配当原資が枯渇してしまうと思うのですが、その辺の見通しはいかがでしょうか。

答)

これはですね、3兆4千とかというような数字が現にあるわけでございますので、どちらかと言うと、集中調整期間も含めてですね、むしろ実質業務純益との関係ではプラスということが、かなり今言ったように、要管理先になったものは全部破綻懸念先だというような前提での推計なんだけれども、それでもこういう形になるということですから、銀行の安定性というか、自己資本比率のところをこれはちょっと除いてありますけれども、自己資本比率が非常に低下するなどということは全くなくて、むしろ若干ゆとりというか現行水準を維持できるか、あるいは理想の状況に入ると、こういうふうな形になってます。

問)

先程の2~3年での最終処理の絡みなんですが、この中でも不良債権の新規発生が正常化すると、16年以降ですね。こういうような状況というのは、これは最終処理したというような認識であるということでよろしいのでしょうか。課題になっている2~3年での最終処理が終わったと、そして正常化している状況だというような認識というふうに捉えて良いのでしょうか。

答)

これはですね、要するに我々はメルクマールを置いて、不良債権残高の全貸出に占める割合、これを不良債権比率といい、それから、与信費用比率をメルクマールにしていくということをもう既に発表しているわけですが、それが平常状態になるということを一つの我々としては、政策目標として、ある意味でシュミレーションをやった結果を皆さんに伝えているということもあるし、それから、それが割と平時というか、不良債権の解決が済んだと言える計数になったということで、発表をしているわけです。そういう意味では、私としてもその辺を目標にこれから舵取りをして行かなければいけないという結果でもあるし目標でもある、即ち、シュミレーションをした結果が平常時として我々がそういうふうに考えられる数字が出るということによって、我々はこれを目標にしていけば良いんだと、こういうふうに考えたのだということですね。

問)

前提条件のマル2のところで、「我が国経済の再生が実現すれば」という前提を置いているのですが、これはどういう状況を言っているのですか。

答)

これはですね、遷移確率にそれを反映させているわけですね。遷移確率というもの、つまりどんどん債権の債務者区分が劣化していくという、その劣化の割合でもってそういう状況を反映させてこれを前提して推計したと、こういうことです。

実態のことですか。

問)

はい、再生の実態のことです。

答)

いや、実態のことはですね、例えば成長率というようなことをむしろ前提にしているのではなくて、遷移確率が緩和されると、こういうふうに捉えているということです。

問)

前提条件にある「低成長」なんですけれども、具体的にはどういった低成長でしょうか。

答)

これは現行の状況と。現在の状況と、こういうことです。

現に表れている遷移確率を使うということで、現在が低成長だから低成長が前提と、こういうことです。

問)

実質とか名目の成長率等の前提というのは…

答)

それは、データとして使うような作業はしていません。

いや、こういう技術的な話になったら私が何かやっているのも恐れ多い、恐れ多いというか何と言うんでしょうか、ちょっと不適切だと思うので、担当者から説明させます。

問)

政策的な問題として、ご質問したのですが、新規発生はどうみるのですか。

答)

それはまさに遷移確率。

問)

16年から19年に、その不良債権比率が2~3%というのは、一つの政策目標として捉えているのか。

答)

そうですね。そういうことを我々は念頭に置いてこれから考えて行くと、事態の推移を見ていくし、それからそれる、デヴィエーションが起こるようだったら、またいろいろ考えていかなければならない。

問)

公的資金の再注入が必要ではないかと、そういった意見は全く出なかったのですか。

答)

今日は、今日はと言うか出ませんでした。今日もと言うか、今日はと言うか。

問)

繰り返しになってしまうのですけれども、2~3年での最終処理という公約の実現が難しくなったという解釈で良いのですか。13年度~15年度は不良債権の残高はほぼ横這いだと。

答)

だから、不良債権の問題の解決、あるいは処理というものがどういうものかということです。不良債権が無くなってしまうという事態は、銀行がお金を貸している限り、無いんです。だから、その不良債権の率というものが、平常状態になることが不良債権問題の解決と我々は考えているということです。

だから、横這いということは不良債権の今の比率が5.72ですか、というような近辺で激減はしないということを意味しているわけですよね、その間は。だから、その意味では、何と言うか、2~3年の間に解決と言うか、2~3年過ぎれば解決しているわけです。期中に解決ということではない、2~3年の努力によって、その結果解決されると、こういうことです。

問)

という意味では、2~3年の最終処理ということは実現可能なんだと。

答)

はい、そうです。

(以上)

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