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柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年8月31日(金)10時30分~11時05分)

【閣議案件等】

今朝の閣議ですけれども、閣僚の発言をご紹介しますと、「市町村合併を推進するための支援策」ということについて、ご報告がありました。消費者物価指数について、若干品目の入れ替え等、これはレギュラリーのものですけれども、行うという上で、東京の8月の状況の報告がありました。前月比が0.4%の上昇でしたけれど、対前年同月比はマイナスの0.9%ということで、24ヶ月連続マイナスであるということでございました。それから、勤労者世帯の消費支出、これも対前月比はプラスの2.7%であるけれども、対前年同月比はマイナスの0.4%ということでした。

それから各閣僚、来週は私を含めて大変大勢の閣僚が外に出るということになったようですが、私の代理としては村井国家公安委員長のご指名を頂きました。

閣僚懇に移りまして、超勤の問題について、特に超勤を少なくする週間が近々始まるということを控えましての話題が出ました。それからH- II Aロケットの成功について文部科学大臣からお話がありました。以上でございます。

【質疑応答】

問)

日米両国とも株安がかなり進んできておりますけれども、国内の銀行等への影響等について、大臣のお考えを改めてお尋ねしたいのですけれども。

答)

銀行は現在、なおまだ相当の金額の買い株式を保有しております。他方、この9月期決算からは時価会計が導入されるという状況にございます。従って、株安というのは自ずと評価損というものの計上に至るわけでございまして、資本勘定にマイナスの影響を持つと、こういうことでございます。そういう意味では、芳しくないことに繋がるわけでして心配でございます。

ただまあ、予てから申し上げておりますように、特に日経平均との関係で言いますと、日経平均に組み入れられている株式と保有株式の銘柄構成というものにかなり乖離がある関係で、連動率ということになりますと大体半分ということだそうでございます。そんなこともありまして、日経平均株価の水準をいろいろ考える場合には、そういうようなこともあるということで見ていただければありがたいと、こういうふうに思います。

決して芳しい状況ではないわけですけれども、現在の水準ということであれば、そんなに凄いシリアスな問題には至っていないと、こういうふうな評価でございます。

問)

株安についてですが、先日、株安について一部「金融庁ショック」ではないかと、つまり大臣が先日示された改革スケジュールでは、不良債権処理が思ったより遅いのではないかというような意見があることについて、大臣のご見解をお尋ねしたいのですけれども。

答)

先般、経済財政諮問会議におきまして、工程表というか、お互い所管の事務についての状況の報告が行われたわけですが、私はその中で、不良債権問題が解決されるということはどういうことかということのイメージを持ってもらうと良いのではないかと、このくらいの段階でそういうふうに持ってもらうと良いのではないかということで、予て我が庁監督局が作業してくれた集中期間3年間と、その後の状況についての姿、イメージですが、その推計を発表したと、こういうことでございます。

あの前提は非常に厳しい前提でして、例えば、構造不況業種の要管理先債権は次年度において100%破綻懸念先になるとかですね、あるいは、地価の下落も相当大幅というような厳しい前提を置いて、そして集中期間に一体どういう状況になるかと。我々としては集中的な期間について、予て損失が増加して自己資本に食い込んで厳しい状況になるのではないかというようことも言われておったものですから、そこに非常に関心があってシミュレーション的にそういう厳しい前提を置いて試算をしてみたのですけれども、それは今言ったような前提でも、不良債権処理に関する限りは大丈夫と、結果として知ることができたというようなこと。

それからまたもう一つは、3年後の姿は大体どういうものが不良債権が解決したという姿なんだということで、予て発表してあった二つの物差し、不良債権比率、それから与信費用比率というものがどういう格好になるかということで発表したわけでございます。皆さんは非常に良く分かって頂いて、我々の推計の狙いというものをご理解頂いた趣旨での記事を次の日に見たわけですけれども、市場の受け止め方というのは7年もかかるというように受け止めてしまったことであるとか、期中の不良債権残高、実は徐々に下がって逓減というか、そういうことなんですけれども、3年目がちょっと0.1兆円も増えているものですから、その辺りは横這いと表現しておけば良いではないかというような、そういうことだったのですが、それがまあ非常に刺激的な印象を与えたのかなとも思ってますけれども、進んでないという感じになっています。つまり、期中も進んでいない、時間もかかると、こういうイメージを与えてしまったのかなと思います。

大変、私のプレゼンテーションについては反省させられて、もうちょっと注意深くあった方が良かったと思ってますけれども、趣旨とするところを是非ご理解いただいて、マーケットの関係者も更に理解を、まあ最近のいろんな発言は「今まで言ってきたラインでの推計だね」というようなご発言もいただいて有り難いのですけれども、更に一層の理解が進み、正しく受け止めていただくことを期待したいと、このように思ってます。

問)

そういう中で9月から、米・英をご訪問されるわけですけれども、今日の一部報道にあります「IMFが日本政府に対して特別審査の受け入れを打診している」というような報道もございます。株安の現状とか、日本の金融システムについて、向こうに行かれて大臣はどういうふうにご説明されるご予定ですか。

答)

これはですね、あるがままというか、これまで皆さんにこの場を通じ、あるいは国会等を通じてお話ししてきたことを基本にして、いろいろご質問にも答えてきたいと、こういうように思っているということに尽きます。

我々は、構造改革を進めることによって日本の経済の本当の再生を図るというか、体質改善を図ると。これは基本ですから、これには若干時間がかかると。これはもう皆覚悟の上で歩み始めているわけで、それはもう覚悟の上なんですね。もちろん、フリーフォールなんて起こすつもりは毛頭無いので、下支え的なことはセーフティネットその他でやるわけですけれども、まず基本は構造改革をやると、こういうことだということで一貫して説明をしたいと、こういうように思っております。

例の一部報道にあった、何て訳すんですかね、そういう審査みたいなものは。この前もケーラーさんが来た時にも話題になって、私は極めてオープンなんですね。むしろ私としては気持ちの上では、アナリストのことを引用したなどと言うのではなくて、やはり直接いろいろ銀行、あるいは金融庁の者と話をしてもらうのが良いという気持ちを私は予て持っているんですけれども、ところが皆さん見ておられても分かるように、金融庁のマンパワーが、そういうエキストラな仕事をするというゆとりが今は無いということが非常に心配です、正直言って。ちょっと幹部の中でも体調を崩す人が出てきたりということで、私自身もこの組織を預かっていて、何と言っても職員の健康というものは大事なものですから、そのために、この14年度でも人員増加というものをお願いするわけですけれども、やはりそういうことを無視していろいろ仕事の配分をしていくということはできないと。いずれにしても、形式的な話でアクセプトしてというようなことではないのですけれども、私はオープンですよと。

ただ、今現実的にそれを受け入れるだけの余地があるかと言うと、なかなか無いので、「もうちょっと待って下さい」ということを申し上げてきたということで、ぎすぎすした関係では全くありません。

問)

今の質問に関連してなんですけれども、大臣の方では「いずれIMFの審査を受け入れる」というご意向があるということですか。

答)

もうオープンなんです。私は皆さんに一貫してそのことは私の行政として大体ご理解いただいていると思うのですが、隠し立てをしたりですね、そういう気持ちはないんです。皆にオープンであるべきだというふうに、もちろん個別のいろんな機関の問題は、これはもうご商売に関わりますから、それはまあ出来ませんけれども、それ以外のことについては努めてオープンにしていこうというのが基本方針でして、そういう方針の一貫なんですね。そのことについても。

今はそういう話をしている。だから全くぎすぎすしたことにはなっていません。

問)

関連してですけれども、IMFに確認したところ、「これは全加盟国に等しく求めている審査だ」というような言い方をしているのですけれども、これは金融庁に言って来た言いぶりとしては、何か日本を特別に審査するというような言いぶりだったのでしょうか。

答)

全然そうではないのですよ。

私が話の具合としてミスリーディングになると懸念があるのですけれども、先般、ケーラーさん相手に日本の金融システムのことについて若干時間をとって説明したわけですね。そうしたら、是非そういうことであればそれを、IMFの審査という言葉が良いのか私はちょっと分からないのですが、IMFが直接来て、金融の問題についていろいろ所定があるのかどうか、定めるところがあるのかどうか知らないけれども、所定の手続でのことをやるので、その時に話してくれれば良いのではないですかと、こういう話なんですね。我々としては「そういう用意はありますよ」とケーラーさんの方には言うわけですよね。ケーラーさんに私は言っていたわけですが、それに対しては、「いや、大臣がそういうふうに仰ることを、自分達も専門家を派遣してまさに聞きたいわけだし、だからそういう機会を持たせてもらったらどうですか」と日本語で言えば、そういう感じの話があったので、私は、それは実はオープンなんです。オープンなんですが、是非早急にもしてもらいたいと思っているのですけれども、ただ現実のことになると、これはもう皆さん役所の仕事ということでご理解いただきたいのですが、完璧な準備をしてやるわけです。各国ともそうです、それは。そういうものを今の金融庁のマンパワーの中に新たな仕事として放り込むと、何と言うか、いろんな仕事と一緒にそれをやってみろというのは、ちょっと今はきついですね、正直言って。そういうことなんです。

問)

とり立てて現下の金融情勢を踏まえて、IMFの方から日本の内容に不信だということではないのですか。

答)

そうではないんです。カナダとかイギリスだとか、皆行こうとしているわけですから。

問)

先程大臣はイメージのシミュレーションの件で、「要管理先のほとんど100%が破綻懸念先になるという前提を置いている」というお話をされたのですけれども、そうしますと、引当の世界では要管理先と破綻懸念先というのは大変違いがあって、でも今の会計基準では引当を変えることはできないと。しかし金融庁の見解として、ある程度予防的な対応を必要とするようなイメージが出来ているということを、この引当の世界に何か反映させていくお考えというのはあるのでしょうか。

答)

ありません。それはもうルール通りということです。

問)

国の財政運営について質問したいのですが、補正予算と景気対策に対するお考えと、今年度の国債の発行残高を30兆円以内に抑えるべきか否かというような議論がありますけれども、それについて大臣のお考えをお聞かせください。

答)

補正の話が最初にありましたが、これは特にセーフティネットを中心に必要な、つまりボリューム的に需要を追加するということではなくて、必要な政策を打つと、そのための経費はいくらなんだというようなことでの補正予算というのはあり得るのだろうと、こういうように私は思っています。それに尽きるわけです。もうちょっと言えば、そういうセーフティネットも既に追加的なものはないよと言えば、それは必要ないということになるし、要するにそういう本当の財政需要というか、マクロ的な需要追加ということではなくて、個別の政策が必要で、その個別の政策の経費が積み上がるということはあり得ると、こういう意味ですね。

第二番目の30兆円云々ということについては、私は今、全体のフレームワークでの数字をよく承知していませんので、ちょっとここで軽率な物言いをするのは差し控えたいと思います。

問)

先日示された試算に関連してですが、非常に問題になっているところは要管理先以下の数字を示されたということが一点あると思うのですけれども、金融庁として破綻懸念先以下の残高というのは今後どういうふうに推移していくのでしょうか。

答)

これについてはあとで事務当局に当たっていただいても良いわけですが、結局、まず最初の年は既存のものの2分の1を多分積算していると思うんですね。2000年下期の残高8.3兆円ですか、それの2分の1がこのようになると。その次の年が3.4兆円の3分の1。そういうふうにやっていって三段重ねになるんですよ、2年目からは。2年目からは3分の1ずつ三段重ねになるんです。ですから、要管理から落ちたものの3年分ということになるわけですけれども、まあ私は漸減をしているのだろうと、こういうように思っています。

問)

それと、示された試算の内容が金融機関から見て、この間の経営健全化計画の不良債権処分損などの積算から見ると、やや乖離しているのではないかと。マーケットは不良債権問題はこんなに時間がかかるのかという受け止め方になっており、また銀行側は全く別の受け止め方をしていて、処分損をもっと増やさないといけないのかと、そういう受け止め方をしているようなのですけれども、試算が目標だという位置づけだとすると、もっとさらに銀行に対して(不良債権の)処分を求めていくと、そういうことになるのでしょうか。

答)

これについては、お言葉ですけれども、実は健全化計画との整合性というのは、私の知っている限り、かなり気を使って推計をしているということですから、そういうご指摘のような健全化計画との整合性が欠けて、むしろ推計の方が甘くなっているのではないかということはないというふうに思っています。

それから、健全化計画の時に、私のあの時の説明ではそこまでの言葉を使わなかったかもしれませんが、方針としてやはり、この集中期間に傾斜的に不良債権の処理をさせるような健全化計画になるようにと、そういう話をしてみてくださいと、こういうことを指示しました、正直言って。そういうサジェスションの下で各行は大体今年で終わりで、あとはもう平常の不良債権処理だというのをもっときつく見るということで3年間の処理額というか、そういうところを積み上げてくれということでございます。それで、それと整合性をとって今度の推計が作られたと、こういうことで理解をしていただきたいと思います。

問)

申し上げたのは試算が甘いというのではなくて、銀行にとってはより厳しい内容になっているのではないかということで、特に3年目、4年目の先の話についてなのですが。

答)

もしそうだとしたら、それは先程ちょっと触れた要管理先の手当てが、処理損がたくさんになるものをスピードアップがされていると、落ちてくるスピードがですね。そのことと、この処理に当たっての担保の価値をかなり、あまりこれを言うと、それ自体が世の中に影響を与えるのは非常に私は本意ではありませんから、そういうふうには絶対に受け取ってもらいたくないのですけれども、かなり厳しく見たということです。だから、その意味では厳しくなっているということだろうと思います。あそこまでは行かないかもしれませんね。私もちょっとすごいなと思いましたからね、そういうふうに見たことについては。

問)

IMFの件について確認ですけれども、受け入れる意思はあるけれども、現在受け入れる余力がないので受け入れられないと、そういうことでよろしいでしょうか。

答)

時期を待って欲しい、時期を見て欲しいということです。

問)

今は受け入れられないということですか。

答)

今はちょっと無理ですね。

問)

シナリオの件で要管理先は100%ということで、金融庁の追跡調査では要注意先のうちの8%が破綻懸念先に落ちるということで、そういう追跡調査から随分かけ離れているような感じがするのですが。

答)

要管理先の話です、要注意先ではなくて。まあ、そこはしっかり一番緻密な職員がやっていますから。全員が緻密ですけどね、金融庁は。

問)

先程の補正に関しての大臣の発言がちょっとよく分かりづらいのですが、単なるマクロ的な公共工事で何兆というふうにお金を付けるのではなくて、セーフティネットに付随した政策に付けていって、例えば総額3兆円ということになったらそれは良いという、そういうお話なのでしょうか。ちょっと、その辺が分かりづらいのですが。

答)

まあ、それがそうでも「私は構わないと言っていますよ」というふうにクォートされるのは本意ではないですね。当然、何と言うかそれぞれの政策も予算をやっていただくと分かるのですが、私も若いころ予算をやった時にすぐ上の人に言われたんですね。「これは政策的に非常に大事だからこのぐらい必要です」と言うと、「予算は飛躍せず」とアリストテレスの「自然は飛躍せず」という言葉をもじって、「予算は飛躍せず」と言うんですね。「何で予算は飛躍してはいけないんですか」と言うと、「君ね、予算を有効に使うというのには、すごいインフラが必要なんだよ、そこには。その関係で働く人とか、そういうものが必要なんだよ。そういう人を、今年まではこうだったけど、来年からは2倍にするということはできないんだよ」と。だから予算というのは何と言うか、役人的に聞こえるかもしれませんけども連続してでないと増やせないんだと。だから、アリストテレスは「自然は飛躍せず」と言って、常に連続線で物を考えたわけですね。

それと同じように予算についても、私はあの時、環境問題の予算をやっていましてバーンと増やしたら、今、種明かししますと澄田智さんですよ。「柳澤君、予算は飛躍せずだよ」と。昔話で恐縮ですが、そういうことがあってですね、ある程度の目処をつけながらやるということですから、私としてはそれがすぐに3兆以上の国債を発行しなければならないほどになるんだろうか、むしろ逆にですね、あんまり言うと…もう財政の話はあんまりもう申しませんよ。

とういうのはね、なかなか積み上がらないということなんですよ、難しくて。公共事業でボーンとやったらすぐに規模は出るのですけれども、なかなか個別の施策で積み上げるのは難しいというのか、なかなかそこまでたがが伸さないというか、そういうことだそうですよ。

問)

不良債権の残高の今後の見通しをみて、素直な印象としては、やはりマクロの景気が良くならないと、いくら処理してもどんどん新規発生が出て、なかなか残高が減らないのかなあと。つまり、試算のそもそもの前提が骨太の方針の今後3年間が集中調整期間であって、0(ゼロ)から1%の成長率であると。おそらくこの0~1というのが実質成長率と見ると、名目だとマイナスの成長が続くと。そういうところが、そもそもの不良債権処理の遅れの原因ではないかと思うのですけれども、改めてそういう低成長路線というか骨太の方針の前提の辺りについて大臣は不良債権処理との関連ではどう見ていらっしゃるのでしょうか。

答)

これはですね、私もかねていろいろこの問題を議論する時に発言をしてきたのですが、まず我々の仕事は名目成長と関わりがあって実質ではありませんと。名目成長で言うと、ここ4年間はマイナス成長ですね。これから1年、2年、3年と、まあ我々としては正直言って望むらくは名目成長でプラスになるというようなものをしていただきたいということをずっと言ってきました。言ってきたのですが、それではそれができなければ我々はどうしようもないんだという立場かというと、そういうことだけではなくて我々が不良債権の処理をすることが、我々が望んでいることを実現するのに全部我々の力で100%実現するという意味ではないのですけれども、かなり影響が出てくるのではないかと、不良債権の処理が進むことによってですね。

「鶏と卵ではないよ」なんて言う人もいますけれども、私はやはり正直見て、鶏と卵で、両方がお互いに良い影響というか悪い影響の方もそうだし、不良債権処理をさぼれば悪いことになるし、不良債権処理が進めばそういうように成長にも良い影響があると、こういうことだろうと。正直言って、こういうふうに思っています。

(以上)

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