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柳澤金融担当大臣記者会見の概要

(平成13年9月21日(金)17時49分~18時40分)

【冒頭大臣より】

今日は閣議もありましたが、ただ今、改革先行プログラムについての、政府・与党の懇談会も終わって、その後に経済財政諮問会議の議に付されて、原案通り決定を見たという連絡もいただきましたので、私共金融庁の関連部分につきまして、皆さんに改めてご説明をさせていただきたいと、このように考えた次第です。

予て皆さんご承知の通り、いわゆる骨太の方針には、証券市場の構造改革と不良債権処理の推進、抜本的解決というものが掲げられておりまして、そこにはまさに骨太の方針が書かれていたわけでございますが、その後のいろいろな諸般の情勢をも踏まえ、元々、この骨太の方針を更に具体化させるということが我々の課題になっておりましたので、この先行プログラムにおきましては、そのことを盛り込んだということになるわけでございます。

それで、金融庁関係部分は、お配りをしたように「証券市場・金融システムの構造改革」ということで一まとめにされまして、証券市場の構造改革につきましては、なお、特に税制がご案内のような手続を具体化のためには必要とするということで、そこにある通りの表現に留められているということでございますので、早速、マル2の「不良債権処理の強化と金融の活性化」という問題の方に説明を移させていただきます。

それで、そこにありますように、不良債権処理の強化をするということと、金融の活性化を図るということで、こういうことを他の分野における構造改革が進むのと併せて行うことによって、遅くとも集中調整期間が終了する3年後には不良債権問題の正常化、例の二つのメルクマール、一つは不良債権比率、それからもう一つは与信費用比率の二つのメルクマールを使ったところの正常化という事態を実現したいと、こういうことでございます。

まず「資金供給の円滑化」ということを謳わせていただいています。これはどういうことかと言いますと、どうも最近、いろいろ社会にある声を聞くと、銀行が不良債権の処理でいろいろそれにコンプライすると言うか、それの計数管理みたいなものだけに注意が行ってしまって、本当の意味の金融機関としての活動というか、もっともっと自分達が良い案件を探して、そこに資金を供給して行くというような、そういう姿勢にやや欠けるところがありはしないかというような声がかなり耳に入ってまいります。そこで私共としては、確かに不良債権の処理、あるいはそれを実現するための計数ということに関心がいくのは分かるけれども、もっと我々として望むのは、前向きの姿勢によってもそうしたことが前進して行く、つまり金融本来の機能が発揮されて行くということも期待をしているんだということを、ここで改めて明らかにしたいと、こういう気持ちでこのくだりは書かせていただいたわけであります。いろいろとそういうことを言われた場合に金融機関の採るべき姿勢の難しさということも分かりますけれども、そのことを乗り越えて、もっと良い案件を探しに出かけるというようなことを積極的にやってもらいたいという趣旨が、ここのくだりの趣旨でございます。

それから「ロ」にまいりまして、「ロ」は改めて銀行の不良債権の処理に対する私共の採る措置について、ここで何項目かに渡って掲げさせていただいた次第です。最初のところは、大体、従来皆さんに既に明らかにしているところでありまして、通常の検査でございますけれども、この頻度を上げるということと、検査で指摘されたことが次の決算に十分反映するようなフォローアップ検査を行うと、こういうことでもって、まず不良債権の的確な把握をしたいと、こういうことであります。

その後ですね、実は「更に」というところの二つを飛ばして、要注意先の上場企業についての十分な引当ということ、これを私は先般のイギリスFSAにおける講演でもこの点を触れさせていただきました。それは要するに、要注意先のことについて非常にいろいろな、特に市場関係者からの注目が集まっていまして、どうも私共が今やっているものそのものを続けていたのでは、今一歩信頼というかコンフィデンスというか、そういうものを勝ち得るのに力不足ではないかと、こういう感じがいたしまして、これは私が英米両国に訪問する前に事務方に検討をお願いして、事務方もやはりもうちょっと市場が発するいろんなシグナルを取り込むような、そういう要注意先の行内格付における位置付けと言うか、そういうものを取り込んだ行内格付を行う、そういう努力を要請しようではないかと、こういうことになっていたわけですが、そのことをここに書かせていただいておるわけです。

その後また更にいろんな問題が起きまして、率直に言って、ある大手の小売業が破綻をするというようなことを受けて、一体この私共の検査というものが、そういったものとやや、何と申しますかちぐはぐな感じがする、そこに齟齬が存在するというようなことは、率直に私自身も感じたわけでして、どうしてこういうことが起こるのだろうかということを事務方に投げかけていたわけでございます。結局、検査のタイミングとその後に発される市場のシグナルというものとに、随分そこにタイムラグがあるということで、このタイムラグを何とか克服する方法がないのかというような観点で、今回そこにあるような、市場の評価などが著しく変化している債務者に着目して、金融機関が自己査定をする期間に特別の債務者に着目して、「この債務者についてあなた方はどう査定するのですか」というような形での検査をするということです。通常の検査が、この債務者の決算からすれば随分遅れて検査が行われてしまうというのが今のシステムの泣きどころなんですけれども、その泣きどころをこういった形で補完をして、早く市場のいろんなメルクマール、シグナルとの関係をもっとしっかり把握したものにしようということです。そう言っても、この債務者を選定する時にそのシグナルを使うわけであって、選定をされて、そこでどう評価するかということについて、業績とかそういうものを特に良く調べて、この債務者はこういうふうに区分されるべきだということをやるわけですけれども、そこで何か特別なことをするわけではありません。検査をする債務者を市場のシグナルによって選ぶということでありまして、従って検査そのものは検査マニュアルに従って、静々として粛々と行うと、こういうことでありますので、その点は十分ご理解をお願いしたいと、こういうように思います。

もちろんそういう丁寧なことをやりますと、多分市場はそんな勝手放題なことをシグナルとして出すということは考えられないということになって、しかもその程度は、先の検査などで我々が確認した区分とやはり違うんだということになれば、それは当然、その検査の結果に応じた債務者区分と、それから必要な償却・引当が行われると、こういうことになるのは、これはもう言うまでもないことであります。その際、外部監査人云々ということがありますけれども、外部監査人とも共同作業的にそういうことをやるんだということでございます。

そういうことで仮に特別検査で先程言ったような道行きでもって、破綻懸念先に区分されるべきだということになった債務者については、そこにあるようないずれかの措置を速やかに講じて、その適正な措置に当たるということが書かれているということでございます。

それから、主要行に対する経営情報の開示というものにつきましては、これはもっと頻度を上げて、四半期毎に行うというようなことも、当然これからは検討して行かなければならないということでございます。

最後のところは資本注入のことですけれども、私共としてはこれはもう何も意地になってだとか、あるいは過去との行き掛かりでということは全くありません。皆さんにも度々申し上げる通り、やはり私共金融庁が担うべきことというのは金融システムの安定化であり、金融システムの機能の十全な発揮ということでありまして、必要なことは何でもやらせていただきたいと、こう思っているわけですが、現在はいろいろ厳しい状況がありますけれども、資本の再注入というものが必要だというふうな、いろいろなシュミレーションの結果の数字が出ていないということでございます。もちろんここでは確認的に言っているわけですが、金融危機に対応する措置としては、皆さんご承知の通りのシステムと資金が用意をされているということでございます。

次に「ハ」にまいりまして、「RCC等による不良債権処理と企業再建」でございますけれども、骨太の方針にもRCCの働きというもの、これは皆さん一緒懸命やってくださっているわけですけれども、もう少し拡充があって良いのではないかということが書いてありまして、特に企業再生との関係でそのことが書いてあったわけでございますけれども、この点についてそれをさらに具体的なスキームというものを想定して、そこに書かせていただいたわけでございます。何と言ってもまず不良債権の買取の価格を弾力化したいということであります。これは後でまたご質問の出るところかと思いますけれども、党との間でこの問題は今論議をしているところでございまして、今しばらくその決定を待っていただきたいということでございます。

その後に書いてあることは、例えばDIPファイナンスの資金等は、日本政策投資銀行の融資というものを活用するということでありまして、その次の項目に書いてあるのは、これはいわゆる「ディレバレッジングファンド」のことでございます。企業再建の方式については、いろんな方式があるようですけれども、そういう中でRCCも、「ディレバレッジングファンド」に参加をするということで、企業再生に参画して行くということがあってよろしいということで、これを具体的な企業再建の方途に採ったと、こういうことでございます。

それから最後にオフバランス化に当たっての配慮ということでありますけれども、そこにあります通り、特に中小企業等には配慮して、出来るだけ日本経済の構造改革に役立つような方向で金融機関としても努力をしてもらいたいということが書かれているということでございます。

私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

不良債権の処理の厳格化、スピードアップということだと思うのですけれども、景気情勢がこういう中で、使い方によっては劇薬にもなりかねないとも思うのですけれども、銀行経営へ影響とか、地域経済に与える影響というのを大臣はどのようにお考えでしょうか。

答)

私共は別に裁量的にやろうとかそういうことではなくて、もちろん静々としてここに決められたこと、これは一金融庁の決定ということよりも内閣としての決定ですから、これを静々として取り運ぶということでありますが、マンパワーとか実際の実務は、時系列的に一遍に、一挙にということは考えられないわけですね。それで、実際仕事も非常に難しい仕事です。そういうようなこともあって、順々にやって行くと、整然とやって行くということであります。

そういう中でどういう選択をして行くかということの中で、私、今日も国会で話したかとも思うのですけれども、私共が本当の不良債権ということで、要するに再生不能というような、今のままの体制では再生が不能というようなのは、どちらかと言うと再生不能の部分は少なくとも構造的な不況、つまり少々の循環的な好況の波が来ても、それはもう蘇生は出来ないのだということが中心でありまして、そういう意味ではそこを手術をしても、それが凄いデフレ効果を改めて生むというふうには考えておりません。

従って私共としては、私共が成すべき仕事というものを考えてみますと今言ったようなことですから、我々は静々としてこの仕事を取り進めて行くということでよろしいのではないかと、このように考えています。

問)

銀行の負担が増えると思うのですけれども、その辺については如何でしょうか。

答)

まああの、ちょっと今日も国会でもそれの関連の質問も出て、非常に機械的な計算の結果も申し上げたのですけれども、私共としては、何と申しますか、今度のスキームのところ、特別検査によるところということについては、やや正直言って負担増を否定いたしません。しかしまた、早くこれが蘇生することによって、またすぐに踵を接するような形で膿が出て、収益を上げていく、そういう対象になるということを期待していると、こういうことを申し上げたいと思います。

問)

もう一点お尋ねしたいのですが、RCCの機能強化については、いろいろ買取額についてはこれから党とも話し合うということですが、国民負担ということについて大臣はどのようにお考えですか。

答)

国民負担最小の原則というのはですね、どの場合でもこうした問題に取り組む際の基本原則でありまして、私共が最も大事にしなければならないプライオリティの高い、何と言うかリクワイアーメントと言うか、条件だと思っています。党側もそこのところは十分分かってくれていると私は思っておりまして、何と申しますか、全然かけ離れた考え方、というと問わず語りに自分の立場を言っているようなことになるわけですけれども、私としてはやはり今まで個別の金融機関に公的資金を投入して来たということと、やはり出来る限り整合性を取って行きたいというふうに考えております。そういうことで、そういった立場でこれから党といろいろ相談して、最善の答えを見つけ出していきたいと、このように考えています。

問)

一点確認なんですが、先程大臣が仰った中で、今回のスキームについては構造的の意味というか、再生不能というのは構造的な不況で、そこを手術してもデフレを生むとは思わないというのは、影響はないというふうにお考えになられているのですか。

答)

いやそうではありません。それはそうではないのですけれども、そういうものをいつまでもいつまでも持ち続けて行っても、まさに構造的な不況というか、構造的に問題があっても、何と言うか経済活動としてもあまり合理性がないということでありますから、それはむしろ資源をそういうところから他に移すということの方が、はるかに日本経済の活動水準にも良い影響があるということです。短期的に言えば、全く影響が無いというふうに別に言い切るつもりはありません。

問)

特別検査のところのお話をもう少し詳しく伺えたらと思っているのですが、「市場のシグナルが著しく変化している債務者に注目して」というところですけれども、その著しく変化しているというところの要件というか定義というのは、例えば株価が半分になったとか、額面を割り込んでいるとか、格付けで言うとどのぐらいの格付けが想定されるのかというイメージのところをちょっと伺いたいなと思っています。それと、これは事実上の官による査定であるという捉え方でよろしいのでしょうか。

答)

それは違います。

問)

例えば、破綻したマイカルの件がありますが、非常にそういう状況に6月以降になったというふうなところで、自己査定が6月末のところで始まって、7月、8月、9月というふうに作業があるとしますと、そこに金融庁が入ってきて、「ここは要注意ではないよね、破綻懸念先だよね」ということで各行に引当処理等々を求めていくというイメージでよろしいのかというようなところをお願いします。

答)

これは別段ストレートに全て結びついているわけではありません。ただ、今のように、検査が終わるとその後どういうふうな指標が出て来ようとも次の検査を待っているだけと、極論して言うとですね、そういうことだともう市場の評価と金融庁の評価とが離れて暫くの間、続いていくということは避け難いですね。そういうことで、別に金融庁の検査が行われなくても、決算がもしそれを反映していないとしたら決算とその市場の評価とが、もう非常に乖離しながらそれがずっと長く続いていて、それで市場の言わば金融機関の健全性に対する信頼というか、そういうようなものも揺らいでしまうと、そういう事態をどうやって避けたら良いのだろうかという問題意識なんですね。

そこで我々としては、そういう市場の評価と銀行の決算、あるいは金融庁の検査後の検査の結果との乖離の時間というものをできるだけ短くしたいということで、そういう乖離があるものについて、本当に市場の言っている通りなのかということを、言わば確認するというかそういう意味での検査をするということになります。やはり市場の言う通りではないかということになれば、それはもう自己査定の中で、そうですねということになるはずで、言わばウォーニングというか、そういうものなんですね。

問)

著しい変化というのはどういうことなのでしょうか。

答)

それはもう、「等」という字も書いてあるように、要するに我々としてはいろんなケースがあるだろうというふうに思っていまして、そこで代表的な例として著しく変化したと、例えば今仰ったところだと格付けが4段階変わってしまったというようなことを、まあ一つ例として挙げているわけですけれども、やはり市場の評価と金融機関の自己査定、あるいは我々の検査結果とが非常に食い違って、それで金融機関の自己査定、あるいは我々の検査のコンフィデンスが崩れてしまうというようなことを防ごうという趣旨ですから、そういう言わば危険性が多い状態というふうに考えていただければ良いと思います。

問)

今回のとりまとめに当たって総理からはどういうふうな指示を受けていましたか。それと、「集中調整期間が終了する3年後には不良債権問題の正常化を図る」とありますが、8月の終わりに金融庁が示した試算では、今後3年間はほぼ不良債権の残高は横這いで、3年後というとようやくそれが減りはじめるぐらいの状況かと思いますが、それで不良債権問題が正常化したと本当に言えるのかどうか、その点についてお願いします。

答)

まず第一に総理からの指示というのは、やはり信頼を得るようにスキームを考えろと、こういうことですね。これがまあ総理の最も関心の高いところで、その指示をいただいたというふうに心得ています。

それから集中調整期間の終了する3年後ということですけれども、まあ減りはじめるという言い方をされるかどうか、これはまああれですけれども、我々としては、例えば不良債権比率にすると4%、あるいは与信費用比率にすると0.3%に近づいていくと、そういうような状況であれば安定化を、正常化を迎えているというふうにそこのところを読んで、そういうことを書かせていただいていると、こういうことです。

問)

不良債権処理と企業再建のところなのですが、この間、産業再生委員会という構想から始まって、いろんな企業再編の問題が、党側あるいはそれ以外の方からも議論があったと思うのですが、その中で不良債権を簿価で買うとか、いろんな案が出てきています。今回のこの案というのは、そういういろんなこの間の意見をかなり反映したものになっているのか、今後さらに党側と協議する中で具体化する中でそういう意見も反映せざるを得ないということになるのか、その辺についてこれまでの議論の整理と今後どういうふうな見通しを持っていらっしゃるのかということをお聞きしたい。

もう一つは、このディレバリッジングファンドについてですが、これは多分、外資系の金融機関などは非常に関心を持っていると思うのですが、外資系の金融機関の方からこういう仕組みを作るべきだ、あるいは作った方がいいというようなアドバイスは、この間随分あったのでしょうか。

答)

先程冒頭に言いましたように、もともと産業の再生と金融の再生というのは車の両輪ということは、このところずっと世の中の皆さんに出している資料でも、そこはもう明確にしているところであるというふうに心得ています。もちろん、車の両輪で一体的に実現すべきものということなのですが、そうかと言って産業再生の話は何も参考にしないのか、耳を傾けないのかと言われれば、それはもうディレバリッジングファンドについての、まあこれは外国産というかそういう人達の意見であるということは、もう皆さんお気付きの通りですが、要するにいろんなお話を聞いて我々としてはこういう結論に達したということでして、従ってこれはこの辺りのことは党側も先程冒頭に申したように、政府・与党の間で合意を見ているところですから、これ自体がどうこう動くということはないということでございます。まとめてお答えしたつもりです。

問)

ファンドの話なのですが、日本政策投資銀行やRCCが設立に加わるということなのですけれども、先程、公的資金の話で、それは極力避けたいというような話があったと思うのですが、このファンドについては公的資金の投入が国民負担の方に直結する懸念があるのではないかと思うのですが、そこはどのように区別されているのでしょうか。

答)

これはファンドは、何と言うかどういうイメージか皆さんあれなのですけれども、まず第一にファンドというのは、これは純民間のファンドもあるし、それからこういうふうな若干公的なファンドもあるしということで、これはいろいろなファンドがこれからは企業再生に当たっていくんだろうと思うのです。では、このスキームでのファンドは一つなのかというと、今我々が考えているイメージは、やはり再生すべき企業に一つずつ対応するという考え方であります。

そういうことを前提にして公的資金云々ということでありますけれども、それはまあこれは最後のところは株式を引き取るわけですね、このファンドがですね。その株式が、目論見としては本当にもうがっちりした企業再建計画に基づいてのものですから、我々としてはその株価は、むしろ上がると、実際に債権と引き換えた時の価格に比べれば値上がりするということを想定しているわけでありますけれども、いやそうではないよ、損することだってあるではないかと言われると、それはやはり神ならぬ身ですから絶対ないとは私も言えませんよ。しかし、その前提になる再建計画というものが非常に厳しい再建計画だということを一つ分かっていただいて、その辺りのことについてはご理解を賜っておきたいと、このように思います。

問)

今回のプログラムによって不良債権問題について、いろいろ海外とか国内からの疑問の声とか、本当に処理できるのかという声があると思うのですけれども、今回のプログラムによってそういう懸念というものに対して大臣はどういうふうにお答えするのでしょうか。

答)

まあ一番のコンフィデンスにおいて十分私が満足すべき状態にあると思えないと申し上げたつもりですが、そのことの寄ってきたるところというのは、やはり市場の声と、つまり金融機関と金融のレギュレーターたる、スーパーバイザーたる我々の評価が違うということが最大のポイントであったと私は思うのです。そういうことを念頭に置いて、これをできるだけ近づけようというか、そういうところを放置するということはもう止めようと、そういったことで何と言うか、我々の側が不信にかられるようなところを一つ一つ検証して、そういったことが本当にないようにしていこうというのが、今度の特別検査でもあるし、まあ敢えて言えば要注意先であっても、もっと市場の声を入れた引当というようなものになるというか、そういうことを手当てしていこうということです。これは野放図に妥協的に迎合的にやっていくつもりはありません、敢えて申し上げますと。それは我々がきちっと検査をしたり、あるいは我々の一つのルール、我々がこれが良いと思うルールというものをこれから、特にこの要注意先の引当などについてはきちっとしたルールを作って、それを銀行にちゃんと遵守してもらう、具体化してもらう、インプリメントしてもらうと。こういうことを考えているということであります。そういう我々の今までの努力だって相当なものでしたし、それを何か否定したり、ひっくり返したりするという気持ちはありません。

しかし、市場の声というもの、それが不信を買っていたきっかけになっているのだとしたら、そういうものについて誠実に答えていこうと、これが我々の考え方だということです。

問)

今仰った点について質問したいのですが、市場の声というものの中には思惑とか誤解が入った声があるわけですよね。そういった中で企業が、例えば市場の声に負けてキャッシュフローなどで窮していくと、検査の方も追っ掛けていくと、言わば金融検査というものが市場に引きずられて行ってしまうというおそれがあると思うのですが、その辺の担保というのはどのようなお考えなのでしょうか。

答)

それは先程申したように、我々は市場の声は、言わば確かめるための検査の対象を選ぶところまでなのです。そのことで言えばね、特別検査で言えば。それでしっかり検査マニュアルに基づいて検査をして、これは市場が今言われたようなことを背景にしたものなんだということが確かめられれば、それはそれでもう終わりです。それはもう銀行の自己査定そのものが正しいということが確認されるということですから、それで良いわけです。

ただ、我々が今までどちらかと言えば、市場の声は市場の声というふうにやってきたそのことを、それが故にコンフィデンスに不満足なところがあったとしたら、それを是正する努力の一環として今言ったようなことをやろうと、こういうことです。だから、丸ごと何であれ市場の声を飲み込んでやっていこうと、こういうことではありません。

問)

今日の国会の模様を聞いていますと、株価の下落ですとか、あるいは今回の特別検査の導入に伴って要注意先の大口貸出先が破綻した場合の影響等を、まあ機械的な試算だとは思いますが出していらっしゃって、いずれもお答えとしては10%を上回るので健全性に影響はないということだと思いますけれども、それらが複合的に起きた状況ですとか、あるいは平均としては10%でも主要行の中で最も低いところに影響はないのかという、その辺りは如何でしょうか。

答)

あまりにも機械的な計算を引用しての答弁だったものですから、何と言うか舌足らずというか十分なご説明…どういうかなあ、まあ何と言うか機械的な計算をすればこうなりますという限りで、それをそういうふうに言ったわけですから、その限りで別にいい加減な答弁をしたとは思いません。

そこで、複合的に起こったらどうなんだ、あるいはそういう平均的にはともかく個別銀行にはどうかと言えば、これはもうご想像どおり影響は区々であるというふうに言わざるを得ないというふうに思っています。その点も私は答弁もしたと思いますね。要するに配当原資の問題であるとかというようなことで影響が出てくるということは否定できないということは言ったように思いますけれど、いずれにしてもそういう形で平均的な話と個々の銀行の話は完全に合致というわけには参りません。

問)

RCCの価格のところについてですが、どういうふうにいじろうと国民負担の最小化という話で、国民負担を二次ロスさせないとしたらRCCは絶対低めの価格に設定しようというモチベーションが働くわけですね。構造的に、この制度自体がワークしないような要因が、この文言だけだったら内包されていると思うのですが、そこについてはどうお考えですか。

答)

そういうものなんでしょうか、今、RCCがどういうことをやっているかと言えば、1本1本の債権について、どの1本についても損失を発生させないようにというくらいにリジッドに制度を運用していると聞いています。それに対して弾力化というのはどういうことかと言うと、1回の1バルクについて、そういうふうなものに応札する時には、それはまあ1本1本の債権についていちいち検証ができなければもう応札もできないんだというものでもないではないかと、こういう類の話が少なくとも我が方がこの弾力化で考えていることであります。

もちろん、それに対して党側はもうちょっと違う角度で、しかし野放図に国民負担が発生するように言っているわけではないと私は思いますけれども、そういういろんなアイデアの中で先程言ったようにベストの選択の決定がなされるようになるのではないかと、こういうふうに私は期待しています。そういうところで、絶対にもうRCCが入札の中で負け札を入れることに必然的になっているんだとまでを言われることは、ちょっと…論理的に考えれば正にそうかもしれません。そうかもしれないけれども、やはりRCCもそういう立場に立てば、必ずしもそれは必然だと言えないような行動をとってくれるのではないかと、こういうふうに思います。

問)

配当が、ひょっとすると難しくなるかもしれないというお話が今ありましたけれども、そういう場合、議決権が当然発生します。その発生した議決権を行使するのかしないのか、この辺の金融庁の姿勢が今一つ分かりにくいので、改めて確認したいのですけれども。

答)

今のところは非常に分かっているんです、ちゃんと議決権の行使の方針というものを公表していますから。それは我々の優先株の利益をそれぞれに害するような議決でなければ、あえて議決権を行使しないというか、消極的に扱っていくということで非常に明確になっているんです。ただ…そこまでにしておくかな。それ以後、ちょっと私は個人的な考え方を最近持ちつつあるものですから、それを言っても…ちょっと止めておきましょう、そこまでです。

問)

大和銀行とあさひ銀行の統合について一言ご感想をお願いします。

答)

これはですね、前からこの会見では、この会見ではなくてアメリカで申し上げたわけですが、まあ、それなりに地域的な立地と言うか、そういうことを考えるとバランスも良いのではないかと思いまして、私は意味があるというふうに思ってプラスの評価、積極的な評価をさせていただきましたし、今もその考え方に変わりはありません。ただ前提があります。それは、今までの統合の中にもそういうところが見られるのですけれども、やはり死に物狂いになって本当の統合の効果を挙げる、それから無駄な、統合によって重複するような経費をはじめとしてリストラを徹底的にやるということを私は強く期待したいと、こういうように思っています。以上です。

(以上)

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