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柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年3月1日(金)9時30分~9時56分)

【閣議案件等】

今朝の閣議ですが、完全失業率が5.3%と対前月マイナス0.2ポイントということになったようです。よく分からないのですが、就業者はマイナス93万人、失業者はプラス27万人と、それで失業率が下がるのだから、私にはこれは季節調整のことかなあと思っているのですけれども。2月の東京都区部のCPIは対前年同月比でマイナス1.7%。1月の有効求人倍率は0.51で、対前月プラスマイナス0。

それから、先般の経済財政諮問会議でデフレ対策が報告になったことの閣議への報告がありました。

閣僚懇に移りまして、ワールドカップサッカーがいよいよ3ヶ月先というか、3ヶ月を切ったわけですが、少し盛り上げに拍車をかけるということで、今日ですか、総理が関係副大臣会議でいろんな盛り上げの方策について検討を要請するのでしょうか、そういう会を開くと、こういうお話がありました。以後、本件について非常に話に花が咲いたということです。以上です。

【質疑応答】

問)

昨日、日銀の政策決定会合で、長期国債の買い切りオペの増額を含む金融緩和を決定したのですが、まずその評価からお願いいたします。

答)

これは年度末の資金繰りということをも念頭に置かれた措置だと思いまして、大変有り難いことだというように思っています。

問)

その後の総裁の記者会見で、公的資金問題に触れて、予防的措置を含めて年度内にという期限を明示して入れた方が良いという発言をなさったようなのですが、これについて大臣はどうお考えでしょうか。

答)

そういうご発言をなさったようですが、どういう言葉遣いであったかはちょっと分からないのですが、私が直接聞いている限りでは、そういう考え方を年度内に発表しておいた方が良いと、こういうふうに日銀総裁は考え方を仰っているというように今は思っております。昨日の発言は直接は聞いておりませんので、従来のラインとは変わってはいないのではないかと、このように受け止めています。

問)

水曜日に決定しました総合デフレ対策の中で、日銀特融の機動的発動を求めるような内容がありましたけれども、一部、日銀特融に政府保証を付けるべきという意見があるのですが、この辺の議論というのはどうなっているのでしょうか。

答)

いや、そういうことではなくて、日本銀行も最後の貸し手というか、そういう立場ということは十分分かっておられて、だから個別の金融機関が風評等で資金繰りに困った時には、これは日本銀行に対して政府としてそういう、最後の貸し手としての機能の発揮をお願いすると、こういうことであります。

日本銀行としては、まさに風評等でということであれば、それはそれで良いのだけれども、その時に同時に、風評もそうだけれども実態の方でそういうことが弱まっているというようなことになると、山一の問題もこれありですね、ちょっと慎重にしたいという気分があるということは分からないでもないというように思いますが、保証を求めるというようなことは、これはちょっと、そこまで具体的な話もないし、そういうことというのはないのではないかと思います。

問)

今日、ペイオフ解禁1カ月前なんですが、これまでの金融庁の見解というのはある程度分かっているつもりでおりますが、改めて、どういうご指導をして年度末に向かわれるのかという点をお聞かせください。

答)

ご指導とは国民、預金者に対してですか。

問)

金融機関の方です。

答)

金融機関の方には、これはまあご指導と言っても、今、ご指導というわけでもないわけで、当然それは、今、この1カ月を切るか切らない時にご指導をしなければならないようでは、これは困るわけで、予てきちっとした対応をしていただいているというように思うのですけれども、我々として、この前の総合デフレ対策にもあったように、私は予て申しているように、やはり4月に店を開ける銀行は簡単に倒れてしまうというようなことがないと、そういう健全性を持っているということが最も大事だというように考えております。

従って、我々としてはそういう仕事の最後の仕上げをして4月を待つと、こういうことでなければいかんというふうに気を引き締めているというわけでございます。

問)

先程の日銀特融の話ともちょっと絡む話かもしれませんが、地方の銀行の方では、コンピューターの共同化ということを機に、地銀・第二地銀同士での相互融資枠、コミットメントラインというものを結ぶ動きがありまして、具体的には福岡の福岡銀行と福岡シティ銀行がそういう試みを始めております。年度末の資金繰り難になった時に、お互いに融通し合うというような、こういう動きについて大臣はどのように評価なさいますかという点についてお願いします。

答)

コミットメントラインというのは、貸出先に対するコミットメントラインですか。

問)

不測の事態に陥った場合に、銀行同士で融通し合うというものなんですけけども。

答)

それはもう、それぞれの経営判断、財務の処理の判断だと思いますよ。

貸出先に対するコミットメントラインではなくて、流動性の確保のためのコミットメントラインですよね。これはちょっと皆さんの書かれているもので私も他でも何かそういうことがあるやにどこかで目にしましたけれども、それはもう、いろんな形でそういった流動性の補完をするというのは経営判断だと思いますね。

問)

コンピューターのシステム投資を避けたい、いわゆる一緒になることで、コンピューターを一緒にして行くことでシステム投資を押さえたいという、その狙いが一つあるのと同時に、やはりその、特殊な事例かもしれませんが、結構そういう意味では九州の地銀はシステム共同化というのを活発に行っていまして、そういう中でそういう動きが出て来たものですから、今後参加したいところには募って行くというような中で出ている。本来は日銀特融とかそういうものがあるのだから、そこまで民間の銀行同士でやる必要があるのかという感じもするのですけれども、その辺についてはやはり経営判断だということですかね。

答)

そもそも資金にゆとりがあるところは市場に出して、資金にゆとりのないというか、資金の取り手に融通するということは、通常の金融活動なんですよね、資金市場でやるということで。概して言うと、それは日本銀行の準備預金のところでやって来たというのが今までの例ですけれども、それがこうした時代になって来ると、何も中央まで来て、またそれで取るというようなことでなくても差し支えないのではないかと思いますね。資金繰りの問題ですから。

問)

最近株価がちょっと持ち直しておりまして、その背景としては空売り規制が効いているのではないかというふうに言われておりますが、大臣としては、デフレ対策の中に盛り込まれたわけですけれども、その評価と、空売り規制というのは持続的なデフレ対策になるのか、ちょっとメカニズムが分からないのですが、そこをちょっと解説お願いできますか。

答)

空売り、あるいは信用売りというものそのものが悪いなどというような気持ちは毛頭ありません。これはもう間違いなく我々としてはいろいろなテクニックを使った取引で、取引量そのものが多くなるということは、むしろ歓迎ですね。市場の厚みが増すということですね。

そういうことが大前提なんですが、ただ、この空売りとか信用売りというのについては弊害も付きまといがちなんですね。そういう傾向がどうしてもあるということで、相場操縦というわけではないのですが、公正な価額の形成というものに対して、何と言うか、一つの作為が働くというか、そういうようなこともよくあることだし、また言われることでもあるので、そういうことは、これは厳に戒めてもらわなければ困ると、こういうような観点で今度、規制というかそういうようなことについて我々として必要な措置を、これは大体国際基準を念頭に置いてでありますけれども、施策として実施させてもらったと、こういうことです。

株価の動向について、それが効いたのではないかというような声があるというようなご指摘でしたけれども、私はそういうことではないというふうに思っています。売った人は借り株をしているわけですから、そういうものは時期が来れば返さなくてはいけないと、こういう需要は当然あるわけですね、空売りの場合、信用売りの場合。私はそこまでは否定しませんけれども、それは別に規制とは何の関係もなくて借りたものは返すというだけの話ですから、私は相場の問題とは関係ない事態だと、こういうように認識しているわけです。

それからデフレの対策であり得るのかということですけれども、株価というのは、これは資産効果とか逆資産効果と言われる様に、やはり経済に関係する人達の気持ちに非常に大きく影響しますから、株価はもうちょっと高い方が良いというような考え方もあり得るわけですけれども、そういうことで今度のことをやったということでは毛頭なくて、先程言った「不公正な価額形成」に空売り、信用売りが使われるということに対して、ちゃんとそこは見ますよという措置をしたということですから、空売りの今回やった施策がデフレの対策とまではちょっと言えないのではないかと。もちろんもしそういう事実があれば、不公正な相場形成というようなことがあれば、それはそれでブレーキがかかっているわけですけれども、直接そういうものを狙ったわけではないと、こういうことですね。

問)

昨日の委員会で、石川銀行の増資の件に関連して、増資の制度的な見直しの可能性にも言及されたかと思うのですが、そういう不公正と言いますか、一種のそういった増資の水際の防止の措置についてはどういったお考えをお持ちでしょうか。

答)

これは何というか、結論的に言うと、非常に難しいですね。技術的と言うか、法律的に難しいんですよ。だけど、何となく釈然としない気持ちもあるんですね。しかし誰が悪いんだというと、誰が悪いのかよく分からない。そういう増資をしようとしたことが悪いかというと、そんなことはないわけですよね。要はその増資で、結果として例えば増資目標を達成しなかったとか、あるいは客観的に必要な増資が満足できなかったというその結果が投資家にとって、負担というか、そういうことになるわけで、誰が悪いんだということも言えないわけなのです。しかし、何となく釈然としないと、そういうことが次々あっていいのかということなんですよね。その問題の整理はいったいどうすればいいんだと。

だから僕は最初、「勉強する」と言ったんですよね。何となく私もそういう感じがあるから、これは一体何なのだということを勉強しますと言ったのですが、勉強だなんて、受験生みたいなことを言ってもまずいかなと思って、「検討」というふうに言い換えたのですが、心はそういうことなのですね。ただ非常に難しい問題だと、一体誰が悪いのだということすら分からない、非常に難しい問題ですが。しかし、釈然としないという気持ちが残ることは、私も共通なんですよね。そういう程度の、今、現段階で言っていることの意味はそんなことです。

問)

市場の話なのですけれども、ナスダック・ジャパンと店頭市場が統合に向けて検討を始めたというふうに伝わっているのですが、元々日本というのは国土の割に市場がたくさんある国だと思うのですけれども、こういった統合ということが今後も進むかどうか、どうお考えでしょうか。

答)

今までの既設の市場というのは、これだけ交通も通信も発達してくる中で、あらゆる市場が統合の傾向というか、趨勢にあるということが一つあると思うのですよね。それに加えて、今度、御指摘のような店頭市場の、ジャスダックというか、ナスダックJと言うのか、それが統合すると、もちろんそういう動きがあると伝えられているのですが、両方とも否定していますよね、今、そういうことは事実としてありませんということで、否定はしているのですけれども、これはどう考えるのかというと、これはなかなか難しい問題なんですよね。

やはり、要するにある程度は、取引所が自分の個性を持って、こういう企業家の資本を供給する市場になりますよというようなことで、お互い個性を発揮し合うということは、決して悪いことではないんですよね、それで競争し合うということは。日本では何か一軍と二軍のようになってしまって、だんだん、最後は東証一部に上場するのが、というのが、ナスダックではないみたいなのですね。これはマイクロソフト社は依然としてナスダックに、あんな大企業でナスダックで取引しているのですよね。決して、向こうで言うと、ニューヨーク証券取引所に上場するということを考えないのですよ。私、そこは非常に面白いところだと。私はナスダックの人に、「どうしてそれができるのか」と聞いたのです。そうしたら、「当たり前ですよ。私のマーケットはもういい投資家を一杯持っていますからね、マイクロソフト社だって、何だって十分にここで資本の調達ができるのですよ。」と、誇らしげに言っていましたね。

だから何となく日本というのは番付けだとか、そういうような気持ちがあるのだけれど、やっぱり私は、それは成り立たないような弱いマーケットではだめですが、それぞれのマーケットが、自分がこういう投資家に訴えて、自分の所で資本調達をすると、こういうことを資本の調達の側にも、投資家にも働きかけて競争するというのはいいなあと思っているのです。だけど、同じようなことをやっているのでは、統合した方が効率的だねと、こういう両面があると思いますね。

問)

ブッシュ大統領が、小泉総理に宛てた親書の中で、不良債権がマーケット、市場に出て来ないことに懸念を感じるという指摘をされているのですけど、この指摘に対するお考えと、ではこの市場に出て来ないということを指摘されているということは、何かが足りないのかと、これは何が足りないのでしょうか。

答)

これはですね、若干、認識も違うのではないでしょうか。アメリカの方々というのは、割とそういうことを仰るのですけれど、アメリカの人達は相当買っているのですよ。それからアメリカで売買した金融機関から出た不良債権の規模と、日本が売買市場に出した規模は全然違うのですよ。その、金融機関が出した規模の40倍だったか、もう少しあったか、相当、2400億ドルくらいでしょうか、それを誰が買ってやっているかと言ったら、ほとんどが欧米のインベストメント・バンク、あるいはインベストメント・バンキングのビジネスの人達が取り仕切って、日本の人達がやっているというのはごくごく少ないという状況です。そういうことをまず客観的に知って頂くということが大事だということをまず一つ申し上げたいと、こう思っています。

それからもう一つは、売却というようなことが、ではこれで十分だと思っているかというと、それはそうではないので、やっぱりRCCの機能を拡充したのも、できるだけ売買という恰好で、オフバランス化を進めていくということが大事だという認識からああいうことをしているわけです。不良債権のオフバランス化、これは2年~3年のスケジュールをしっかり守って貰いたいですが、そういう時には売却と言うのは、非常に大きな一つの手段だと思っています。

問)

先程の速見総裁の、予防的措置という形の発言について、大臣の受け取りかたとしては、年度内に考え方を発表した方がいいという仰り方だったのですけれども、そのデフレ対策の中でですね、恐れがある場合には行うと、(公的資金の注入を)含めて対応するというお話があったのですが、それと、これはまた一歩踏み込んだ発言だと思うのですけれども、そこの違いがあるのかないのかということと、総裁が仰られるような形で年度内に考え方を発表するということになるのかというところをお願いします。

答)

いや、だから我々としては、今まで言っていることと変わっているとも思わないのですけれども、また同時に速水総裁が仰ったようなことは、あのデフレ対策の中で、申し上げたと言う認識なんですよね。そういうことを当然御存知なのですけど、その上にまた仰られたということの、ちょっとお考えというのは今の段階では分かりません。

(以上)

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