柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年7月16日(火)9時04分~9時28分)

【閣議案件等】

今朝の閣議ですけれども、環境基本計画の進捗状況の点検結果が発表になりましたというお話がありました。川口外務大臣から訪韓の報告がございました。

閣僚懇に移りまして、政官のあり方について閣僚懇申し合わせ事項として決定されました。以上です。

【質疑応答】

問)

三井住友銀行のATMのトラブルの件ですけれども、金融庁の対応は、昨日、高木長官にも若干伺ったのですけれども、改めて大臣の方から、どのように対応されるのかをお願い出来るでしょうか。

答)

どうもATMは、これは銀行のATMだけではなくて、機械的なある種のトラブルというのは、なかなか避け難いところがございまして、まあそれでバックアップ体制というか、デュアル化がされているというふうに思っています。それで、三井住友のケースもバックアップの方に切り替えるということで、まあ大体50分ぐらいで処理され、復旧したということだというふうに認識しております。

金融庁の対応ですけれども、こういう事についてはきちっとした報告をいただいて、事態を掌握しておくということがまず基本動作の第一だろうと、こういうふうに思っておりまして、その事は行われたという認識でございます。

問)

ということは、今後は報告は求めないのでしょうか。

答)

そうですね、まあ監督局で考えてくれると思いますが、我々として事態が報告によって掌握出来ていれば、旧に復していることでもあるので、個人的にはそれ以上の事は必要ないのではないかというふうに思います。

要は、段々改善をしてもらって、特に金融機関のATM、一種の決済機能の一翼を担う訳ですので、こういうトラブルは出来るだけ少なくしていく努力が不断に求められているというふうに考えています。

問)

今回の件については、日曜日にも同じ様なトラブルがあったということですが、ただ、それが対外的に出ていなかったということで、銀行側の対応に問題があったのではないかという指摘もあるのですけれども、大臣はそこはいかがお考えでしょうか。

答)

まあこれは、もし仮に月曜日に問題がなかったとしたら、月曜日早々には話が当然来たと思います。ただ、月曜日にもトラブルがもうちょっと規模が大きく起こったので、合わせて報告に来たと、こういうふうに考えていまして、そう神経質にならなくてもよろしいのではないかと思います。

ただ、心は常に戒めておいてもらいたいと、こういうように思います。

問)

地域金融機関の合併等促進策について伺いたいのですけれども、その中の一つの検討項目として、公的資金の注入の枠組みなんですけれども、これは大臣は昨年から、予て金融機関に公的資金を注入するという事に対して慎重であられたと思うのです。民間の経営改善を阻むものであると、自主的な改善を阻むという仰り方をされていたと思うのですけれども、その辺りのお考えに変化というか転換が見られたのかどうかという、その辺りの整合性について伺いたいのですけれども。

答)

これは、昨年から今年の3月辺りにかけてそういうお話があった時には、そういう必要性がまずあるか、それはなさそうであると。それから、それはそれとして、必要ないという時に積極的に入れるべきかと言うと、入れるべきではないと思う。何となれば、これはもう非常に緊張感を持って今、リストラ等を一生懸命努力している、そういう事にやや水を差して、やはり緊張が緩むというか、そういう事で、別の言葉で言えばモラルハザードが起こるのではないかという事です。それから最後に言ったのは、我々は今、収益力の向上というものを非常に強く目標として掲げているわけだけれども、それと必ずしもパラレルではないと言うか、そういうものよりも、むしろちょっと足を引っ張るような事もありますよということを申し上げたわけです。

今回はどういう事かといえば、必要性という事については、これからどういう時に必要かということは、当然、今度検討した時に詰めるわけですけれども、必要がある。それから緊張関係、モラルハザードが起きるかといえば、それは逆であって、今度は、スタンドスティル、現状のままに入れるということではなくて、「合併等」という、そういうものがまず先にあって、リストラにしても何にしても、あるいはそこで退職金がたくさん必要になるとか、そういう、むしろ改革が先にあって、それを応援するというか支援するという発想であります。

それから収益力の点でも、私は、今度はちょっと良く考えてもらいたいなというように思っています。今、現にある物に対して資本注入するのではなくて、金融機関としての健全性、収益性というものを引き上げて行こうと努力する、そのために合併を選ぶ、だけどそこでは一定期間ディスアドバンテージが起こりますよというものを出来るだけ消すというか減じてあげようと、こういう事ですから、明らかにこれまで言っている事と、そういう意味では極めて一貫した考え方に立っていると、こういうことでございまして、ご理解をお願い出来るのではないかと思います。

問)

必要性というところをもうちょっと具体的に伺えますか。

答)

これは、合併等が起こる時には、リストラあるいはシステム統合等、むしろ一時的にはコストがかさむ要因があるような合併等を想定しているわけです。現状をあまり変えない、あるいはゆっくり変えて行くというようなことではなくて、かなり思い切った措置で体質を強化して行こうという時には、一時にはそういう事が起こって、それは自己資本との関係でそれを引き下げるような方向に働く可能性があります。そういうような時に、そうでないように、そういう事がこれからの環境の中で起こると形式的に自己資本比率が下がると、そうすると、やはり預金者等に一定の影響が起こる事が可能性として考えられるので、そういうものをきちっと処理しておいて、「大丈夫ですよ」と、「管理コストがかかっても、自己資本の方にすぐ引き下げの効果を持つという事は避けますよ」という事をやろうと、こんなことを中心にして、まだ詰めていませんので、私が悉皆的に隅から隅まで申し上げる事は出来ませんが、典型的にはコアの部分というのは大体そのような事を考えて、従って、公的資金の活用というものも排除しないという事で詰めたらどうだろうかと、こういう事になっているということです。

問)

合併の効果については、過去の事例について効果を実証したわけではないと伺っておりますが、特に収益性の点について、合併では成功事例と失敗事例があるのが世の中の常だと思うのですけれども、これは地域金融機関の合併効果というのは、詳しく検証と言いますか、そもそも大手よりも効果が上がるというふうにお考えなのでしょうか。

答)

具体的に目に見える形で考えられるのは店舗の統合なのですけれども、もう一つ予てから言っていることで、ただ、あまり繰り返すと、私が「人材がいない」というふうに思っていると、大臣は今の経営者に対して非常に不満を持っているのではないかと皆さんが思って、ちょっとミスリーディングな面が出て来るので、どうしようかとも思うのですけれども、現実問題、ちょっと経営者についてはやはり世代交替を求めたり、専門家を登用したりということが必要な事が現実だと思います。

皆さんご承知の通り、私はこういう仕事に入る前は農業政策をやっていたものですから、農協の信用事業については非常にそういう事を感じておりまして、今は大体農協のトップは学系理事から出ておりますが、昔は、ついこの前まで野良仕事をされていた方が信用事業の方も責任者ということでしたけれども、ちょっとこの厳しい状況の下ではそういう事ではなかなか通らなくなって来たといって、学系の人を入れたりして、余りここで農業協同組合の話をするのも差し控えますけれども、相当いろいろ苦労しているのですね。

まあ協同組織金融機関の経営者の皆さんは立派です。立派ですけれども、そういう面もあるのではないかと思って、その事自体はもう、例えば全国信用金庫協会の長野会長も国会で発言されていましたね。そういう事を考えています。

問)

三井住友の件にもう一度戻らして頂きますけれども、日曜日の対応なんですけれども、みずほの場合もですね、直前に確かDKBでトラブルがあって、その後の土日にバタバタしたという状況があって、そのある種、オフサイトでですね、銀行のシステムの統合を見ようとすると、銀行の善意に任せざるを得ないというところがあるかと思うのですが、そういう観点で今回の件について今後の対応を如何お考えでしょうか。

答)

もう一回、ちょっと問題点を、ごめんなさい。

問)

オフサイトだとですね、銀行の報告を受けるという、銀行側の一方的な善意に任せざるを得ないところもあると思うのですが、そういったところの問題点についてはいかがでしょう。

答)

そうね、確かにそうしたことが起こった時は、速やかに報告することになっているんですね。一般の事故については1カ月でしたか、確かそういうことになっているのですが、コンピューターの障害が生じた時には「速やかに」ということになっていまして、それでは「速やか」とは一体どういうことだということなのですが、その判断も相手に委ねられているということですね。だから、実際に、報告はしてもらわないと困るんですね。してもらわないと困りますが、そうね、こちらでATMのモニターでもしていればすぐ分かるのでしょうけれども、まあ、なかなか難しい問題ですね。ATMはもうほとんど24時間のところもでてきてるわけでしょ。まあ、しばらく注意を喚起しながら現状の体制で見たいと思います。注意を喚起することは、機会を見てですね、今度また新しい陣容で、いずれ我々各業態の長と会う機会がありますから、特にその点は注意を喚起しておかないといけないと思います。

問)

すみません、先程それ以上のことは必要ないと、三井住友の件で。何が起こったかというのは報告はあったので、24条のような形でかなり詳細なものを求めるのは必要ないのではないかという理解でしょうか。

答)

ではないかと。監督当局が検討するだろうけど、私の直感的な感じでは必要ないのではないかと、そこまではと、こういう考えです。

問)

また地域金融機関等の合併の際の公的資金の話なのですけれども、公的資金の注入の是非に関しては、金額の多い少ないという話にもとれますけれども、大臣の感覚では、全体の合併等を促した場合にどのくらいの金額になるという感覚でしょうか。億の単位で済むのか、兆の単位までいってしまうのか。

答)

億の単位ですよ。いや、直感ですよ全くの。と言うのはね、率直に言って、私は入れたいと言って手を挙げてくれるところはそんなにはないのだろうと思うのですよ。あの、私ずっとやってきましたけれども、入れるとしてもですね、もうぎりぎり必要なところを彼らは考えてくるということですね。むしろ、我々の方が逆にもうちょっと入れておいたらどうですかと、かくかくしかじかだからと理由をあげてね。こういうことが多かったわけですね。ですから、まあ、私はそんな相場観を持っているのですけれども。

問)

関連して聞きたいのですけれども。必要性があるか、ニーズがあるかというところなんですけれども。例えば、大臣が仰ったモラルダウンはないだろうという点について…。

答)

先にそういう改革というものが打ち出されて、それが故にコストがかさみ、それが故に一時的に自己資本比率が下がる、そういうケースについても、そこは決してやらないのだとすると、その前向きの仕事もできなくなっしまうのではないかと、こういうことです。

問)

むしろ例えば、長野会長なんかの話を聞いていますと、ペイオフの全面解禁を延長しろとか、むしろモラルハザード的な発言が出ているなと。あえて自分の身を削ってですね、彼らは考えてるとは思いづらいのですが。

答)

誰もそうでしょ。誰もイージーな方向に向かう。それは人情ですよ。そういうことは別段、そういう発言があることは私は不思議なこととは思わないですね。だけれども、そうではなくて、もっと前向きに進んで行こうということですね。いろんな考え方、いろんなケースが出てくるだろう、だから、排除しないということを言ってるわけです。メニューとしてどういう選択肢を残しておくかという、こういうことは今後考えることですね。だけど、今までのことから言うと、ハイハイと手を挙げることは考えにくいのですね。しかし、メニューとしてはやはりそういうものを掲げて、活用できるようにしておくことがいいだろうと、こういうことです。

問)

入れたところにはまた、中小企業貸出のノルマ的なものが課せられるのでしょうか。

答)

まだそこまで考えておりません。

問)

経営健全化計画の場合は、半年毎に徴求したりするかと思うのですが…。

答)

つまり、あの時には、今もそうだと大なり小なり言う人もいるのではないかということも十分分かって言うのですが、現実にクレジットクランチが起きた訳なんですよ。だから、入れるについてはそこのところをきっちり担保しておこうということになったのですね。今度はどうかと、我々、平時だと思ってるわけですね、だから健全化法の世界とはちょっと違う世界だというふうに思ってますから、まあ、その時どうするか。しかし、なかなか国会方面ではですね、地域金融機関と地場の中小企業との関係については厳しい議論があるわけで。まあ、そこはね、特段中小企業向けなんて言わなくたって、貸出全体について触れておけば結果としてそうなるというのが我々が想定する相手方の有り様だと思うのですね。

問)

地域金融機関の合併でですね、合併して自己資本比率が下がっても、だいたい健全性は満たしていると思うんですけれども、そういうケースがほとんどになると思うんですけれども。

答)

と思いますね。

問)

これは基本的には公的資金の注入というのは健全性基準とは全く関係ないと。

答)

これはもうちょっと考えますよ。いずれにしても、まだ、ちょっと頭出しということだけですから、そういうこともこれから考えたいと思います。

(以上)

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