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柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年9月20日(金)10時40分~11時01分)

【閣議案件等】

本日の閣議ですけれども、日朝国交正常化交渉に関する閣僚会議が設置されますということのご発言がありまして、第1回会合は出来るだけ早くということでございました。二番目に全国交通安全運動が9月21日から始まるということでした。三番目に海外にご出張された閣僚の報告がございました。四番目は今後、海外出張される閣僚の臨時代理が指名されました。

閣僚懇に移りまして、規制改革の前倒しの指示に対する現在までの進捗状況の報告がありました。その後、構造改革特区推進本部の会合がございました。以上です。

【質疑応答】

問)

今の規制緩和の件なのですけれども、これは特に金融庁として何かお答えされたということはあるのでしょうか。

答)

ございません。まだ基本方針が決められたという事でして、それに沿って具体的な項目、これの発案は地方自治体なものですから、それに対して各省が答えを出して行くということになっていまして、まだそこのところは検討中ということです。また、総理からは各閣僚に「リーダーシップを発揮するように」という改めての指示がございました。

問)

改めてお聞きするのですけれども、今日、経済財政諮問会議が開かれるのですけれども、ここで総理の指示を受けて、不良債権の処理の加速策というのが市場を含めて注目を浴びているのですけれども、今日の会議で改めて大臣の方から発言等、具体策が出るという事はあるのでしょうか。

答)

私はそういうところまで仕事が進捗していないというふうな報告を聞いています。従って、そういうラインで対処するのかなと、現在段階で思っていますけれども。まだ今日の全体の会議の運営等を全然聞いていないものですから、これから聞くということです。基本的には今言ったような事で考えています。

問)

先日、地価の統計が出て来て、デフレ色が鮮明になった形になったと思うのですけれども、この中で不良債権処理を加速していくというのは可能なのでしょうか。それとも手立てというのは見つかり得るのでしょうか。

答)

不良債権が担保の関係で特に注意を要するというところは、破綻懸念先以下の、要するに貸出債権の内、担保や保証でどれだけカバーされているかという事がまずあって、そのカバーされていない、これは信用部分と言うのですけれども、それに対してどれだけ引当を積むかという、ちょっと技術的で恐縮ですが、そういうフォーミュラが出来ているわけです。今、破綻懸念先以下の債権の担保の評価というものが目減りをするということになると、引当が追加的に必要になるということなのです。ですから、そういう事というのはしょっちゅうあって、担保の評価は引当で十分カバーされているかということで、担保の評価というのは常に行っている事ですから、そういう事になろうと思います。

そういう事ですが、地価の下落というよりも全体がデフレ傾向を辿っているという事の中で不良債権問題というのはどうかと言えば、それは加速とかという事ではなくて全般的に不良債権問題の地合いは良くないということになると思いますから、これは本当に心してというか、意を決してこれに対応して行かなければいけない、いろんなことを考えて対応して行かないといけないということは確かだろうと思います。

問)

日銀の株式買取なのですけれども、日銀は大胆な決断をしたと思うのですけれども、日銀の幹部などは「日銀としては金融システムの安定という事で言うと、自分達としてはやれる事はやったので、後は政府に大胆な施策を採ってもらいたい」ということを非常に強く言っているわけなのですけれども、こういう日銀の期待と言いますか、そういうところにどういうふうに応えていかれるご用意と言いますか、姿勢というものがあるのかどうか、そういうところをちょっとお聞かせ願いたいのですが。

答)

それはもう姿勢はあるわけです。我々も不良債権処理を本当に一刻も早く解決したいと、こういう気持ちでずっと私も昨年の4月以来、施策を次々に打って来たわけであります。それはそれで納得をいただいてきたというように私は思っているわけです。そういう中で、株価が下がったということで、これがどんどん行ってしまうというような事になると、金融機関の体力に対する不安というものがそれに伴って発生するのではないかと、こういうような事を言う向きが出て来たということですね。それに対して今回、日本銀行があのような措置を採ってくれたということでございまして、株価についてはもう一つ力が加わったというふうに私は受け止めているわけです。

ですから、これに対してたまたま偶然の一致だったかどうか、不良債権処理の加速という指示も総理から頂いたわけですから、これに対して本当に金融庁として全力を挙げて考えられることがないかという事を検討しているということです。

問)

日銀の今回の方針ですけれども、日銀の認識として金融機関の体力ですとか金融システムに対する緊張感みたいなものが相当感じられるのですが、これは金融庁の認識とかけ離れているということはないのでしょうか。

答)

我々も株価の動向に対しては常に緊張感を持ってウォッチしていまして、それが銀行の、いわゆる体力というものにどういう影響をもたらすかという事については最大の注意を払っております。従って、その事について何か認識に大きな開きがあるというふうには私は思っておりません。

問)

債権の売買市場の創設という話もあったかと思うのですが、これは民間で自主的にやってもらうのが良いのか、それとも更に政府が後押しするようなスキームが必要なのか、どういった考え方でいらっしゃるのでしょうか。

答)

これはアメリカの例などを聞きますと、やはり先に「官」と言うか「公」と言うか、そういうところの債権が市場に放出されて、そういうものがかなりの規模になって来るという事の中で、純粋の「民」の債権も放出されて市場が出来上がったというのが経緯だというふうに聞いています。

日本の場合、それなりにローン・トレーディングというのがあるわけですが、ないところに何かしようという事とはちょっと違うというのが私が今申し上げようとしている事なのですが、更に工夫をして、それに「官」とか「公」とかの物が付け加われば、更に市場としてはしっかりしたものになって行くということは確かだろうと思います。

問)

それは現時点で金融庁は何かそれを手助けしたいという位置付けなのでしょうか。

答)

まあ金融庁の権限の中の話ならば、それはそういう事で当庁が決心したり決定したりして「そうなります」という事が申し上げられますけれども、そうでない政策金融機関の事を私は今、念頭に置いて申し上げているので、そうではないのですよね。そういう事ですから、これから働きかけるということはあり得るわけですけれども、それで決定とまではなかなか今ここで、「それはやりますよ」という私の意思表示としてそういう事を言うわけには、あるいは「出来ますよ」という事にはならない話なのですね。

問)

不良債権処理に関連してなのですが、一部で産業再生委員会というものが報じられておりまして、去年、不良債権処理は産業再生と表裏一体でないといけないと仰られた経緯があるのですが、それと相通じるものがあると思うのですが、産業再生と一体でやるような仕組みを作っていくものが政府で出てきているのか、大臣のアイデア、お考えとしてあるのか教えて頂きたい。

答)

もともと、今、ご指摘の通り、私は去年の正月から不良債権の処理と言っても、裏腹には実体経済の側というか、現実、産業の側というものがあるのですよと。金融的に不良債権問題として処理するということは、まあ、それはそれで「やれ」ということでやるわけだけど、本当に実効性の上がることということになると、産業の側でもそれにタイアップした形で受け止めて、不良債権処理のスキームの一環としてそういうことをやってくれたら、それは非常に効果の上がる話だということを当初からこれを私は考えていました。と言うのは、やはり銀行だと銀行の側に不良債権を処理しろと言ったら、自分の取引先の所しか行きようがないですね。それのまた再建計画といったことになってしまう。しかし、それはそれで出来ない訳ではないのですよ。出来ない訳ではないのだけれども、再建計画というものが本当により確度が高いものになっていくということになっていくと、業界が同時に再編成されるということが伴えばですね、これは再建計画がより確実性を増すという、当然のことなんですよね。ですから、「そういうような仕掛けの下でやっていただけないでしょうか」とずっと言ってきているわけです。

ですから、ただ、今の役所というのは、例えば昔の特定産業振興法とか、そういったものを流産したりいろいろしているわけですけれども、そういう個別企業の合併だとか設備投資の提携をしてやるという個別企業の問題に入る体制になってないということなのですね、今の官庁が。そこになかなか難しい問題があるということは仄聞はしています。

問)

具体的には今のところそういう構想というものは、姿勢としてはあっても、具体的な仕掛けを作っていくというところでは今のところはないと。

答)

先程の話ですよ、先程と同じ話。債権流動化の話と。つまり私の権限の中にないことなのですね。

問)

基本認識をお伺いしたいのですが、竹中大臣などは不良債権というものがデフレの原因であると、だから処理を加速しなければいけないと、こういう基本認識なのですが、大臣はこれについてはどのようにお考えになっていますか。

答)

不良債権は、昔からここのところがどういうことかということについては、国会でも論議があるのですが、不良債権がデフレの原因でもあるし、結果でもあるということだろうと思うのですよ。

ですから、私は不良債権が結果であるというようなことも声高に言うつもりはありません。それは経済論としてはいろんなことが言えるのです、経済論としては。例えば、貸出残高のGNP比を見ろとか、あるいは有利子負債に対するキャッシュフローを見てみろとか、いろんな、要するに過剰債務問題ですね。そういうことがいろいろ経済論としてあることを私は知っていますけれど、それは誰が考えたって両方あるわけですよ、原因でもあり、結果でもあるということですよね。ですから、政治論としてそういうことを私は言うということは、あまり生産的でないと。だから、そんな誰がどう、これがこうと言うことではなくて、現実にそれを解決していく努力が何より大事ではないかと、こういう発想をしているわけなのですよ。

問)

日銀の発表を受けた後に、株式取得機構のことを「セーフティネットとしての位置付けであって、存在することに何も矛盾がない」と仰られましたが、セーフティネットと考えられていることについて、そこを少し説明して下さい。使い勝手であるとか、買い取り実績を考えた上で。

答)

期限が来る、迫ってくるという時にですね、日本銀行はこれから基準を作るわけですけれども、その基準によって買っていただけないというような時には使わざるを得ないでしょうね、あそこを。そういう意味ですよ、ラストリゾート。

問)

買ってくれないというのは、例えば、格付けであるとかそういうところを指しているのでしょうか。

答)

それはこれから基準を決められるから、今後の問題です。

(以上)

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