竹中金融・経済財政担当大臣記者会見録

(平成14年12月13日(金) 9時34分~9時48分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

閣議がございました。閣議では、私の方から、昨日の経対閣で決められました「改革加速プログラム」についてご報告をいたしました。報告の内容を一応読み上げます。

昨日開催された経済対策閣僚会議において、「改革加速プログラム」が決定されましたので、その概要をご報告いたします。「改革加速プログラム」は、11月22日の閣議における総理の指示に基づき、厳しい金融経済情勢に対応するため、先に取りまとめた「改革加速のための総合対応策」を補完、強化するものとして策定したものであります。これに基づく平成14年度補正予算とあわせ、平成15年度への切れ目のない対応を図ることとしております。

本プログラムにおいては、構造改革の加速にあわせて緊急に措置することが必要な施策及びデフレ抑制に直接的に資する施策をとりまとめ、補正予算において、セーフティーネットの構築、改革推進型の公共投資の促進にそれぞれ1.5兆円、合計で3兆円の予算措置を講ずることとしております。これによる事業規模は4.4兆円程度、融資保証規模を含めた事業規模等は14.8兆円程度になるものと見込まれます。また、本プログラムにおける公共投資等の経済効果については、今後1年間のGDPへの効果は、実質で0.7%程度増と見込まれます。

今般、短期の間に総力を挙げてプログラムの取りまとめにご協力いただいた各位のご尽力に感謝するとともに、その効果が早急かつ着実に発現するよう引き続き精力的な取り組みをお願いいたします。

以上のような報告をいたしました。

閣僚懇では、鴻池大臣の方から、特区が進捗しつつありますけれども、今後さらにその第2次募集に向けて精力的に取り組んで欲しいというような要請がありました。これを受けまして、総理の方から、法律で定められているのに通達で妨げる、法律できちっと何をやってもいいというふうになっているはずなのに役所の通達でそれを妨げているようなことはないのか、そういうことがないように大臣がしっかりと指導するようにというような話がありました。

閣議、閣僚懇に関しての報告は以上であります。

2.質疑応答

問)

今日、与党の税制改正大綱が決まる見通しですが、その中で先行減税の規模について、1兆7,000億円とか1兆8,000億円と言われていますけれども、これについて、大臣のお考えをお聞かせください。

答)

今まだ最終的な段階だと思いますけれども、基本的に、経済財政諮問会議で、民間議員を中心として議論してきた金額にかなり近付いているというふうに思っています。昨日のその「改革加速プログラム」、それと補正予算、それとこの先行減税、この両者でしっかりとしたマクロ経済運営、マクロ運営をしたいというふうに思っておりましたので、概ねですけれども、それに近い形にきているのではないかというふうに思っています。

問)

あと、税制改正の中で金融庁が求めていた繰戻還付については見送られることになりましたけれども、これについての、改めて大臣のお考えと、あと繰戻還付が認められなかったことで、繰延税金資産の厳格化の話にも多少議論に影響が出ると思うんですけれども、その見通しについてお聞かせください。

答)

その問題も含めて、金融審の中に自己資本に関するワーキンググループを、金融審のワーキンググループでしっかりと議論しようと思っておりますので、引き続き税の話はその場で議論を続けたいと思います。それと、その税を含む包括的な問題をワーキンググループでしっかりと議論を始めます。ワーキンググループは出来るだけ早く立ち上げたいと思います。

問)

いわゆるその繰延税金資産の厳格化については、繰戻還付とセットで議論をしていくべきだとお考えでしょうか。

答)

これは前回申し上げましたけれども、税の議論は税の議論としてしっかりとやっていきます。しかし、税の議論が動かないと金融監督の議論ができないということではないというふうに思っておりますので、包括的に議論を進めたいと思います。

問)

あと、生保の安全網に4,000億円の公的資金を投入するということで、業界と金融庁との間でいろいろと交渉が続いていると言われていますけれども、この議論の決着の見通し、現在の状況も含めてお聞かせください。

答)

これは本当に予算の時点までに何らかの方針を決めなきゃいけないと思いますので、最後の、最後と言えるかどうか、限られた時間の中で今一生懸命調整をやっています。各方面でいろいろ努力をしてもらっているというふうに思っています。

問)

1月から税制の議論をしてきていますが、今、最終局面を見ていると、控除とか外形課税を見るとですね、非常に活力とか簡素とか、当初言っていたイメージと違うんじゃないかと思うんですね。非常に分かりづらい制度になりそうだと思うんですが、大臣はどのように評価されていますか。

答)

いろいろな評価があろうかと思います。しかしながら、1月からずっと議論してきて、基本的な方向は広く薄くであると。それと、活力のための税制だと。現実には、先程ちょっとマクロの規模の話をしましたけれども、あと、法人に対する税の軽減等々、諮問会議での議論の方向というのは、結果的に見ると、私はかなり反映されていると思います。もちろん、政策プロセスそのものは一気に変わっていないわけですけれども、諮問会議としての方向性、マクロの管理という観点からは、基本的には議論をしてきた成果というのは、私はあると思っています。

ただ、重要なことは、来年度の税制改革というのは、本格的な税制改革の第一歩ですから、これは決して単年度のものであるとは思っていません。来年についても引き続き幅広く財政の問題を議論する中で、この税制改革を引き続き、これは数年かけてやる本格的な税制改革ですから、そこは手綱を緩めることなく、諮問会議としてはぜひともしっかりとやていきたいと思っています。

問)

土壇場で税調が出てきて、その後与党の3政調が出てきて、プロセスが二転三転して、一方で諮問会議とか官邸の主導というのは土壇場の場面で余り姿が見えなかったと思うんですけれども、そのプロセスを重視してきた大臣から見て、土壇場のこの決定の仕方をどのようにお考えでしょうか。

答)

議院内閣制における政策プロセス、これは税だけじゃなくて全体について同じ様な問題が常にあると思っています。しかし、繰り返し言いますけれども、もし諮問会議がなくて、諮問会議がこういう議論をしていなかったら、やはり税の仕上がりは、私は全く違ったものになっていたと思います。そこは、プロセスそのものは頭の中で設計図を描いてすぐに変わるものではありませんから、諮問会議は諮問会議としてしっかりとした議論を重ねて実績を作っていくこと。その中で、より分かり易くてそれのリーダーシップが発揮できるような政策プロセスに、私は進化していくものだと思っています。今年は、その意味では重要な一歩であったと思います。

問)

税に関連してなんですけれども、法人税のところなんですけれども、ずっと経済財政諮問会議で法人税率の引き下げを議論して、それが構造改革に繋がるものだと仰って、大臣もそういうことで政策減税よりは法人税率を引き下げた方が減税の効果があるということでよろしいんでしょうか。それはまったく雲散霧消したといいますか、減税ということと……その点に関してはいかがでしょうか。

答)

私はかなり楽観しておりまして、何年かの間に法人税率の引き下げというのが実現されるというふうに思っています。これはアメリカの例でも、アメリカでもやはり最初に政策減税を行って、そのマーク II で政策減税から税率の引き下げにつながっていったわけですね。今回の議論の中で、少なくとも法人の税負担そのものが日本の場合高いということはかなり浸透したと思います。内閣府もかなり有力な証拠といいますか、エビデンスを提供したと。そういうものが積み重なって、やはり中長期の変化に耐えうる税制というのが出来て行くというふうに思いますので、その意味でも先ほど申し上げましたように、初年度はこういうこと、それ以降の本格的な税制改革を数年間で実現するというプロセスに向けて我々としては努力をしたいと思います。

問)

マクロの関係でもう1点だけ。金融政策について大臣はどうお考えなのか。以前からインフレターゲットの議論として検討して、今後の金融政策の運営について、どういう発言を政府側から行っていくつもりか。この辺りをちょっと。

答)

政府、日銀一体となってやはり努力するということが重要だと。これは恐らく誰も否定はしないと思います。この数カ月の間に金融が「金融再生プログラム」という形で動き始めた。財政も30兆円の枠を持ちながらも、つまり財政健全化に注意を払いながらも、しかし補正予算、先行減税というふうにかなり踏み込んだと。その意味では、政府の方が踏み込んだ数カ月間であったというふうに思います。その意味では、日本銀行においてもいろいろ踏み込んだ議論をしていただきたいという期待を持っております。今夕の経済財政諮問会議では、そのデフレの問題について、経済社会総合研究所の浜田所長、浜田所長は1月にイエール大学にお帰りになるということもありますので、浜田先生の分野でもありますので、そういう問題について問題提起をしていただきまして、これはぜひ活発にその辺りの議論をしたいと思っています。

問)

インフレターゲットについて改めてどうお考えですか。

答)

デフレを克服していくためにはどうしたら良いか。繰り返し言いますが、専門家の間でもそんなにはっきりとした答えがある分野ではありません。であるからこそ、政府も日銀も新たなチャレンジが必要だと思います。そうした中で、この問題についても避けることなく議論をしていきたいというふうに思います。

問)

UFJの商社2社に対する支援なんですけれども、改めて産業再生機構という枠組みというのも考えていらっしゃるところでの評価というのをお伺いしたいんですが、お願いします。

答)

これは個別のことでありますので、私はコメント等々をする立場にはございませんけれども、「金融再生プログラム」が始動し始めてから、各行においていろいろな活発な動きが出て来たということで、その新しい均衡に向けた動きというものについては、これは評価ができるのではないのかと思います。この辺はしっかりと成果を出していただけるように、我々なりに注目をして見守りたいと思います。

問)

日銀の短観が出ましたけれども、大企業製造業のDIについては予想より若干良かったみたいなんですけれども、ただ、先行きのDIが数四半期ぶりに下方の方に行ってしまったということみたいなんですけれども、その点に関していかがお考えでしょうか。

答)

基本的には、我々の認識している経済に対する見方と違わないものが示されているのではないかなと思います。詳細はまだ精査しておりませんですけれども、やはり景気は、水準としてはやはり厳しい。その中で持ち直しに向けた動きが続いていっているけれども、外需等々の動きでその辺の持ち直しが非常に緩慢になってきていると。それが先月までの経済の判断であって、内閣府が行っています「景気ウォッチャー調査」、この「景気ウォッチャー調査」というのは、サンプル数等々は少ないんですけれども、実は変化の方向を見るには非常に役に立つ調査だと思っているんですが、そうしたところから、私達が今抱いている見方にかなり近いのかなというふうに思っております。基本的には景気が持ち直しの動きが続くように経済を運営したいというふうに思っています。そのためにも、今回の補正予算と先行減税というのは大変重要だというふうに思っているわけでありますけれども、持ち直しに向けた動きが緩慢になっているということを視野に入れて運営をしたいというふうに思います。

(以上)

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