竹中金融・経済財政担当大臣記者会見録

(平成14年12月19日(木)18時14分~18時29分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

お待たせしました。今日5時半から経済対策関係閣僚会議がありました。来年度の経済見通しと経済財政運営の基本方針につきまして了解をいただきまして、その直後に臨時閣議を開き、このことを報告いたしました。

資料は、もう大分前に皆さん手に入れていると思いますけれども、私の方からは、14年度については、もう既に0.9%程度になる見込みであるという話、それと来年度については、構造改革をさらに加速させ、そして世界経済の持続的発展への貢献を行うということと、政策の基本的な指針として、結果的に来年度は0.6%程度の成長になるという見通しになるということのご報告をいたしました。

閣僚懇で、追加で私の方から発言を求めまして、次のようなことを総理及び閣僚に報告いたしました。この経済見通しの考え方でありますけれども、今年度の経済見通し、政府はゼロ%という見通しを立てておりました。その時点で、ちょうど1年ぐらい前の時点でありますけれども、民間の主要予測機関の見通しの平均値はマイナス0.4%ぐらいであったと記憶しております。その意味で、政府の経済見通しは少し甘いのではないかというようなご批判もありましたが、結果的には、実質成長率に関する限り、これはもちろん年度はまだ終わっておりませんけれども、実績見込みは0.9%ということで、政府経済見通しをも上回るということが見込まれているということであります。

同じような観点から言いますと、今の時点で来年度の経済見通しに関しては、我々が手に入れている民間の予測の平均値は0.2%ぐらいであると、ちょっとこの瞬間にもこの数字は変わりますけれども。それと、国際機関の見通しというのがありまして、国際機関は歴年ベースでありますけれども、それを年度ベースに置き換えると、大体0.6%ぐらいになっているというふうに思われます。我々の年度の見通し0.6%。ただし、民間部門も国際機関も、補正予算と来年度の減税について明示的な織り込みを行わない上での数字でありますので、我々としては補正予算と減税に約2兆円の先行減税を織り込んだ上での0.6%というのは、基本的にはかなり慎重に来年度経済を見ているということであるというふうに私自身は認識をしていると、そのようなことを申し上げました。

ただ、いずれにしましても、今年度の経済もそうでありましたけれども、来年度についても、アメリカ経済の動向、特にアメリカの軍事行動を含むさまざまな政治経済の動向に影響を受けるということは避けられない見通しなので、その点はしっかりと見ていきたいと思います。

以上のような発言を閣僚懇で行いました。特にそれに対しての意見はございませんでした。

私の方からのご報告は以上であります。

2.質疑応答

問)

完全失業率なんですけれども、不良債権処理の加速が今後進むということと、構造改革が進むということでもう少し高いのではないかという見方もあるんですけれども、大臣はそれについてはいかがですか。

答)

失業率の見方は大変難しいと思います。いつも申し上げますけれども、労働需要というのは派生需要ですので、実は今年度についても、比較的高い成長率、もう少し高い成長率をたしか見込んでいたというふうに思うんですけれども。確かに大変労働市場は厳しいですから、慎重な見方が必要だと思います。

同時に、厚生労働省の政策等々で、需給のミスマッチを解消していくことができれば、この失業率を抑えることもできるはずであるというふうに思っておりますので、そうした観点からの政策努力をぜひ積み重ねたいと思います。

問)

事前の説明では、数値化、ポイント化はできないということだったんですけれども、先行減税と、それから社会保障が重くなると、どのような影響が出ると大臣はお思いですか。

答)

税や保険のシステムが変わることによって、民間の消費行動、投資行動がどのように変わるかというのは、今のような不安定な経済状況下で正確に計測することは極めて困難であるということだと思います。

非常に一義的なアプローチとしましては、大体それによって政府が民間部門からどの程度お金を吸い上げることになるのかというのが、基本的な見方だと思いますが、それに関して言うならば、そのような形で国民の負担になるような金額、大体GDP比で1%ぐらいかなというふうに思っておりますけれども、それと今回の補正予算プラス先行減税がほぼそれを相殺する、オフセットするような形に持っていけたのではないかなというふうに思っております。

ちょっと誤解のないように言いますと、保険料等々の負担増で吸い上げるということに加えて、昨年度の第2次補正予算の公共事業が、その部分が需要がなくなる、はげ落ちるという分も考慮して、GDP比1%分ぐらいということです。

問)

今の話に関連する部分なんですが、設備投資を1.8%と見込んでいますけれども、それが先行減税によってどの程度押し上げ効果を持つのか。あと、循環的なマクロ経済でどの程度か。大臣その道の専門家でもありますので、大体の仕分けはどんな感じか教えてください。

答)

先ほど言いましたように、第一義的な効果というのは、それなりに織り込んでいるんですけれども、それがよりダイナミックに、企業行動、企業の投資に関する意思決定をどのようにダイナミックに変えて、どのような変化になるかということについては、少し時間をかけてもう少し分析をしなければいけないというふうに思っております。

それによって、実効税率が何%ぐらい変わるかと。実効税率が1%変わった場合に投資が何%変わるかというようなことに関しては、ある程度の計量的な蓄積があるわけですが、先ほど申し上げましたように、今のような非常に不安定な経済状況下で、過去の経験値を当てはめるということの是非もあろうかと思いますので、もう少しその効果については、改革と展望の議論等々の機会を通じて、少し議論を深めさせていただきたいと思っています。

問)

影響度はないのか、かなりの影響度があるのか。

答)

私は、基本的には潜在的な投資需要を持っている部門というのはあると思いますので、それなりの効果があるというふうに思っています。その点も含めて、実効税率がどのくらい変わって、厳密に言うと、資本コスト、税引き後の資本コスト、資本のレンタルプライスをどのくらい変えるかというようなきちっとした計算をしなきゃいけないわけですけれども、もうちょっとそういうことを時間をかけて少し議論を深めて、またご報告をしたいと思います。

問)

産業再生の指針が決まりましたけれども、不良債権処理の加速によってどのくらいの数値に影響が出ているのかということと、あと指針そのものに対する評価はどうでしょうか。

答)

加速によってのマクロ経済に対する影響ですか。これも不良債権処理の加速というのがどういう形で進むかによって、非常に違ったシナリオが可能なものですから、政府としては余り厳格な議論をすると、むしろ非常に混乱があるというふうに思っております。

ただ、不良債権のオフバランス化を進める中で、それによってある程度の失業の発生はあり得るということは、これは内閣府の試算等々でも明らかになっていると。しかしながら、例えばそこに出ている数字の範囲というのは、今ここ数年間、労働市場、雇用者の数が20万、30万のペースで減少してきたというペースから見ると、それを画期的に変えるほど大きな数字ではないというのも試算結果としては出ているというふうに思うんですね。その意味では、ここ数年来、労働市場は非常に厳しい状況にあったし、企業の金融も非常に厳しい状況にあったということですが、その状況そのものが今までと変わるほどの影響があるというふうには思っておりません。むしろ不良債権処理によって、企業が新たな成長機会を持ってくるとか、その分資金が新たな成長分野に投入されるというようなプラスの部分があるものですから、我々としては、やはりそのプラスを極力引き出していくような政策運営をしたいと思っています。

それと、指針そのものの評価でありますけれども、私自身の認識では、やはり今回の一連の動きの中で、経済産業省が非常に踏み込んで、さまざまな提案をしている。この基本指針についても経済産業省が貢献した部分が大きかったというふうに認識をしておりますし、組織づくり、仕組みづくりに向けてよいスタートが切れているというふうに思っています。

しかし、やはりこれ大変難しい仕組みづくりだと思います。きちっとした透明なルールをつくりながら、一方で、最終的な判断そのものは新しい組織の責任者に委ねなければいけない。そういうような柔軟性を持っていないと、きちっとした再生はできないでありましょうから、まだまだ組織づくりが進行していきますから、細心の注意を払って、そこはしっかりとつくりたいと思います。

問)

来年度の経済見通しですが、デフレについてはどういう判断をしているのかという点と、あと政府としての日銀の金融政策に対するスタンスはどう考えているのか、教えてください。

答)

今年度、実物経済、実際の成長率に関しては、もう何度も言いますけれども、第2四半期で年率4%換算の成長、第3四半期で実質3.2%成長の換算でありますから、潜在成長力をかなり上回って、実質需要が伸びたと。にもかかわらず、デフレが加速したということは、いろいろな側面がありますけれども、やはりデフレというのはすぐれて金融的な問題であると。金融的な側面が非常に強いんだということを示しているのだと思います。その意味では、来年度のデフレ動向についても、かなりの部分、やはり金融のあり方、金融政策のあり方に依存してくると思います。今議論されている改革と展望でも、また今回の経済財政運営の基本方針でも、その意味では金融政策の役割、政府と日銀が一体となった取り組みをすることの重要性というのは強調しているつもりでありますので、そこは財政と銀行行政が今動きつつある中で、金融政策のさらなる一種の積極化を我々としてはやはり期待したいと思います。

問)

産業再生なんですが、2次ロスはどの辺ぐらいまで雇用されるべきだというふうにお考えですか。

答)

実際の財政のシミュレーションまでまだ話は全然いっておりませんので、これは何とも言えませんですけれども。ここもやはり組織そのものが非常にディシプリンを持って運用しなければいけないという原則の部分と、しかし結果的に、やはりいろいろな確率的な事象といういろいろなことがマーケットでは起こり得るわけですから、それに対する柔軟性を確保しておかないと、きちっとした意思決定ができないという面がありますので、さっき申し上げたような非常に細心の注意を払った制度設計をしていく中で、若干の数値的な議論もどこかの時点ではしなければいけないと思いますが、私としては少し組織の運営者がある種の柔軟性を持てるような仕組みにしておく必要があると思っています。

問)

民間による再生の場合は、経営責任というのはクリアになると思うんですが、政府が関与することで、その2次ロスがすごい膨れ上がった場合の責任というのはだれが負う仕組みになるんですか。

答)

そこまで急に、組織がまだできてない段階で、そうした場合の一種のシミュレーションの上での責任論というのは、なかなか議論しづらいところがあります。ただ、ご指摘のところは、まさしく公的な部分であるがゆえに、経営がルースになってはいけないというところだと思うんですね。そこはもう何度も言っていますように、いわば入り口のところの明確なルールの策定と、出口のところでの一種の柔軟性の確保といいますか、そういう視点が必要になってくるのではないでしょうか。

(以上)

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