竹中金融・経済財政担当大臣記者会見要旨

(平成15年3月4日(火) 10時32分~10時51分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございましたが、私の方の関連では特にご報告することはありません。閣僚懇も比較的短く終わりました。

私の方からは以上であります。

2.質疑応答

問)

昨日、来年度予算案が衆議院予算委員会で可決されました。本日中には衆議院を通過するのではないかと見られています。大臣は委員会審議ではいろいろなご苦労があったと思うんですけれども、事実上の年度内予算成立が確実になったことをどう受けとめていらっしゃるのかということが1点と。

あと、これをきっかけに与党の方から大型補正を求める声が出始めていますけれども、そういった声をどういうふうに受けとめていらっしゃるか、あわせて伺えればと思います。

答)

昨日、衆議院の予算委員会を予算が通過したと、これは本会議が残っておりますから、本会議でぜひとも承認をいただきたいというふうに思っておりますけれども、その上でやはり経済運営という観点からしますと、14年度補正予算と15年度予算を切れ目なく執行していくと、それがやはり経済への対策、デフレへの対応策の最大のポイントでありますので、それに向けて参議院でもやはりしっかりと議論をしたいと思いますし、早期の成立を目指して努力をしていく必要があるというふうに思っています。

2つ目の、今の時点で補正の議論というのは新聞情報等々ではいろいろな議論がなされているというのは承知しておりますけれども、我々としては基本的に、今予測できる範囲で最大限の努力をした予算であるというふうに思っています。中期的に財政のプライマリーバランスを回復させなければいけない、これはそうしないと本当に日本の経済は大変なことになると思います。同時に、当面の経済に対して、経済が踊り場的な状況にあるということも踏まえて、出来る限りのしっかりとした措置をとりたい、その狭い道にかろうじて乗っている予算であるというふうに思いますので、これをやはりしっかりとまず国会で認めていただいて、それを実行していくことが何よりの重要なポイントだというふうに思っています。

あとは、いわゆる地政学的な不確実性にどのように対処していくかという問題でありますから、この点については、国連でのいろいろな議論も比較的近い時期にあるというふうに言われておりますし、そういったところをしっかりと見ていくと、これは本来の今の時点で予想されるベストの政策をやっていくということと、不確実性に対応していくということと、しっかりと両方やっていくことに尽きるのだと思います。

問)

今日、明日と日銀の政策決定会合がありますけれども、大臣は出席されるんでしょうか。

答)

予算審議等々の関係で、今回は少し難しいのかなというふうに思っております。

問)

どういった議論を期待されていますか。

答)

とにかく、日本銀行は金融の側面から非常に専門的な立場で経済を分析し、その政策決定会合では、その分析の結果を各委員が持ち寄って、それで更に行政の検討を深めていく、その上で必要な対応策をとるということでありますから、今回も非常に不確実な状況の中で、専門家としての議論を深めていただきたい。その上で、これは予てから申し上げておりますように、デフレ克服に向けて政府・日銀が一体となってという、これはもう常に常に求められていることでありますので、しっかりとした対応を期待したいと思っています。

問)

NPOについて政府税調のワーキンググループなどで、原則課税の方向で今検討が進んでいるようですけれども、これについてはNPOの活動を抑制するんじゃないかという批判とか、一部政府内にも異論があるようですが、大臣としてこれをどういうふうにお考えになっていますでしょうか。

答)

お尋ねは、政府税調についてですか。

問)

いえ、NPOの原則課税という方針について、どういうふうにお考えなのかということを伺いたいと思うんですけれども。

答)

原則課税の話は、私は詳細は承知をしておりませんが、基本的には今回の税制改革で、要するにNPOというのは、なぜこういうものが必要かというと、正に社会の多様な価値観を認めようと、多様な価値観、つまり公的な目的を達するために私的な人達が活動する、それで多様な価値観を認めて豊かな社会を実現していこうと、これはやはり成熟した市民社会の基本的な要件の一つだと私は思います。それについて、今回の税制改革で非常に大きな進歩があったということでありますから、そういう意味ではちょっと原則課税というのはどういう議論なのか承知しておりませんけれども、私は今回の税制改革を含めて進んで来た道というのは間違っていないというふうに思っています。

問)

今の公益法人の改革の一環の中で、他の公益法人と一体として原則課税するということが今議論されていて、それについてどうお考えかということをお伺いしたんですけれども。

答)

公益法人全体の、公益法人、その中間法人、NPO等々含めた、全体の見直しの議論があるというのは承知をしております。ただ、その中で具体的にそれがどのような詳細な制度設計になっていくかということについては、これはまだ議論は進んでいない段階だというふうに私は思っています。当然のことながら、我々としては先程も申し上げましたように、多様な価値観を実現する、成熟した市民社会を支える要件としての、NPOのようなものは当然重要だというふうに思っておりますので、今後具体的な制度の議論の中で、我々としても議論に積極的に参加をしていきたいというふうに思っております。

しかし、税の話は、また税の話なわけですね。これは別の議論でありますので、これは正に政府税調でいろいろな議論はあるのだというふうに思いますが、基本的に我々としては今までNPOに対する政策の歴史というのは、決して長くはありませんけれども、これまで積み重ねてきたものを、その方向として重要だと思っておりますので、そういった視点から積極的に議論に参画をしていきたいと思います。

問)

昨日、りそな銀行のシステムで、統合に関するシステム統合で、一部トラブルがありましたが、それについてのご認識と、これから4月にかけて幾つかまた統合するところもあると思うんですが、その留意点について、改めてお願いします。

答)

統合というのは、まず組織の統合、それを戦略的に行っていくというのは大変難しいことであるというふうに思います。その、いわば入り口のところにシステムの統合というのがあるわけでありますけれども、これまでもいろいろな体験を我々はしてきました。そうした点から、今回のりそなの合併に当たっても、このシステムの統合に関しては、万全を期すようにということを申し上げてきたつもりであります。昨日のトラブルに関しては、一応、今朝からは正常化しているというふうに聞いております。しかしながら、これはいろいろなことが起こり得ると思いますので、引き続きりそなには万全を期していただきたいと、このことを強く思っております。

今後、更にいろいろな機関で、規模は違うでありましょうし、事情も違うでありましょうけれども、同様のことをクリアしていかなければいけないと思っておりますので、その点についても、これは非常に難しい、戦略的な統合の入り口のところにシステム統合があるわけで、そこを万全を期してクリアしていただきたいというふうに思っています。

問)

先週末に、産業再生機構の人事、いろいろ紆余曲折がありましたけれども、固まったみたいなんですが、それについて大臣の評価と期待するところ、改めてお願いします。

答)

これは、担当大臣がいらっしゃいますので、谷垣大臣の方でいろいろ本当に苦労されて人選をされ調整をされたと、総理がそれを決断されたということであろうかと思っております。

これから、正に今候補でありますから、その産業再生機構そのものをどのようにしていくかという、その器の議論をこれから本格化させるわけでありますから、まずその器を我々としてはしっかりと作っていく、その中でその上で器ができて新しく経営者が正式に発令されればということでありますけれども、その方々にはやはり思う存分力を発揮していただきたいというふうに思っています。若干の組織の切り分けがありまして、組織の人事等々に関しては、金融担当大臣というのは直接所掌をしておりません。業務の所掌ですので、産業再生委員会の方は直接私も所掌するということになるわけでありますが、その意味では谷垣大臣は大変ご苦労なさって候補者をリストアップされたというふうに思っております。

問)

答え難いのかもしれないんですけれども、委員長と社長を一緒にというような議論もあったと思うんですが、結果として別々の方が選ばれたことに関してはいかがでしょうか。

答)

これは、いろいろな考え方があるのだと思います。これは一概にどちらが良いとも悪いとも、私は言えない問題であろうかと思います。それぞれどのような方にやっていただくかによって、分けてやっていただく方が良い場合も、一緒にやっていただく方が良い場合もあり得るのであろうと思います。

いずれにしても、そういうことを踏まえて谷垣大臣の方で非常にご苦労をなさって調整をしてくださったというふうに思っています。

問)

株価なんですけれども、銀行株が昨日まで随分下げたんですが、何度かお伺いしてるんですけれども、投資行動ということでお答えいただいていたところもあったと思うんですか、増資に向けての売りが随分出て、そこで下がったところで買うという投資行動になって来ていると思うんですが、それについて大臣としてはもうちょっと何とか手立てはあったのかどうか、お考えがありましたらお願いします。

答)

これは正に、市場の需給の話ですから、個別にコメントする立場にはありませんし、ましてやそれに対して我々がどうこうできる、するというような問題では基本的にはないと思っています。株価全体が、やはり先ほど言った不確実性を非常に今見極めようとしているんだと思っております。更には、為替レート等々の状況にも非常に敏感に反応する、そういう敏感な相場になっているというふうに思っております。その中で銀行というのは、恐らく相対的に見るとですけれども、すべての産業分野の中で、今最も変化しようとしているのが銀行でありましょうから、それについて様々な情報等々、出来事等に対して市場が敏感に動いている状況なのだろうなと。しかし、これは戦略的に経営を確立していただく、その中で評価が定まってくるというようなことから、しかるべき評価を受けていくような状況になっていくということを期待しております。ぜひともそのような、戦略的な経営をしていただきたいということでもあります。

問)

りそな銀行のことについてもう一点確認させていただきたいんですが、みずほのようなトラブルの経験を踏まえて万全を期してきたはずなのに、こういう不具合を起こしたことを問題視しているのか、それとも大手銀行の統合、地域銀行も含めてですけれども、非常に複雑な作業ではこういうトラブルも起きるのは仕方なくて、むしろ再発防止なり対応の方が問題だと思っていらっしゃるんですか。そちらの点はどうでしょうか。

答)

まだ、これは2日目が始まりますから、そこはしっかりと見なければいけないというふうに思っております。ただ、一般論として言えば、非常に大きなシステムの統合ですから、残念だけれども何らかのトラブルが出てくるということは、これはやはりあり得るというふうに思って対応しなければいけないんだと思います。問題は、そうした場合の対応策がきちっと出来るのかということ、今回いろいろそういうことも含めて万全を期するようにということを申し上げてきたつもりであります。繰り返し言いますけれども、もちろんトラブルはゼロに越したことはありませんですけれども、そういうことも踏まえながらやっていくのが経営であり、また我々の監督の行政であろうかと思います。これはまだ2日目でありますので、引き続き事実に関してはしっかりとフォローをしていきたいと思います。

問)

先週末に、大臣が講演の中で、予算制度改革について言及されましたけれども、具体的にはいつ頃までに実施するとか、そういった見通しというのはお持ちなんでしょうか。

答)

実は、小泉内閣になってから、かなり思い切った予算制度改革を実施して来ているわけです。例えば、予算の作り方も最終的な仕上がりの姿、「予算の全体像」のようなものをまず決めてから、それでそれに基づいて、どちらかと言えば緩いシーリングで要求をしてもらう。しかし、仕上がりについては、きちっと責任を持つ。更には、各大臣に来ていただいて、各大臣にどういう政策をやっていくのかと、これは大臣イニシアティブですよね、話していただく。あとは、更にこれは制度としては始まったばかりですけれども、評価についてもしっかりとやっていこうと。講演等々で私がよくお話をしておりますのは、90年代に入って、どこも財政赤字を抑えるということで大変苦労したわけですが、その中で比較的うまくそれをやり抜いた国というのは、同じような特徴が見られるということを申し上げているんです。一つが、やはり成果目標をきちっと立てていく、その上で予算執行にある程度の自由度を与えている。しかし、第3として評価は非常に厳しく事後的な評価をすると。今申し上げた、小泉内閣になってからの改革、予算の組み方というのは、例えば大臣イニシアティブというのは、この成果目標といいますか、どういう目標でやるのかということをやって、そのかわり責任を持ってくださいよということも各大臣にイニシアティブで言って、評価については今制度が定着しつつあると。私は、今まで小泉内閣になってからやってきた予算の改革というのは、世界の潮流の方向とやはり一致していたと思うんですね。その点を、もう少しきちっとできるところはよりきちっとしていこうというのが今申し上げていることであって、これについては、諮問会議の日程等々ありますけれども、比較的早い時期からいろいろ議論をして、これまで議論を深めなきゃいけない点がたくさんありますので、今年前半じっくりと、ぜひ議論をしたいと思います。

問)

前半で議論を深めるというのは、後半の来年度予算、来年度というか、04年度予算編成に生かしていくということが趣旨ですね。

答)

これも、各国の例ですけれども、制度をぱっと作って、ぱっと実行するというのは、これはあり得ないわけですね。やはり少しずつ良くしていくわけです。我々も、1年目よりも2年目の方が、大臣イニシアティブの活用の回数があるということで、かなり良くなっていると思うし、だから来年やはり良くする部分、良く出来る部分はあると思います。しかし、それ以降も続けて、何年もかけてやっていくと、そういう性格のものだと基本的には思っています。

問)

銀行のATM手数料と両替手数料の件なんですけれども、消費者の反発がある一方で、収益性を高めるためにはやむを得ないんだと、賛否両論あるかと思うんですが、総理は問題意識を持っていらっしゃるようですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか、改めてお願いします。

答)

総理が国会答弁で次のような趣旨のことを仰ったと記憶しております。こういうふうな状況になると、うちは手数料安いからもっとうちへ来てくださいよと、そういうようなことを言う銀行がどうして現れないのかなと。いろいろお伺いしていますと、そういうことを検討している銀行も従ってあるわけですね。その意味では、何が重要かというと、やはり健全な競争環境が重要だということに尽きるのだと思います。我々としては、健全な競争環境の中で収益力を上げていってもらうことが重要なのであって、そのような方向でぜひ監督をしていきたいと思います。

(以上)

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