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竹中金融・経済財政担当大臣記者会見要旨

(平成15年9月2日(火) 11時10分~11時23分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。遅くなって申し訳ありませんでした。

閣議がございました。閣議の中では、先般の中国、香港、深圳(シンセン)の出張について私の方から一言発言をいたしました。

私は、8月28日から30日にかけて、中華人民共和国の香港特別行政区及び深圳(シンセン)経済特別区を訪問し、董建華香港行政長官、ジョセフ・ヤム香港金融管理局総裁等と会談を行ったほか、深圳(シンセン)特別経済区等を視察いたしました。

一連の会談では、私から日本経済の現状、構造改革の進捗状況及び今後の政策のあり方についての説明を行いました。

これに対して先方からは、小泉内閣が取り組んできた構造改革の成果が実を結びつつあることを歓迎する旨の話がありました。また、香港もデフレ、財政赤字の拡大、不動産価格の下落といった日本と共通の問題を抱えており、構造改革を着実に進めていく必要があるという認識が示されました。

グローバルな経済環境に対応するためにも、我が国としては構造改革をさらに進めて、持続可能な成長を実現することが重要と考えます、というようなお話を申し上げました。

閣僚懇では、ご報告すべきこととして、石原大臣の方から、独立行政法人のうちの32法人が10月1日から誕生すると。これに対しては、一般管理費の削減等々いろいろ話題にはなっているが、さらに踏み込んで事業の精査を行う必要がある。

これを受けて総理から、各大臣、指導力を大いに発揮せよと、改革を進めるようにというご意見がありました。

閣議の前でありますけれども、谷垣大臣の方から、ご承知のように8月28日及び9月1日の産業再生機構の支援企業の第一陣決定に関して、閣議前に谷垣大臣から、金融機関が産業再生機構をより一層積極的に活用するよう、今後ともよろしくお願いしたい旨のお話が私に対してありました。

金融庁としては、産業再生機構は、事業者の再生を通じた産業と金融の一体的再生を図る上で、極めて重要な役割を果たし得ると考えているということを申し上げた上で、このため金融庁としても、金融機関に対して、我が国産業の再生と信用秩序の維持という機構の目的を十分ご理解の上、さらに一層積極的にこの機構を活用していただくよう要請したいと思っています、ということを谷垣大臣にお伝えをいたしました。

私の方からは以上です。

2.質疑応答

問)

閣議の後に官邸に残られていたようですけれども、どのようなお話をされていたのかお願いします。

答)

今日の午後、諮問会議がありますので、その諮問会議の中身、進捗について総理にご報告をしておりました。

問)

具体的にはもうちょっと、総理からどのようなご発言があったのでしょうか。

答)

今日の諮問会議の内容は、概算要求を受けて、特に「モデル事業」でありますとか、「政策群」のことを議論すると。それが前半。

後半は、構造改革の進捗状況のレビューを行うということでありますので、その内容を資料に基づいてかなり詳しくご説明をいたしました。

総理からは、確かに構造改革によって本当にいろいろなシーンが変わってきており、この改革の芽をぜひしっかりと大きく育てていかなければいけないというお話がありました。今日、こうした点についてぜひ諮問会議で議論を深めたいと思います。

問)

昨日、スノー財務長官と直接またお会いになられて、スノー長官の方からアメリカの経済の見通しについて、かなり明るい見通しが出されたと思うのですけれども、それを踏まえて、日本の景気の見通しにどのような変化があるのかお聞かせください。

答)

基本的にはスノー長官とは数週間前にワシントンでお目にかかっておりますので、その時からの変化としては、アメリカの4-6月期のGDPが上方修正されたということと、日本の4-6月期のGDPが当初の予想より高い数字が出たと。そういう状況を受けて、一般的な経済状況について意見交換を行ったわけです。

そうした議論を受けて、当面の景気動向をどう見るかという後半のご質問ですけれども、例えば冷夏の影響とかいろいろ状況を見なければいけない要因もあると思います。しかし、世界経済全体は持ち直しの動きに向かっているというふうに思いますし、日本もそうした中で、持ち直しの傾向を強めていく重要なチャンスを迎えているのではないかと思っておりますので、そうした観点から、足元の動向、中長期の動向をバランスよくしっかりと見ていきたいと思っています。

問)

先週末に業務改善命令に対する改善計画が提出されたと聞いております。しばらく精査されるとのことですが、大臣はどういう観点で新しい計画を精査したいと思われていますか。あるいは、現時点での印象、あるいは評価はいかがですか。

答)

出張から帰って、これからしっかりと事務方の報告も聞きながら議論をしなくてはいけないところだというふうに思っています。

言うまでもありませんけれども、公的資金の注入を受けた銀行はしっかりとした、現実的な業務、経営健全の計画をつくって、それをしっかりと実行していくということが重要でありますから、その意味では、計画のフィージビリティーというか、実現可能性とその実現に向けた努力といいますか、そういったものをしっかりと我々としては監督していかなければいけないと思っています。

問)

今、ご報告でもありました再生機構なんですけれども、債権放棄の割合が高いとか、色々なことで銀行は大型案件の持ち込みに慎重というか、後ろ向きだというような言われ方もされます。一号案件が決まりましたが、比較的小さな企業も多くて、大臣はこの間の再生機構の成果についてどう評価しておられますか。

答)

非常に厳しい時間的制約の中で、これだけの第一号、第一陣案件を取りまとめいただいたということは、これは大変ご苦労があっただろうと思っております。これは第一陣でありますから、再生機構の本来の趣旨を発揮すべく、更に今後、我々としては事態の進展を期待しています。

そういう観点からは、我々としても銀行に対してこの再生機構の積極的な活用を促したいと思っておりまして、まさに谷垣大臣のところと私のところと一体となって、これは日本全体のバランスシート調整ですから、銀行部門のバランスシートの調整と、その向こう側にある企業部門のバランスシート調整というのは、コインの両面でありますから、それの一体的な再生を目指して努力をしたいと思います。

問)

今の関連なんですけれども、銀行への積極的な活用を再生機構の方へ要請する、促す、これはいつ、どういう形でされるのですか。

答)

本日付で監督局長名でレターを発出して、その趣旨を明確にした上で、さらに一層積極的に機構を活用していただくようというふうに要請をしたいと思います。

問)

対象は何行ですか。全金融機関ですか。

答)

基本的には全金融機関です。

問)

信金、信組も含めてですか。

答)

そうです。

問)

大臣、それはなぜ今まで積極的に利用されてないという考えですか。

答)

今まで積極的に利用されていないのではなくて、今始まったわけです。今始まったわけで、改めて最初ですから、その第一陣の案件が出たばかりでありますから、その趣旨を改めて徹底していただいて、これはオフバランス化には、ご承知のように色々なやり方がありますけれども、なかなか意思決定が難しいというような場合に、再生機構というような公的な機関が関与する余地というのは非常にあるわけですね。だからこそ、この機関をつくっているわけです。これはまさにスタートでありますから、改めてその趣旨を徹底して、積極的な活用をお願いしたいというふうに思っています。

問)

人民元のことですけれども、政府としてはアメリカと協調して、人民元を切上げの方向に持っていこうという政治的な動きと受け取れるのですけれども、大臣ご自身、この問題についてのお考えというか、お立場を明らかにしていただきたいのですが。

答)

基本的に、この通貨の問題は、私の所管外でありますので、お答えするべき立場にはありませんが、一般論としてというか、個人的な考えということであるならば、通貨の調整というのはどのような場合にも必要なことがあるわけですから、そうした枠組みといいますか、ルールについて話し合いの場があるというのは、これは重要なことであろうかと思います。これは担当当局それぞれの中でしっかりと現実的な立場で議論をしていただければよいと思います。

問)

深圳(シンセン)に行かれて、日本企業の中国法人がたくさん中国にあるわけですけれども、元が切上げの方向に行くということは、中国法人の採算は必ずしもよくならない。だから、この方向というのは、全体として日本経済に本当にプラスになるのかどうかという側面はどうご覧になりますか。

答)

為替レートというのは、一部の進出企業のために、ないしは輸入業者のために、輸出業者のために決められるべき問題でないわけですから、これは通貨と通貨の交換レートとして、その市場で均衡させる適切な水準というのはあるのだと思います。

したがって、一部の利害得失ではなくて、そういう中長期的な制度造り、それから価格ですからどこかで調整しなければならない局面はあり得ると。そういう観点から、そういった議論の場を、枠組みをつくっていくということが必要なのではないでしょうか。

問)

機構の関係で、レターというのは、いわゆる通達という意味でしょうか。

答)

要請のレターですね。

問)

文書で要請という……

答)

文書で要請するという、その通りです。

問)

一方で、金融機関側にそういう要請をしたということなのですけれども、機構の側として、よりもっと本来の趣旨を発揮すべく改善すべき点というのはありますでしょうか。

答)

今の時点で、我々として、機構のここは改善する必要があるというふうに思っている点があるわけではありません。これはしかし、とにかく今立ち上がったばかりですから、谷垣大臣始め、皆さん本当に真剣にいろいろなことを考えておられると思います。

そうした中で、また一号案件の進捗を見ながら、改善すべきところは改善されていくと思いますし、我々としても、多面的な協力を惜しまないつもりであります。

問)

大臣、長期金利が上昇傾向にあるわけなのですけれども、この動きをどういうふうに見られているのかということと、実体経済に与える影響をどういうふうに見られているのでしょうか。

答)

これはいつもお答えしていることと変わらないのですけれども、例えば株価の上昇によって、資金の流れがそれこそ理屈の上でいうと、債券市場から証券市場に移れば、金利の上昇というのはあり得るわけです。ただ、今起こっていることは、そうした意味で想定の範囲内であると私たちは思っております。

一方で、財政赤字がとめどもなく拡大するといったような期待が、もしも、万が一にもマーケットに広がったならば、これは大変危険な状況になりますから、我々としてはマーケットの動向を見ながら、政府としてできることとしては財政赤字の際限ない拡大を食い止めるようにしっかりと財政のマネジメントをしていくこと、これは大変引き続き重要なことだと思っております。

(以上)

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