竹中金融・経済財政担当大臣記者会見要旨

(平成15年9月12日(金) 10時35分~10時51分 於)金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。閣議がございましたが、閣議、閣僚懇を通じて、私の関連で特に申し上げることはございません。

1点、ご報告させていただきたいんですが、最近、ヤミ金業者等が預金口座を不正利用して違法な取立てを行ったり、また、全く身に覚えのない方々に架空の支払い請求がメール等で突然送りつけられたり、また、一方的に指定の預金口座に振り込むことが要求されたりと、こうした形で預金口座を悪用した問題事例が多く見られるようになってきている。これは大変遺憾なことであると思っています。このような、いわば反社会的な行為に対しては、もちろん刑事上の対応を含めた厳正な処罰が行われる必要があります。

同時に金融機関においても、預金口座が不正行為の温床にならないように、その口座の不正利用と思われる情報があった場合には、本人確認や迅速な預金取引の停止、口座解約の実施といった取り組みを通じて、徹底した対応が取られるべきであると思っております。

そこで金融当局としては、このような観点から、金融機関において適切に口座が管理されるように、改めて各金融機関に対して要請を行うとともに、その取り組みをフォローアップすることなども含む対応策を取りまとめ、今後これを厳正に実施していくことにいたしました。この具体的な対応策については、午後事務方からレクをさせていただきたいと思います。

要するに不正口座を許さない、不正口座を撲滅するように、金融機関に対して強力な、我々としては指導をしていきたいと思っております。私の方からは以上であります。

2.質疑応答

問)

先日、銀行の自己査定と金融庁検査の不良債権に対する乖離が発表されましたけれども、不良債権処理額はその総額とともに減りました。でも一方で、一部の金融機関ではまだ乖離が大きいところもありますけれども、大臣はどのように評価をしていますか。

答)

これは去年の11月から始めて、パブリック・プレッシャーを通じて、銀行にしっかりとした自己査定をしてもらいたい、そのために自己査定と金融庁の査定の乖離を、マクロの数字として発表するということをしたわけですが、そうしたことを通じて、基本的には銀行がしっかりと努力する方向に向かっていると思います。着実に、その乖離が縮まってきたということは評価をしております。

同時に、今ご指摘あったように、これはまだら模様でもあります。この点については、引き続きしっかりと査定をしてもらいたいということに尽きると思っています。ただ、いずれにしても、昨年からの取り組みで始めたこの試みで格差が縮まっているというのはいい方向だと思っていますので、この努力をしっかりと続けて、その様子をフォローアップしていきたいと思います。

問)

今日、一部報道で、竹中大臣が内閣留任という――それで、経済財政政策担当相は留任で金融担当については調整しているとの報道があったんですけれども、総理からこの件に関してお話はありましたか。

答)

これは何度も何度も申し上げておりますけれども、人事の問題というのは人事権者がその責任と権限においてご判断をされることであって、人事の問題に関して私から申し上げることは何もございません。

問)

4-6月期のGDPが先日発表になりましたけれども、アメリカ、ヨーロッパを抜き去って、ある意味、世界最強の経済成長ということもあるかもしれませんけれども、まずご感想からお願いいたします。

答)

経済を本格的に再生するためには、本当に時間をかけて我慢強く、しっかりと構造改革をしていかなければいけないと思っています。しかし、まだ、その最初の芽が出始めた段階であると認識をしているところで、とにかく、これからが正に重要なポイントだと思っています。

ご指摘のとおり、この3四半期連続し、気がついてみると、先進工業国の中で日本の成長率が一番高くなっていると。これは事実の問題、事実は事実として受け止めなければいけないと思いますが、同時にこれは日本のいわば活性化の、再生の始まりにしたいという思いでおります。経済の指数にしても株価にしても、今後当然、また上がったり下がったり色々なことがあるわけですが、少なくとも改革の方向は正しいんだと、これを加速していくことが重要なんだと、そういうメッセージを最近の指標から汲み取って、しっかりと政策を進めていくことが重要だと思います。

問)

これまで大臣が仰られた経済回復のシナリオといいますと、アメリカ経済の立ち直りに従って輸出が増えていって、それが国内にも波及してということをしばしば仰られたと思うんですけれども,その見方はまだ変わっていないでしょうか。

答)

基本的には変わっておりません。四半期だけで見ると、この間、これまで低い水準にあった設備投資が、一種のペントアップディマンドというか鬱積需要としてわっと増えて、その結果、需要拡大の8割くらいの貢献が設備投資、2割ぐらいが消費という感じだったと思いますけれども、そういう形になっていますので、今回のその四半期だけの短期の状況で、日本の経済のパターンが変わったとは思いません。引き続き、やはりアメリカ経済の動向をしっかりとフォローしながら、同時に、構造改革を進めて内需主導の経済成長、持続的な成長に持っていけるように努力すべきだと思っています。

問)

輸出が鍵になると思うんですけれども、一方、日本から米国への輸出が増えるということは、アメリカの対日貿易赤字というのは増大するということに、単純に見ればつながると思うんですけれども、先月、今月とスノー財務長官とお会いになられましたが、そういうところのお互いの了解というのはどういう認識になっているのでしょうか。

答)

エコノミストの間、専門家の間では様々な意見がありまして、アメリカの基本的な成長に期待するという面と、アメリカの財政赤字や経常収支赤字が果たして持続可能なのか、サステナブルなのかということに対する懸念も同時にあるわけです。しかし基本的に、アメリカ経済に対するアメリカの首脳の基本的な見方は、アメリカの経済のファンダメンタルズが非常に強くて、基本的な潜在的成長力が高いと。その高い潜在成長力の中で、こうした問題は吸収していくことが中期的には出来るという見方だと思います。そういう基本認識でアメリカの経済は運営されていると思いますし、当面はそのような見方に沿ってアメリカの経済は動いていくだろうと私も思います。

問)

ヤミ金のことで、ちょっと補足質問をさせてください。

要請というのは、いつ、誰の名前で、どういった形で、文書とか口頭とか、それをちょっと確認したいのと、取り組みをフォローアップされるということなんですけれども、後から事務方の方から説明いただけるんでしょうけれども、この会見の場で、このフォローアップというのは具体的にどういうことなのか、もうちょっと詳しく教えていただければありがたいのですが。

答)

要請の内容そのものについては後で、正確な文書も含めて事務方から示します。これは我々としては、基本的には金融機関や財務局に対して出来ることを、我々としては考えて要望するということになろうかと思います。

それとフォローアップですけれども、実際に要望したことがどのように実現していっているのかと。これに対して、当然のことながら我々としてはフォローアップしていくということです。

問)

2点なんですけれども、まず1点は、収益向上の業務改善命令を出した経営健全化計画から2週間経ちましたけれども、そろそろかなと思っていたら2週間経ってしまったんですが、いつごろ公表されることになりそうですか。

答)

これはまだ、私のところでも数回議論をさせていただいていますが、今日の午後もまた議論をすることにしておりまして、そういった動向を踏まえて判断をしたいと思います。

問)

今日はまだ、発表とかそういう段階ではないんですか。

答)

午後、色々皆さんと庁内で議論をして、その上でどのぐらいのタイミングになるかということを判断したいと思います。

問)

もう1点なんですけれども、お願いします。

構造改革でやっぱり、一番もの足りないなと思っている人が多いのは雇用の問題だと思うんです。530万人分とか増やすということである程度進捗はしているとはいっても、皮膚感覚として雇用が出てきていない。今後、小泉政権が続投になるのか、これから選挙ですけれども、総裁選後の話になりますけれども、もうちょっと雇用対策といいますか、そういった力強いものを求める声というのは強いと思うんですけれども、大臣はどうお考えでしょうか。

答)

雇用の問題は、実は日本だけではなくて、世界中で本当に深刻な問題です。ご承知のように世界をリードしているアメリカでも日本より失業率は高いわけですし、実はこの2年間フォローしてみると、日本の失業率というのはむしろ、非常に狭い範囲で、5.3%から5.5%ぐらいの間でこの2年間動いていると。先進工業国押しなべて、失業率をかなり大幅に上げているということですから、日本の雇用は厳しい中でも、むしろそれなりに健闘しているという面もあると思います。もちろん日本の雇用は大変厳しいということを、我々も認識をしています。この点は、経済財政諮問会議でも地域の問題、雇用の問題というのは、かなり継続的に議論をしてきています。私自身も――これは雇用の問題は厚生労働省の方でもいろいろと断続的に色々なアイディアを出しているわけですけれども、地域の問題と雇用の問題というのは、先程言った、経済を更に持続的に成長軌道に乗せていく中で、我々としても諮問会議の中でしっかりと議論していかなければいけない問題だという、非常に強い問題意識を持っています。

問)

先程、今日の午後も改善計画で議論されるというようなお話でしたけれども、議論の論点はどういうところにあるんでしょうか。

答)

今はまだ議論の途上ですので、しっかりと見ていきたいと思います。その上で、我々としても出来るだけ速やかに、色々なことを報告出来るように努力をしているつもりです。

問)

4-6月期のGDPが発表されて、かなり高い水準になって、かなりゲタを履いているかと思うんですが、今年度成長を見て、政府の経済見通し0.6%はかなり達成できそうな感じがあるんですけれども、この辺についてどう見ていらっしゃいますでしょうか。

答)

当初、政府経済見通しでは、実質0.6%の成長ということを示していたわけですけれども、今の時点で、既にかなりの高いゲタを履いているというのは、ご指摘のとおりだと思っております。我々としても15年度の経済動向について、今回の2次QEも含めた点検作業を行いまして、GDP等の計数について、内閣府としての試算を示す方向で検討を進めたいと思っています。概ね半月ぐらい、その作業に要するというふうに思いますので、具体的な日程については今後とも検討したいと思います。昨年も内閣府の試算として秋の時点で数字を示しておりますが、今年においてもそのような形での、内閣府としての試算、年央改訂のようなものをぜひ示す方向で検討を進めたいと思います。

問)

それに関連して、最近でも2%ぐらいの成長は可能ではないかという民間の予測なんかも出ていますけれども、大臣としてもそれぐらいはいけるという、手ごたえみたいな感じはしますか。

答)

なかなか誘導的なご質問ですね。ここはちょっと、正にこれから検討を進める段階ですので、慎重にしっかりとした作業に基づいた見解を示したいと思います。

問)

大臣、最近、地方をだいぶ歩いていらっしゃいますが、数字上はそういういい数字が出ているわけでけれども、地方経済の現状というのをどう見ていらっしゃるか。政策上、何かフォローアップしなければいけない部分も感じていいらっしゃるかどうか。

答)

実は、先程の雇用のご質問とも絡むのですが、地域と雇用、これは同時解決であると思っています。そうした点から、地域の色々な事例を今勉強させていただいております。この点はやはり、大変幾つか重要なポイントがあると思いますが、これは諮問会議でもこれまでも何回も議論されておりますが、公的な需要について民間部門にアウトソーシングを行うと。こういう問題は、地域経済の活性化と雇用の問題について、私は大変重要な意味合いがあるだろうというふうに思います。この点については更に、私自身もっと勉強したいと思っているところであります。

問)

諮問会議の今後の予定なんですが、少し早いかも分かりませんが、いわゆる郵政の民営化の問題のスケジュールというか、集中的に今審議したいということを仰っておられたんですけれども、ある程度の見通しはあるんでしょうか。

答)

これは政治日程等々、国会日程等々、非常に不確定要因が沢山ありますので、諮問会議の日程をどうするかというところまではなかなか至っておりません。ただ、基本的な認識としては、時間は余りないと、相当集中的にいろいろなこと、年金、三位一体、非常に大きな問題がありますので、かなり集中的に議論をしなければいけない状況になってくるんだと思います。これは、とりもなおさず、構造改革がいよいよ、より大きな課題に向かって本番を迎えるということだろうと思います。

(以上)

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