竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

(平成15年12月12日(金) 9時17分~9時37分 金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。閣議、閣僚懇を通して、特に私の方からご報告することはありません。

2.質疑応答

問)

年金改革が大詰めを迎えていて、給付50%に対して、負担18%というのが与党の中から出てきているのですけれども、その中で、18%の負担で50%の給付を実現するために、給与月額の上限を引き上げるというような案が出ていまして、年収1,000万円以上の方の場合には負担を少し増やすと。

これまでその年金改革については、諮問会議等で経済の活力を維持するということが重要だと仰っていたのですが、高収入層だけに負担を求めることについては、経済界等からもかなり反発の声が出ているのですけれども、大臣はどう見ておられますか。

答)

諮問会議での議論の最大のポイントは、給付と負担、保険料率とその給付をしっかりとバランスさせる。その場合に、保険料率が高くなり過ぎないように注意すると。経済の活性化という観点からも、そのポイントが最大の問題であるということであったと思います。そうしたことを考慮に入れながら、議論は進んでいると認識をしています。

同時に、諮問会議では、できるだけ給付を保ちながら、保険料率を引き上げないようにするためには、その幾つかの調整項目があると。その調整項目の中に、何らかの形で高所得者に対する給付抑制をすると。これは民間議員の主張の中にもかなり何度も出てきた問題だと思っております。今議論されているのは、基本的にはそういった方向に沿っているものと思っています。

後は、その負担の程度とか、正に程度問題ということになりますが、議論の枠組みそのものは、諮問会議で議論された枠組みに沿ってご議論を頂いているのではないだろうかと私は認識をしています。

問)

年金改革に絡んでですが、財源として、定率減税の廃止あるいは見直しということが、公明党を中心に与党の中で声が相変わらず強いのですが。その定率減税を、今はもう少し時期を置くのかもしれませんが、廃止することによる景気への影響、その辺はどう見ておられますか。

答)

景気への影響そのものは、税の側と支出の側との総合効果ですから、そこはきっちりと議論しなければいけない。その意味では、一律に申し上げるのは、マクロ的な観点から難しい問題だと思っています。むしろ景気への影響という観点からするならば、保険料率の引き上げの方が、問題が割と直接的に出てくる問題だと私は認識をしています。

もちろん、今ご指摘の問題も考える重要なポイントではありますけれども、そこだけを取り上げて、今の時点で仮定の議論をするというのは難しいと思っています。

問)

それと、「三位一体」の方も大詰めを迎えていまして、幾つかの補助金を廃止するということには決まったのですが、補助金を廃止して、税源移譲予定の交付金という形に切り替えるというものが一部出ているんですが、その諮問会議等の議論では、これまで交付金についても厳しく見ているということを仰っていたわけで。一時的な措置なのかもしれませんが、交付金というのがそういう形で増えるということについては、どうご覧になっておられますか。

答)

今回の場合は、将来負担が見込まれるものに関して、何らかの新しい工夫が要るということで、こういった問題が出てきていると認識しています。ここは一つの現実的な知恵の出しどころと思っています。

重要な点は、基本的には税源移譲のはっきりとした芽を16年度に出すと、税源移譲を後回しにするのではなくてやるということが一番重要なポイントだと思っておりますので、今そういう方向で話が進んでいるということは歓迎すべきことだと思います。

問)

昨日、与党で公的資金新法の大枠が了承されましたけれども、その議論の中で、今回の新法は行政裁量を非常に強くするものではないかと、肯定的な言い方で指摘された自民党の先生もいらっしゃったのですけれども、大臣はどういう使い方というか、どういうお考えでしょうか。

答)

私としては、日本経済全体のバランスシート調整を進めるに当たって、銀行部門は大変大きな役割を担っています。そうした観点から新しい枠組みの必要性を感じていたわけです。こうした点をご理解いただいて、大枠についてのご了承をいただいたということは大変ありがたいことだと思っています。

しかし、これはなかなか狭い隙間を通っていかなければならない。バランスシート調整は進めなければいけませんが、同時にモラルハザードを回避するような仕組みはしっかりと作っていかなければいけない。行政として判断する要素が入ってくると思いますが、そこに恣意性が入らないような仕組みを作っていかなければいけない。その狭い間を通り抜けなければいけない。その意味でも、今後の制度設計が大変重要だと思っています。

裁量云々というのは色々な解釈があると思いますが、我々としては判断すべきことは判断をしていく、しかし、その中にその恣意性とかが入らないような仕組みを、今後の法律の具体的な制度化の中でしっかりと作っていくということではないかと思います。

問)

足利銀行の新経営陣ですが、102条の発動からもう2週間程度経つのですが、進捗状況はどうですか。

答)

具体的に、まずどういう全体としての構成にするかという議論をずっとして参りました。どういう構成にするかということの議論を終えて、それではどういう方にお願いするかという具体的な人選に今入ってきたところです。基本的には、官邸とご相談をしながら、具体的な名前の絞り込みについて、お願いをしていかなければならないと思っておりますが、何度も申し上げていますように、出来るだけ早くやりたいと、しかし、1週間やそこらでできる問題ではない。金融危機対応会議から明日でちょうど2週間になります。一時国有化を実施してから2週間ということになると、来週の月曜日ということになります。我々としては、来週の前半ぐらいに何らかの合意に達するように、ぜひ官邸と相談しながら努力をしたいと思っています。

問)

年金の絡みですが、18%台ではちょっと負担が高いという議論が依然としてありますよね。その中で、1つは、スピード調整の議論も諮問会議で出ていましたね。達するまでの年限の問題ですね。ここは年内の課題だと、そこを議論すべきだとお考えかどうかということと、あと財源については、積立金の取り崩しの議論もまだ煮詰まっていないようですが、この点は政府からすれば、借り入れになってしまうという観点から慎重論もあるようですけれども。この2つについて、大臣のご所見を承りたいのですが。

答)

スピード調整を早くすることが望ましい。その望ましい理由は、世代間の不公平を解消するという意味からも、スピード調整は早く行う。そうすることが、負担と給付を上手くバランスさせる道でもある、そういう一般論は諮問会議でも随分と行われました。

しかし、具体的にどのぐらいのスピード調整を行うかということの議論については、諮問会議でも、必ずしも議論は煮詰まらなかったと思っています。これは、我々の努力目標として今後さらに議論を続けなければならないと思いますが、諮問会議として、具体的にこういうようにすべきであるという合意が必ずしもなかった問題でもありますので、引き続きというのが現状だと思っております。

それと、積立金について、私の認識する限りでは、長期間で取り崩していくというのは、厚労省の案に元々織り込まれているわけですけれども、それをさらに前取りしてという議論は、私の知る範囲では、それほど積極的には行われていないのではないかと思っています。ここは、2分の1に引き上げる場合は、ある程度時間をかけてということと、それと財源をしっかりと確保してと、ここの基本線は守られるべきであると思います。

問)

足利銀行の人事ですけれども、これまでの経営陣は全部いつかは辞めてもらうことになると思いますが、とりあえず当面、どれくらいの規模というか、どなたにお願いするというような方向なんでしょうか。

答)

今、その詰めをやっておりますので、その範囲でまだ色々な可能性があると思っております。規模とか構成とかということでありましたら、基本的な考え方は、外部から責任を持って運営する方にお願いしたい。その方は、まず金融について判っておられる方、金融について詳しくて、その事業再生も含めてしっかりとした金融をやってくださる方というのが、やはり原則だと思います。その方に加えて、やはり地元の経済のことに熟知した方に入っていただくのが私は自然だと思います。

同時に、これから色々な問題が出てくる中で、法律等々の専門家にも入っていただかなければいけないと思っています。そういう数人の組み合わせの方を外部からお願いするというのが、枠組みとしては私は自然な考え方ではないかと思っております。

問)

今朝方、日銀の短観が出たかと思いますが、製造業はかなり回復基調が出てきているようですが、非製造業は、回復はしているけれども、回復幅は少し小さいかと思いますが、この辺りをどう見ていらっしゃるか。

答)

数字は、細かいところまでまだ精査はしておりませんが、ご指摘のように、方向として引き続き持ち直しのよい動きが出ていると。業況判断等々から見る限りは、そのような姿が見える。設備投資についてもそのような姿が見えると思います。

製造業とサービス業のギャップでありますけれども、これも今までの傾向とそんなに違ったものではないと思っています。別の統計によれば、非製造業の方がむしろ早いという統計もあるのですけれども、これまでの短観等々の傾向と実はそんなに違っていないのではないかなと、今の時点では私は思っております。

いずれにしても、今の動きを中小企業に浸透させる。製造業から非製造業に浸透させるということは、引き続き重要な課題だと思っています。

問)

年金についてですけれども、諮問会議の民間議員と厚労省の案を対比したときに、1つ争点になっていたのが、物価スライドで、過去凍結していたものをどうやって解消していくかという点にあると思うのですが。厚労省の方から、これからの物価上昇に合わせてゆっくりと解消していくという案が出されていますが、その案の評価と、大臣ご自身のお考えを伺えればと思います。

答)

これは、正に調整速度の話の1つだと思います。物価が下がっているのだから、早く調整すべきであるというのは、議論としては、私は正しい議論であろうと思います。とりわけ、新たに負担の増加、保険料の引き上げという形で負担の増加を求めるというのであるならば、その給付の側の物価に関する調整というのは、これは出来るだけ早く行うべきであろうと思います。

今申し上げたのは、基本的な考えだと思うのですね。その枠組みの中で、現実の負担感というものとの折り合いをつけながら、できるだけしっかりとした調整をしていくということになるのだと思います。

問)

先程のご発言で公的資金の新制度に関連して、恣意性云々といったご発言もありましたけれども。昨日、自民党の部会でも裁量といっている、金融庁の中の方にお話を伺っても、これまでの事後チェックを中心とした体制よりは、少し事前の取り組みという部分に踏み出したようなことがあるのではないかという見方もあるようですけれども、この辺はどうお考えになりますか。

答)

事前と事後をどのように解釈するかという問題だと思うのですね。例えばですけれども、102条発動に至るようなその危機的な状況の前にという意味では事前ですけれども、当事者の意思決定に事前に介入するということは、これは全く考えていないわけですね。「この法律で、このように申請しなさい」と、「申請しなければあなた大変ですよ」というようなことを言ったら、これは事前介入ですけれども、そんなことは全く想定をしておりません。経営判断に基づいて、その申請が行われた場合に事後的にどうするかということでありますから、その意味での、我々が前から言っているような意味での事前事後の考え方は、これは全く変わっていないのではないかと思っております。そこは枠組みはこれからですので、その枠組みの中で、是非内外でしっかりと議論をしていただきたい、我々も議論をしたいと思います。

問)

短観の先行きについて、日銀の方は円高の影響が少し出るために、プラス幅を小さめに想定されているようです。最近の円高というのは、以前、日経平均が1万円以上だったころは、外人が日本の株を買っていることも一因であると仰っていたんですけれども、最近どう分析されていますか。そこの動向が前と違うと思いますが。

答)

今も外国人が積極的に日本の株を買っているという現状は続いております。これはネットで見るか、グロスで見るかという問題もありますけれども、日本の株に対する期待は引き続き高いというトレンドは、私は続いていると思います。

為替レートの問題は、そういう大きな流れに加えて、短期的な金利の動きでありますとか、将来収益に対する動き、その中には地政学的な要因も入ってくるということで、非常に微妙に、こんなことは皆さんに対しては釈迦に説法かもしれませんが、動いているわけでありますので、それに関して特に大きな判断を私自身が変えているというわけではありません。

問)

今の地政学的リスクの関係ですけれども、イラクに国際貢献すると、自衛隊を出すという決定をされたわけですけれども、それが色々な意味で経済活動ですね、マクロ、ミクロを含めまして、じわじわと影響する面というのはあるのでしょうか。

答)

物事は常に両面あるのだと思います。全く国際貢献しない国だというように見られたときの、この国は一体将来どうなるんだというリスクが別にはあるわけですから。私は、例えば今回の決定で地政学リスクがどうこうして、それで為替なり、株価が影響を受けると、そのような考え方は持っておりません。

問)

あしぎんフィナンシャルグループですけれども、足利銀行が一時国有化されて、グループから離脱した後に株価が1円まで落ちて、その後20数円まで上がるという状況に一時なったのですけれども、1円で買った株主というのは、足利銀行が破綻した後に新しく株を購入した人であって、そういう人が実際1円から20何円まで、この20何倍というマネーゲームのような現象が起きてしまっているという現状、これをどのようにご覧になっているか、それから、どのような対応が必要なのかどうか。

答)

あしぎんフィナンシャルグループというのは、国有化された足利銀行とは基本的には無関係の会社であります。もはや資本関係はありません。そこで、どういう株の動きがあるか、これは個社の株価の動向でありますので、私としてはコメントする立場にはないと思っております。

問)

短観の件ですが、今回、中小企業の製造業のDIが7期連続で改善しているわけなんです。中小企業全般の動きとして若干良くなってきて、先程、大企業製造業の流れが中小に浸透するようにというお話があったと思うのですが、中小企業の現状についてはどのように覧になられていますか。

答)

これは、中小企業庁長官なり、経産大臣がお答えになる問題だと思います。私は、そのマクロの立場から見て、あくまでという形に限定をされますけれども、経済全体としては持ち直しの動きが出ている。ただし、中小企業に対しての浸透度というのは、大企業に比べると、この点は否定できない。そうした観点からも、この芽を中小企業に、地域に浸透させるための更なる努力は必要であると思っています。

(以上)

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