竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

(平成16年4月20日(火)9時09分~9時25分 金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。閣議に関して、私の方から特に報告することはございません。

閣僚懇で、総理が「昨日、郵政民営化の準備室の人事について内示をした」というお話をされました。「渡辺室長、高木、鍋倉両副室長、その上で4月26日に正式に発足」と仰いました。「しっかりそこでやってもらいたい」ということであります。

イラクの問題で、「外務省及び各省の連携は本当に御苦労でした。更に今後も気を抜かずに、各省連携してしっかりと事に当たって欲しい」というお話が総理からございました。

私に間接的に関連する問題としては、金子大臣の方から、昨日、産業再生機構についての懇話会を行ったという御紹介がございました。

私の方からは以上であります。

2.質疑応答

問)

郵政に関連して、明日諮問会議がございますけれども、素案からの変更点、今、原案とはどういうものになりそうなのか、その概要を御説明ください。

答)

基本的には、今まで話し合いをしてきたことについて取りまとめております。大きな変更は基本的にはないと思っております。前回の中でいろいろと御意見が出たもの、例えば職員のモラルに配慮すべきであるという点や、「ここの表現はまだ議論が煮詰まっていない、もう少し一般的に書いたらどうか」という御指摘を頂いているところは、その様に改訂するなどの微修正はあると思いますが、基本的には今まで、前回の骨子を文章で繋いで少し長くなっています。それと、今申し上げたような一部の微修正を行っています。

しかし、まだそれを今回お出しして、その上で議論を重ねて頂いて、最終的に論点整理を取りまとめるということですので、まだまだまさに途上だということです。

問)

それと、イラクなのですけれども、人質の方は解放されたのですが、一方で未だ情勢が緊迫していて、原油高につながっていたり、いろいろ影響は出ていると思うのですけれども、そのイラク情勢の日本経済への影響をどう見るか、現時点での大臣のお考えをお願いします。

答)

実は、昨年の今頃も、地政学的な不確実性という言葉が結構使われていて、日本経済においても、企業収益が昨年の時点で既にかなり高くなっていたにも関わらず、地政学的な不安定性、不確実性の下で、それがいろいろな指標に反映されないという状況であったと思います。

当時に比べれば、その不確実性の意味合いはかなり違ってきているとは思います。しかし、引続きこの点は、経済全体にも影響を与える可能性はありますので、現時点で特段心配しているわけではありませんが、ここはしかし、注意深くしっかりと見ていきたいと思っております。

問)

ただ今お話し頂いた郵政の民営化準備室の人事なのですけれども、高木長官が金融庁のトップとして副室長を兼務されることになりましたが、他の渡辺室長、鍋倉副室長はいずれも官僚OBということで、高木さんだけが現役で、やや異彩を放っているという印象を受けるのですが、その高木さんの役割についてどういう狙いがあるのか伺いたいのですけれども。これは内閣官房が決めた人事なので、大臣からご覧になって高木さんの御立場で果たすべき役割というか、そこに対する期待感みたいなことをお話し頂きたいのですが。

答)

御指摘のように、内閣官房の人事ですので、そのことについてコメントする立場ではありませんけれども、非常に高木長官に対する期待が大きいと思います。それは、郵政改革にはいろいろなエレメントがありますけれども、かなり大きな部分がやはり金融の改革だということだと思います。かつ、官の改革と民の改革が表裏一体をなしている。金融の改革そのものが、例えばですけれども、ドイツやイタリアと比べても、やはり日本の場合、その預金量を見て頂ければ分かる訳ですけれども、非常に大きい。そういう中で、金融のプロフェッショナルである高木長官に対して、官邸は大変大きな期待をしておられるということなのだと理解しております。諮問会議としてしっかりと取りまとめていきますので、これは渡辺室長、鍋倉副室長、高木副室長、それと中城統括官もそうですけれども、ぜひ力を合わせて、総理の御指示を実現するように努力をしなければいけないと思います。

問)

今仰った、高木さんは金融行政のプロであるということなのですが、金融庁長官自体が激務であるということを伺っていますけれども、副室長との兼務は暫定的なものと伺っておりますけれども、今秋以降、法案化の準備が佳境に入ってくると、金融庁長官との兼務というのはなかなか大変なのかなという気もしますが、その本格化するときに当たって、高木長官が副室長に専念されるような局面もあるのか、金融行政を指揮される大臣の御立場から、その辺をどうお考えなのか伺いたいのですが。

答)

これも、官邸と御相談しなければいけないことでありますけれども、副室長も、そして長官も、大変重い仕事ですから、今、暫定的に兼務していただいておりますけれども、やはり然るべき時期に郵政に専念していただくというのが自然なことではないかと現時点では考えております。

問)

その時期というのは、いつ頃でしょうか。

答)

それは、官邸ともよく相談いたします。

問)

株価について伺いたいのですが、昨日、UFJホールディングス株が東京市場で急落したのですが、その要因に、金融庁の検査で不良債権処理が不十分であるとの指摘があったという報道があったと聞いております。大臣は、かねて景気の現在の緩やかな回復局面の1つの要因として、金融システムに対する信任回復が1つ貢献していると、いろいろな場所で仰っていると思いますけれども、昨日の株価急落などを見ると、まだマーケットでは主要行を含めた金融機関の財務的な体力に不安感というか、不信感というのは残っているような気もするのですが、その辺を大臣は如何お考えでしょうか。

答)

まず、出所のよく分からない情報が報道されているということに関しては、これはやはりこの事の性格を踏まえて、議論する側、報道する側にも、いろいろな観点からの風評リスクをかき立てないような御注意をぜひ賜りたいと思います。その上で、我々としては、やはりしっかりとした検査・監督を行うということが、金融システムに対する信頼の基礎であると思っておりますので、常にそういう姿勢でしっかりとした検査・監督を行っております。

マーケットは、その時々の要因でいろいろ変動する性格のものだと思っております。しかし、全体として金融システムが良い方向に向かっているということは、私はどういう観点から見ても明らかであろうと思っております。その中で、各経済主体、銀行や債務者企業には、この経済が良くなっている好機に、やはりバランスシート調整をしっかり進めていかなければいけない。私は、すべての銀行、すべての企業が、今その思いで一生懸命取り組んでいるというふうに認識しておりますので、そうした各企業の努力、また我々がしっかりとそれを検査・監督するという中で、更に日本の問題を良い方向へ持って行くことができると確信しております。

問)

これは、やや紋切り型の話なのですけれども、過去、景気が悪い時には、景気が悪い時に企業再生とか、そういった不良債権処理をするともっと下振れするのではないかとかつて言われたことがありました。景気が良くなってくると、そこでやるとまた水を差すのではないかという声もありますけれども、こういった「ああ言えばこう言う」みたいな議論について、ぜひ大臣のお考えをすぱっとお聞かせ願いたいのですけれども。

答)

90年代に入ってから、日本の経済がなぜ成長力をこんなに落としたか、80年代は4.5%から1%強ですから、やはりその理由を考えれば、もう答えは明らかなのだと思うのですね。やはり、バランスシート調整をしっかりとできなかったからだと。バランスシート調整をやらない限り、経済は良くならない。景気が悪い時に、「今やるとだめだ」、景気が良い時も、「今やるとだめだ」と。これは、まさに先延ばししたい人たちの一種のレトリックなのだと思います。何をやらなければいけないかということを考えれば、これは辛くてもバランスシート調整をやらなければいけない、また辛くても規制改革をやらなければいけない、辛くても財政の健全化が中期的に達成できるようにしなければいけない。当たり前のことを当たり前にやっていくという姿勢を常に持っていないと、やはりマクロ経済もミクロ経済も良くならないのだと思います。

問)

昨日の産業再生機構の懇話会の冒頭でも、大臣はそういったバランスシート調整における再生機構の活用に期待するという御発言がありましたけれども、昨日の懇話会等も通じて、今後、あと残り1年ですけれども、産業再生機構がこれまで以上に積極的に使われていくという感触──これは本来、金子さんが専門でございますけれども、金融の側面からどういうふうにご覧になっていらっしゃいますでしょうか。

答)

銀行の不良債権処理というのと、企業の過剰債務の処理というのは、まさにコインの両面であって、我々は銀行に対して不良債権比率をしっかりと下げていってくれ、オフバランス化をしっかりやっていってくれとルールを決めて、いろいろな努力を求めている。それに対して、どちらが表か裏かはともかくとして、コインの別の面で企業のバランスシート調整をする。それに当たって、産業再生機構がやはり果たす役割というのは、これは当然のことながら極めて大きいと思います。今まで、12件についていろいろやっている、かつ、その中で、これまではできなかったような政府系機関の債権放棄等々についても、それを実現していると。これは、やはり産業再生機構が示している1つのバランスシート調整、それが外部経済効果を持って民間の再生機関にも公益を与えている。やはりトータルで、私は非常に高く評価しなければいけないのだと思います。

より積極的に活用するかどうかというのは、これは民間主体、まさにバランスシート調整をする主体が決めることでありますから、我々が直接的に何か申し上げる立場にはありませんけれども、バランスシート調整全体を銀行側と企業側から進めるという中で、私は、これは更に活用されていく余地があると思っております。

問)

北海道の道州制特区なのですけれども、小泉総理もこれを進めるべく御発言もあって以降、現状はどのようになっているのか、どういうように実現する見通しでしょうか。

答)

詳細の報告は、具体的に今の時点では受けておりませんで、数日中に受けることになっておりますけれども、基本的にはそういう機会をむしろ総理から北海道に与えて、北海道がどのように自主的に取り組むかという、それを今示して頂く段階であると思っています。これは、北海道にとってはやはりチャンスだと思いますね。地域にも、今のマクロ経済の好調が及びつつある中で、一番遅れているのは北海道であると。そういうことも踏まえれば、やはり非常に野心的に改革的なマインドを発揮して、この道州制特区の枠組みを活用して、自らが地方で出来ることはまさに地方でやれる仕組み、それについて如何に知恵を出してくれるか、自分たちの意志を示してくれるか、私たちはそういうものを待っております。

問)

昨日の日銀の支店長会議で、今お話があった北海道は少し元気がないという報告だったのですが、それ以外の地域では、大分、明るさが強くなってきたという報告がありました。そういった中で、過去にもお話を伺っているのですが、一部の支店長から、やはり素材価格の高騰が経済にとっての今後のリスクだという意見も出されたのですが、こういった点の御所見をもう一度伺えますでしょうか。

答)

素材価格の話は、月例経済報告等々でも何度か出ているテーマであります。我々も、それをしっかりとウォッチしなければいけない。まずは、産業別には、当然、経済産業省の方でしっかりと見ておられると思いますし、各経産局、財務局等々でも問題意識を持って見ていると思っております。

過去にもこういうことがありました。過去とどのように違っているのか、過去の経験から学べることは何なのか、そういうようなことを我々も、今、問題意識を持ってそのウォッチをしているところです。現時点で、これによって非常に特別のことが今起きているという認識は持っておりませんが、今、御質問の中にあったリスクファクターとしては、しっかりと今後に渡って見ていかなければいけない、そういう問題意識で見ているところであります。

(以上)

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