竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

(平成16年7月6日(火) 9時37分~9時55分 金融庁会見室)

1.発言要旨

おはようございます。

閣議がございました。閣議、閣僚懇を通して、特に私の方から今日は申し上げることはございません。

2.質疑応答

問)

先般の日銀短観で、まだら模様がありつつも、業況判断がかなりバブル以降最高まで回復していると。一方で、米国で利上げ等もありますけれども、こういった経済状況全般について、改めて現状認識をお聞かせください。

答)

まず、短観については、もう御承知のように、企業部門の回復というものが極めてはっきりと確認されたという結果であったと思います。こういう流れを、是非閉ざすことなく、しっかりと本物にしていきたいと、そのために、やはり改革を進めなければいけないということと、デフレ克服に向けた更なる政府・日銀の協力をやっていかなければいけない、それに尽きると思います。基本的には、やはり改革というのは、やるべきことをやっていけば、その成果は必ずついてくるということを示していると思いますので、これまでの実績を踏まえて、そのことは更にしっかりとやっていくということだと思います。

アメリカの経済ですけれども、我々にとっての最大の関心事は、アメリカ経済が加熱を避けながら持続的な改善を続けていく、その1点にあると思います。その意味では、コア物価、消費者物価が、それまで大体1%ぐらいの水準だったのが1%の後半ぐらいにまで上がってきた段階で、非常にモダレートな金利の引き上げが行われたということは、更に景気回復を持続させるという観点から、非常に適切な政策が取られたと思っています。そういう意味では、経済もさることながら、やはり経済運営に対する信頼性が市場でも引き続き保たれているということだと思いますので、我々も引き続きアメリカ経済をしっかりと注目していきたいと思いますが、先般の利上げに関しては、今申し上げたような認識を持っております。

問)

今日、社会保険庁の長官等について、坂口大臣の方からいずれ発表があるように聞いておりますが、それにも関連して、大臣は最近、社会保険庁ないし厚労省について、政府のタイムリーエラーだったというような発言をされておりますが、このエラーというのは具体的にどの範囲のことを指しておられるのか、そしてその責任は誰がどのように負うべきことなのか、その辺の認識をお聞かせください。

答)

例えば、色々な情報の漏えいの問題とか、統計の数値を分かっていたのではなかったのかとか、そういう色々な批判がマスコミでなされていますよね。私は、担当ではありませんから、その真偽のほどを全て100%承知しているわけではありません。しかし、年金改革という極めて重要なことをやらなければいけない時期に、少なくともそういう疑惑を持たれているということ自体が、やはり政府の重要な部署としては、私はエラーだと思います。その意味で、やはりこの組織のガバナンスはどうなっているのだと、そういう声は諮問会議の中でも極めて強い。これは、人事についても、私は人事権者ではありませんからコメントする立場にはありませんけれども、長官を変えるというのは、極めて当たり前の最初の一歩だと思います。重要なことは、これを総理は「もう民間人をたくさん入れる」というふうに言いましたけれども、私が金融担当大臣に就任して1カ月で、非常に包括的なプログラムを作った。やはり、そういうことをやっていただかなければいけないのではないでしょうか。新長官がどなたになるか、私はコメントする立場にはありませんが、そういう方がやはりガバナンスを発揮して、1カ月程度でコンプリヘンシブな包括的な改革を作っていただく、そのことは最低限必要なのではないでしょうか。その意味では、人事というのは本当の最初の一歩だと思います。

問)

ちょっと今のに続いて、選挙で大臣が仰られていることの関連で、出馬された理由として、レンタル選手のデメリットとして、官僚が、レンタル選手だといつかはいなくなるだろうということで何もしなくて改革が遅れるという話を何度かされていると思いますが、これはどこでお感じになられたのか、9階でしょうか、5階でしょうか。

答)

私が直接担当しているところでは、さすがにそんなことはありません。これは、やはり上司ですから、皆さん頑張ってくれていますよ、そうではないところです。

私は、いわゆる縦割りではなくて、横割り大臣ですね、経済財政というのは。全ての省庁に関連した政策をとりますけれども、その関連している省庁、特に幹部はみんな知っているのではないですか、皆さんの方が、よく知っているのではないですか。

問)

金融庁の高木前長官の顧問就任について何点かお伺いしますが、2日の新旧長官の会見で、高木さんは「2日の朝大臣から言われまして知りました」と仰っておられました。今回の高木さんの顧問人事は、どなたの発案で、どなたが依頼されて決まったことなのでしょうか。

答)

基本的には、これは私が決めました。金融の行政は、これからやっていかなければいけないことがたくさんあります。その時に、やはり高木長官は、私が就任してから─私は非常に微妙な難しい立場で大臣に就任したわけですけれども、その中で、先程9階の方々、5階の方々、一生懸命やってくれるというふうに申し上げましたけれども、そういう間に立つ形で、高木長官は本当によくやってくださったと思います。だから、結果がここまで出てきたのだと思います。今後、不良債権問題の終結、それと特に金融セクターの更なる充実、強化に向けて、問題が山積しているわけですけれども、引き続いて、やはり大所高所から色々アドバイスをしていただく、私は、これはごく自然のことだと思います。

例えば、元長官の日野さんとか、前々長官の森さんも、同じように金融庁顧問への就任をお願いしたという経緯がありました。その意味では、これまでの行政の経験も踏まえて、色々大所高所からアドバイスしていただく。私としては、ごく自然に決めたつもりであります。

問)

前任の森さんの場合は、しばらく顧問専任ということで、その後、結果的に顧問をお辞めになられて、他にお移りになられたといういきさつでございましたが、高木さんの場合は、次の職というか、公務員としての職が極めて多忙かつ重大な責を負う職を持っていらっしゃるということで、今後、どういうふうに活動されるのかということなのですけれども、高木さんは金融庁に、例えばある程度は登庁されるということなのか、あるいは、例えば顧問室というものが前回までと同様設けられるということなのでしょうか。

答)

ちょっとそういうオペレーショナルなことは、まだはっきり言って考えておりません。私自身、なかなかこういう状況で、前長官、新長官、新局長ともまだゆっくりお話ができていない状況ですので、来週早々にでもゆっくりとお話をして、私が期待すること、これは顧問に対しても、新長官に対しても、新局長に対しても、そこはしっかりと話をしていきたいと思います。

問)

顧問制度一般と言うか、役所のトップを務められた方が顧問に就くというか、自然なことだというお話でございましたが、一般論として、ちょっと言葉は悪いですけれども、普通は次の天下り先が見つかるまでのつなぎポストとして顧問につかれるケースが多いという印象を我々は持っているのですけれども、大臣は顧問制度一般についてはどうお考えになっておられますか。

答)

私は金融担当大臣になってから、非常に多様な顧問制度というものを活用しているつもりです。今のタスクフォースメンバーは、みんな顧問ですよね。それと、「金融再生プログラム」を作る時の、いわゆる竹中チーム、プロジェクトチームのメンバーも、みんな顧問です。コンプライアンス室の両先生も顧問です。私は、顧問というものを非常に多様に活用して、よく皆さんも仰るのではないですか、役人だけでやるのでなくて、民間の知恵を活用しろ、外部の知恵を活用しろと。それを一番活用しやすいのは、1つの形態として顧問。特に、金融庁の場合は守秘義務がありますから、顧問契約を結んでしっかりやると。これは、こういう活用を、民間人を含めてもっと数を私は増やしてもよいのではないかというふうに思っています。

問)

今月の中旬以降、いよいよ郵政の民営化問題について最終案の策定作業、議論が本格的に始まると思いますけれども、大臣も今それに向けて、色々頭の中を整理なさっているところだと思うのですが、現時点で具体的な最終案の形態について、どういうイメージを持たれているのかということをお聞かせ願いたいのですけれども。

答)

選挙の活動で大変忙しいのですけれども、実は郵政の問題だけは、この後すぐ議論しなければいけないので、私も自分自身の頭の体操とスタッフとのディスカッションというものを、実は深夜まで、ほぼ連日かなりやっております。

その中で、当然のことながら、選挙が終わってからしっかりとその議論を煮詰めていくということになりますけれども、これは中間取りまとめの段階で、既に我々として問題意識として持っていることですけれども、やはりこの郵政の民営化というのは、郵便、ロジスティックス部門が大変重要であると同時に、金融に関して言うと、戦後最大の金融制度改革なのですよね。戦後最大の金融制度改革、ひょっとしたら、明治維新以降最大の金融制度改革と言う人もいるかもしれないぐらいのものだと思います。預金量が4メガバンクの合計よりも大きい、それが今、国営の金融機関であって、それを市場経済にどのように統合していくか。目的は、あくまでも国民の利便性を高めることです。

一方で、だから、考えなければいけないことは2つあって、いかにしてこの利便性を高めるかという点、これが1つの重要なポイントになります。そこをまず詰めなければいけない。同時に、これだけ大きな組織ですから、先程日本の市場経済に秩序正しくインテグレートしていくということを言いましたけれども、その時の混乱をいかになくしていくかということだと思います。更に具体的に言えば、その時の混乱をどうなくしていくかという時に、やはり一番重要なポイントになるのは、バランスシートの借り方で政府保証の債務がある。政府が保証している預金を受け入れていて、それを国債で運用している、ないしは国に対する、政府系機関に対する貸し付けで運用している。このバランスシートの部分、今言ったバランスシートの固まりを、いかに切り分けてきちっと管理していけるかというところが、最大のポイントになると思っています。それについて、具体的な議論をやはりいかにしっかりできるかが、この金融面から見た郵政改革の最大のポイントになると思います。

問)

2点伺いたいのですが、地銀、第二地銀の不良債権比率が随分下がっているという指摘が五味さんからちょっとあったのですけれども、それについての御見解を1つと、それから金融庁も新体制になりまして、「強化重点プログラム」ですか、これをどのように進めていかれるのかをちょっと伺いたいのですが。

答)

まず、地銀、第二地銀等々につきましては、これはリレーションシップバンキングの枠組みを作ったわけです。御承知のように、リレーションシップバンキングの枠組みで強化計画を皆さんに出してもらったのが、昨年の8月だったのですよね。実質、その8月から稼働し出してまだ1年です。その過程で、少しずつではあるけれども成果が出て、そういう結果が出てきているというのは、これはやはり良い傾向だと思います。我々としては、このリレーションシップバンキングを、まだ1年ですから、これをしっかりと定着させて、より前向きな対応を各地銀にとっていただきたい、その方向で引き続きやっていくつもりです。

金融の「重点強化プログラム」については、これは「金融再生プログラム」の後ということでしっかり作るということをやっていますけれども、これも夏から集中的に議論を始めなければいけないと思います。従って大きな目途としては、今年中にやはり中間報告的なものは出さなければいけないと思います。その上で、また御議論を広くいただくということが必要になってくると思っています。その中身については、これはこれからですけれども、「金融再生プログラム」というのが銀行部門の不良債権という、いわゆる負の遺産の解消に焦点を当てたものだったわけですけれども、今回の「重点強化プログラム」は、銀行部門だけではなくて保険、証券とか、金融システム全体を強化するものでなければいけないと思っておりますし、中身も負の遺産の解消ではなく、より前向きのもの、いわゆるプロアクティブなものでなければいけないと思っています。

問)

今、プロ野球の近鉄とオリックスの合併問題が色々取り沙汰されていますけれども、大臣としましては、球団の合併ですとか、1リーグ制への移行についてはどのようにお考えになっておられますか。

答)

これは、金融担当大臣として答えなくていいわけですよね。

では、一ファンとして答えさせていただきます。

野球というのは、本当に国民的なスポーツだと思います。個人的にも大好きなスポーツです。この間、甲子園球場の前でも話をさせていただきましたが、その野球というものが、今、大リーグという国際的な競争に晒されていて、その国際的な競争の中でどのように国内体制を立て直すかという問題だと思うのですね。

色々な御意見はあるかもしれませんけれども、私は例えば15年とか20年前ぐらいにもっと自由化をしておいて、球団の数を増やしているというチョイスはあったのだと思います。しかし、そういうチョイスは現実にはとられなかったわけで、そこに来て必ずしも十分な国際競争力がつけられる前に、大リーグからの競争圧力がかかってきた、これが日本のプロ野球システムの現状だと思うのですね。

そういう中で、1つの試みとして、特に日本の場合フランチャイズ制が必ずしも定着していなくて、特定球団に対する非常な偏りがありますから、そういったことも踏まえて、球団の数を減らして1リーグ制にするとか、そういうものは、私はやはり1つの考えられるべきチョイスであると思います。

ただ、一ファンとしては、それでももっと幾つかの工夫があっても良いような気がするのですね。その場合に、ではオールスター戦をどうするのだ、東西対抗はやるのかとか、日本シリーズは一体なくなるのかと。いや、これをゾーンに分けて─アメリカのようにナショナルリーグの中でもゾーンに分けてプレーオフをやるわけですよね。そういうようなシステムを考えられてよいのではないか。これは、あくまでも何のためにやるかというと、アメリカの大リーグの挑戦に対して自らが競争力をつけて─競争力というのはファンに対する魅力という意味での競争力ですね。それをつけるためにやるのですから、ファンがわくわくするような、そういう改革でなければ、これは意味がないと思いますね。

幾らでも話せますけれども、このぐらいにさせていただきます。

問)

選挙戦で、最近の演説で、御自身にある程度の信任をいただかないと、小泉改革そのものが頓挫するという表現を何度か使われているかと思うのですが、その「ある程度の信任」というのは、一種のレトリックだとは思いますけれども、これはどの程度のことをイメージされているのか、もし何かお答えいただけるのならお願いします。

答)

まさに、レトリックです。これは、何票とか数字や順位で表されるものではないと思っています。ただただ、一生懸命汗を流させていただいて、少しでも、1票でも国民の皆さんから信任をいただけるように頑張るつもりでおります。

(以上)

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