伊藤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成17年1月11日(火)10時50分~11時09分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

閣議でありますが、閣議において私から英仏訪問についてご報告をさせていただきました。閣議で私の方に関係する案件は以上です。

【質疑応答】

問)

新年の抱負をお伺いしたいと思うのですが、去年は昨年末に「金融改革プログラム」を策定されまして、今年は4月にペイオフ全面解禁を控えられておりますが、金融行政についての方針、抱負をお願いします。

答)

今年の抱負でありますけれども、金融サービス立国元年と位置付けられるような1年にしていきたいと思っております。そのためには3つのことが重要ではないかと思っております。

1つは、「金融再生プログラム」の総仕上げというものをしっかりやっていくことであります。現在、主要行の不良債権比率というものは順調に低下をしているわけであります。各銀行ともこれまで相当な努力をしてきていただいているわけでありますが、不良債権問題正常化に向けて最後のトンネルを完全に抜けきるためにもう一踏ん張りお願いをしたいと思っております。それと共に今ご質問にありましたように、4月にはペイオフ解禁拡大を予定通り実施していきたいと思っておりますので、我々といたしましてはペイオフ解禁拡大を円滑に実施していくために検査・監督を通じて適切な対応をしていきたいと思っております。一方、金融機関の経営者の皆様方には預金者や、或いは取引先、そして株主等ステークホルダーにとって何が最善なのかと、そうした視点から真剣に経営に当たっていただきたいと考えます。

そして2点目は、「金融改革プログラム」のスタートをしっかりきっていきたいと思っております。そのためにはこの構想のロードマップと言われる「工程表」を16年度末までにできるだけ速やかに策定して、そして公表させていただきたいと思っておりますし、この改革プログラムに基づいた諸施策というものを着実に推進をしていきたいと考えております。

そして3点目は、活力ある金融システムというものを構築していくために、幾つかのキーワードがあると思っておりますが、私は3つのキーワードを大切にしていきたいと思っております。1つは競争、2つ目には法令等の遵守、そして3つ目は利用者重視。コンペティション、コンプライアンス、そしてカスタマー、この3つの「C」というものを大切にしていきたいと思っております。言うまでも無く、健全な競争を促進していくためには規制の総点検を行って、規制改革を通じて活力を引き出していくことが非常に重要であります。そしてその一方で、違法な競争や、或いは不正な取引に対しては厳正に対応をしていく、法令等の遵守というものを徹底していくことも必要であります。その結果として利用者のサービスがより充実するような環境というものを行政としてしっかり整備をしていかなければいけないと考えております。

問)

閣議でもご報告されたということですが、英仏を先週訪問されたことについてですが、現地の当局者の方々と具体的にどのようなやり取りをされたのかご紹介をいただきたいのと、出張からお帰りになってご感想を総括してお伺いできますか。

答)

英仏を訪問させていただいて、英仏の金融当局者の方々とそれぞれの金融セクターの現在の動向、或いは金融行政の取組み、経済状況について意見交換をさせていただきました。トップ同士で信頼関係を構築することができたというのは今後それぞれの当局との協力関係を深めていくに当たって大変意義深いものがあったと私自身考えております。イギリスにおいては、金融監督者同士の定期協議が行われているわけでありまして、今年もロンドンで開催が予定をされております。

またフランスのノワイエ・フランス銀行総裁と会談をさせていただいて、総裁からは日本の当局との関係というものをより緊密にしていきたいというお話がございました。今後、具体的にどのような形でこの協力関係というものを発展させていくか、お互いの国の金融サービスの発展のためにより緊密した連携というものを図っていきたいと考えておりますし、また国際的なルール作りに貢献していくためにも日仏の協力関係というものを強化していくことも非常に重要だと考えておりますので、事務方で協力関係の一層の推進のために協議を続けていきたいと思っております。

問)

大臣が英仏ご訪問中に、偽造キャッシュカードについての対策を金融機関に求めていくという金融庁の方針についての報道が相次いでなされたのですが、この内容について大臣の方からご説明いただけますでしょうか。

答)

現在、偽造キャッシュカードによる不公正な行為については、私共として実態調査を行っております。この実態調査の結果を踏まえて、より実効性のある犯罪防止策というものを速やかに検討するよう、来月中を目途に金融機関に対して要請することとしたいと考えているところであります。

諸外国において利用者の負担を制限する対応がなされている例があることは承知をいたしておりますが、諸外国では必ずしも法律で手当てをされているわけではなくて、銀行業界の自主規制ルール等で対応している例もあると承知をいたしているところであります。

金融庁といたしましては、我が国において最近の犯罪技術の巧妙化等の実態に的確に対応しつつ、そして利用者保護の実効性を確保するために現状の対応で良いか、或いは見直しをする必要がないか、真剣に検討することとしたいと思っております。

問)

日本では法制化までをお考えなのでしょうか。

答)

先程お話をさせていただいたように、諸外国では利用者の負担を制限する対応がなされている例と、そして必ずしも法律で手当てされていない例があるわけであります。私共としては今の実態調査をしておりますので、実態に即した形でより実効性を確保するために現状の対応で良いか、見直しをしていく必要があるか、そうした観点から検討を進めていきたいと考えています。

問)

新年の抱負の二つ目にペイオフ解禁拡大の円滑実施ということになっているのですけれども、昨年も色々伺いましたけれども現段階として日本の金融システムについて、ペイオフ解禁に向けて十分それを受け入れる状況にあるのかどうかそこら辺について改めて伺います。

答)

ペイオフ解禁拡大を目指して金融システムの安定化のために改革の努力を続けてきたわけであります。私共としては予定通り今年の4月にペイオフ解禁を拡大できる状況にあると考えておりますが、この金融システムの安定化に向けてそれぞれ更に努力をして行く必要があると考えています。その努力の点というのはより緊張感を持って、各金融機関においては経営基盤というものを強化し、そして収益力を向上していくことが必要だと考えております。また情報開示については一層分かり易く丁寧に説明していくということも大切ではないかと思っております。一番重要なことは預金者、或いは取引先そしてステイクホルダーにとって何が最善なのかということを金融機関の経営者の方が考えて、そして真剣に経営の改革に当たっていくということがとても大切なことだと思っております。

問)

アドバイザリー・チームの木村剛さんが退任されました。日本振興銀行の社長に就任することに伴うものであるということですが、色々今までアドバイスを受けられて今回の退任をどう受け止めていらっしゃるかということと、個別のことになりますがこの銀行は中小企業融資に特化した銀行ということでかなり期待されていたのですが、今回の社長交代には役員の退任等の色々な問題が背景にあったと言われているのですが、この銀行の経営についてどう御覧になっているのかをお願いいたします。

答)

木村さんについてはアドバイザリー・チームのメンバーにご就任をしていただいていたわけでありますけれども、日本振興銀行の社長になられるということでチームのメンバーから退任したいというお話が新年明けにございました。木村さんのご判断でありますので私共もそのことを尊重させていただきたいと思っております。

また日本振興銀行の後段の御質問についてはまさに人事に関することでありますから、詳細なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。一般論で申し上げれば中小企業融資というものを円滑に行っていくということは非常に重要なことでありますし、全ての金融機関が中小企業金融の円滑化に向けての取組みも一生懸命行っていきたいということを表明されているわけでありますので、そうした中にあってこうした中小企業金融の円滑化のニーズに的確に応えていけるような経営改革というものをしっかり進めていただきたいと思います。

問)

木村さんの件ですが、アドバイザリー・チームの一員に入れたことについて、ご本人は金融機関を相手にビジネスされております。日本振興銀行では非常に大きな影響力を持っていて、今度は社長になられましたけれども、この選任に問題はなかったのか、その点はいかがでしょうか。

答)

これはアドバイザリー・チームを編成させていただく時にもお話をさせていただいたように、このチームにおいては個別の問題を議論していくのではなくて、新しいフェーズに入りつつある金融行政をどのような形で展開をしていくのか、金融システムの活力を引き出していくためにそれぞれの実務に精通した専門家の方々から幅広く意見を伺っていきたい、本来であればお一人お一人に、詳しく専門家の方々から意見をお伺いさせていただくことができれば良いわけでありますけれども、それは物理的、時間的に限界がありますので、そうした中でITの分野でありますとか、或いは金融の分野でありますとか、コンプライアンスの分野でありますとか、それぞれの分野の専門家の方々にチームのメンバーになっていただいて、集中的にご議論をいただき、そして御提言や御意見を賜る、そうしたチームを編成させていただいたところであります。そうした提言については、私共の責任において「金融改革プログラム」を策定させていただいたわけでありまして、そのチームにおいてプログラムを策定したわけではありませんので、そういう意味からしますと、私はこのチームの方々に非常に大所高所から良い意見を出していただくことができたのではないかと思います。

問)

利害関係者をそういったチームに入れることについて問題はないというお考えなのですね。

答)

やはり実務に精通した方々というのは何らかの形で金融に関わる方々でありますので、厳密に利害関係者を排除していくということになると、専門家の方々の意見を幅広くお伺いするということがなかなかできなくなってしまう。そうすると地に足が着いた次のステージの「金融改革プログラム」を作るに当たって、やはり多くの方々の見識を活用したプログラムをなかなか策定していくことはできないわけであります。そうした中において利益相反や、或いは個別の利害というものが金融行政に大きな影響を与えないということをしっかり担保する中で、一般論としての幅広い意見をいただくためにアドバイザリー・チームというものを構成させていただいたと思っております。

問)

今回の日本振興銀行のトラブルと言うか内部統制の問題の中で、内部にいた方々からの指摘の中で木村さんが金融庁の顧問をやっていて、銀行の許認可を受ける段階で影響力を持っていたのではないかというような指摘があるのですが、これについて銀行の許認可を日本振興銀行が受ける段階で、木村さんがいるということで他の銀行と比べて許認可手続きについて利益があったということはないのでしょうか。

答)

そうしたことはございません。免許の付与に当たっては、審査に当たってはルールに基づいて厳正に審査をさせていただいております。

問)

この問題でいきますと、銀行の許認可手続きについて一般の預金者、周りの人間が基本的に分からない状況の中でやり取りがあると思うのですが、そこのところをもう少し透明性を高めるとか、そういった許認可を巡る部分でもう少し改善の余地というものがあるのかどうか、そこのところをどうお考えでしょうか。

答)

許認可に対する適切性というものを確保していくために今御指摘のあった透明性というものを確保していくことは非常に重要だと思っております。従って私共としては、そのルールに基づいて適切に審査を行わさせていただいているところでございますので、何か具体的な問題点の指摘があれば、そのことを私共としても謙虚に受け止めていきたいと思っておりますけれども、今ご指摘の点については、私共としては適切に免許の審査というものをさせていただいたと考えております。

問)

現状のやり方で問題はないということですか。

答)

問題はないと思います。ただし、一般論として全体的に金融行政に対する信頼というものをより以上に確保していかなければいけない、これは「金融改革プログラム」の中で打ち出させていただいております。特にフェーズが展開して未来志向の金融システムというものを作り上げていくために行政の基本的なあり方というものを変えていかなければいけないということで、3つの視点からこれからの金融行政のあり方について明確に「金融改革プログラム」の中でも盛り込まさせていただいたところであります。そうした視点の中で今「総点検プロジェクト」というものも推進させていただいておりますし、今後の金融行政のあり方については不断の見直しをしていかなければいけない、信頼確保のための努力は続けていかなければいけないと考えております。

問)

偽造カードの件でちょっと細かいことなのですが、出張先での懇談の中でもお話が出たかもしれませんが、実態調査というのは具体的にどういったところを対象に、どういったことを調べているのかということが1点と、もう1点は今回のこのまだ検討中ということなのですけれども、銀行側への負担というものに対して、金融界の方からは逆に「なりすまし」による犯罪を増長させるのではないかという懸念がかなり強く出ているのですけれども、それについてどのようにお考えなのか、その2点についてお伺いしたいのですが。

答)

1点目についてでありますけれども、この実態調査については金融機関を通じて現在の偽造キャッシュカードを巡る金融犯罪の実態というものを調査させていただいておりますし、当然関係の機関とも連携を取りながらその実態把握に努めているところであります。

そして2点目のご質問の点でありますけれども、「なりすまし」の問題も含めて私共として一番重要なのは利用者を保護していくための実効性ある防止策というものをしっかり作り上げていくことだと思っております。そうした観点から今の対応で良いのか、見直していく必要があるとすればどういう点の見直しをしていかなければいけないのか、真剣に検討を進めていかなければいけないと考えております。

いずれにいたしましても、今非常に重要なことは実態というものを正確に把握していくということだろうと思います。特にこの分野については、その犯罪の手口と言いますか、巧妙な偽造キャッシュカードを作り上げる、或いは巧妙な手口というものが行われているわけでありますから、その実態というものをしっかり把握していきたいと思っています。それを踏まえた上での防止策というものを作り上げていかなければいけないと思います。

問)

関係機関の中には当然捜査当局も含まれると考えてよろしいでしょうか。

答)

関係機関ともよく協議をして、実態の把握に努めながら対応策というものを考えていきたいと思います。

(以上)

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