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伊藤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成17年4月1日(金)9時42分~10時05分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

本日の閣議でございますけれども、私の方から閣議について御報告をさせていただく案件はございません。

一方で皆様方にお話をさせていただきたいことがございます。始めにペイオフ解禁実施にあたっての所感を申し述べさせていただきたいと思います。

本日より、預金等定額保護(元本1千万円までとその利息の保護)の範囲が定期性預金から普通預金や別段預金にまで拡大し、これをもって、決済用預金を除く全ての預金について、預金等全額保護の特例措置が終了することとなります。

預金等全額保護は、金融危機対応のための臨時異例の措置として平成8年6月から平成14年3月まで講じられ、平成14年4月には、定期性預金について全額保護が終了いたしました。一方、普通預金等については、本年3月まで全額保護が継続されてきたところであります。

金融行政においては、その間に、構造改革の一環として不良債権問題の正常化に取り組み、また少額預金者の保護制度とは別に決済機能の安定確保のための制度を整えるなど、ペイオフ解禁の実施に向けた準備を行ってきたところであります。

今後は、金融機関が市場規律の下で更に緊張感を持って経営基盤の強化に取り組むこととなり、その結果、金融システム全体の安定性が継続的に維持・増進することが期待されます。金融システムの枠組も、金融機関の自己責任と市場による規律付けが中心となり、行政による規律付けは補完的な役割に移行することになります。

また、預金者にとっても、自らの判断と責任において金融商品や金融機関を選択することとなり、言わば金融機関が預金者の選択と信頼を競い合う新たな時代を迎えたことを意味いたします。

こうした「選択と信頼」を基盤とする金融システムが円滑かつ安定的にその機能を発揮していくよう、金融行政としても、引き続き、効果的かつ効率的な検査・監督の実施に努めるなど、適切にその役割を果たしていく所存であります。

次に、皆様もご存知の通り、昨日をもって「金融再生プログラム」の対象期間が終了し、本日より、「金融改革プログラム」の対象期間である「重点強化期間」がスタートいたしました。先程のペイオフ解禁の実施にも象徴される通り、我が国の金融システムを巡る局面は、不良債権問題への緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面へ踏み出すこととなります。「金融改革プログラム」については、3月29日にそのロードマップとして「工程表」を発表させていただいたところでありますが、新しい年度を迎え、金融庁といたしましては、この「工程表」に基づき、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られ、そして地域経済にも貢献できるような金融システムを「官」の主導ではなくて、「民」の活力で実現することを目指してまいりたいと考えています。

以上であります。

【質疑応答】

問)

閣議、閣僚懇でペイオフ解禁絡みの話というのは全然なかったのでしょうか。

答)

今日はペイオフ解禁関係の話はございませんでした。

問)

ペイオフ解禁絡みで、例えば総理から、今日に限らず最近話とか、御指示とか、何かなかったですか。

答)

最近はございません。総理も国会で答弁をされているように、「『金融再生プログラム』の諸施策を展開することによって、不良債権問題の正常化に向けて着実に進展をしている。そして不良債権問題の正常化を実現するにあたって『金融再生プログラム』においては、平成14年3月期の不良債権比率を平成17年の3月期においては概ね半減させるという目標を立てさせていただいているわけでありますが、その目標に向かって着実に進捗している」と、こうした御発言をされておられますので、そうした意味からも今日特に総理からも、或いは閣僚懇でペイオフ解禁拡大についての御議論はございませんでした。

問)

それに関連するのですけれども、いわゆる不良債権処理というのが最大の課題であった「金融再生プログラム」が終わりましたけれども、地域金融機関も含めて現状認識と言うか、全く懸念材料というものはないのかどうか大臣の認識をお伺いしたいのですが。

答)

不良債権問題を正常化していくために主要行においては「金融再生プログラム」の諸施策に取り組み、また中小地域金融機関においては「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づいて様々な取組が行われてきたわけであります。こうした取組を通じて金融機関のリスク管理態勢や、或いは資産査定の信頼性というものは全体として大幅に改善されてきている状況にあり、それを反映する形で我が国金融機関は全体として不良債権比率の低下や、或いは自己資本比率の改善が見られるところでございます。

いずれにいたしましても、ペイオフ解禁の実施後は私共によるチェックだけではなく、利用者の目でありますとか、或いは市場規律の下で金融機関が自己責任に基づき経営を行いながら自らの財務の健全性の確保を図ることが重要であると考えております。そしてペイオフ解禁の実施は、こうしたプロセスを通じて我が国金融システム全体の持続的な安定の確保を目指していくものであると考えているところです。

問)

先程も少し触れられましたけれども、今度「金融再生プログラム」に替わって4月から「金融改革プログラム」がスタートします。その「工程表」も先日発表されたわけですけれども、「工程表」と今触れた「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」の二つについて、大臣のお考えをちょっとお聞きしたい。

答)

金融サービス立国を実現していくと、こうした目標を掲げさせていただいているわけでありますけれども、「工程表」は金融サービス立国に向けた具体的なロードマップを示すものであります。従って「工程表」に書かれた策を今後着実に実施することによって、利用者の満足度が高く国際的にも高い評価が得られ、そして地域経済に貢献できるような金融システムを官の主導ではなくて民の力で実現できるように、私共としても全力で「金融改革プログラム」の諸施策を実施していきたいと思っております。

それから新たなアクションプログラムの問題でありますけれども、各中小地域金融機関に対して地域の特性を踏まえた個性的な計画を策定して、そしてその自主的な経営判断の下で「選択と集中」により事業再生、中小企業金融の円滑化、経営力の強化、地域の利用者の利便性の向上を図ることを要請させていただいているところでございます。金融庁としましては、今後中小地域金融機関において、新たなアクションプログラムに基づき自己責任と健全な競争の下で、地域密着型金融の一層の推進を図り、そして地域の金融ニーズに一層適切に対応すると共に経営の健全性を確保し、地域の利用者から十分な信任が得られることを期待いたしているところです。

問)

偽造キャッシュカードの件ですけれども、金融庁のスタディグループが昨日中間取りまとめを出しました。与党内では立法化の作業を進めようという声もありますけれども、立法化の可能性も含めて大臣どのようにお考えでしょうか。今後預金者保護に向けてどうしていったら良いかお考えをお聞かせください。

答)

スタディグループにおける中間取りまとめを公表させていただいたところでございますけれども、被害が発生した場合の被害者の方々に対する補償の問題については、やはりその実効性というものがしっかり確保されるかどうかということが重要なことだろうと思います。そうした意味からも諸外国においては必ずしも法律ではなく、銀行業界の自主規制ルールで対応している例もあると承知をいたしております。現時点で法律改正が不可欠との認識に至っているわけではありませんが、諸外国の例等も参考にしつつ、スタディグループにおける偽造キャッシュカード問題に関する今回の中間取りまとめ、そして4月下旬の最終取りまとめに向かって更に検討を進めていただくことになりますが、こうした検討結果を受けて更なる偽造キャッシュカード対策を検討し、そして逐次実施に移していきたいと考えております。

問)

ペイオフについて改めてですけれども、この2、3年、主要行の大口の不良債権問題、それからその後、りそな、足利、昨年もUFJと、もう一つ対応を誤っていれば今日この日はなかったのではないかということもありますが、改めて今日、こういう形でペイオフ解禁を迎えられたことについて所感を伺いたいと思います。

答)

やはり日本経済を再生していくために不良債権問題を解決していくことは極めて重要な課題でありましたし、またこうした問題を解決していく構造改革の一環としては、ある意味では最大の関門として位置付けられていた問題でもあります。私が金融担当大臣に就任させていただいて、そしてペイオフ解禁拡大を円滑に実施して行くということは、私にとっての一つの大きな課題でありましたので、そうした意味からいたしますと、このペイオフ解禁拡大に向けた諸準備を進めて本日この日が迎えられるということを以って、ある意味では金融を巡るフェーズというものが大きく転換をしていくことになろうと思います。

またこの2年半、副大臣としても不良債権問題の解決について「金融再生プログラム」を策定し、それを着実に実施することによって、一つ一つの問題を解決しながら内外の我が国金融システムに対する信頼というものを回復していくために、金融機関の皆様方にもご努力をいただきました。私共としても努力をしながら金融再生に向けての取組をいたしてきたところであります。

ここでもう一度私共として心して行かなければいけないのは、やはり金融行政の一番大きな目的というのは、金融機能や或いは金融資本市場の可能性、こうした可能性というものを利用者の方々が十分活用できるような環境というものを整備して、そして同時に利用者の方々が安心して信頼感を持ってこうした金融機能や或いは市場というものを活用できるような環境を作り上げていくことが極めて重要でありますので、その前提として金融システムを安定化させていかなければいけないわけでありました。今後は金融システムの安定性を維持していくということだけでなく、やはり金融システムそのものを活力あるものにしていく、利用者の満足度が高くて、国際的にも高い評価が得られ、そして地域経済にも貢献できる金融システムを民の力によって実現できるように「金融改革プログラム」の諸施策を着実に実施していく必要があると思っております。

またペイオフ解禁拡大は、先程もお話をさせていただいたように、金融機関が預金者の選択と信頼を競い合う新たな時代を迎えたことを意味するわけでありますので、今後は健全な競争の下で、そして預金者の目と市場の規律の下で金融システムの安定性の維持が図られ、そして我が国金融システムが発展していくことを大きく期待をいたしているところであります。

問)

「金融改革プログラム」の工程表ですけれど、相当未来志向の局面に移って「民の力で」と今日は度々仰っていますが、相当行政の金融機関に対する関与を深めるような中味になっているのではないかと思うのですが、その点大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

答)

行政が関与を深めるということではなくて、やはり基本的な認識として、民の力によって活力ある金融システムというものを実現していきたいと思っております。その中で行政として基本的な考え方については、「金融改革プログラム」の中でも明示をさせていただいているように、その市場規律を補完していく審判としての役割をしっかり踏まえた行政としての適切な対応をしていかなければいけない。そのためにも現在ある規制を総点検して、そして不要な規制を撤廃していくとともに、私共としての code of conduct というものを確立していくこと、そして一方で、利用者の方々が不測の被害を被ることがないように利用者保護ルールというものを整備して、そして徹底していくことが重要だと思っております。そうした観点からロードマップたる工程表というものを作成し、公表させていただいたところです。

問)

ペイオフ関連ですけれども、国内にはメガバンクから信金信組まで600くらいの金融機関があるわけですけれども、ペイオフ解禁にあたって、一時国有化されている足利銀行を除いて健全性が維持されていると考えてよいのでしょうか。

答)

先程もお話をさせていただきましたように、ペイオフ解禁拡大に向けて、各金融機関の方々はそのための諸準備に取り組んでこられて、そして不良債権問題を正常化させていくための様々な取組、或いは健全性を確保していくための取組を進めるとともに、自らの財務の健全性のあり方や或いは業務の内容についても分かり易く丁寧に説明することによって、預金者の方々の信頼と選択に応えていく経営というものを行ってきたと思っております。今後も引き続き、そうした意味からすると緊張感を持って経営基盤を強化して、そして預金者の方々の選択と信頼を競い合う、新たな時代の幕開けに相応しい経営というものを行っていただきたいと思っております。

問)

ペイオフを全面解禁するにあたって、万が一破綻などが起きた際には、名寄せをきちんとしないときちんとした処理ができないことになると思うのですが、そういったペイオフ全面解禁のためのインフラと言うか準備というのは、もう既に各金融機関で終わっているという認識でしょうか。

答)

名寄せの問題についても、万が一、金融機関が破綻をした場合に円滑に対応できるように預金保険機構とも連携をしながら、名寄せデータの精度の維持向上のために検査を行って参りました。その検査において指摘された事項について、金融機関の方々は対応策を取られて、それを着実に実施して参りましたので、そうした観点からもペイオフ解禁拡大が実施できると、そういう環境が整ったという中で本日のペイオフ解禁拡大を実施させていただいたところでございます。

問)

ペイオフ全面解禁後、例えば2005年度中に金融機関が破綻する可能性があると大臣はお考えでしょうか。

答)

先程来お話をさせていただいているように、各金融機関の方々は不良債権問題を解決して、そして経営の健全性、財務の健全性を確保していくために、金融再生プログラムの諸施策、或いはリレーションシップバンキングの機能強化に関する諸施策というものを展開してきたわけであります。そのことによって、自己査定の信頼性も向上して参りましたし、またリスク管理態勢に対する信用も大幅に改善をしてきました。そのことを反映する形で金融機関全体としての不良債権比率も低下し、自己資本比率も改善をしてきたところでございます。今後金融行政としては、金融を巡る状況というものは刻々変わって参りますので、そうした状況の中で各金融機関の方々が適切に対応し、的確に対応して、健全性を確保していくための努力を引き続きしていただくことが重要でありますし、また行政においては問題が顕在する前の段階で早め早めに認知し、そして早めの対応をしていくことが重要であります。そのために早期是正制度、早期警戒制度という諸施策も導入させていただいているところでございますから、こうしたものを活用しながら、預金者の方々の選択と信頼を基盤とした金融システムというものが維持継続されるように作っていかなければいけないと思っております。

(以上)

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