伊藤金融担当大臣記者会見の概要

(平成17年5月25日(水)17時55分~18時13分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

主要行の決算発表並びに先程まで金融問題タスクフォースを開催させていただいておりましたので、そのことも含めて皆様方に御報告させていただきたいと思います。

まず私の談話をお手元に配布させていただいていると思いますけれども、主要行の平成16年度決算が発表され、不良債権比率は2.9%となりました。これによって、「金融再生プログラム」において示しました、「平成16年度には、主要行の不良債権比率を14年3月期8.4%の半分程度に低下させ、不良債権問題の正常化を図る」という目標が達成できたことを御報告させていただきたいと思います。

またこの達成につきましては、金融機関の方々、或いは債務者企業を始めとした関係者の皆様方の血の滲み出る努力の結果として達成できたものと考えております。

「金融再生プログラム」は、バブル崩壊以降我が国経済の大きな足枷となっておりました不良債権問題を抜本的に解決し、そして構造改革を支えるより強固な金融システムを構築していくことを目指して、平成14年10月に策定・公表いたしたところであります。それ以降、これまでの2年半の間、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化といった目標や、産業と金融の一体的再生の取組など、同プログラムに盛り込まれた諸施策を強力に推進してきたところでございます。

こうした取組の結果として、最も中心的な課題でありました主要行の不良債権問題の正常化を果たすことができ、また、その他の課題を含め、「金融再生プログラム」の目標を概ね果たすことができましたことは、大変意義深く、また喜ばしいことであると考えております。

一方で金融仲介においてリスクテイクは不可欠な一要素であり、そうしたリスクをいかに管理していくかは、引続き金融機関にとっての重要な課題であることに変わりはありません。金融庁といたしましては、不良債権問題が再び発生し、それが経済の足枷とならないよう、今後とも個々の金融機関の不良債権の状況やリスク管理態勢等を注視していくとともに、「金融再生プログラム」の残された課題についても、着実に取り組んでまいります。それらを前提とした上で、今般、金融行政は不良債権問題の緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面へと移行していく節目を迎えたものだと考えております。

今後、「金融改革プログラム」の諸施策を着実に実施することにより、「民」の活力を中心に、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムの実現を目指してまいりたいと考えております。

それから、本日金融問題タスクフォースを開催させていただきまして、「金融再生プログラム」の目標達成等について御報告をさせていただいたところであります。

またタスクフォースは、今回を以って終了とすることとなる旨、またメンバーの先生方に対しまして、今日まで金融行政に対する多大な御貢献をいただいたことに対し、私から心から感謝の旨を申し上げさせていただいたところでございます。

以上です。

【質疑応答】

問)

今回、不良債権問題正常化という目標が達成されたということで、不良債権問題の正常化宣言という位置付けということでよろしいのでしょうか。

答)

16年度決算において、主要行の不良債権比率の半減が達成されたわけでありますけれども、そもそも金融仲介においてリスクテイクは不可欠な一要素でありますので、そうしたリスクをいかに管理していくかは、引続き金融機関にとっての重要な課題であることには変わりはないと思っております。

大事なことは、金融機関自身の経営管理によって、適切なリスク管理が持続的、継続的になされていくことにあります。従いまして金融庁といたしましては、不良債権問題が再び発生し、それが経済の足枷となることがないよう、今後とも個々の金融機関の不良債権の状況や、或いはリスク管理態勢等を注視していきたい。そうしたことを前提とした上で、先程もお話させていただいたように、金融行政は不良債権問題の緊急対応から脱却して、将来の望ましい金融システムを実現していく、未来志向の局面へと移行していく節目を迎えたものと考えております。

問)

「金融再生プログラム」の間、副大臣として、また大臣としてこの問題に携わってこられたと思うのですが、改めてこの間に起きた様々な事象、またこういった形で結果が残ったということについて、今どのように思われているのかお話を伺えますでしょうか。

答)

私の場合には副大臣として竹中大臣を支えて、「金融再生プログラム」の策定作業から携わって、そして大臣に就任をさせていただいてこの「金融再生プログラム」の目標年次である17年3月期を迎えさせていただき、そしてペイオフ解禁拡大を実施させていただきましたので、この2年8ヶ月になりますか、それを振り返りますと大変感慨深いものがございます。そうした中にあって、非常に多くの皆様方に御協力をいただいて「金融再生プログラム」を策定することができましたし、またこのプログラムについて、色々な御議論がございましたが御理解をいただいて、主要行を中心とした金融機関の皆様方、或いは関係者の皆様方の血の滲み出るような努力によってこの目標を達成することができたと思っております。

しかしながら、「金融再生プログラム」の残された課題もありますし、今後は不良債権問題の緊急対応から脱却して、将来の望ましい金融システムを実現していく、そういう局面に展開してきているわけでありますので、「金融改革プログラム」を昨年度末、策定・公表させていただいているところでございますし、また「工程表」についても策定・公表させていただいているところでございますので、これらに基づいてその諸施策を着実に実施することによって、国際的にも高い評価が得られ、利用者の満足度の高い金融システムを民の力によって実現をしていくために、更に努力をしていかなければいけないと考えております。

問)

この間、足利銀行、りそな銀行といったような形の処理がありました。それとUFJ銀行が検査忌避という問題で告発されました。またダイエー等の民間企業も不良債権処理の影響を受けて産業再生機構に行くというそういう形もありました。そういう意味では非常に大きな変化、もしくはそこに伴う痛みというようなものもあったと思うのですが、これについて大臣はマイナスと言うか、明・暗の部分があると思うのですが、その「暗」の部分についてどのように受け止められておられるのでしょうか。

答)

今御指摘がありましたように、不良債権額を見た場合に、14年3月期については26.8兆円あったものが、17年3月期の主要行の決算を見ますと、これが7.4兆円まで低下いたしました。この過程の中に痛みがやはりあったわけでありますし、また様々な変化、或いは出来事も発生したわけであります。従ってこうしたことを振り返ってみますと、やはり日本経済が不良債権問題に苦しみ、それが大きな足枷となって、日本経済の再生を実現していく障害となっていたわけでありますので、こうした不良債権問題を再び起こさない、そしてこうした問題が日本経済の足枷にならないように、今後努力をしていかなければいけないと思っております。

問)

今日の談話の中に「国際的にも高い評価を得られるような」とあるのですけれども、当初想定したものから考えますと、まさに2.9%という相当低い水準にまで固まってきたなという感があるのですけれども、国際的に比較した場合、この2.9%という水準をどのように評価しておられるのかという点と、一方で実質業務純益は若干伸びていない、逆にちょっと減っていることを見ると、収益力等これからの課題もあるのではないかと思います。これは「金融再生プログラム」の残された課題というところでもあるのかもしれませんが、国際的に見た場合のこの水準の評価と収益力の向上も含めた今後の課題について、二点伺いたいと思います。

答)

国際的比較でありますけれども、この主要行の不良債権比率2.9%、直近の同じような数字が中々見つからないのですが、その中で比較できる一番新しいデータを見てみますと、ドイツ、フランスを超えて、イギリスと同じような水準まで不良債権比率は低下し、健全性の指標も同じような水準になっているのではないかと考えているところであります。

私も副大臣から大臣に就任させていただいて、16年9月期の決算で4.7%。「金融再生プログラム」の目標からすると4.7%というのは、ある意味では、目標達成が視野に入った水準でありましたが、しかし改革の手綱を緩めることなく、また私自身も記者会見で何度かお話をさせていただいたように、最後のトンネルを抜け出さなければいけないと。そのために、特別検査の限定フォローアップもさせていただいて、そして不良債権比率の信頼性も十分確保しながら、各金融機関の皆様方に御努力をいただいて、こうした結果が出てきたものと思っております。そうした観点からも国際的に比較をして、イギリスと同じような水準のところまで来れたのではないかと思っております。

今後残された課題でありますけれども、概ね三点あると思っております。これは先程タスクフォースでも様々な御指摘がございましたが、一つはやはり資本増強行がございますので、公的資金が確実に返済されていくということが非常に重要なことでありますから、私どもとしては経営健全化計画をしっかりとフォローアップをしていかなければいけないと思います。

また二つ目といたしましては、利用者のニーズを的確に捉えて、そしてそれに応えていくような経営を行っていく、企業価値を向上していく経営を行っていくということが非常に重要なことだと思っております。

そして三点目は今御指摘がありましたように、それに関連して、収益力を向上させていくということがとても大切な課題であると思っております。

問)

タスクフォースですが、これを今日終了して、解散した理由はどういうところにあるのでしょうか。

答)

今日でタスクフォースの任務を終了させていただきましたのは、「金融再生プログラム」の対象期間が終了したこと。それに合わせて、このタスクフォースの任務を終了させていただいたということであります。振り返ってみますと、2年4ヶ月、19回にわたってタスクフォースを開催させていただき、そしてメンバーの先生方からは、専門的な見地から様々な有益なアドバイスをいただくことができ、そのことによってタスクフォースは二つの大きな使命を持っておりました。一つは、「金融再生プログラム」を着実に実施して、そしてこの目標がしっかり達成できるかどうか、そのことを外部の有識者の方々にモニタリングをしていただくということ。

そして二つ目は、特別支援金融機関の事業計画の履行状況、これに対するモニタリングであったわけでありますけれども、この二つの大きな使命に基づいて、大変大きな役割を今日まで果たしていただいたと思っておりますので、心からメンバーの先生方の今日までの御努力に対して感謝をいたしているところでございます。

問)

二つ目の目標であります、特別支援金融機関のモニタリングと言いますのは、今のりそな銀行や足利銀行について、完全に使命を終わったのかどうなのかについては議論の余地があると思うのですが、その辺りについてはどうお考えでしょうか。

答)

特別支援金融機関につきましても、事業計画が策定され、そしてその履行が進捗していると思います。履行の進捗に当たっては、タスクフォースのメンバーの先生方の専門的見地からのアドバイスというものは、極めて有益なものであったのではないかと思っております。先程お話をさせていただいたように、金融行政は不良債権問題の緊急対応から、今後は将来の望ましい金融システムを実現していく、未来志向の局面に展開していくわけでありますので、これらの計画につきまして基本的には、私どもがモニタリングをしていくことになると考えております。いずれにいたしましても、今日までタスクフォースの先生方が果たしてきていただいたその成果を無駄にしないように、私共としても、今後適切に、この事業計画の履行状況をフォロ-アップをしていきたいと思っております。

(以上)

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