与謝野内閣府特命担当大臣(金融・経済財政政策) 記者会見要旨
(平成17年12月22日(木) 10時38分~11時04分 於 金融庁会見室)
1.発言要旨
今日の閣議は案件どおりでございましたが、今年最後の閣議は27日、来年の初めての閣議は1月6日でございます。
以上です。
2.質疑応答
- 問)
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本日、金融審議会が投資サービス法に関する報告書を提出する予定ですけれども、これは投資家を保護した上で経済を活性化させるということで非常に重要な法案ですが、金融庁としてこの法案によって国民生活をどう改善していくのか、改めて所見をお聞かせください。
- 答)
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まず、答申を受けましたら、その答申を受けて様々な検討を金融庁内で行って、これを具体的な法律案という形にして、なるべく早い段階で国会に提出させていただき、国会審議の中で様々な御意見を伺っていく、こういうことになります。
この法律は、投資形態が従来の法律では予想されなかった分野にまで広がっているということで、投資家を保護するということも一方ではありますけれども、やはり許される投資活動というものはあるわけですから、それに対して過度の規制や過度に自由度を奪うということは避けると、むしろ、そういう投資活動の自由度も一方では確保するという思想で成り立っていると私は思っております。
しかしながら、悪質な勧誘、悪質な投資形態というものに対しては、やはり法律を通じて国の責任で目を光らせておくという趣旨は、投資家保護という観点から極めて大事なことであると思っております。
- 問)
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歳出・歳入一体改革で伺います。行政改革や歳出カットで、最近、事業仕分けという方法が提唱されていますけれども、外部の視点を入れて必要のない歳出等をカットしていくという、公明党やシンクタンクが盛んに提唱していますけれども、この考え方について、大臣は賛成されますでしょうか。或いは、タスクフォースの議論の中で取り上げていくという余地はございますでしょうか。
- 答)
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これは、私の政調会長時代からの懸案でございまして、与党である公明党が強く主張されてきたことでもあります。その当時、政府からは、党の方でこの問題を議論してほしいということですから、党の方で議論していただけるものと思っておりますけれども、仮に行うにしても、全体に広げるのではなくて、やはり一部のものを取り上げて、そういうことが可能かどうか、そういうことも考えなければなりませんし、また、国会というのは予算を審議するところでありますから、私個人としては、国民の代表たる国会議員が予算の審議をする、予算の内容をチェックする、決算をチェックするという本来任務を放棄してはいけないと。やはり、国会というものがそのチェック機関だというふうに思っております。
ただし、中には外部の方の御意見を取り入れて、予算を精査しなければならないような場合もあり得るわけですから、試行的にそういうものを党の方で、自民・公明の間でよく話し合いをされて、仮にそういうことをされるのであれば、どの分野のどの項目について実験的にどうやるかということをされたらいいのではないかと、政調会長時代はそのように思っておりました。
- 問)
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投資サービス法絡みでもう一つお伺いしたいのですが、この法律で、例えばこれから将来の金融の世界もしくは金融業界がどういうふうに変わっていくのか、どういう影響を与えていくのか、そういったところの大臣のお考えを伺いたいのですが。
- 答)
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金融という中で、銀行、生保、損保、或いは信用金庫、信用組合というのは、それぞれの業務の内容については、それぞれに対応する業法があって、その中での規制があるわけです。投資サービス法は、業界横断的な法律であることは間違いないわけですけれども、私のイメージでは、投資家にとって思わぬ落とし穴がある、そういうものに対する備えをしておくということが一番のことであって、既存の金融の世界を直接的に規制するものではないというふうに私自身は理解しております。
典型的な悪質な例は、外為の証拠金取引というようなもので、多くのこの分野に知識のない方が、そういうことでお金を失うと。もともとそういう業者も、悪意を持って投資勧誘をやっているというようなケース、こういうものは、やはり国民のために排除しなければならないというふうに考えております。
- 問)
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金融サービス法という形で、99年ぐらいに一旦議論が盛んになって、省庁間の綱引き等で消えてしまったわけですけれども、その間、自由化が進んで、投資家の方で損失を被られる方もいらっしゃいました。投資サービス法が議論されながら、この7年ぐらい作るのが遅れた、これを振り返ってみてどう考えられているのか、或いは与党としての責任というのはどう考えられるのか教えてください。
- 答)
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昔から、投資を勧誘して例えば高利を約束するというような手口は、昭和20年代から実はありまして、その時々の有効な法律を適用して、そういう悪質な業者を処罰してきたわけでございますけれども、こうして投資の形態が多様化してまいりましたら、やはり全体に網をかぶせる法律、すなわち投資家を保護するという法律が必要になってきたというのは時代の要請であると思いますけれども、一方では、そのことによって自由なる投資の機会を奪ってはいけないという思想も、この法律の中には盛り込まれていると思っております。
大分前からこの話があったということは、実は私の知識になかったものですから、お答えできないのは申し訳ないと思います。
- 問)
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いよいよ日本も人口が減少する時代に入ってきました。タスクフォースでもマクロシナリオで考えられるということですけれども、この人口減の少子化対策というものが遅れてきた――もう30年ぐらい前から始まっていたと思うのですけれども、これについてはどう考えておられますでしょうか。
- 答)
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少子化対策というのは、非常に色々な要素で起こっておりまして、日本のみならず、例えば隣国の韓国などの特殊出生率を見ましても、非常に低いということで驚かされるわけです。
この少子化がなぜ起きているかということは、経済面から説明される場合もありますし、女性の社会進出という面から説明される場合もあります。様々な要因が重なっていると思いますが、少子化対策は予算・制度の問題も大事だとは思いますけれども、実は、今年の春、自民党の1年生議員がまとめた少子化対策の報告書があります。それを読みますと、やはり一番大事なのは国民の意識の問題であるというのが、その1年生議員5人ぐらいの方々の結論でございまして、やはり子供を産み育てるという人生における価値とか、そういうものが少子化対策として最も基本的な部分だろうというのがその方々の結論でございまして、その問題は、私としてはうなずくところが多かったと思っております。
ただ、この人口減少を経済や財政との関係で考えますと、かなり深刻な問題を含んでおりまして、1つは人口全体がどうなるかという推計の問題。その中で、労働人口がどの程度確保されるのかという問題。それから、高齢化が進んでまいりますと、年金、医療等の社会保障制度に対する影響、そういう問題もありますし、これは我々の世代というよりは、今日ここにお集まりの皆様方の世代には非常に深刻な問題になってくるということを、まず政治は考えなければいけないと。
昭和10年代は、「産めよ増やせよ」という標語があって、人口増加に関しては、政府が旗を振っていた時代がありますけれども、そういう直接的なことではなくて、やはり就労環境を整える、あるいは保育園、保育所とかというインフラ的なもの、教育費が高騰しているという問題、出産に伴う費用の問題という経済的な側面、こういう問題に対しては、政府がきちんと対応しなければなりませんし、やはり国民意識、あるいは国民の価値観というものが少しずつ変わっていかなければ、少子化の問題は解決できないと思っております。
女性の社会進出が増えている国で人口、子供が増えているというのは、例えばアメリカ、フランスなどもそういう例でございまして、それはなぜ起きているかということも、きちんとわかっていなければいけないと思っています。
これは、財政の問題から言いますと、2010年代の初頭にプライマリーバランスを達成できるということが仮に起こったとしても、その後の労働人口の変化とか、高齢化の進行によって、あっと言う間にまたプライマリーバランスがマイナスになる、そういうことすら考えられると。これからは人口問題、人口構成、動態の問題というのは、日本の社会にとって避けがたい重大な問題だというふうに私は認識しております。
- 問)
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関連して、これは予測より一、二年早く減少になるということが今回明らかになったわけですが、それで何か経済政策上に与える変更点などがあればお聞かせください。
- 答)
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1年、2年早かったというだけで、経済政策上、直接大きな影響があるとは考えておりません。
- 問)
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昨日の夜、総理と党税調のメンバーが会食をしたということですが、その中で税制改正のあり方についても話し合いがあったかのように聞いているのですけれども、その動きが、来週から始まる歳出・歳入一体改革の議論に影響するようなことはあるのでしょうか。
- 答)
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全くそういうことではなくて、私はここに「基本方針2005」というものの抜粋を持ってきておりますけれども、これには、一部ですけれども、「基本方針2004」やこれまでの与党税制改正大綱を踏まえ、包括的かつ抜本的な検討を引き続き進め、重点強化期間内、すなわち平成18年度内を目途に結論を得る。概ね今後1年以内を目途に、政府の支出規模の目安や主な歳出分野についての国・地方を通じた中期的目標のあり方、さらには歳入面のあり方を一体的に検討し、経済財政諮問会議における議論等を通じて、改革の方向についての選択肢及び改革工程を明らかにする、これが「基本方針2005」の記述です。
それから、自民党の政権公約を見ますと、これは19年度を目途に、社会保障給付全般に要する費用の見通し等を踏まえつつ、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現すると。
それから、9月4日、選挙の最中ですけれども、これは総理の御発言ですが、2007年度に税制改正をして、仮にどういう税制体系を決めようとしても、実施は2007年度には無理ですよね。これは、9月4日時点で、総理はそういうふうに仰っておられます。
この1年、2年にはできませんね。数年先になるでしょうね。実施しようという計画を立てて、現実に施行されるにはかなり先になる。これは、選挙の途中の御発言です。
それから、選挙が終わった9月12日には、総理記者会見で、誰が考えても、歳出削減だけで財政再建は無理だということはわかっているはずです。そういう点を考えて、消費課税のみならず、所得課税、法人課税、資産課税等総合的に考えていく問題であって、こういう点につきましては、今年これから秋以降、十分な議論をしていかなくてはならない。
それから、9月28日の国会における総理答弁は、消費税、所得税、法人税、資産税など税制全体のあり方を総合的に考えて、国民的な議論を深め、平成18年度内を目途に税制改革についての結論を得たいと考えておりますと。
それから、12月15日に決まりました18年度与党税制改正大綱では、平成19年度を目途に、長寿・少子化社会における年金、医療、介護等の社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通し等を踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでいくと。
こういうことが、過去半年ぐらいの話でございまして、作業はこういう線に沿ってやります。やりますが、最後の税制改正大綱のところは、実際、この文章を書かれました自民党の税制調査会長の柳澤さんのお話をきちんと聞いて、きちんとした意味を理解して物事を進めていきたいというのが私の立場でございます。
- 問)
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プライマリーバランスについて、先程ちょっと言及があったのですけれども、今の「改革と展望」ですと、2012年度に国と地方を合わせたプライマリーバランスは黒字化するという展望となっていますけれども、今行われている色々な社会保障制度の改革を踏まえても、今後、今の少子・高齢化が進んでいった場合、12年度に一旦黒字化したとしても、先程「あっと言う間に」というお話がありましたけれども、その先、やはりまた赤字転落という御懸念をお持ちなのでしょうか。
- 答)
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プライマリーバランスを到達した後、世界の状況は変化していく可能性もあるわけです。日本が国際競争力を維持できるかどうかとか、或いは必要な資源エネルギーを確保できるかとか、或いはWTO、FTAがどの程度進んでいるかとかという外的な問題にも、財政は影響されるということは、やはり頭に置いていく必要があると。それから、そのときに就労人口、或いは潜在的なものを含めて労働人口がどのぐらい日本にいるのかということ、少子化がどう進むのか、そういうやはりダイナミックに変化するパラメータを考えながら、色々な選択肢を考えていかないといけないという意味で申し上げたわけです。
- 問)
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行革の重要方針についてお尋ねしたいのですが、近く閣議決定の運びになるようですけれども、一義的には中馬大臣の方でおやりになるかもしれませんが、諮問会議としては、この実効性を担保する上で、今後どのような議論を展開されていきたいと思っていらっしゃいますか。
- 答)
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まずは、今年決めました政策金融改革、公務員の総人件費、或いは特別会計、或いは資産・債務の管理、これらの問題は、多分、中馬大臣の方で出される基本法に書かれます。それまでにどこまで内容が詰まっているかということは、基本法ですから、基本法に必要なものは決めておかなければならない、そういう問題が一方でありますが、しかし、例えば資産債務の管理の問題につきましては、決めてありますことは、平成18年度内に財務省が案を作って、それを諮問会議に報告するということになっておりますから、例えばそういう問題については、諮問会議が常にウォッチしていくということは当然のことでございますし、また、その他の問題、行政改革の進展具合については、当然、一義的には行革の観点から中馬大臣の方でウォッチングをしていくわけでございますが、元々提案を申し上げた諮問会議としては、重大な関心を持ってその進展具合を見ていくというのは、半ば当然のことだろうというふうに思っております。
(以上)