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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年7月2日(月)17時07分~17時38分)

【質疑応答】

問)

それでは長官の方からよろしくお願いします。

答)

皆様のお手許に配布されてあると思いますけれども、本日「金融庁の1年(平成12事務年度版)」という1年間の事務年度を振り返って、金融庁が何をしてきたのかというのを取りまとめた解説及び資料集をお配りさせて頂きました。こういうものを国民に発表することによりまして、金融庁の開かれた行政に対する理解が更に進むことを期待しております。私の方からは以上でございます。

問)

先週末の日米首脳会談の共同声明の中で、ブッシュ大統領の方から「骨太の方針を評価する」という旨の表明があったと思いますけれども、2~3年内の不良債権の最終処理ですとか、与信費用比率といった新指標の公表、あるいはRCC(整理回収機構)の活用といった金融庁関連の施策に対しては概ね支持が得られたと、そのようにお考えでしょうか。

答)

日米首脳会談の大体の模様につきましては休み中に報告も受けましたし、また正確に皆様方が報道されているとおりかと思いますけれども、基本的には小泉総理が構造改革、あるいは規制改革というものをこれだけ全力を振り絞ってやり抜く決意を表明され、それに対して大統領が力強い支援の言葉をお返しになったというふうに聞いております。これは基本的には不良債権の最終処理というのは、日本自身の問題でありまして、金融庁としては緊急経済対策、あるいはそれに引き続くいわゆる「骨太の方針」におきまして、こうしてするんだということを皆様方にご披露させて頂いているわけでございまして、今後はその実行を問われているわけでございますけれども、そうした我々の取り組みに対して米側が評価を示したということではないかと思います。

問)

日米首脳会談ですけれども、「成長のための日米経済パートナーシップ」と題してですね、財務金融分野で新たな協議の枠組みを作ることで一致したようですけれども、今後のスケジュールや議題、あるいは金融庁の体制ですね、そういったことについてどのようにお考えですか。

答)

これは皆様ご承知の通り、1995年以来でございますか、金融サービス協議という一つの枠組みが米国のトレジャリーと、当時は大蔵省だったわけですけれども、今で言えば財務省との間でそういう一つの協議の枠組みというものができていたわけでございまして、それを言わば発展解消させる形で今回、「成長のための日米経済パートナーシップ」の、そういうアンブレラの下に財務金融対話と、フィナンシャルダイアローグという一つのチャネルができたと認識しております。

そこにおきましては日米双方にとって重要なマクロ、あるいは金融セクターなどの主要事項に関しまして、情報交換あるいは意見交換というものがなされるわけでございます。従いまして、何か交渉事を行うということでは全くないわけでございまして、ただそれぞれの国の、日本側がアメリカの経済に対して持っている関心事項についていろいろお聞きもしますし、あるいは参考となる意見も言わせて頂く、同じように先方も日本側のマクロ経済政策なり、あるいはマクロの財政金融政策なり、そういうことに対して向こうの関心事項を聞いてくると思いますし、意見も言ってくるでしょう。そうした中で日本の不良債権処理の問題、これは当然、先方も関心があるわけでございますから、その進捗状況等も聞いてくると思いますし、向こうの経験からいって参考になると思われることを言ってこられるかとも思いますし、それはそれとして我々も適切なサジェスションとして、大いにお聞きしたいと思いますし、参考になることは活かしていきたいと、このように思っております。

まあ一言で言えば、いつも申してますように交渉ということでは全くなくて、あるいは何かを為すことが公約だと書いてある記事も目にしましたけれども、そういうことでは全くなくて、まあピアプレッシャーに基づく意見交換、世界第1のエコノミーと世界第2のエコノミーで、世界経済に対してお互いに責任を持ち合う間柄でございますから、いろんな意味での率直な意見交換というのはなされるべきだと思いますし、そうした中に金融庁も参加していきたいと、こういうふうに思っております。

問)

今朝方発表された日銀の短観ですけれども、製造業を中心に景況感の悪化というものが再確認された内容だったと思います。景気の悪化なんですけれども不良債権処理に対する影響をどうご覧になっているか、特に新規発生が最終処理までたどりつかずに残高が減らないといった事態に陥る懸念はないのかどうか、ご見解をお願いします。

答)

それはもう不良債権は景気と正に極めて深い関係にあるわけでございますから、今からどういうような進展を辿るかということは全く予測、あるいは予言めいたことは一切言えないわけでございます。一つ言えることは足元の景気が悪くなれば、どうしても不良債権は増えざるを得ない。一方において「破綻懸念先以下」の不良債権については、こういうスケジュールでオフバランス化を進めていくということはしっかりと、言わば当方と銀行界で共通の認識に立っておりますので、それはそれで着々と進めていく。

昨年の9月から今年の3月までを見ますと皆さんご承知のように、処理が4.4兆円、新規発生が3.4兆円。ネットアウトすれば1兆円ほど減っているという状況でしたけれども、今のご質問はそれが今後どうなるかというご質問であるとするならば、できればどんどん不良債権は減っていく方向でいって欲しいと思いますけれども、それはまさに景気との相関関係でございますので、今から私の方から必ずこうなるということは言える状況にはございません。

問)

先週の金曜日に主要銀行の首脳と意見交換会を開かれましたけれども、その中でどういうやりとりがあったのか、かい掴んで紹介して頂ければと思います。

答)

皆様、冒頭部分の大臣のご挨拶、それに応える形での山本全銀協会長のご挨拶は皆様お聞きの通りだったと思います。その後、自由な意見交換、率直なことをお互いに話し合って欲しいという意味で、言わばオフレコの意見交換会に切り換えたわけでございますけれども、そこの中での話というのは、ポイントはやはり二つあったなあと思います。

一つはやはり不良債権問題について各銀行ディスクローズしておりますし、金融庁もそのアグリゲイトした数字をディスクローズしているわけでございますけれども、世の中の一部にはもっと不良債権があるのではないかとか、一般要注意先も不良債権ではないかとか、いろいろ誤解に基づくいろいろな話というのが出ている。こういうものに対して、何とか金融庁もそしてまた各銀行も、そういう誤った認識というものを何とか消すようなアピールのある話というのはできないであろうかと、一つはそういう点だったと思いますね。

もう一つは先程も質問された記者の方の質問の中にもございましたけれども、足元の景気というのは決して楽観を許さない状況にあるわけで、その不良債権処理を進めていくにはその原資となる業務純益をどうしても大きくしていかなければならない。それにはやはり収益力を増さなければならない。銀行もギリギリの経営健全化計画を今作っていると思いますけれども、更に深堀をした、もっと濡れたタオルが全くカサカサになるほど絞り切ったような経営健全化計画というものを是非作って頂きたいと。これはどちらかというと金融庁側からのお願いだったわけですけれども、そういうようなことがありました。それに対してもちろん銀行側も同じ認識であるというお話でありました。大きく言えばこの二つの点が先週の意見交換会で話されたということかと思います。

問)

同じ先週の金曜日にPDF「私的整理に関するガイドライン研究会の中間報告」新しいウィンドウで開きますというものが公表されていますけれども、これに対する評価と、今後どういうふうに対応していくかについてお願いします。

答)

ご承知のように6月7日に全銀協と経団連が中心になって弁護士等の先生方も入り、また役所側もオブザーバーとして入り、特にワーキンググループレベルで精力的に議論がなされて、短い期間にも関わらず、一つのまとまった骨太のガイドラインというものを先週の金曜日にまとめて頂きました。高く評価もしますし、敬意も表させて頂いているわけでございます。これから9月にかけて更に細部について議論を重ねて、ガイドラインを完成して頂きたいというふうに思っております。

これはあくまでも「私的整理に関するガイドライン」でございます。すなわち「法的整理」の中にも「再建型法的整理」と「清算型法的整理」があるわけですけれども、そこに至っては企業価値に相当なダメージを被るというような対象の企業があるとすれば、「私的整理」という段階での再建型整理というものは考えられるわけですけれども、それをどういう場合にそれを行うのかというルール作りだったと思います。

そういうものとしては皆さんもご承知のように例えば再建計画の内容は3年で黒字化、あるいは3年で債務超過解消となっており、非常に厳しいものを取り上げての「私的整理のガイドライン」になっていると思います。こういう点で民間サイドの債権者側である銀行、あるいは全銀協、債務者側である企業、またそれを代表する経団連との間で、こういう一つのルールがまとまったということは非常に良かったことだと思いますし、今後こういうガイドラインに当てはまる企業について「私的整理」が進むということは政府が緊急経済対策なり、「骨太の方針」で示したオフバランス化を進める一つの有力なツールとして、私は高く評価できるのではないかと思います。

問)

EB債とか日経平均リンク債、あるいはカバード・ワラントについて行政処分が相次いで出されていますけれども、金融庁としては今後もやはり行為規制という形で対処するお考えでしょうか。

答)

行為規制として対処するということの反対の側に何がおありなのか、あるいは商品規制というふうな意味で仰られているかと思いますけれども、私は基本的に日本の市場のグローバリズムというものを維持する観点から、現在のところ商品規制までは考えておりません。あくまでも行為規制と、今ご質問なられた記者の方のお言葉を借りるとするならば、行為規制つまり法令違反行為というものを、厳格に証券取引等監視委員会が取り締まっていくことを期待しておりますし、その勧告があった場合には金融庁としても厳格に処分をしていきたいと、このように思っております。そうすることによって日本の直接金融市場全体が個人投資家にとって信用できるものになっていく、そういうふうに思っておりまして、確かに商品そのものを禁止してしまえば、こうしたことも起こらないかとも思うのですけれども、やはり世界で認められている商品について、正直申しまして、商品を禁止しなければこういう不祥事が絶てないというのでは、あまりにも情けないのであって、やはり直接金融市場の担い手自身がコンプライアンス能力を高めて、そういうものが二度と起こらないような市場にしていかなければいけないのではないかなあと、そのように思っております。

問)

ただ、カバード・ワラントについては、アメリカでは売られていないという説明が先週あったのですけれども、本当にこうしたEB、リンク債、カバード・ワラントという商品が健全な市場の育成に役立つ商品なのかという点についてのお考えを教えて下さい。

それと買っている方は、大体個人の人が多くてですね、リスクヘッジとかで使われる例があまりなくて、個人が言葉は悪いですけれども、ある意味で賭博性が少しあるのかなと思うような投資の仕方をしておると、そういうことについて如何お考えでしょうか。

答)

仰るご質問の趣旨はよく理解出来ます。特にカバード・ワラントについては、極めて賭博性の高いものであることも良く承知しております。ただ、そういうものもヘッジ機能等で扱われ得るわけでございまして、必ずデリバティブというのは二つの側面を持っているわけですね。即ち、いわゆるヘッジ機能としての正常な面と賭博性の面と二つの顔をデリバティブというのは持っているのが普通だと思います。私もそれを何時も悩んでいるわけでございますけれども、やはり刑法の賭博罪というものの適用について、外したのが確か90年代の後半だったと思うのですね、それまでは刑法の賭博罪の適用との関係でそこは非常に議論され日本は厳しくやっていたわけですけれども、一つはビッグバンということもあったと思います。そういうところから刑法の賭博罪の適用の外に置いて、今日来ているわけでございますけれども、それをどう考えるかですけれども、やはり私はヘッジ機能とか正常な機能というものを持っている以上、そういうものを商品性として禁じるというよりも、それをやはり変な行為はさせないというところで、これから見ていくということの方が今流のやり方ではないかなあと、私は今そう思っております。

問)

日米首脳会談の関係でちょっと伺いますけれども、ブッシュ大統領が海外からの直接投資を促すことによってですね、金融システムの健全化というものを図れるのではないかと、あるいは日本の経済問題の再生というのは図れるのではないかという発言があったというふうに聞いていますけれども、長官は具体的にはどういうケースを想定しているというふうにお考えになって、受け止めたのでしょうか。

答)

いろいろ私の所管する中では、幾つかの破綻金融機関の受け皿として外資、特にプライベートエクイティーファンドが受け皿になっておるのは、ご承知のとおりかと思います。そうして再生して新しい顔で今日本の金融機関、外資系がオーナーである日本の金融機関が生まれて来ているわけでございます。我々もご承知のように、それを容認して日本のオーナーである金融機関との競争が図られているわけでございまして、そういう面では日本の金融機関、銀行の買い手であれ、不良債権の買い手であれ、日本は完全に開かれた国になっているわけでございます。

そしてフェア・コンペティブネスという観点から言えば、そうした海外の買い手と日本の買い手が競争していくという姿、それが日本の金融テクノロジーの向上、あるいは金融市場の発展という意味で好ましいと我々も考えておりますし、今ご質問になった記者のポイントであるブッシュ大統領が、そういうことを仰られたということは、そういう背景があるのかなあというふうに私は思っております。

問)

日本のマネーセンターバンクスというのを何処まで言うのか良く分かりませんけれども、いわゆる大手行に外国の資本がかなりの比率で入ると、例えば20%なり30%なり、そういうことについては、どういうふうにお考えですか。

答)

そこは全くオープンでございますので、決してそういうことに対して我々は後ろ向きでもありませんし、ただ、どういう状況になると、どうしてそういうふうになるかという筋書きは私は全く分かりませんけれども、今ご質問になられた記者の方の姿について、金融当局としてそれは困るとか、是非純粋に日本の資本だけでなんて言うようなことを考えるのは時代遅れではないかなあと、世界的に見ましてもいろいろなマージと言いましょうか、M&Aは進んでいるわけでございますので、そうすることがより効率性に繋がるのだったら、それはそれとして肯定すべきことなのかなあというふうに思っております。

問)

先週末から、小泉総理とか塩川財務大臣が、いろいろシステミックリスクについて言及されていますけれども、新しい預金保険法の102条の発動についてなのですが、これは金融危機対応会議は全員一致なのでしょうか、それとも多数決なのですか。

答)

「議を経て」としか書いておりませんので。

問)

会議令を見ますと、そこはどういう条件でやるかというのは、会議に諮って決めるというようなことしか書いていないので良く分からないのですけれども。

答)

法律上で言えば、金融危機対応会議の議を経てということになっておりますけれども、通常ですね、金融再生委員会の時もそうなのですが、会議の運営細目というものを最初の会を開いた時に決めます。

ですから実は金融危機対応会議というのは一度も開いておりません。それは、そういうような状況がないものですから開いていないわけでございまして、実は正直申しますと新預保法が施行された4月1日を経て間もない時にですね、形式的にもそういう金融対応危機会議を開くような議事が無くてもですね、金融危機対応会議を開いて、果たしてその議を経てというのが多数決なのか、全員一致なのかも含めてですね、会議規則を作った方がいいかどうかということは内部で議論したことがございます。

ただ、そういう会議を開くこと自体が世の中に余計な誤解を与えてもいけないということで今日になっているわけでございまして、何れにいたしましてもそういう細目は、第一回目の会合で決まるということになろうと思います。

それから注釈を付けて頂かないと書かれようによっては、ちょっと大変なことになるので注釈を付けさせて頂きますと、今ご質問あった記者の方が前の質問で仰った、言わば外国資本が2割位になっても金融庁はどうですかという質問に対して私が答えたのは、あくまで一般論でございますので、何か特定の銀行を想定しての私の答えではございませんので、ご妙才のなきことながら念を押しておきます。

問)

今回不況の中で不良債権処理をやることによって、102条で規定してるような我が国、または地域経済に極めて重大な支障が生じるという事態が起こり得る恐れというのはあるのでしょうか、ないのでしょうか。

答)

私は、今のところそういうことは想定しておりません。

問)

今日ですね、塩川財務大臣が大阪でのシンポジウムで、公的資金の活用が必要になればそのことも考えなければならないというような発言をされておるのですけれども、改めて公的資金の活用についてのお考えをお伺いしたいのですけれども。

答)

何遍も金融庁、柳澤大臣も申し上げていると思いますし、国会でもお答えになられておりますけれども、言わば過少資本になる可能性というのは二つあるわけですね。一つは不良債権の処理によって資本勘定が毀損されるという面と、もう一つは株価によって今年度から時価会計でございますので言わば配当原資が無くなると剰余金が毀損されると、この二つの面が考えられるわけですけれども、もう繰り返しませんけれども、当方もいろいろ試算して皆様方にお示ししているとおり、どちらも現在の11%くらいございます大手行の自己資本比率からすれば、その自己資本を毀損する割合というのは極めて限定的でございまして、今の時点で資本再注入をする必要があるという認識には金融庁は立っておりません。

(以上)


(参考)

  1. 「金融庁の1年(平成12事務年度版)」の公表について」
  2. PDF「私的整理に関するガイドライン」中間取り纏め(全銀協ホームページより)新しいウィンドウで開きます

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