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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年7月9日(月)17時30分~17時55分)

【質疑応答】

問)

それでは長官の方からよろしくお願いします。

答)

私の方から特に申し上げることはございません。

問)

最近の株価なんですけれども、日経平均、TOPIXともに銀行株と業種別株価指数でバブル後の大幅最安値圏近くで推移しておりますし、株価全体としても低迷しているわけですけれども、銀行の経営等に与える影響を含めて、どのようにご覧になっていますでしょうか。

答)

仰られている通り、今年の3月半ばに今年の最安値をつけてから、5月初旬までに一旦、1万4,000円近くまで回復したわけですけれども、また直近において、市場で言われておりますのは日本の企業の収益予測値というものに対する、何と言うのでしょうか、予測値が低い方向で修正されているということの影響、それから米国市場が冴えない状況であるということに対する影響、大きく言えば、その2つの要因で株価は下げている。特に6月29日から7営業日をとってみた時に、いわゆる情報通信関連株、具体的な業種で言えば、非鉄金属・電気機器・精密機器、いわゆるIT関連株というところがいずれも10%、正確に言えば、非鉄金属が10%以上ですし、電気機器も10%以上、精密機器が約7%、ここら辺が下落している。こういうところが値がさ株ということもあって、日経平均を大幅に下落させているポイントではないかというふうに思われます。

それに対して、銀行業はどれくらいかというと6.7%、7営業日で下げているわけでございまして、IT値がさ株も下げていれば、銀行株ももちろん下げているわけでございます。今年度からご承知の通り、時価会計が導入になりますので、剰余金に対してヒットするということでございますので、株価だけではないのですけれども、株価の下落というのはそれなりに銀行経営に影響することは事実でございます。

ただ、そう皆様に大げさに考えて頂きたくないのは、前も申したと思いますけれども、今年の3月末が1万2,999円70銭、まあ1万3,000円だったわけですけれども、そこから日経平均で言って1割程度下落する、まあ1万1,700円。単純に出して、計算して、自己資本比率への影響は約0.5%でございます。しかし、日経平均と銀行の保有している株の連動性は6、7割でございますので、実は1割下落ではなくて、1割5分ぐらい下落、まあ1万1,000円を…、1万3,000円の1割5分といいますといくらぐらいでしょうか、まあ1万1,000円くらいになるのでしょうかねえ、そこら辺で0.5%ぐらいの下落となります。

いずれに致しましても、その自己資本比率へ与える影響というのは現在の主要行の自己資本比率、つまり今年の3月末で11.7%というものを考えた場合には、それが1万1,000円ぐらいでも11.2%ということで、そういう意味において限定的だというふうには言えると思います。ただ、影響がないなんては一言も言っておりません。影響はもちろんございます。

問)

先週末、イタリアのローマでサミット財務相会合、日米財務相会談がありましたけれども、金融庁関連で日本の不良債権処理に関して、どのようなやりとりがあり、各国の理解が得られたのか、その点についてはどうですか。

答)

塩川財務大臣が一連の国際会議、まあ日米財務大臣会合、あるいは日伊財務大臣会合、そしてG7と、一連の会合にお出になって頂きまして、金融庁所管の問題についてもご説明頂いたというふうに認識しております。そこでどういう話がされ、どのように受け止められたかは皆様方、各メディアが正確に報道されておりますので、ここで繰り返すこともないと思いますけれども、要するに小泉内閣の構造改革の決意というものを塩川大臣がお話になり、各主要国からも、それに対して励ましの言葉があったというふうに認識しております。不良債権問題というのは、小泉内閣における構造改革の金融セクターにおける構造改革というふうな位置付けでございますので、もちろんその構造改革の決意の一つの大きな表れとして、不良債権の2~3年による最終処理ということもご説明頂きましたし、それに対する理解も得られたと思いますし、それに対するサポートも表明されたというふうに認識しております。

問)

先週の6日ですけれども、山崎自民党幹事長が報道機関のインタビューに対して、必要な公的資金の追加は十分検討に値すると思うという発言をしていますけれども、このような発言を踏まえて、改めて金融庁の公的資金の再注入論に対する見解をお聞かせください。

答)

私、直接には幹事長がどのような言い回しをされたのか、新聞報道以外承知していないのでございますけれども、私は幹事長も必要とする不良債権処理を銀行が行って、その結果として銀行が過少資本に陥るならば、資本再注入というのは十分検討に値するのではないかというふうに仰られたと理解しているわけでございます。

それに対して私は前の会見で申しました通り、現在、我々がやろうとしていること、すなわち主要行の破綻懸念先以下、この3月時点では11.7兆円、これをオフバランス化したとしても、それの自己資本比率への影響は0.2%ないし、0.3%でございまして、極めて限定的であって、私は現時点において金融庁が各主要行にお願いしている不良債権処理をきちっとして頂いたとしても、主要行への自己資本比率への影響というのは、限定的であって、資本再注入をしなければいけないほど、自己資本比率が下がるというふうには思っておりません。

問)

小泉首相の方がテレビの討論番組の中で、現在ある不良債権の処分について2~3年以内では全部処理することは無理だということは分かっているけれどもというような発言があったのですが、これについては長官の方はどのように受け止めていますか。

答)

私は一視聴者として、小泉総理のご発言を聞いておりましたけれども、ごく自然に聞いておりました。と、申しますのは何弁もこの場でも、あるいは懇談の席でも皆様にも申し上げておりますけれども、金融業というものは金融業として成り立っていく以上、不良債権処理はどんな時代であっても必ずあるわけでございまして、バブルの真最中であっても日本の銀行は不良債権処理をしていたわけでございまして、不良債権がなくなるような時というのは来ることは考えられないと思います。

2~3年で何をするかというのは不良債権の最終処理は2~3年で行いますと、あるいは3年以内でやりますと、小泉内閣が言ってますのは3年以内には銀行の不良債権というものが現在のように景気回復の足枷になっているとか、そういう大きな問題として取り上げられるほどの不良債権問題にはもうなっていないだろうと、そこまで不良債権処理を進めるという意味において、不良債権の最終処理ということを申しているわけでございまして、小泉総理の仰られた3年経ったら不良債権処理はなくなるなんてことはないということと私は矛盾してはいないというふうに思っております。

問)

銀行持株会社ですと、法定準備金が資本金の1/4まで取り崩して配当原資に回してもよいというお考えだそうですが、この狙いとそれと2002年3月期からということで現在、銀行持株会社でない銀行もその3月末までに変われば、これは適用されて、一挙にこの配当原資を手にすることができると考えてよろしいのでしょうか。その二つを教えてください。

答)

今のご質問された記者の方は私より遥に進んだ、多分知識をお持ちなんだろうと思いますけれども、私は単に商法の規定上、銀行持株会社というのはいわゆる銀行法上の銀行免許を与えておりませんので、資本準備金まで積み立てなければいけないとか、あるいは取り崩す場合も、取り崩す法定準備金も資本金を上回る部分しか取り崩せないとか、今回の商法の一括整備法でいわゆる銀行につきましては一般企業の特例と致しまして、銀行免許を与えた銀行について言えば、取り崩す範囲というのは資本金を超えるだけですよといった、それはその通りになっています。今、ご質問された記者の方のご質問というのは持株会社はどうだと、一般企業ではないかと。従って、今回の商法の改正によって、資本金の1/4を超える、法定準備金が必要だけれども1/4を超える部分は取り崩せる、それはその通りだと思います。

ただ、今私がちょっと、今のご質問された記者の方は私より遥に知識があり、いろんなことをお考えなったと思いますけれども、私の中ではこれが何か現在の銀行の何か、例えば配当原資が非常に少なくなった。それを救済する方法として、そういう持株会社の商法上の違い、つまり銀行免許を持っている子銀行の話と銀行免許を持っていない持株会社との1/4か4/4かの差を利用するという、そういうものの考え方は私の頭の中には全くございませんし、そういうこと考えている銀行があるとは、私は聞いておりません。

問)

今の問題に関連して伺いますけれども、そういうことを利用することを考えている銀行がないということですか。

答)

いや、ないかどうか知りません。私は聞いておりませんということです。

問)

では、これから出て来るかも知れないと。

答)

ただ、どういう道筋でそういうことが可能になるのか。つまり外部資本を取り入れないで、連結の対象になっている持株会社と子銀行があると仮定した時に、どういう道行から、そういうことが可能になるかというのが、私にはちょっと具体的に良く分からないと、何か例を出して言って頂ければ、当方もきちんと対応できるかと思いますけれども。

問)

子会社にしている地域銀行を、自分と横に並べて持株会社を作って、その下に置くと、2つないし3つを並べると、こういうケースはどうなのでしょう。

答)

そうだと思いますけれども、持株会社が出来た時にですね、資本金・資本準備金、利益準備金なんか何もないでしょうし、資本金と資本準備金だけの持株会社がありますよね。基本的には、子銀行からの配当によって剰余金というものが出て来るわけですよね。あと、外から何もキャピタルが入って来ないことを前提として、子銀行だったら出来ないことが持株会社だったら出来るのですかね。

問)

そこを伺っているのです。

答)

良くもう一度勉強しておきます。

問)

一つ言葉を伺いたいのですけれども、昔護送船団行政というのがあったのですけれども、これは一番船足が遅い、あるいは体力が弱い銀行に併せて制度を作っていくと、あるいは行政を運用すると、こういうふうに一般的には定義されていると思いますけれども、長官はそういうご理解をされているのでしょうか。護送船団行政という言葉について。

答)

護送船団行政と言われている意味については、仰るとおりだと思いますけれどもね。いや、我々はそれに決別したのであって、何かそういうことを言われると気持ち悪いのですけれども、どういうコンテキストでそういうお話になっているのか。

問)

別に、特段の意味はありません。

問)

確認ですけれども、銀行持株会社は銀行法の銀行ではないという、そういうお考えなのですね。

答)

銀行法による銀行免許は与えていません。銀行持株会社法による認可か何かはしていると思いますけれども。つまり、銀行法上の銀行免許を与えているというのは、何にポイントがあるかというと預金取扱機関というところにポイントがあるのであって、銀行持株会社は預金の取扱をしていないということを申し上げているわけです。従って、規制の体系が違うということです。

問)

法定準備金の取り崩しに当たっては、全て商法の適用を受けるということでしょうか。

答)

それは一般企業の話です。というのは、いわゆる資本金の1/4まで、法定準備金というのは、資本準備金プラス利益準備金でございますけれども、それを1/4まで積みなさいと。それを超えたら取り崩すことが出来ますよと。超えた部分についてですね。これは日本の全企業に対する新しいルールとして今度の商法でそれが出来たわけです。

その時に銀行も一つの株式会社であり、一つの企業でありますので黙っていたら、商法のそのままになるわけです。それを銀行というのは、預金取扱機関であり、もっと高い自己規制ルール、つまり今まで自己資本の100%まで積み増しなさいと、いうことが今までのルールだったわけですから、それを緩めるのは、おかしいのではないかということで、我々は銀行についての商法の特例として、銀行法上の銀行免許を得ている企業、即ち銀行なのですけれども、銀行につきましては、一般ルールは資本金の1/4まで積みなさい、それ以上については、取り崩せますというのを、4/4まで積みなさいと取り崩しは厳しい自己規正を、つまり前と同じ厳しい自己規正を置いたというのが、先般の国会に置ける商法改正に伴う整備法で実現した改正でございます。

問)

先程、勉強されると言った部分というのは、何時頃までに分かるでしょうか。

答)

直ぐに勉強致します。いろいろな過程で、是非お聞きになった記者も協力して頂きたいのですけれども、どんな過程をおけば、そういう何かウルトラCのようなことが考えられるのか、是非私も聞いてみますけれども、皆さんからもお聞きしたいと思っております。

問)

危惧するのは、配当原資を手にするために今までとってきたガバナンスの形態を変えるというのは、本末転倒ではないでしょうか。今持株会社をやらずに銀行という形でやって来ているのが最適だと思ってやっているのに、専ら配当原資を機械的に手に入れるために、変えるような銀行が出てきては大変ではないかとそういうことを考えているのですが。

答)

それは仰るとおりでしょうね。単に配当原資を得るためにガバナンスを変えるというのは、それはまさに本末転倒だというのは仰るとおりだと思いますね。ただ、そういう質問が出たこと自体、意外でして、何かそういう危惧でもおありになるのか、私の頭にはそういうものはございません。

問)

本末転倒であっても、それを金融機関がやってくれば、それを止める手だてがないということですね。

答)

いや、ですから具体的なことがちょっとイメージ出来ないものですから、何ともお答えしにくいのですけれども、合法的であって、何かきちんと説明出来ることだったら、つまり世の中にですね、説明出来ることであったら、止める手だてがないというか、こちらは銀行監督権があるわけですから、いわゆる預金者保護あるいは金融秩序維持というそういう銀行法の趣旨に照らして適正であるかどうかという観点からも審査いたしますので、そういう観点から見て銀行監督上の銀行法第24条あるいは第26条というものも発動できるかということにかかってくるのではないでしょうかね。

問)

経営健全化計画の見直しなのですけれども、これは色々役所の人事異動などもあってですね、どういうふうなペースで進んでいるのでしょうか。

答)

出来れば今月中と思ってやっているのですけれども、いわゆる経営健全化計画の見直し、つまり平成15年3月期までの計画をロールオーバーしてですね、平成17年3月期まで伸ばす。平成13年3月期をその発射台にして、そういう作業をするわけですけれども、各銀行との作業が遅れている、あるいはその対象となる銀行が多いということもありまして、現時点においては、確たる見通しが立っているわけではございません。

早くまとめたいという気持ちがある一方、収益性の向上等、各銀行にお願いすることも多い、あるいは各銀行が出してくることに対する審査項目も多い、そういうことで時間がかかることも事実でございますので、ベストエフォーツベースで出来るだけ早くということしか現時点では申し上げようがないと思います。

問)

信用組合の検査の通知なのですけれども、あとどの位残っているのでしょうか。

答)

いや、今日現在でゼロです。皆通知しました。ちょっと手元に資料がございませんですけれども、検査対象が、今年が255でございますか、本事務年度、その本事務年度で計画したものについて立入りも終わっており、検査通知も全部終わったとこういう意味でございます。

問)

では一斉検査は、終了したということですか。

答)

そういうことでございます。

(以上)

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