森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年7月16日(月)17時03分~17時29分)

【質疑応答】

問)

それでは長官の方からよろしくお願いします。

答)

私の方から特に申し上げることはございません。

問)

先週、検査官の布陣も固まりまして、いよいよ森新体制が本格始動するわけですけれども、改めて新事務年度の抱負と重点課題をお願いします。

答)

皆さんご承知のように旧事務年度から新事務年度へと申しましても、我々に課されている課題は軽減されることなく、引き続き重い課題を背負って新しい事務年度に入っているわけでございます。そういう意味で課題としては7月10日以前も、10日後も同じでございまして、まず緊急経済対策や、いわゆる骨太の方針を踏まえまして、不良債権問題の抜本的な解決を図ることが金融庁に課されている一番大きな課題であると考えておりますし、さらに、直接金融の裾野を広げる個人投資家をいかに直接金融市場に引き込んでいくかという意味での、いわば証券市場の構造改革ということも大きな課題として新事務年度に引き継がれたと思っております。

小泉内閣の一番のポイントであります構造改革、そういう意味におきまして金融部門の構造改革と、証券部門の構造改革、一言で言えばそうしたことが新事務年度の一番大きな課題であるというふうに考えております。

問)

先週の記者会見の場で早急に勉強したいと仰っていました、配当原資を手にすることを目的として子会社にしている地域銀行を、自分と横に並べて持株会社の下に並べることの是非に対して銀行監督上どのようにお考えでしょうか。

答)

いろいろ勉強させていただきましたが、私の答えは前回の会見で申し上げたことと変わりはございませんで、配当原資を手にすることを前提として持株会社を作るということは、どう考えても銀行法上あるいは、銀行持株会社法制上問題があると、そういうような目的を持って持株会社の認可の申請が来ると、それは問題であると言わざるを得ませんし、まあそういうような申請というのはあり得ないというふうに考えております。

持株会社はあくまで持株会社を作る経済合理性が無ければいけないわけでございまして、それによってリストラがさらに進んで、グループ全体の収益力が向上するとか、あるいは全体としての自己資本の充実が一層図れるとか、それぞれ経済合理性のある理由があるはずではございまして、そういう形での持株会社申請であれば真正面からそれに取り組みたいと思います。

ご質問に出るような、配当を払えないところが配当を払えるようにするための持株会社というのは考えられないというふうに思っております。

問)

経営健全化計画の見直しが各行で進んでいると思いますが、進捗状況と金融庁からどういうところに関して重点的に指示をしているのかについてお願いします。

答)

経営健全化計画と申しますのは言うまでもなく、基本的には平成11年3月に公的資金の注入をさせて頂いたわけですけれども、いわばそれの担保となるものとして経営健全化計画を出して頂いている。それは、基本的には11年3月を発射台にして4年間、15年3月までの計画を出して頂いているわけですけれども、いろいろ経済環境が目まぐるしく変わっていく中で、15年3月を待って16年3月からまた4年間というやり方が良いのかどうかということが再生委員会の時代に議論されました。そこでは、やはりこのように非常に経済環境の変化の激しい時には、2年くらい経ってそこからさらに4年間というようなローリングという形でやった方が良いのではないかという議論になりまして、既に公表いたしましたけれども、基本的には2年経ったところで計画の見直しを各行にお願いして、そしてローリングしていくということです。

その時の考え方なんですけれども、これはあくまで根拠法は金融機能早期健全化法第5条第4項でございまして、報告を徴求しそれを公表する。つまり、考え方としてはあくまでですね、金融庁が銀行経営に介入するのではなくて、銀行の自己責任の下で計画を作ってもらい、それを公表してパブリックプレッシャーにかけるという発想で、金融早期健全化法第5条第4項が出来ておりまして、今回もその例外ではございません。基本的に経営健全化計画を作る主体は各注入行であるとともに、それに対して責任を持ってもらうのも各注入行でございます。

ですから基本的には先方に報告徴求を課して出てきたものを公表するということでございますけれども、しかし、これだけ世の中で金融機関と申しますか銀行経営に対していろいろな批判も含めていろいろ意見が言われている時でございますので、当方としては銀行に対していろんな面から、言わばサジェスチョンを与え、一言で言えば、あなた方の出すこの計画で市場の信認が本当に得られますか、大丈夫ですかというような念押しをいろんな面でさせて頂いている。それによって、ある程度時間がかかっているというのが正直なところでございます。ただ、いつまでも意見交換ばかりしていて世の中への公表が遅れるというのも何かと思いますので、ある程度のところでは、これで良いですねということを断った上で公表したいと思っております。

問)

月内はちょっと難しいくらいの感じでしょうか。

答)

ちょっと予断を持って何か言えるという状況ではございません。できるだけ月内にしたいと前から申してます通りそう思っております。

問)

先程のお話の中でも証券市場の構造改革ということを仰られたのですが、一部報道でも証券アナリストに対して調査を金融庁がしたいという報道が出たのですが、この辺の考え方と調査内容、それから調査を公表した後、どういうふうに行政に反映させていきたいのか、この3点にいてお願いいたします。

答)

今年の6月に、ストックホルムでIOSCOの総会がございました。そこでこれは一部のメンバー国から証券アナリストに関するタスクフォースを作るべきではないかという考えが今年の3月ぐらいから提案されていたわけでありますが、それを踏まえましてこの証券アナリストに関するタスクフォースの設置が、6月のIOSCO総会で承認されまして、そして、その議長が日本の金融庁よろしく頼むということになって、日本の金融庁がそれを受け入れました。

ではどういうことをやっていくのかということですけれども、基本的にアナリストの活動というものは言うまでもないことですけれども、独立性・中立性、アナリストの活動に対しては投資家の信認が得られなければいけないと、ベーシックにはそういうことが、私はアナリストには求められているんだと思いますけれども、果たして各国の市場で活動されているアナリストのその活動というものが、そういう理想的な形になっているかどうか、それをIOSCO加盟の各国において実態調査を致しましょうと。その実態調査を踏まえて意見交換をしましょうと、これがこのタスクフォースに課された使命でございます。

では今後どういうふうに展開していくのかということで、日本が議長国でありますので、日本自身が考えていかなければいけない話でございますけれども、基本的に、まず意見交換。つまり、まず各国の実態調査、そしてその上での意見交換。そこで問題があるとなると、その是正策というものが当然考えられるわけですけれども、基本的にどういう是正策、是正策というのは基本的に規制にもつながることになるわけですけれども、どういうものが考えられるかということになりますと、事柄の性格から言って私はその政府自体が何かアナリストを規制するということはなかなか考えられないのではないかなと。個々の大きな市場を持っている加盟国の自主規制機関は、アナリストについても自主規制機関というものを持っております。

日本の場合は日本アナリスト協会がそれに当たるのではないかと思いますけれども、そして日本の場合はご承知かと思いますけれども、既にアナリスト協会で行為規範を定めているわけです。ですから結局、その行為規範の運用がきちんとなされているか、さらにその行為規範で十分なのかどうかと、こういう議論になってくるのではないかなあと。

いずれにしても自主規制機関への各国との意見交換の結果について、今の時点から予断を申し上げるのは控えるべきだと思いますけど、仮に不十分なところがあるということであるならば、敢えて言えばその自主規制機関へのウォーニングを出すというような形になるのではないかなあというふうに思います。

問)

実態調査、意見交換というのは長官の頭の中ではいつ頃の目途とされているのですか。

答)

さあ、大体、どうでしょうか。こういう国際機関であるサブジェクトを取り上げてタスクフォースを設置致しますと、それに関して最終的にリポートというものが作られるわけですけれども、まあ1年はかかる話ではないかなあというふうに思います。

問)

アメリカのメリルリンチがアナリストに対して、担当の株については売買を禁止するなど厳しい処置をとっています。ところが、それはアメリカでも初めてというぐらいに、まあ何と言うか抜け穴が非常に多かったということだと思いますけれども、この点に関して日本の証券会社が抱えているアナリストに関しては長官としてはどういう認識でおられますか。

答)

正直申しまして、アナリスト協会の行為規範というものは承知しておりますけれども、それはそのアナリスト協会がメンバーに対して課しているものですね。それで今の記者の方のご質問というのは、アナリストと言っても独立系のアナリストもいれば、会社に属しているアナリストもあって、今のお話は会社に属しているアナリストに対して会社がどういうふうに行為規範を作っているかという問題だと思うんです。

そういう問題になりますと、私が先程話したのと別の側面があるわけで、そういうような行為規範を日本の証券会社がどのように課しているのか、その辺も実態調査としてこれから調べてみなければいけないことだと思っています。かつ、その行為規範があるとして、果たしてそれに対して発動した事例があるかどうかとか、そういうことも含めてこれから実態調査をしていきたいというふうに考えております。

ただ、先程も申しましたように、私は今の世の中、市場におけるアナリストの役割というのは非常に大きなものがあり、特に投資家への影響度というのは大変大きなものがあると思います。それだけにアナリストの負うべき責任というのは非常に大きいものだと思っています。従って、こういうような行為規範があるかないかに関わらず、アナリストというのは、客観的なデータに基づく、客観的な分析をして、客観的な意見を述べるということが、これから益々強く求められるものだというふうに認識しております。

問)

経営健全化計画の見直しの問題なのですけれども、不良債権処理のところですが、現在どれくらいあるかというのはそれぞれ各行はっきりしていますよね。いわゆる新規発生がどうなるのかというのは、各行それぞれ見立てが違うと思います。それは債務者企業が違うからという要因と、それからもう一つはおそらくマクロ経済の動きに対する見通しというのはそれぞれあると思うんですけれども、ただ後者の部分については、かなり大きな差があるということになりますと、その健全化計画自体の信頼性もなかなかどうかなと、疑問符が付けられるようなことにもなりかねないと。その辺について今回のヒアリングでは金融庁としてどういうふうな考えを示しておられるのか、ちょっと教えて頂けませんでしょうか。

答)

まさに今、記者の方からのご質問で仰った通りであると思います。先程4年間と申しましたけれども、発射台は今年の3月期になるわけですね。今年の3月期の不良債権が各行どれくらいあるか、そしてそれに対して処理をどれくらいしたかということは客観的に今回出てくるわけです。これはむしろフォローアップというところに出てくるわけです。それに対しては、我々はきちんとフォローアップをして、そして13年3月期を発射台にして、14年、15年、16年、17年とその4年間、これは今度は計画の方になるわけです。

不良債権の今後の発生というか、既応の不良債権の処理、それによる処分損をどのように見立てていくか、更に新規のものをどのように見立てていくかというのは、まさに各行の計画・見積りというものがあるわけですけれども、まあ金融庁としては景気がこの3月期と、これから先の来年の3月期、さらに再来年の3月期と、みんな継続しているわけですね。今年の3月期から世の中がガラッと変わってですね、急に天国になるなんてことは考えられない。足元の経済は引き続き厳しい状況が続くわけでございまして、そこから2年、3年経った後をどういうふうに予測するかというのは、それはいろいろと分かれると思いますけれども、我々も各銀行にサジェストしてますのは、基本的に3月の不良債権の状況というもの、つまり発射台のところを前提にして継続性のあるものとして来年の3月期をどう見るか等々、その継続性というところに、やはり重点を置いて皆さん計画を立てないと、今ご質問になられた記者の方の非常にグッド・ポイントだと思うんですけれども、そういう問いかけに答えられないということは市場の信認が得られますかという疑問にもつながる。そういうところを当方としていろいろサジェストしていると、それにも時間をかけているということは事実でございます。

問)

経済見通しとなるのかよく分かりませんけれども、どの程度の割合で新規発生が生まれるのかということについてはですね、各行それぞれ見方があるのでしょうけれども、ある幅の中には大体納めたいという感じなのでしょうか。

答)

いや、先程だから私が最初に申しましたように、経営健全化計画というのはあくまで先方が自己責任で作るものでございますから、ある幅に押さえ込もうとかそういうことを本来、金融庁はしてはならないものだと私は思っております。それはあくまで各行の自己責任で発表して、市場の信認を得られるかどうかパブリックプレッシャーにかけるというのが、早期健全化法5条第4項の趣旨ですから、その原点は私は踏み外したくないと思っております。

しかし、そうは言っても仮に気楽に考えているところがあったら、「あなたそんなに気楽な考え方で市場の信認が得られますか」というサジェストはさせて頂いております。先方からすれば、いろいろ意見は向こうとしてはあるということで、まあそれだけに意見交換に時間をかけているということかと思いますけれども。

問)

先程の持株会社の件ですが、収益力の向上とか、自己資本の充実というのは、当然の話ですよね。そういうことであれば、その議論に長官が仰られたような話であれば、金融機関が持株会社を作ることに関して法的に認めて良いということですか。配当原資が得られることと持株会社の認可は別問題だと、それはそれで両立するということでしょうか。

答)

仰るとおりかと思います。つまり、持株会社を作る経済合理性がきちっと認められるということであれば、持株会社は、今までも「みずほ」について認可したり、あるいは「UFJ」について認可しているのと同様に、これからも認可していきます。その結果としてですね、配当が出てくるとかいうことであるならば、持株会社を作らなければA行、B行、C行とあった場合に、A行からは配当が出てこないはずなのに、持株会社を作ったためにですね、例えばB行、C行からの配当によって結果として配当が払われるということが仮にあったとしても、それは何と言いましょうか、結果としてそうなったということであって、だからといって配当が払われるのであったならば、A,B,Cの持株会社を認めるべきではないと、そういうことではないと思うんですね。それはA,B,Cというところについて持株会社を作る経済的合理性がきちっと認められるのであれば、例えば支店の重複をなくして、グループ全体としては収益力が向上するというようなこと、そういうことが認められるのであれば、あるいはグループ全体として資本の充実が進むということがはっきり認められるのであるならば、そういうことは銀行法、あるいは持株会社法制の中で、そういうところを審査しなさいと書いてあるわけですから、それは認可の審査には乗っかる話だと思います。

(以上)

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