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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年7月26日(木)17時02分~17時29分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

一昨日だと思いますけれども、塩川財務大臣が株価の下落に関連して山本全銀協会長に対して、現在議論されている株式取得機構の設立は株価の低迷に対する非常に重要な施策と考えており、是非、早期に成案を得て実行に移したいと考えているので銀行業界に対してそういう趣旨の協力を要請したということですけれども、この件に関連して3点ほどお伺い致します。

まず1点目は、政府は取得機構を株価対策と位置付けているのかという点。

2点目は、財務大臣が証券業界や銀行業界にこうした働きかけをすることについて、行き過ぎた行政指導ではないか、あるいは財金分離の趣旨に反するのではないかといった批判がありますが、これについてどのようにお考えになっているか。

3点目として、機構の議論の進捗状況ですけれども、優先拠出金の分担ですとか、あるいは税制優遇などの検討状況について教えてください。

答)

まずご質問の1点目ですけれども、我々は取得機構を株価対策という位置付けにはしておりません。ご承知の通り取得機構は、どうして必要かと考えた次第かということは既に申し上げているかと思いますけれども、まず前提として、銀行について株式保有制限というものをかける。これは、2004年までに「Tier1」で考えるのか、あるいは資本勘定で考えるのか、いずれにしてもその数値は近似したものでございますけれども、そこまで銀行が保有する株式を縮小してくださいと。なぜ縮小するかというと、それは銀行が株を保有していることから生じるリスクというものを一定以下に、即ち銀行のリスク管理能力以内に納めるためにそういうことをしてくださいということです。

一方において、そういう銀行の株式保有規制というものをかけたいと、そのために銀行法も改正して、臨時国会にはお願いしたいというのがまず最初にあるわけでございます。そのためには、銀行は、持っている株をアグリゲートベースと言いますか、全体として見れば3分の1近くを多分2004年までに放出しなければいけない。その時に勿論、市場で放出して良いわけでございますけれども、これまで例えば主要行でいきますと、昨年度1年間で約3.1兆円売ったと。そうしますと、3年で、昨年のベースで言いますと10兆円くらいは市場で掃けることが考えられる。しかし、先程申しました保有制限ということを考えますと、13兆円~14兆円手放さなければいけない。そうすると、市場でのアブソーバブルキャパシティを超えた部分というのが、2~3兆円あるでしょうと。これはどこへ行くのかと。勿論ETFとか自己株消却とか、そういう機構の一つの窓口、即ち、いわゆる機構が取得するというか機構を通してはめ込むというようなものがどれくらい見込まれるか、まだ予測は出来ませんけれども、そういうことをいろいろと考えていきますと、通常は市場で売ると思いますけれども、セーフティネットとしての取得機構というものを作っておいた方が、いざという時に市場に対して悪影響を与えないかもしれないというか、そういうような時にこういうセーフティネットを作っておいた方がそういう悪影響を除去できるのではないかと。あるいはそういうセーフティネットを作っていくこと自体が市場に安心感を与えるのではないかと。そういうことからセーフティネットとしての取得機構というものを考えたわけでございまして、先に株価対策ありきでは勿論ございません。まあ、結果として市場への悪影響を除去できるという意味において、結果としては株価の安定性というものに寄与はするかもしれません。しかし、何か株価を上げることを目的としているとか、そのようなことでは全くございません。それが第一のご質問に対するお答えかと思います。

第2のご質問は、財務大臣の証券業協会長あるいは全銀協会長に対するご発言をどう受け止めているかというご質問かと思います。私も報道等で財務大臣が仰られたということは聞いておりますし、柳澤大臣も申したかと思いますけれども、我々からすれば塩川財務大臣がマクロ経済の運営に責任ある方でもございますし、当然、株価についてはご関心を持っておられる。まあそれは自然なことだと思っております。そういう方が一個人として、あるいは、一政治家としてご友人にお話になったということでございまして、そういうことについて銀行界あるいは証券界を所管している当金融庁としてですね、何かコメントをと言われましても特にコメントすることはございません。

それから、第3のご質問でございますけれども、機構の立ち上げの準備状況はどの程度まで進んでいるかということでございますけれども、これは6月26日に金融庁案というものを公表させていただきました。まだ細部を詰め切っていないところもご承知のようにございます。そういう形で銀行界に今投げているところでございまして、ご質問にありました優先拠出金の額、まあ100億円を目途としてということで我々は投げさせていただいているのでございますけれども、その分担がどうなるか、そこら辺は今、銀行界の内部でいろいろ議論、あるいは調整が図られているところと認識しております。また、税の問題につきましてもいろいろ銀行界の意見を聞きながら、どういうものを税務当局に要求して行くかどうか、最終的な詰めを今しているところでございまして、まだ具体的に皆様方にこういうものだというところまでお話する段階には至っておりません。以上です。

問)

次に経営健全化計画の見直しについてお伺いします。月内を目途に目指していらっしゃったかと思うんですけれども、その進捗状況と、あと中でも収益力の向上ということを強調されているというお話かと思いますけれども、当局としてはどのようなビジネスモデルというのを想定していらっしゃるのか、この点についてお願いします。

答)

今回資本注入行の中で、いわゆる2年が経ち、ローリングすることとなっているところ、15年3月期から17年3月期まで延ばした上で経営健全化計画を出してくださいと、こう申し上げて、そして先方から案が出てきて、それに対して当方がいろいろヒアリングをし、場合によってはサジェスションもさせていただいているというのが今の状況でございます。

確かに皆様方には今月末を目途と申しました。今月末を目途というのを今直ちに変えるつもりはございません。これはあくまでも、早期健全化法第5条4項に基づきまして報告を徴求し公表する。即ち、あくまでも各資本注入行の自己責任で出してもらうものでございまして、言わば金融庁が査定をして「これではいかん」とかという権限の有るものでもございませんので、私はあるところで目途を立てて、自己責任で「これで公表しますけれども良いですか」と、そして「結構です」というところで公表したいと思ってます。その目途として、やはり今月末を考えております。ただ場合によっては、一両日、2~3日遅れるかもしれませんけれども、いずれにしてもそのようなスピード感で今やっているところでございます。

収益力の向上の話でございますけれども、まず我々が一番強調しておりますのは、世の中不良債権処理に皆さんの目が行っているわけでございますし、不良債権の処理というのが金融セクターの構造改革という意味において、小泉内閣の大きな政策の柱にもなっていることでございますので、まず、自然体で不良債権の処理額の見込みというものを自然体で出した上で、後は業務純益との絡み、つまり、それを業務純益でどう処理して行くかと、その処理損をどう業務純益で処理して行くかということになるわけで、業務純益はどのように収益力の向上策が有るんですかということになるわけでございます。そういう時にビジネスモデルというのは、まあ各銀行によっていろいろございます。

一つ言えることはやはり、これからの日本の銀行、リスク管理能力を高める、即ちリスクに見合ったスプレッドを取っていくということに一層注力をしていかなければいけないということは各銀行は理解しておりますし、皆様方の新聞等の一部でも私は見ましたけれども、一部の銀行では既にスプレッドの幅を広げるというか、金利を上げるということを通告し始めている銀行もあるやに聞いております。そういうのが一つの業務純益力の向上ということになると思いますけれども、それ以外にはやはり、投信の窓販、それに基づく手数料収入の増大、あるいはe-ビジネスからの手数料の増大、あるいはシンジケートローンの強化とか、いろいろな施策を各銀行は考えておるところでございまして、そんなところが皆様に、各銀行が公表する今度のローリングした後の経営健全化計画には出てくるのではないかと、それで皆様がそれを認識されるというふうに思っております。

問)

特殊法人改革や郵貯の民営化といった改革に関連してお伺いします。

郵貯や簡保ですとか、あるいは住宅金融公庫、日本政策投資銀行といった、いわゆる官業が民業を圧迫しているのではないかという指摘が予てあるわけですけれども、金融業の収益力の向上というものを官業が妨げているのではないか、あるいは金融の分野での官民の役割分担について、金融庁としてはどのようにお考えになっているのでしょうか。

答)

これは大きな、今小泉内閣におけるテーマになっているという認識を持っております。果たしてと言いますか、本来、「官は民の補完である」と、この大原則は変わらないわけでございまして、ただ、今ご質問になった方が仰られたように、補完としての官が、補完以上のことになっているのかどうかというところは非常に判断が難しいところで、いろいろな政府の場で議論がなされている、あるいはこれからなされるというふうに認識しておりまして、金融に関わることでございますから、当然金融庁としても大きな関心を持ってその議論の成り行き、推移を注視して参りたいというふうに思っております。

問)

アメリカのグリーンスパンFRB議長の議会証言で、「日本の景気が非常に低迷しているのは、金融機関の金融仲介機能が不十分であるからだ」というような証言をされたという報道がありましたが、この辺りについてどのようにお考えでしょうか。

答)

私もその報道は読ませて頂きました。金融庁としてそれに対して見解を述べるには、内部での議論、あるいは大臣とその発言について話したわけではございませんので、敢えて私の個人的な意見として言わせて頂くならば、不良債権が問題になり、銀行の体力が弱っていて、金融仲介機能が衰えていて、それが景気に響いているんだという見方は、外国から見るとそのように見えるのかもしれませんけれども、現実に申しますと、やはり資金ニーズが今の時点においてないというのが、不足している、それが実態ではないかなあと思っております。

それはなぜ資金ニーズがないかといえば、それは景気が良くないからということにもなるわけですけれども、どちらが卵でどちらが鶏かみたいな話にもなるわけですけれども、一つの証左として言えば、大手銀行の中にも預貸率が80%台まで下がっているところがございます。また皆様方の報道で大手銀行の国債保有が増えているという報道もございます。

私は、その一方において日銀短観で銀行の貸出態度について、緩い、きついという数字がございますが、あれで見ましても緩いというのが圧倒的に優勢でございますね。

そういうようないろいろな数字を眺めていますと、また銀行の頭取一人一人の方々に聞いてみましても、いわば銀行のリスク管理能力の範囲内で貸したいと思うところは借りてくれないと。もう貸したらすぐ不良債権になるようなところから申し込まれてもなかなか貸せないと。やはりそういうことを総合的に考えると、銀行が貸し渋りをしているのではなくて資金借入れのニーズが不足している、銀行ももっと本来信用供与が本業でございますので、預貸率を少なくとも主要行は上げたいと考えている、上げたくてもなかなか上がらないと、それが私は実態ではないかというふうに思っております。

問)

銀行のスプレッドの問題について先程言及がありましたけれども、今の時期にスプレッドを上げると、借り手企業としては相当なかなか大変だなというところも多いのではないかと思うのですけれども、こういう銀行の収益力強化というのがですね、借り手企業にどういう影響を与えるのか、景気全体にどういう影響を与えるのか、この辺についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

答)

私はもうご質問になられた記者の方の仰る通りでございます。ただ一方において、商工ローンあたりが10%以上の金利で貸しているというような実態もあるわけですね。そんな中で、ミドルリスク、ミドルリターンと言うのでしょうか、そういうような方向性、即ち大手銀行は金利はもう4%くらいまで、そこから後は他の業態の職域だと、あるいは営業域だということではなくて、銀行がしっかりしたリスク管理の下で、そのリスクに見合った金利というものを多様化していくということは自然な流れなのではないかなあというふうに思っております。

なぜ、そういうことを申し上げるかと言うと、ROAが皆さんご承知のようにアメリカの銀行に比べて日本は極端に低い。一つは金利の横並び体質みたいなものが、つまりかつての慣例のようなものが尾を引いているところがあると思いますけれども、やはり一つはリスクに見合った金利を取っていないという面もあるのではないかと。やはりそれをノーマライズしていく努力というものは銀行のリスク管理という面からは、当然あるべき姿だろうというふうに私自身は思っています。

ただ、今御質問された方が、このデフレの中でそれをやってどうするんだという御質問、それは確かにそういう面があるわけでございまして、従って私は銀行がそういうふうにリスク管理の中で金利を上げていく時は、やはり企業の財務内容、キャッシュ・フロー等を十分見ながらそういうことをやっているんだろうと思いますので、今、記者の方が仰られたマクロ的な質問にお答えするのは、なかなか難しいですけれども、やはりケースバイケースで、そういうリスク管理の面からそのリスクに見合って金利を上げていく余地というのは、ケースバイケースではあるのではないかと思いますし、そういう努力を各銀行がやっていくべきだというふうに思っております。

問)

今のことと関連してもう一つ伺いますけれども、米国もですね、90年台の初頭くらいにはかなりスプレッドが低い時期があったと。その時にやったことは何かと、いろいろ物の本などで読みますと、銀行が主体的にリスク・スプレッドを上げるという努力というよりも、むしろ金融政策で、全体の金利を下げて、それで銀行はむしろスプレッドの水準を変えないと、仕入価格は下がると、それで利ざやを取って行ったということだったと思うんですけれども、まあ我が国では今はそういう余地はほとんどないと思うんですけれども、この環境の中でケースバイケースとはいえ、それほど画期的に収益力強化に寄与するような金利政策の変更ができるのかということについて、今どのようにお考えですか。

答)

なかなかこういうのは一般論では答えにくいんだろうと思います。

私が申し上げたのは、やはり個別のケースで借り手のキャッシュ・フロー等、あるいは経営合理化計画等、借り手の企業のそれを見ながら話し合いの下でやっていく銀行も現れてきていると聞いていますし、本来やはりそういうリスク管理という観点からの金利政策というのは各銀行が真剣に考えるべきことだなあと、それを私は申し上げたかったわけでございまして、まあ、答えになっていないかもしれませんけれども、そういうことです。

(以上)

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