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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年7月30日(月)17時05分~17時28分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

まず、参院選の結果をどのようにとらえていらっしゃるか。それから、金融庁の行政にどのような影響があるかについてお願いします。

答)

参院選の結果についてのご質問ですけれども、金融庁としては政治の世界について本来コメントは差し控えるべきだと思いますが、敢えて言うならば、小泉内閣はご承知の通り構造改革というものを大きな目標として掲げておりまして、それに対する国民の期待というものと無関係ではないというふうに認識しております。そういう認識の下で金融庁としては、緊急経済対策あるいは、その後の骨太の方針で具体化されている不良債権処理というものに粛々と取り組んで行きたいと考えております。

問)

選挙の結果自体は、改革に対する支持という見方が多いようですけれども、一方で市場の方は、今日、日経平均株価はバブル後の最安値を更新しています。改革の具体的な中身であるとか、あるいは改革の中身自体がデフレ的な影響を持つのではないかと、そういうような見方が背景にあるのではないかと思いますけれども、株価についてはどのような見方をしていらっしゃいますでしょうか。

答)

今ご質問のあった記者の方のようなコメントをする方もおられるかと思いますけれども、株価についてはご承知の通りにいろんな要因で日々動いているものでございまして、ある一つの見方でこうなったというのはいかがかと思います。このところ、4-6月期の企業側の決算の数字等が発表されている時期でございますし、いろんな要因が複合的に絡み合って今日の状況になっているんだと思います。いずれにいたしましても、株価の変動に一喜一憂することなく、構造改革にしっかりと取り組んでいくことが重要だと思います。敢えて言うならば、バブル後の最安値の時期からすれば、これはTOPIXで計ればまだ2割近く高い状況に現時点であるわけですけど。そういうことで、あまり株価要因で足下を慌てるというようなことは必要ないことですし、粛々と構造改革に取り組んでいくということが今の時期一番重要ではないかというふうに考えております。

問)

経営健全化計画ですが、木曜日の記者会見で、週内にもというようなお話だったかと思いますけれども、予定がどうなっているかということと、あと不良債権処理にかなり重点を置いていらっしゃるようですが、不良債権処理を加速させるということであれば赤字決算を容認されるのか、あるいは不良債権処理の促進等を理由にして経営の効率を改善させるために持株会社にするといったようなことは、その辺りはどうでしょうか。

答)

まず、スケジュール感ですけれども、前の会見でも申しましたように基本的に経営健全化計画の見直しというのは、当該資本注入行の自己責任の下で当方に報告し、当方はそれを公表してですね、市場のプレッシャーに置くというのが早期健全化法第5条4項の経営健全化計画の趣旨だと思いますので、いろいろ強いサジェスションをこれまで金融庁としてして参りましたけれども、資本注入行の方が「これで大丈夫です。」と、「今の自分の資産内容及び資産査定から言って、これが一番適正な見通しです。」という返事が、先方も何度も何度も当方のサジェスションを勘案して、それこそ経営健全化計画の見直しを何度も何度も見直して、その結果としてそういう返事がやっと今日あたり揃ってきつつあると、まだ全部ではございませんけど。

そういう中で、それではその公表をいつにするかということになるわけですけれども、私は先週の木曜日に今週中、つまり「今日から始まる1週間のどこかではなんとか」ということを申し上げたかと思うんですけれども、そういう私のスケジュール感は変わっておりません。あとは相手のそういう自信を持った回答さえ揃えば、あとは物理的な作業でございますので、これは、部下の職員、あるいは注入行の職員の方々には申し訳ないですけれども、徹夜でもやってなるべく早くという気持ちでおります。

それから、不良債権処理の促進が理由であれば赤字決算もということですけれども、これは何度もこの会見で申しますけれども、銀行の場合、まず資産査定ありきだと。ということでございまして、そういうことできちっとした資産査定、そして今年の3月期の資産査定に基づく今後の見通しが、これは非常にいつも申しますけれども、不良債権の処理と足下の経済との相関関係ということでございますので、どういう経済環境を今後前提とするかによって相当変わってくるわけですね。そこについて決して楽観的でない形でやってくれということを言っておりますので、それを前提に皆さん考えていると。

その結果として、今後の予想に赤字が出たからと言って、では赤字が出ないようにしていく、不良債権の見通しを甘くするのとどちらが良いかと言えば、それは、そういう二つが選択だということに偶々なるようなことがあるとすれば、それは不良債権処理の方をきちっと見てくださいということなのではないかと。

では赤字決算というのは何に響くかというと、赤字決算によって剰余金がどうなるかということにもなるわけですけれども、赤字決算そのものがどうかということよりも、そういう赤字決算の見通しを出した時に、市場がその銀行をどう見るかということが一番重要なわけですね。そういう面で、市場がきちっとした資産査定の下で、仮に赤字決算という予想が出たとした場合に、あとは市場がどこを見るかと言えば、やはり業務純益力だと思いますね。徹底的なリストラ等を含めた措置によって、業務純益力はこの銀行は大変高いんだと言えば、私は市場の信認は落ちないんだと思います。そういうことでございますので、不良債権処理の促進が理由であれば赤字決算を容認するとか、容認しないとか、そういう問題とは違う、つまり、市場の受け止め方が一番重要なのではないかというふうに思います。

持株会社化の話というのは、どうしてそういう質問が出るのか私には理解し難いのですけれども、これは全く別途の問題でして、これは銀行法の中にあります持株会社規定の要件、即ち持株会社化することによってどのような効果が出て来るかとか、あるいは持株会社化することによって収益が向上するかどうかとか、あるいは資本充実がより図られるかどうかとか、そういうところで判断することであって、ご質問にあった経営健全化計画の見通しと持株会社化というのは、金融庁としてはそれは全く別物だと。持株会社化はそういう、今言ったような持株会社法の要件にきっちり合うような申請があるのならば粛々とそれを審査して、認可すべきものは認可していくということかと思います。

問)

破綻した韓国系信組の受け皿となるように目指している平和銀行の発起人大会が今日行われているのですけれども、平和銀行の銀行業の予備免許の申請時期等、もし見通しがありましたらお聞かせ願います。

答)

あくまでそれは、平和銀行が発起人大会を開き、準備室というのが出来ていると思うのですけれども、そういう発起人の皆様方のスケジュール感の下で予備申請が出てくれば粛々と受理して、審査に移るということでございまして、当方の方からですね、「早く出して来い」とか「いや、今は受け取れないからもっと後にしろ」とか、そういうような気持ちは毛頭ありません。

問)

経営健全化計画なのですけれども、今までは金融再生委員会があった時期でしかなかったのですが、この計画について事前に顧問会議等で議論したりすることはあるのでしょうか。

答)

経営健全化計画につきましては、いつでございましたか、前回の顧問会議に中途段階でかけさせて頂きまして、いろんな意見を顧問の人達からお聞き致しました。その顧問の御意見を踏まえて先程申しました強いサジェスションというものをさせて頂いているわけであります。その際に顧問の皆様には、ご承知のように再生委員会と顧問会議はリーガリーに申しまして違うわけですけれども、その際に顧問の皆様の御意見を踏まえていろいろサジェスションをしていきまして、その結果についてはいわば事務当局の方に御一任頂きたいということを私から申し上げまして、一任を頂いております。そういうことで最後の姿を顧問会議にかけなければならないということにはなっておりません。

問)

新生銀行が、ある会社の債権を預金保険機構に引き取ってもらうという申請をしておりまして、それを預金保険機構が拒絶すると、瑕疵担保条項に基づいて言っている話だと思うのですけれども、この辺りについては長官はどのように見ていらっしゃるのでしょうか。

答)

これは旧長期信用銀行を譲渡する際の契約の中に瑕疵担保条項というものが確かに入っているわけでございます。これは皆様方ご承知のように、ああいう大きな銀行を国が譲渡する際に、二次ロス対策をしないとどうしても売れないと、しかし二次ロスを真正面から認める規定がないという中で民法の法理を援用致しまして、瑕疵担保条項というものを入れて譲渡したわけでございます。その要件としては二つあるわけで、瑕疵があることという要件と、そのために瑕疵とは何かという瑕疵の推定規定を置きまして、こういうようなことが起こったら瑕疵とみなすということも明確に契約書の中でしてあるわけです。そしてもう一つの条件が二割減価という条件でございました。

今の記者の方の御質問は、新生銀行がそういう瑕疵担保条項を履行しようとしたことに対して預金保険機構が同意を拒否したということ、これは一部の報道で私も承知しておりますし、またそういうことになっていることも事実でございますけれども、これは我々からすれば預金保険機構にも顧問弁護士もいれば、いろいろ法律の専門家もいまして、あらゆる角度から検討して同意ができないということで不同意の通知をしているというふうに認識しておりまして、これはもう契約条項を満たしているかどうかという一つの法的解釈でございますので、これは双方は正々堂々と議論していくべき問題だというふうに思っております。

問)

今日、公表されました検査の基本方針に関してですが、主要行の年一回検査という方針を出されましたが、これについて改めて長官のお考えと、これによって何を目指すかということをお聞かせ頂けますでしょうか。

答)

検査局長も皆様にお話ししたかと思うのですけども、本来検査の基本というのはいろいろと濃淡を付けるということかと思います。従って必ず一度、あえて言うなら、ある銀行の資産査定に信頼性を欠くので、ある銀行、ある業態に対しては、必ず検査に行くんだというのは、私は本来の検査のあり方からすれば、いわゆる濃淡を付けた検査というあり方からすれば、それは違うなあということだと思います。

それではなぜ本事務年度の検査局の検査方針にそれを盛り込んだかといえば、やはり今年に入って特にそうかと思いますけれども、いろいろ銀行の資産査定、つまり不良債権の額に対して、いろいろな方々から「本当にそうか」というような疑問を投げかけられている。これは我々からすれば、金融監督庁になってから二巡目、あるいは三巡目という検査事務に既に入っている時に、極めて耐えがたい批判なんですね。我々は主要行の自己査定、そして主要行の外部監査、そして当局の検査、それだけのことをしているわけですから、やはり不良債権額についてはこれは一つのルール、要管理先以下を不良債権というという、あくまでグローバルな不良債権についての定義についてのルールに基づいてそれを各行、あるいは当方が発表しているわけですから、それをどうしてもっと信じて頂けないのかという気持ちはございます。

ただ、そうは申しましても、そういう疑いの眼が消えない以上は、今年、主要行、即ち日本の金融システムに一番影響の大きいのは主要行でございますので、主要15行には何らかの形でフォローアップ検査なり、一体的検査なりそういうものに入りましょうと、それによってそういう世の中の疑いの眼を完全に消したいという柳澤大臣の気持ち、我々の気持ちが年1回検査という形で今回表したものでございまして、最初に申しました通り、平常時であれば、もっと濃淡のある検査をすべきだとは思っております。

問)

新生銀行の件なのですが、先程長官が明確に2項目規定されたと仰りながら現実にこういう問題が起ったということはですね、依然としてあいまいに残っている部分があるということではないのですか。

答)

あれほど明確な規定としては、あれしか書きようがないと私は思っております。ただ、現実にいろんなことが起きているわけですね。その起きていることをその規定からどう解釈するかという時に、争いが起こるということは当然あり得ることでございますし、逆に言えば法律の規定というのは契約も一つの法律の規定かと思いますけど、争いが絶対起こらないような、つまりありとあらゆるケースを想定した規定の仕方というのは、それは世の中不可能かと思いますし、もしそれができるのならば裁判所もいらなくなるということではないでしょうかね。

問)

議論というのは、これはもう法的な決定で見るしかないということでしょうか。

答)

いや、そこは聞いておりません。今のところは預保と新生銀行が粛々と議論しているというふうに聞いております。

(以上)

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