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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年8月6日(月)17時00分~17時34分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

2日に各行が経営健全化計画を公表しましたが、当期利益の赤字や優先株無配の見通しを示した銀行に対して業務改善命令を発動する考え、あるいは必要性というのはないのでしょうか。

答)

先週の木曜日に資本注入行、全体で今22行でございますけれども、その22行につきまして、まず今年の3月期の実績がこれまでの計画に比べてどうであったかというフォローアップ、まずそれを発表させていただきますとともに、22行の内の16行が最初に経営健全化計画を提出してから2年経ったか、あるいはその時提出した期限、これは15年3月期であったわけですけれども、15年3月期まであと2年しか残していないと、つまり2つのジャンルがあるわけですけれど、そういうところについて、経営健全化計画の見直し、即ち来年3月期から17年3月期までの4年間計画を立ててくださいと、そういういわば2つのことを同時に発表させていただいたわけでございます。

今のご質問は、その際、経営健全化計画で来年の3月をとって見た場合に、赤字の見通し、さらに剰余金が枯渇して優先株の配当財源が無いという見通しを示した銀行が1行ございました。その1行に対して「業務改善命令を発出する考えはありますか。」という質問かと思いますけれども、我々は当該銀行、これは先程申しました中では、経営健全化計画の見直し行、即ち16行の中に含まれている銀行でございますけれども、その見直しの中で当然来期の3月についての見直しも含まれているわけですけれども、それにつきまして、当然赤字、あるいは配当財源が無いということでございますので、その原因が何であったか、さらに、それでは公的資金注入行でございますので、返済計画に狂いが出るのか、出ないのであればどういう代替措置を取るのか、そういうことを厳しく審査させていただきまして、その結果として当該行につきましても、来年3月期に向けて厳しいリストラ計画を含めたものを出して頂いております。残念ながら赤字の見通しでございますし、かつ、現在のところ計画通りであるならば配当財源が無いというような見通しが出たわけでございます。

ただ、当方といたしましても、当該銀行、4つほど大きな顧客が法的整理に追い込まれたという特殊事情もあって、そういうことになったわけでございますけれども、そうであるからには、不良債権の抜本処理を果たす、あるいは有価証券が他の銀行よりも多く持っている、さらにその簿価が高い、そういうところが今後のリスクであるとすれば強制評価損を徹底的に立てる、そういう計画になっているわけでございまして、来年の3月は赤字になっても、いわば「V字型の回復を目指す」と、当該行もそういう宣言をし、金融庁としてもそういう形での、つまり膿は出し切って、そしてV字型の回復を目指すと、それが当該行の信認を回復するための一番良い道ではないかと、当金融庁もそう考え、そのようなものを公表させていただいたわけでございます。

これに対する業務改善命令でございますけれども、確かに実際の実績が計画値よりか3割以上下振れし、かつ市場の信認が低下した場合とか、あるいは優先株の配当財源が実際無くなった場合についてのルールというのはございますけれども、今はそういう計画の段階でございまして、そういう段階においては先程申しましたような当該銀行の厳しいリストラ計画を含む経営健全化計画というものが実際に実行されるかどうかということを見守って行く段階であり、今の段階で業務改善命令を出すという考え方はございませんし、ルールの上でもそういうことにはなっておらないということを申し上げさせていただきます。

問)

足利銀行株ですけれども、今日、一時155円、終値で162円と、丁度1割ほど下がっている、要するに計画を出す以前に比べて1割ほど下がっているようですけれども、市場の信認という面では信認が低下したと捉えられないのかどうか、ご見解はいかがでしょうか。

答)

前にフォローアップのルールを発表いたしました時に、当時の金融再生委員会事務局が、説明させていただいたと思いますけれども、市場の信認の低下というのはどういう要素から判定するかと言えば、勿論株価というのは大きな要素でございますけれども、その他に市場調達金利、あるいは預金が動いているのかどうかというようなところを基本的な指標といたしまして、総合的に判断するということになっております。現在の、今ご質問になられました当該行につきましては、我々は市場の信認が低下したという中に該当するとは考えておりません。総合的な判断でございますけれども。

問)

話は変わるのですけれども、中央省庁改革の一環として各省庁で「政策評価の運営方針」というものを作ることになっていると思いますが、現在のところの金融庁の検討状況と、新しい事務年度でどのような目標を設定し、達成度をどのような形で評価していくか、お考えをお聞かせ下さい。

答)

ただ今ご質問にありました通り、本年の1月15日に、「政策評価に関するガイドライン」というものが政策評価各府省連絡会議で了承されまして、これに基づきまして各省庁が実施要領を作ると、さらに、それに基づきまして今年度から政策評価の運営方針を立てると、そういうことになっているわけです。さらに申し上げれば、このガイドラインというものは、前通常国会の間に政策評価に関する法案として国会に出され、それが本年6月には通過しております。従って、本事務年度はガイドラインに基づく政策評価の運営方針というものを立てて、いわば目標を定め、来年1年間を終わるところで達成度合いを見るということになってますが、来事務年度からは、余計なことをちょっと申しましたけれども、法律に基づくものになります。

そんな中で、当金融庁はこのガイドラインに基づきまして、既に今年の3月に「金融庁における政策評価の実施要領」というのを決定・公表しております。さらに、正直言いますと全省庁、年度で見る省庁と事務年度で見る省庁の2つに分かれていますが、金融庁は事務年度でこの政策評価をしたいと思っております。

そういう面で、平成13事務年度、今年の7月1日から始まる1年間の金融庁における政策評価の運営方針というものを立てて、政策評価を実施していかなければいけないわけです。現在既に1ヶ月経っているのですけれども、もう少しのところ、これは原則として各課に今年1年何を目標にして仕事をするかということを各課、原則として各課ごとにそれを立てさせて、そしてその達成度合いを見るということになるんですけれども、まだその政策評価の運営方針が最終的には固まっておりません。もう少しお時間の余裕をいただければというふうに思っております。

問)

経営健全化計画の業務純益とか、当期利益とか、利益関係の計画なんですが、各銀行とも3年後、4年後の計画がもの凄いバラ色の数字が並んでおるわけなんですけれども、この1~2年厳しいと、そのあと皆さんV字回復を目指しているのかとも思いますが、果たして3年後、4年後ですね、こんな大きな数字というのは達成できるのかというところで、例えば調達金利と貸出金利を考えて、順調に貸出金利がグンと先行して上がっていくような状況とかですね、そういうのは想定できるのでしょうか。ちょっと前提となるものがいろいろありますけれども、金融庁としてバラ色過ぎるというような懸念とか、そういうことはなかったのでしょうか。

答)

これは銀行の、いわば利益見通しと申しますのは、基本的には業務純益の見通しと不良債権処理の見通しと、大きく言えばこの2つの大きな要因で変わってくるわけでございます。不良債権処理の方は新規発生がどの程度あるかと、既存のものは大体見えておりますので、それオフバランス化政策によって粛々とやっていったらどれくらい出るかということは、これはもう各行に計算させておりますけれども、新規のものがどれだけ出るかというと、これは基本的な手法としては、過去3年の貸倒実績率を目途として、正常あるいは一般要注意からどう要管理以下に落ちて行くかというのも、そういう計算の仕方については強いサジェスションの下で各行にお願いしてございまして、その辺は各行織り込んでいると思います。

今ご質問の趣旨は、もう一つの大きな柱である業務純益の見通しの方かと思います。これはまた大きな要素として言えば、貸出金利のリスクに見合った多様化というのはどの程度達成できるのかという面と、濡れたタオルを絞りに絞って乾ききるくらいのリストラがどこまで進められるかと、この辺に依存してくるかと思うわけです。

そして、今のご質問の趣旨にピンポイントで答えるならば、結局、業務純益の方が少しバラ色ではないかという趣旨のご質問かと思います。基本的には我々は自己責任の下で、そこの辺は各行の判断というものを尊重したわけですけれども、いろいろ各紙「少しバラ色すぎないか」という論調があることは十分良く承知してます。また、いわばこれからの3年を集中調整期間と位置付けて、小泉内閣は位置付けておりますし、我々もそういうこの2~3年というのは相当低い成長率を甘受せざるを得ないと思っております。そういう点で見るならば、各銀行とも、2年~3年目くらいから相当やや上向きの予想をしているところが若干、何て言いましょうか、我々の考えよりもやや楽観的かなということは私自身としては感じております。

ただ、一つ申し上げたいのは、リスクに見合った金利の多様化という面では、これはまた皆様方のメディアでは非常に過当競争、金融界の競争の激化からなかなか実現しないのではないかという論調もお見受けするわけですけれども、私はここ1年の動きとして、そこは随分変わってきたなと、各銀行の頭取とお話してましても、1行では確かになかなか難しい、ただ、特に主要行全体が同じことを今考えて、ベクトルが同じ方向にあるわけですね。そういう意味で、リスクに見合った金利の多様化というのが相当進んでいる。特に、要注意先をかなり細分化したリスクと金利の関係というものを各行とも考えているようでございまして、そういう面におきまして、そういう金利の多様化が進むんだろうと思いますし、各行の利益の見通しというのもそういうものを前提にしているというふうに認識しております。

問)

内外の格付会社が今日、大手行の一部、保険会社の一部について財務格付けを引き下げているのですが、これについて市場は一環して厳しい見方をしていると受け止めているようですが、これについてどのようにお考えでしょうか。

答)

そういう報道というか、一部の格付会社がダウングレードしたとか、あるいは一部のアナリストが厳しい見方を日本の金融機関に対してしているということは良く承知しております。

ただ私は、各銀行の貸付の内容を詳細に点検している者として一般論で申すならば、ややマクロエコノミスト的な見方、即ちこれから更に日本経済が深刻化する中にあって不良債権処理というものがもっと大きなものになるのではないかとか、その場合には銀行の利益が圧迫されるのではないかとか、また中にはその際には資本再注入も必要ではないかいう非常に悲観的な見方が一部に蔓延しているということは、私は検査を通じて中身を点検している者からすれば、相当な誤解があるというふうに言わざるを得ませんし、その点を残念に思っております。

と申しますのも、不良債権の処理損がピークに達しましたのは10年3月期、11年3月期。金融機関ベースで13兆くらい出たわけでございますけれども、その当時の経済状況と現在の経済状況をかなり類似させてそういう方々は見ているのではないか、そういう観点から現在の不良債権処理損、あるいは将来の不良債権処理損の見通しが甘いのではないかというそういう御指摘かとも思いますが、そこは全く事情が違うと。

即ち金融検査マニュアルによる検査というのが11年7月から始まったわけでございます、わずか2年前でございます。そこから、その前に資本注入を11年3月に基本的にしましたものですから、一斉検査という検査を金融監督庁が10年6月に立ち上がってからやっている、これを一巡目の検査といたしますと、11年7月からの金融検査マニュアルによる検査、これが二巡目の検査でございます。そして今、三巡目の検査に入ろうとしているわけでございます。そうした中で、いわば不良債権のルール、即ちどういうものを不良債権と認識し、かつそれにどれだけの引当を積むかというルールをきっちりと定めたのが金融検査マニュアルでございます。

この金融検査マニュアルというものを適用された銀行、それは金融検査マニュアルというのは文書上は11年7月に出ましたけれども、その文言の解釈というものは、やはり検査官が実際に入ってみて、当該銀行の経理担当と議論を交わす中で当該銀行も「ああ、この金融検査マニュアルのルールのここの解釈はこうするものか」と、これが今回一番端的に表れたのは要管理債権でございました。今度発表した13年3月期の不良債権が特に要管理債権で増えているのはそういうところでございます。そういうふうな解釈がやっと確立してきて、不良債権の額というものも正確に認知できた、そして引当率というのも過去3年間の貸倒実績率に基づいて予想損失を出すんだと、それは各債務者のグループごとに出すんだということが、やっと各金融機関に根付いてきた。そして、そうした中で今年の3月期の決算が出たわけでございまして、私はそういうのがきちんと各銀行で債務者区分、即ち資産査定ですね、資産査定と引当がきちんとされていましたら、これから経済がある程度悪くなったとしても、追加的な処分損の出方というのは極めて限定的だというふうに認識しております。

やはり10年3月期、11年3月期が、なぜあんなに不良債権処分損が出たかと敢えて言えば、ルールのない時代に各行の甘い査定を厳しい査定に切り換えた時に、大きな追加的な処分損が出たのであって、一旦きちんとした資産査定と引当を積んだ場合には、仮にこれからオフバラ化致しましても、その損の出方というのは限定的だと。例えばオフバランス化した場合には担保評価というものが問題になるわけで、帳簿上の担保評価と実際の売却の担保評価に差が出ればオフバランス化に伴う損も大きくなるわけですけど、最近銀行は半年ごとに不動産鑑定士による評価替えというのをきっちりとやっております。従ってオフバランス化による不良債権処分損の要追加損失というのも限定的になってきています。

そういうところから見まして、私は今回、各銀行が17年3月期まで不良債権処分損の見通しを立てておりますけれども、それが段々低くなっていくようになっておりますけれども、先程の業務純益の話と違いまして、その部分について言えば、必ずしも経済見通しを楽観的に考えているから処分損が減っているというよりも、きちっとした引当をしているから処分損が減ってくるというふうに私は理解しておりますし、御理解頂きたいと思っております。

問)

与党の会合で久間議員か、不良債権処理を進めていくことが大事だけれども、きめ細かい中小企業対策が必要だと。具体的に仰ったことは、負債額10億円未満の健全な中小企業の不動産担保債権は当面返済を猶予してはどうかと、そういうことを仰っているようですけれども・・・。

答)

すみません、10億円未満の何でございますか。

問)

「健全中小企業の不動産担保債権」という言い方をされてます。その返済を当面猶予してはどうかということですが。

答)

すみません、直接に今の御発言を承知しておりません。ただ、ただ今御質問の記者の方のお話の中に、健全中小企業というお言葉があったと思うのですけれども、健全中小企業の10億円未満の不動産担保付き債権の返済猶予でございますか。ちょっとなかなかお答えできないのですけれども、健全中小金融機関でしたら十分に返済可能だと思いますし、仰っている意味が…。

例えばですね、健全というところをあまり強く感じないことに致しまして、仮定の頭の体操でございますけれども、10億円未満の中小企業向け債権は、例えある程度不良化していても、すぐオフバランス化したりしてはいけませんよという趣旨であるなら仰っている意味も分かるのですが、これについては金融庁と致しましてはもう皆様方は百も御承知だと思いますが、オフバラ化政策というのは破綻懸念先以下だと。つまり要管理は除いてます。と申しますのも要管理も要注意の一部でございまして、むしろ要注意先債権というのは健全化に各行努力してくださいということを申しておりまして、かつまた金融庁の先週の木曜日の不良債権のレクでも発表させて頂いたと思いますが、サンプル調査でございますけれども、今年3月期までの1年間で要注意先債権というのは約13%優良化致しまして正常債権の仲間入りをしたと。他方約8%が破綻懸念先に落ちていると。残りの80%は要注意先のままだと。こういうサンプル調査があるわけですけれども、私は各銀行個別に聞いても大体そんな感じを受けていますので、要管理も含めた要注意先というのは、是非とも各銀行にむしろしっかりしたリスク管理の下に健全化して欲しいというふうに思っています。もちろんその対象には中小企業もその中には入っております。

問題は破綻懸念先以下でございますが、破綻懸念先以下をどうするかという問題につきましては我々が求めておりますのは、あくまで主要15行の破綻懸念先以下のオフバランス化でございます。もちろん我々が主要行ということに限っていますのは、その目標としてますのは前にもこの会見で申しましたようにその対象となる借り手にミシン目を入れて、稼動部分を残して不稼動部分を清算する、あるいは有利子負債を軽減して生き残す、そういうようなことを目標として主要行の破綻懸念先以下をオフバランス化して欲しいということをしているわけでございます。もちろんその中に中小企業が入ってくることがないとは申しませんけれども、私はあくまで主要行のそういうミシン目を入れられるような借入先への政策として、金融庁は打ち出したつもりでございます。

一方、地域金融機関の破綻懸念先以下、ここが多くのと言いますかほとんど今、御質問になられた記者の方が仰った意味での中小企業が入っているところかと思うのですけれども、ここについてまでのオフバランス化は求めておりません。ただ、大手行のオフバランス化に伴いまして協融行としての地域金融機関が影響を受けることはあると思います。ただ地域金融機関の借り手の主体となっている中小企業が例え破綻懸念先以下になっていたとしても、それを2年、3年でオフバランス化するとか、あるいは潰すということは考えておりません。やはりそういう地域金融機関がしっかりとしたリスク管理の下でそういう中小企業を支えていく、あるいは経営改善の努力をさせていく、どうしても仕方がなければそれはオフバランス化の道というのを辿ることもまあ仕方がないと思いますけれども、機械的にそういうものをグループ化して、2年、3年でオフバランス化しなさいというところまでは言っておりません。

(以上)

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