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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年9月3日(月)17時00分~17時34分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

先週、柳澤大臣が不良債権の処理イメージを推計したシナリオを公表されましたが、市場ではいろいろな受け止め方がございますが、長官から改めてご説明いただけませんでしょうか。

答)

不良債権の処理、即ち小泉内閣の構造改革の中での金融セクターの面での構造改革を進めるということで、骨太の方針というものの中に不良債権処理について、主要行の破綻懸念先以下を、既存2年、新規3年で処理しますということまで金融庁は言ってきたわけですけれども、その結果どうなるのかと、果たしてそういう処理をして行って、金融機関の体力、あるいはいつ頃不良債権の処理に目途がつくのかということについて、今までは2~3年で処理の目途をつけるということを、やや漠として申していたわけでございます。

これに対しまして大臣より、全て経済というのは毎日生き物でござますので、かつ不良債権というのはいつも申しましている通り、経済との相関関数のようなものがあるわけでございますので、経済の先行きについて一つの仮定を置かないとそういうものは出てこないわけでございますけれども、それについて一つの仮定を置いた上で推計と申しましょうか、シュミレーションをしてみて欲しいという指示が大臣からありまして、それに従って事務方として作業をした結果を公表させていただいたわけでございます。

説明させていただく時間に限りもあったこともございまして、やや私から見ますとマスメディアの方々のいろいろ書かれているものが、何と申しましょうか、私の予想とはとんでもない感じで書かれているのを見て、正直、驚きもいたしました。一番驚いたのは、不良債権処理に7年もかかると書いてあるマスメディアの記事を見て、驚いたというふうな意味をさせていただいたわけでして、全部が驚いたわけではございません。私からすれば、これは3年で不良債権の処理に目途が立つということを公表した推計であったわけでございます。

より具体的に、まず前提を話させていただきますと、これは大臣も申されたと思いますけれども、2001年度から2003年度ということで3年間、集中調整期間というものを考えまして、その中で我が国経済の抜本的な構造改革が進む、しかし、必ずしも経済は本格的に回復しない。従って、ほぼ0%成長というものを我々は前提といたしました。その間に、不良債権はどう発生して来るかという時に、今年の3月期には主要16行と言っていましたが合併がありましたので、これからは主要15行ということにさせていただきますけれども、主要15行の持っている債権の債務者区分がどういうふうな割合で、どれくらいの規模になって行くかという推計になるわけですけれども、その場合どういうような推計をしたかと言えば、今年の3月期、即ち2000年度末における債務者区分の遷移確率、即ち前期から見て、正常先から要注意、正常先から要管理、正常先から破綻懸念、正常先から実質破綻まで突然行ってしまうのもあったかも知れません。同じ様に、要注意から要管理、破綻懸念、実質破綻。それから要管理から破綻懸念、実質破綻。そういう遷移確率をそのまま今後3年間、同じ比率で各期出てくると、まずそれを前提といたします。その際に、実際には皆様方にサンプル調査をご披露させていただきましたけれども、要注意からは12.8%が正常化すると、要注意から約8%が破綻懸念以下に行くと、こういうサンプル調査が出ているのですが、今の遷移確率の推計の上では悲観的に考えまして、絶対に良い方向には行かないと。正常から要注意になって正常に行くことはない。正常から要注意に行ったら要管理に行き、破綻懸念に行くと。そういう最も悲観的なシナリオを考えております。

さらに、構造不況業種、不動産や建設等につきましては、一旦要管理になったら、1年ステイして、要管理の滞在期間は1年にして全て破綻懸念以下になると、こういう前提も立てました。要管理から銀行の支援によって、また要注意に上るなんて、そういうような楽観的なことは一切考えないと。実際はそういうふうになって行くこともあるかと思いますし、そういうことを銀行に期待している、リスク管理という面で期待している面もありますけれども、この推計の上では、とにかく悲観的に3年間考えようということで全て悲観的に考えました。

それから、地価につきましてもこの3年間は毎年10%下がると。10%、さらにそれの10%、さらに10%ですから、まあ30%以上になりますけれども、簡単に言えば30%下がると。不動産の担保評価が3割下落すれば、当然アンカバーの、例えば7割とか何とか引当がかかってくるわけですから、引当損がそれだけ増えるわけですから、それも全部この3年間は行くと、こう仮定いたしました。その上で骨太の方針にございますように、集中調整期間かその後かを問わず、つまり2年、3年、既存2年というところはもう終わってますので3年になりますけれども、もう破綻懸念以下は全部3年でオフバランス化すると、これも全部入れてあります。これはですから、ずっと皆さんにお示ししたもので言えば、平成19年、さらにそれ以降も残っていれば、全部それが3年で消えると、オフバランス化されると、これも前提に入れてあります。

そういう厳しい、あえて言えば非現実的な側面も持つ、それほど厳しい前提を加えてはどうかということを大臣にお示しし、大臣がそれを公表されたわけですけれども、ややこれは事務方が「横這い」と言ってしまったので、今更私は集中期間中の3年間を「漸減と変えてください」と言うつもりはございませんけれども、実際には、これは不良債権の見方なんですけれども、必ずその先で見てます。この遷移確率というのは、全て取引先がどう落ちているかということでございますので、リスク管理債権の概念ではこれは測れません。従って不良債権は金融再生法開示債権の概念で測りました。従って金融再生法開示債権の概念、即ち開示債権で言えば、主要16行の本年3月末の不良債権残高は18兆円でございます。これが2003年度末、即ち2004年3月くらいには、17兆くらいに減って行きます。ただまあ3年間で1兆減って行くのを、「減ります」と言うのもいかがかと思って、「横這い」と申し上げましたのですけれども、あえてそこを訂正するつもりはございませんけれども、集中調整期間中もやや減りますけれども、本格的にはそこから経済が立ち直る2004年度、即ち2004年4月から以降、不良債権問題というのは正常化して行くというふうに我々は見ております。

それは、与信費用比率で見ましても、今年の3月末、主要16行で1.4%でございますけれども、それが大体、集中調整期間、これも漸減していきますけれども、大体1%前後でございます。それが2004年度、つまり2004年4月に入って2005年3月に向けて0.3%くらいになります。即ち2005年3月、つまり3年経った後の姿を見れば、不良債権比率も3%台、4%弱、それから与信費用比率も0.3%程度と、こういうところから言って、3年を過ぎたら、そして2004年に入れば不良債権問題というのは正常化して行くと、こう申し上げたい。即ち7年というような話は全くございません。私から大臣のご説明に補足させていただくと、これはそんなところでございます。

問)

最も悲観的なシナリオに基づいて不良債権を処理した場合、主要行の経営に与える影響というのはどのように考えておられますか。

答)

その間、もちろん業務純益というものがございますので、不良債権処分損は、概ね業務純益の範囲内に収まっております。従いまして、ただこれは大前提がございまして、今度のシュミレーションに株価は入っておりません。株価は今年の3月の1万2,999円70銭を前提にしています。これはなぜかと申しますと、株価は日々のいろんな要因で動くわけでございまして、これに前提の置きようがないので今年の3月を前提にしています。

それで見まして、ご承知のように今年の3月(の主要行の自己資本比率の平均)は11.7%だったわけですけれども、調整期間中も大体12%ないし13%で、株価さえ一定ならば推移すると見ております。そして、経済が回復していくと13%以上に上がってくるわけですけれども、一方、公的資金の返済というものがございますから、まあ大体13%程度になろうかというふうに思っております。

そんなわけで、不良債権をこのように悲観的に見て処理しても、金融機関の体力の上で大丈夫だということを申し上げたかったわけでございます。

問)

長官の明日の北海道出張について、差障りがなければどういうご予定か、目的などをお聞かせください。

答)

地方銀行、第二地方銀行、あるいは信金、信組につきまして、金融庁はいろんな政策、施策を立てますけれども、そのいわば実施段階においては、いろんなところで財務局に委任しておりまして、財務局がそういう金融庁の意を挺して、地域金融機関に対する行政を任っているわけでございますけれども、毎年大体この時期に、国会が始まる前に金融庁幹部が各財務局にお邪魔いたしまして、財務局長を始めとする職員との意思の疎通を図るということにしてございます。そういう観点から、私は北海道財務局と近畿財務局とを受け持ちまして、とりあえず明日北海道財務局に行きまして、局長以下との意思の疎通を図るということを考えております。まあ視察と言えば視察ということかもしれません。

それともう一つは、地元金融機関との意見交換を2時間程度持ちたいなあということで、財務局にそういうアレンジをお願いしておりまして、地銀、第二地銀、信金、信組のトップの方々と意見交換が出来るのではないかというふうに期待しております。

問)

先程、最も悲観的なシナリオを考えたというところの説明をもう少し詳しくお願いしたいのですが、まず遷移確率で絶対に上に行くことはないとしたということですが、サンプル調査ですと、上に行くのが12.8%で、下に行くのが8%で上に行く方が多かったのですが、上に行く方はバッサリ切るということですが、下の方は足すのですか。

答)

いや、先程申しましたように例えば要管理で言えばですね、構造不況要因と循環不況要因に分けまして、循環不況要因の落ち方というのは今までのサンプル調査で分かるものを取ったと思いますけれども、構造不況要因の方は、これはこういう厳しい時ですから今までの実績とは関係なく、一年で破綻懸念先に落ちると、こういう前提を取ったということでございます。

問)

その循環と構造とに分けて循環の方はサンプル調査の数字が基礎になっていると考えていいと思うのですが、構造不況要因の方はどれくらい悲観的に考えているのかを知りたいのですが。どういう前提があるのでしょうか。

答)

いや、それはですね、いろいろアナリストとか世の中が申しますように、バブルのいわば後遺症的なものについての不良債権の処理というものを早めるべきだということでもございますし、現実に破綻懸念先以下になったところの非常に大きな割合がこういう構造不況業種でございますので、今、要管理にいるところを非常に悲観的に考えて一年で破綻懸念先以下に落とした上でですね、銀行の体力を図るということが非常に保守的であり、保守的な見方としては適当ではないかというふうに思ったわけです。

問)

バブルの後遺症の不良債権、構造不況業種で一般要注意にあるところというのはどのような考え方になるのでしょうか。

答)

一般要注意先にある構造不況業種については、当該業種にかかる要管理への遷移確率、破綻懸念先への遷移確率及び実質破綻先・破綻先への遷移確率を用いて計算するということではないでしょうか。

問)

株価について伺いたいのですけど、10,500円が壁にならずにですね、いよいよ10,000円が見えてきたかという環境でありますが、かなり下げ足が早いと思いますけれども、この辺についてどのように御見解をお持ちですか。

答)

まさに株価は様々な要因で日々動くわけでございまして、現在の状況というのはもう皆様が一番ご御承知の通り世界同時株安と申しますか、海外要因も国内要因も良いニュースがなくて、非常に市場に悲観的な見方が強いと企業の業績予想等につきまして悲観的な見方が強いということが反映している。さらにそれに円高の動きというものが日本の輸出産業に与える影響等も加味する、これも悪いニュースであると。そういうことで悪いニュースのオンパレードがこういう株価になっているのだと認識しておりまして、日本経済のファンダメンタルズを反映する、特に日本経済のファンダメンタルズの少し先を反映しているのが株価だとするならば、そのファンダメンタルズには日本経済のポテンシャル、潜在力というものが当然加味されるべきものでございまして、そういう意味からして現在の株価というのが見方としてはここまで下がるのかなあという感じはございますけれども、まあ日々の株価には一喜一憂すべきではなく、基本的には金融庁も発表させて頂きましたように市場の構造改革プログラムというものに一刻も早くそれに取り組み、いわば市場のファンダメンタルズを整備していくことが市場対策としてはそういうものが今、一番重要なんだろうというふうに思っております。

ただ今、質問された記者の方のポイントは、株価が銀行に与える影響はどうなのかということでございますが、あえて言うならばこれまで会見で申して参りました比率、即ちこの3月期から2割程度下がって0.5%程度というふうに申し上げました。13,000円の2割程度、今日位の価格でございますか。

一つ最近ちょっと前の会見で申したのと違うのは、日経平均と銀行が持っている株との連動率がどんどん下がって参りまして、今、5割を切っております。そういうことから言えば10,000円程度になっても自己資本比率に与える影響は0.5%程度かなあという今までの見方を変える必要はないというふうに思っています。

もちろん、10,000円になっても大したことはないという意味で申し上げているわけではなくて、あくまで自己資本比率への影響はその程度で止まり、限定的であるということを申しているわけでございまして、配当可能利益とか、剰余金とかそういう時価会計導入に伴ういろんな影響というのはもちろん大きな影響があるわけでございまして、そういう面では銀行界も当然危機感を持って今の株価情勢を注視していると思いますし、我々も毎日株の動向については注視しているわけでございます。

問)

生命保険の予定利率引き下げ問題のパブリックコメントですが、これは8月31日で受付を終了したと思いますが、これに対する全体の総括についてですがご覧になられていたらお聞かせ頂きたいのと、それと大手生保のうちで賛成というのは日本生命だけで他が反対しているという、この事実についてどういう認識をお持ちでしょうか。

答)

正直申しまして、アンケートの途中段階の賛成・反対がどれくらいの割合になっているかということは事務方から聞いておりまして、当然、予定利率引き下げに賛成という意見は非常に少ないということは聞いております。ただ31日終わっての集計というのは今やっているところだと思いますし、ただ今御質問になられた記者の方が仰られた肝心の生命保険会社がどういう意見を意見募集で述べているかについては、正直私はまだ報告を受けておりません。

ただ、これは金融庁の意見募集と言うよりも正確に言いますれば、金融審議会の意見募集ということで広く各界から意見を聴しているわけでございまして、もちろん集約結果を見させて頂きますけれども基本的には第二部会長に報告し、福井部会長から第二部会に報告されることだと思っております。

そんな次第で、ただ今御質問された記者の方には申し訳ないのですけれども、各生保会社が、あるいは大手生保会社がどういう意見を述べておられるかということを確と承知致しておりませんのでコメントは控えさせて頂きたいというふうに思います。

いずれに致しましても、重要なことは金融審議会の中間答申にもございましたように、私から言えばあれは両論併記でございます。一つは予定利率を各社が実質的に下げられるようにすべきだと、その方が国民負担、あるいは契約者負担は少なくて済むという意見と、もう一つはやはり契約は守られるべきだという前提が覆り、保険に対する信認を失う、あるいは解約というものを止められない以上、結局はそういう予定利率引き下げを申し出たところは破綻に行くのではないかと、この二つの意見の両論併記が私は中間答申だったと思っておりますし、その際に予定利率引き下げという方向で進むならば、徹底的な開示とか、つまり保険会社がもっと信認を得ることをした上で予定利率引き下げというメカニズムが導入されるべきであって、そういう面で先にやることがやはりあるんだということではないかと、それは中間答申の中にも十分に含因されているというふうに思っております。

問)

関連してですがS&Pが予定利率をこのようなスキームで自主的にせよ引き下げる場合、デフォルト扱いにするとありましたが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

答)

それはおそらく民間の格付け機関会社の一つのポリシーということかと思いますけれども、今言った両論併記の中の一方ですね、即ち解約を止められない以上、結局申し出れば更生特例法の世界になるという意見に立ったものの見方かなあというふうに思います。ただ、そういう民間のポリシーの問題でございますから、すいませんが、私の一つのそういうふうに見ているのかなあという感想でございまして、何も金融庁の意見ということではございません。

問)

株価について伺いたいのですけれども、このように下げ足の早い局面になりますと必ず空売りとかですね、また最近はノックイン・ボンドだとかリンク債とかいろいろなものの話が出てきます。ここ何日かの下げ足を見ていると、不自然な相場形成があるのかないのかと、そういう疑問を抱きたくなるというのが市場参加者の人に共通しているのではないかと思うのですが、その辺についてはどのようなお考えでしょうか。

答)

それはもう仰る通り、株価の下げ局面においては当然売りが売りを呼んで、それが投機的取引につながり、株価をまた大きく下げるというようなことは予想されるわけでございます。特にEB債、あるいは今まさに仰られたリンク債のノックイン価格、どの程度の価格でどの程度の規模の投資価格があるかというのを見ていきますと、当然そういうデリバティブを使った投機的取引というものも予想されるわけでございます。

具体的には空売り、あるいは先物売り、そういうものを駆使しての投機的取引というものが予想されるわけですけれども、金融庁と致しましては当然グローバルな市場として、ツールとしてそういうものがあるのは当然だと思いますけれども、それが法令違反を伴って使われるということは断じて許すわけにはいかないわけでございますので、先週でしたか、証券取引等監視委員会に対しまして、そうした取引の中に法令違反行為がないかどうかよくウォッチして欲しい、監視して欲しいということを要請致しました。しっかりと証券取引等監視委員会がそうした点を見ていて下さるものと思っております。

問)

特殊法人等の見直しの締切があったと思うのですけれども、金融庁も二つばかりありましたが、どんなふうにお答えをしたのでしょうか。

答)

「必要である」と肯定的な見解を出させて頂いたと思います。一つは預金保険機構であり、もう一つは公認会計士協会であります。この二つについては私は必要なものと、国民の理解が得られるものと思っております。

(以上)

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