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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年9月10日(月)17時02分~17時24分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

株式市場が低迷しており、今日も平均株価が10,200円割れということになりまして、株安が銀行の経営に与える影響について中間配当の配当原資、自己資本比率への与える影響について見解をお聞かせください。

答)

前から申しましております通り、市場の動向には常に注意と懸念を持って見ているわけですけれども、本日TOPIXで1,055くらいまで下がっていますが、これは皆さんご承知の通り先週末の米国市場の急落が基本的にはその流れを引いているものだという認識を持っておりますけれども、いずれにしても日本の足元の景気の先行きについてもまだいいニュースがない。ただ株価というのは少し先のその国の経済のファンダメンタルズを表すものであるとするならば、日本経済のポテンシャル、潜在力、潜在成長力というものは、この程度低いものだとは思っておりません。

今、御質問になられた銀行への影響という面で申し上げるならば、質問者の方が明確にお分けになった通り自己資本への影響、すなわち銀行の健全性そのものに対する影響と、配当余力に対する影響にまさに分けて考えるべきものだと思っております。自己資本比率への影響ということでございますと、今、平均株価が10,200円割れと仰いましたけれども、今、銀行の保有株と平均株価の連動率は4割まで下がっておりまして、10,000円になったとしても大手15行の自己資本比率への影響は0.5%減でございます。この前の3月期と比較してという意味でございますけれども、3月期が11.7%程ございましたので、11.2%というふうに考えておりまして、そういう面では銀行の健全性への影響は極めて限定的だというふうに認識しております。

ただ、配当余力の面からは今年から時価会計導入になるわけでございまして、そういう面で保有株の含み損というのは剰余金から貸借対照表上、差し引かれる、その分配当原資が減るわけでございますので、来年3月の株価、最終的にはそこがポイントになるわけですから来年の3月の株価というものを前提にものを考えなければいけないわけですけれども、今の株価が来年の3月まで続くかどうかは、それは分かりませんけれども、今の株価のままだとするならば、株価の水準のままだとするならば、それは主要行の配当原資に与える影響というのは銀行によりけりでございますけれども影響があると、こう言わざるを得ないと思います。

問)

先週、あさひ銀行が大和銀行に経営統合の交渉を申し入れたことが明らかになりましたけれども、金融庁としての評価、受け止め方をお聞かせください。

答)

両行が前向きに統合を検討していることは承知しておりますし、両行の店舗の配置状況を見ましても、その統合による経営基盤の強化や、収益力の向上につながるといったシナジー効果は十分推定できるものでございますので、基本的には結構なことだと。ただ交渉は始まったばかりと聞いておりますので、予断を持っているわけではございませんで、温かく両者の交渉を見守りたいと思いますし、是非世間においてもそういう温かい目で交渉の推移を見守って頂きたいというふうに思っております。

問)

生保の予定利率の問題ですけれども、契約者の反発に加え、業界自体も引き下げ制度の導入に対して反対意見を申しておりますが、金融庁の対応方針と、金融審議会では今後どう対処されるのかお聞かせ下さい。

答)

皆様ご承知の通り、これは金融審議会の第二部会が今年の6月26日に中間報告を発表致しまして、まあそれは両論併記だったわけでございます。そうした両論併記の中間報告を金融審議会が8月末までと期限を切って意見募集をしたということでございます。現在、どういう状況かと言えば、その意見募集の結果を金融審議会事務局であります当庁の総務企画局がその意見を整理して、部会長及び部会に届けるよう準備しているというのが現在の状況かと思います。

金融庁と致しましては、予定利率の引き下げ問題も含めた日本の生命保険会社の財務基盤の強化策というものを金融審に投げかけているわけでございまして、あくまでそうした意見募集の結果を踏まえて金融審議会の第二部会がどういう取りまとめを行うのか、まずはその部会の皆様方の御意見を尊重したいというふうに思っておりまして、現時点において意見募集の結果を踏まえて、どうだこうだと言うことを申し上げる立場にはございません。

問)

株価の問題ですが、銀行に対する影響もさることながら、生命保険会社に対する影響も持たれているところなのですが、長官としてはどのようにお考えでしょうか。

答)

当然、当庁の監督局保険課におきまして、現時点での株価水準を含めまして、保険会社の保有株の時価会計を基準にした保有株の価値と申しますか、そういうものを絶えずヒアリングしておりますし、かつそれに基づくソルベンシーマージン比率も絶えずチェックしておりまして、現時点においては保険会社の健全性に影響のある程度にまでなっているという認識は持っておりません。

問)

今の問題に関してですが、銀行・保険を問わず、時価会計…いわゆる評価損の資本直入というところはチェックされているということですけれども、強制評価減については、これはもちろんB/S直入ではありませんが、これもチェックはされているのでしょうか。

答)

もちろん、各金融機関からヒアリングする際に、強制評価減につきましても、もちろん5割以上落ちた場合には対象になりますし、金融機関によっては3割ぐらいでも強制評価減の対象にしているところもあるわけでございまして、それを含めて聞いておりますし、今ご質問なされた記者の方が仰られましたように強制評価減ということになりますと、単にB/S上の問題に止まらず、P/L上の問題にもなるわけで、当然P/L上の損益に影響してくるわけでございますし、もちろんそういうものも含めて詳細なチェックをしております。

問)

産業再生委員会の設置について樋口内閣特別顧問が提唱されておりますが、これに対して、不良債権の処理の問題と密接な関わりがあると思うのですが、金融庁としての見解、あるいは今後どういうふうな主張をされていくのか教えてください。

答)

私も樋口顧問のご提案は報道されている限りのことしか承知しておりません。それ以上のことについては全く承知しておりませんけれども、既に緊急経済対策や骨太の方針にも示されております通り、我が国経済の再生には金融側の再生と産業側の再生というのが、いわば車の両輪でございまして、借り手である産業側の過剰債務や非効率性といった構造問題が解決されることが不可欠なことだと思っております。樋口顧問のご発言も、まさにそういう視点に立ったものだと思いますし、時宜を得たものでもあり、また金融の不良債権と企業側の過剰債務の一体的な解決ということを唱えてきました金融庁の考えにも沿ったものだという認識を持っております。

ただ、本構想につきましては、金融庁がお答えするというよりも、経済産業省等でお答えするべき話かとも思います。あえて言うならば、本来民間において市場メカニズムに沿って行うべき個別企業の整理、あるいは再建といった問題に行政がどこまで関与できるのかという論点、あるいは実際にどの企業を対象にするのかということについて適切な判断が可能なのかといった論点等々、今後議論すべき論点はいろいろあるのだろうというふうに推し量られますので、樋口構想とも言うべきものの今後の議論の進展を注意深く見守っていきたいというふうに思いますとともに、一方今月中には金融界・産業界合同で民・民で立ち上げております勉強会におきまして、私的整理のガイドラインというものをまとめていただくわけでございますし、あえて言えば今のような問題を解決していくツールとして、そういう私的整理のガイドラインというものが大いに活用されるべきではないかなあというふうに考えております。

問)

大臣の外遊の関連で、IMFのFSAPの受け入れについて表明されているわけですが、今後の対応について時期も含めた問題として現状はどのようにお考えでしょうか。

答)

これは私からすれば、大臣はケーラー専務理事がこの前、日本を訪問された時から同じスタンスをとっていると私は思っているのでございますけれども、このFSAPそのものに日本が協力するのは、あえて言えば当たり前の話でございまして、IMFの第二の出資国でございますし、そもそもFSAP制度を作った時に日本側も大いに賛成だと言った話でございますので、金融庁がこれを受け入れる、受け入れないという問題ではないと。あえて言えば協力するのは当たり前の問題だというふうに思っております。

ただ、今まで申し上げてきていますのは、FSAPというのはいろんな訳語で皆さん訳していますけれども、Financial Sector Assessment Programというものでございまして、このアセスメントというのは何をアセスメントするかというところを、何か世の中誤解しているのではないかなあというふうに私は思うのですけれども、要するに何をアセスメントするかということになりますと、抽象的に言えばそれは日本の金融システムの脆弱性というのでしょうか、バルネラビリティーというものを評価するということになるんでしょう。それは他の国、カナダ、英国、ドイツなど今までに終わったところ、あるいは名乗りを上げているところについても全く同じような観点で、金融システムの問題をチェックするために来るのであって、個々の銀行の抱える信用リスクをチェックしに来るわけではないと思います。

あえてもう少し具体的に言えば、日本の監督規制の在り方というのが、国際的なコア・プリンシプルに合致しているのかどうかとか、そういう観点もあるでしょうし、またいろんなところからのいろんな点を評価するということになると思いますけれども、いずれにしても事前準備、つまりどういうことをどういうような手順で、どこを訪問して、あるいは訪問先のアレンジメントをして、どういうふうにしていくかということについて、しっかりとした打合せが事前にあるべきである。さらに言えば、両者、IMFのマンパワーと当金融庁のマンパワーというものをよく見た上で、いつ頃のタイミングが良いのであろうか、また期間はどのくらいの長さが良いのであろうかということも打合せしなければいけないだろうと、そういうところを大臣は今後事務方に協議させるというふうに仰ったのだろうと思います。

さらに言えば、これは金融庁だけの問題ではなくて、支払決済制度も見るということであれば日銀も関係してくることでございますので、よく日銀とも協議した上でタイミング等も、つまり日銀にも日銀のマンパワーなどご都合がおありでしょうから、そことも十分協議した上で実施のタイミングを決めていきたいと思います。

一方、IMFについて言うならば、後進国を幾つも在庫を抱えておりますし、先進国でも英国、ドイツとあるようでございますので、そういうものとの調整をどうしていくのかという問題もあろうかと思っております。以上です。

(以上)

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