英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年9月17日(月)17時05分~17時32分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

先週末に大手スーパーのマイカルが民事再生法の適用を申請しましたが、それに伴ってメインバンクの第一勧銀など、みずほグループが不良債権の処理の積み増しによって大幅赤字に陥ることを、昨日発表されました。

マイカルの破綻が及ぼす金融機関への影響についてお聞かせください。

答)

現時点におきまして、再建計画の内容はまだ決まっておらないわけですね。今あったのは民事再生法の開始手続の申請と、それに伴う地裁の保全命令が出た段階でございまして、再建計画の策定等は今後に持ち越されているわけでございます。

そういうことでございますので、確たる事は申し上げられない段階ですけれども、金融庁といたしましても、主要行の同社向け債権の保全状況、マイカルの破綻に伴う損失見込み等についてヒアリングをしておりまして、それが自己資本比率にどの程度影響するのかというのも慎重に見極めておりますけれども、マイカルの損失そのものがみずほグループの各銀行等に及ぼす影響というのは、限定的なものだということが言えると思います。

また、もちろんその他地銀等もマイカルへの債権を持っているわけでございますけれども、当方が調査した限りにおきましては、地銀の場合は債権額そのものが大きくてもせいぜい数十億でございまして、その地銀の健全性に及ぼす影響というのは極めて限定的なものだというふうに思っております。

問)

要注意先のマイカルが法的整理に追い込まれたということで、これまでの要注意先の管理、引当基準など、要注意先の取扱いについて影響が出て来るのでしょうか。

答)

これは正直申しまして、一つの大きな問題を投げかけたということは確かだと思います。

即ち、マイカルについて各銀行が3月期に自己査定したところが、本当に皆さんが仰る通り要注意だったとするならば、そこから5ヶ月、6ヶ月くらいですか、経ったところで破綻に陥ったということで、皆様方が銀行の自己査定に疑念を持たれるということは当然だと思います。ただ、我々からすれば、このようなケースというのは極めて異例な、言わば突然死なわけでございますね。皆さんもご承知の通り、マイカルの決算期は2月、8月なわけですけれども、2月の段階におきましては、格付けも「BBB-」と、かつ確かに有利子負債は大きいわけでしたけれども、それに対しまして、新中期3ヵ年計画ですか、そういうものもできて、有利子負債の削減ということが計画されていた。そういう中での格付けが「BBB-」だったと。それを踏まえて、3月の銀行の自己査定というものが行われたわけでございまして、まあ私は3月の段階で銀行が要注意という、つまり、まず資産超過であるということですね。債務超過ではないという前提と、格付けが「BBB-」だという前提を置くならば、銀行が要注意という債務者区分にしたこと自体、必ずしも不合理だったとは思いません。

ところが、ご承知の通り、その後いろいろと、まあ一言で言えば新中期3ヵ年計画というのがうまく進まなかったというのが大きな原因だと思いますけれども、計画通りに行かない、そんな中で6月始めに格付けの大幅ダウン、即ち「BBB-」から「B+」になったと、つまり4段階引き下げがあったということです。そこから、こういう流通業というのは顧客の信用及び納入業者の信用で成り立つような企業でございますので、急速に手形決済の条件が悪化していたと言いますか、そういうことで決済の日に用意しなければいけない運転資金というものが急に膨らんでいったと。そうした中での今回の破綻なわけでございまして、言わば資金繰り破綻なわけですね。従って、言わば破綻直前の状況を銀行が仮に自己査定するとすれば、直前は当然破綻懸念先に落とすべきものであったと思います。

ところが現在の会計制度は、銀行の自己査定というのは3月期と9月期ということになっているわけでございまして、こういう短い間の急激な信用収縮に対応できるような自己査定システムになっていないという問題があるわけでございます。そういう意味でマイカルの破綻というのは、自己査定を本当に皆さんに信じていただくためには、そういう外部格付けの変化、その他決算期から中間決算期に至る間の出来事というものをどう織り込んで自己査定の正確性、それに基づく銀行の引当増というものをやって行くべきかということに問題を投げたものだと、私は思っております。

大臣も申し上げ、私も申し上げていますけれども、そういうものをどういうふうに取り入れていくかということで、株価とか外部格付という要素を取り入れた自己査定を、頻度を増やして銀行がやって行くということを、既に銀行には要請しておりますけれども、そういうものをどういうふうに取り組んで行くかということが一つの課題になるということは否定いたしませんと言うか、そういうふうな認識を持っております。ただこれは、私が極めて異例と申し上げましたのは、そういう流通業、そういうところはいろいろあるではないかと言えば、それはそうかもしれませんけれども、そういう極めて突然死的なものでございまして、ある意味で、商法を踏まえた会計制度、公認会計士協会の実務指針や、あるいは金融検査マニュアルというのは、こういう経済環境の急速な変化、あるいはそういう企業間信用収縮というようなものに対して、そういう異例なものに対する手当という面では、必ずしも十分ではないと思いますけれども、それをこれから、先程申しましたように、株価や外部格付といった市場のシグナルをどういうふうに織り込んで、自己査定のより一層の正確さというものを探求して行くかというのが一つの課題ではないかと思っております。

問)

自民党の山崎幹事長が今日の講演でRCCの機能拡充について、柳澤大臣らと今日会談すると仰ってましたが、RCCの機能拡充論に対しては長官はどのようなお考えでしょうか。

答)

党の要人の方々と金融担当大臣は、いろいろ折に付け意見交換をしているわけでございまして、RCCの問題、あるいは不良債権一般の問題について幹事長、あるいは政調会長といった要路の方々が、いろいろご意見をお持ちだということ、それで当庁の大臣も意見交換をすると、そういうことはしばしばあることでございまして、そういう会合がもし本日開かれるならば、そういうことの一環だと思っております。

問)

マイカルの件なのですが、長官ご自身は市場のシグナルという言い方を仰ってましたが、現実にマイカルのこの数ヶ月の流れを見ますと、市場シグナルの前に様々な風評、噂というものが先行して、それが格付を下げるとか、いろんなところに影響を及ぼしたわけですね。当然株価にも影響を及ぼしたわけです。

そういう風評という問題に関しては、長官はどう考えていらっしゃいますか。

答)

いや全くその、突然死の大きな要因としてそういうものもあったというふうに認識しております。ただ、流通業、つまりお客の信用、あるいは納入業者の信用を背景にした企業というのは、絶えずそういうリスクを持っているのだと思うのですね。そういう風説の流布による何とかというのは決して好ましいことだとは思いませんけれども、やはりそういうリスクを常に負った企業というのは、それへの対策も万全を尽くして行かなけばいけないことではないかなあというふう思っております。

問)

つまり、その風評とかそういう噂というものも一つの市場のシグナルであるというふうに受け止めるべきだということですか。

答)

いやいや、そうは申し上げていません。私は格付機関、あるいは株価、その時々の風説によって、その時々に影響を受けるかもしれませんけれども、私はもうちょっと株価なり、格付機関の格付けなりというものは、単にそれだけではなくて、いろんな要素を総合して、もっと客観的なものを配慮して成り立っていると言うか、値付けされている、あるいはそういう数値が出るものだと思っておりますので、市場のシグナルというのは風説が市場のシグナルにはならないと思っておりますけれども、風説の流布の根拠などを十分に探求した後の、そういうシグナルというものを今後どう取り入れて行くかが課題だと、こう申し上げたつもりでございます。

問)

マイカルの数字で、既存店ベースとか全店ベースの売上を見ると6月以降は、むしろ好転しているんですね。7月、8月に関しては全店ベースではプラスになっています。それで6月からは大幅に改善していると。つまりマイカルの業績だけを見れば、決して格付が引き下げられるとか、あるいは株価がここまで下がる、100円割れをするような状況では決してないというふうにも思えるのですが、そこはどうですか。

答)

私は格付機関の当事者でもございませんので、6月始めにどうしてそんな4段階も下げたのかということについて、私が釈明できる立場にはないわけでございます。仰る通り売上の減は縮まっていたのかも知れませんけれども、やはりいろんな報道に接してますと、最終的には有利子負債の削減計画が思うように行かないと、あるいは外資との買収交渉だとか、業務提携交渉なのか、そこは良く存じませんけれども、そういうこともうまく行かないと、そういうことが非常に納入業者に不安感を与えた、そういうところがやはり大きな原因、つまり、やはり資金繰りというものを一番重視しなければいけないところであって、その辺についてそういう資金繰りに窮した、それではメインバンクからどんどんお金を出せば良いではないかという話にもなるわけですけれども、そこはメインバンクも、マイカル再建の道として、そういう融資継続よりも、再建型法的整理に持って行った方が良いんだという経営判断をされたんだと思います。まさに、そういう再建型法的整理、民事再生法なり会社更生法なり、そういう形での処理というのは一つの方法でございますので、それについて対応を良いとかいけないとか言うことではないと、私は思っております。止むを得ない方法だったと思っております。

問)

一説では金融庁が最後のところは、みずほグループに最終処理を促したのではなかろうかという情報も流れたわけですが、いかがですか。

答)

そういうことはございません。あくまで銀行の経営判断でございます。

問)

アメリカのテロ事件以降の株式市場についてなのですが、現物の売買の値動きもさることながら、先物もかなり粗いというか、そういう値動きになっているのですが、その取引状況について金融庁として把握されていること、それから対応について教えていただけませんでしょうか。

答)

ああいう不幸なテロ事件が11日の夜に起こりまして、それについて次の日の市場を開くかどうか、開いたとして値幅制限をどうするかということは十分考えて、12日、13日、14日に値幅制限の縮小という措置を東京証券取引所がとったわけですけれども、その趣旨はあくまでも混乱を避けるという意味で、そういう措置をとったわけです。本日についてはもちろんニューヨーク市場はまだ開いていないわけですけれども、かなり落ち着いてきたということから金曜日に発表して、本日の市場から値幅制限の2分の1の縮小を解除したわけでございます。

明日どうするか、ニューヨーク市場がいよいよ今日の夜の10時半から明朝の5時まで開かれるわけですけれども、それにつきましては東証がその状況を見ながら、果たして混乱を予想するのか、大丈夫なんだと判断されるのか、基本的には東京証券取引所のご判断だというふうに思っております。

問)

この場に乗じた不公正と言いますか、そういった不公正な取引のようなものに対する対応については如何でしょうか。

答)

それにつきましては、当方も証券取引等監視委員会に強く要請しておりまして、証券取引等監視委員会も言われるまでもなく、厳しく注視している、ウオッチしているというふうに認識しております。

問)

RCCに融資機能を付けて、いわゆる健全銀行から債権を買い取って企業再生なんかにつなげたらどうかというご意見が党などで挙がっているようなのですが、これに対するご見解を伺えたらと思います。

答)

そういうお話も聞いておりますし、もちろん検討している段階でございますので、今の段階で私から金融庁として検討した結果、それに対する答えがイエスだとかノーだとかいう段階ではございません。

ただ、一般的に難しい点ということになるならば、要注意先というのは必ずしも不良債権ではないわけでこざいまして、そういう不良債権を引き取ってRCCが再建を目指すと言いますか、管理するというのは、少なくとも今のRCCのキャパシティーから申しますとなかなか難しいことなのかなあというふうに思っております。

融資という機能を持たせるということになりますと、基本的には預金保険法の改正になるわけで、もちろんそれも一つの選択肢とは思いますけれども、一方においてRCCというのはいろんな不良債権を今、引き取っているわけでございますね。不良債権の相手先と言いますか、債務者というのは必ずしも死んでいるわけではございませんので、まあそういうところに貸出もできるんだということになると、みんなこぞってうちに貸してくれということになりますし、その場合にどこに貸してどこに貸さないという、そういう審査機能をRCCに付けるというのは今のキャパシティーから言いますと非常に難しい面もあると、そういうふうにするならばRCCの抜本的な改組というものが必要になるのではないかなあという感じを持っております。

しかし、骨太の方針の中に盛り込ませていただきました通り、我々としてはRCCというのは、単なる死刑場になってはならないんだと、もう再建部と言いますか、企業再建部門を持つんだと、これはそういうふうに思っています。企業再建部という機能はこれからRCCは強化していかなければいけないと思っていますけれども、企業再建と言った時にどの程度までの企業再建をRCCに期待するのかという問題かと思います。

問)

基本的には銀行主導で、そういったものは進めるべきだというお考えということでよろしいのでしょうか。

答)

骨太の方針にございました通り、今のご質問が要注意に止まるものであるならば金融庁の方針といたしましては、むしろ債権の健全化、銀行はリスク管理を強めて債権の健全化を図って欲しいというのが、これまでも現在も金融庁はそういう方針をとって、そのように銀行に要請しております。

問)

マイカルの破綻が問題を投げかけたということに関連してですけれども、これは公認会計士協会の実務指針や検査マニュアルをも見直す必要があるという意味も含まれているのでしょうか。

答)

いや、そこまでは言っておりません。

問)

要注意先債権に対して、一般貸倒引当金ではなくて個別の貸倒引当金を積めるようにしてはどうか、またそれで個別貸倒金を積んでいる企業に対して融資を継続できるようにしてはどうかというような提案が一部で持ち上がっているようですけれども、長官のご見解は如何でしょうか。

答)

まさに仰られた会計基準と言いましょうか、実務指針及び金融検査マニュアルを改正すれば、そのようなことも可能かとも思いますけれども、これは商法から来ている一つの会計基準をひっくり返すわけでございますので、非常に難しい話だなあというふうに思っております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る