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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年10月1日(月)17時03分~17時40分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

先週土曜日の講演で竹中大臣が、「金融庁が実施する特別検査について、経済財政諮問会議で点検する」というような趣旨の発言がございましたが、金融庁としてはどう受け止めているのか、長官の見解をお聞かせください。

答)

私も新聞報道でご指摘のような内容を経済財政担当大臣が講演で仰られたということは承知しておりますけれども、各紙の報道ぶりも一体何を点検するかというところが必ずしも明確ではありません。私も具体的な、経済財政担当大臣が何をお考えになりながら仰られたのか、私自身も良く分からないのですけれども、つまり、まさか特別検査の内容を点検するということではないのだろうと思うのですね。即ち特別検査をきちんとやっているかどうかとか、あるいはそれによって不良債権処理がどう進むのかとか、そういうことをレビューされたいということではないかと思っております。

9月21日に、経済財政担当大臣が記者会見で「今後、四半期毎のイメージで実施状況のレビューを行う」というふうに会見で仰られております。そうであるならば、我々が改革工程表なり、あるいは改革先行プログラムに載せた内容がどう進んでいるかということを、経済財政担当大臣としてお知りになりたいのは当然ですし、我々としても全面的にそれにご協力するのは当然だと思っています。

しかし、その中身は改革工程表なり、改革先行プログラムにございます内容のレビューでございますから、当然不良債権処理、あるいはオフバランス化がどのように進んでいるのかということを柳澤大臣にご説明いただくということであって、特別検査の云々ということは、これはもう金融庁の検査局の中の問題でございますので、そういうことを経済財政諮問会議に云々と繋げることは無理があるのかなあと、そんなふうに思っております。

問)

三菱東京フィナンシャルグループが先週、株式の強制評価減の処理を発表されまして、業績の下方修正をしましたけれども、他の大手行の影響について9月末の株価水準を踏まえて長官の見解をお聞かせください。

答)

9月末の株価水準はご承知の通り、日経平均株価で言って、9,774円という極めて低い水準であったわけでございますので、当然時価会計が導入されて最初の中間決算に、いろいろな面で影響があろうかと思います。

強制評価減までやらなければいけないところは損益にも影響がございますし、そうでないところも配当原資というものに低い株価がヒットするわけでございますので、そういう影響も避けられないものと思っております。その結果、中間配当の見送りというところがいろいろ出て来るということも当然予想されることです。

一言私の感じを言わせていただければ、時価会計が導入された後は、株価というものは予測不可能でございますので、中間配当するかどうかについては商法上その期に確実に配当財源が出ること、それがはっきりしない限りは、ご承知のように中間配当はできないわけですね。今の流れの中で配当というのは通期に1回と、決算期にという流れになるのは、私は当然のことだというふうに前から思っております。

さて、今9,774円でどれくらいの影響があるかという時に我々が一番関心が深いのは、配当財源がどうとかこうとかいうよりも、銀行の健全性の問題でございます。即ち、自己資本比率がどの程度になるのかと。我々の今のところの試算では、株価だけの影響、つまり他のことは全部所与として、株価だけの影響で考えた場合には主要行全体で11%前後は確保できるというふうに思っております。ただ、それにいろいろ不良債権処理が予想外にかかるとか、そういうことが今後当然中間決算した場合にはそういうことが予想されるので、そういうような影響も我々はいろいろシュミレーションしながら測っておりますが、それでも概ね10%台は確保できるものというふうに思っております。

問)

先週金曜日に、主要行トップとの意見交換会が開かれましたけれども、長官も出席されましたが、長官の方から要請されたこととか、銀行側の受け止め方などをお聞かせください。

答)

こちらから要請したことは皆様方にオープンの席で申し上げたことにつきるわけでございまして、即ち、改革先行プログラムで公表いたしました4つの柱、「資金供給の円滑化」、「特別検査を含む銀行の健全性確保のための対処策」、3番目に「RCC等による不良債権処理と企業再建」、4番目に「オフバランス化に当たっての配慮」と、この4本の柱についてご説明し、ご理解を求めたわけでございます。

その際、なぜ我々がこういうことをするかという際の説明といたしましては、今銀行の自己査定というものに必ずしも世間一般が100%の信認を置いていない。そしてまたその自己査定を検査する金融庁の行政にも100%の信認が置かれていない。何とか主要行と金融庁、相互とも信認をもっと上げなければいけない状況にあるわけでございまして、そういう観点からこういう施策を考えたということ、そのことについての理解を求めたわけですけれども、私が受けた感じとしては、まあいろいろな意見交換をいたしましたけれども、主要行側も十分に我々の意図するところを理解していただいたというふうに認識しております。

問)

金曜日の話なんですけれども、銀行側から金融庁に対する意見、要望みたいなものは具体的にはどんなものが出たのでしょうか。

答)

それは大臣もぶら下がりで皆さんに話されたと聞いておりますけれども、やはり特別検査をすることには、必要性等について理解を得られたと思うのですが、今一番世の中で怖いのは風説の流布でございます。従って、ご承知のように特別検査は何が普通の検査と違うかというと、銀行に着目してではなくて債務者に着目して検査するわけですから、どういう企業について特別検査が入ったとか、そういうことが軽々に噂になり、特定の債務者に、いわば無用の損害を与えるようなことは厳に注意しなければいけないということですね。それは我々も全く同じ気持ちでございまして、我々としても特別検査に当たっては細心のそういう風説の流布が起きないよう注意しなければいかんというふうに考えております。

問)

RCCの不良債権の買取価格に関する弾力化に関して、今日、総理が国会で「簿価ではなくて時価を基本にする」と仰りました。自民党の方でもやっているのですが、弾力化の検討状況について教えていただけますか。

答)

我々は簿価とか、実質簿価とか、いろんな買取価格についてのコンセプトはあるわけですけれども、我々はやはり、今日、総理がお答えになられた通り、時価を基本とすべきだというふうに考えております。

ただ、時価を基本としてすると言いましても、あえて言えば今の法律の枠内でいくら解釈を弾力化しても、結局相対の売買しかできない、つまり健全な銀行より買取りの申込みがあった場合というふうな法律の書き方でございますので、あえて言えば、例えばある銀行がバルクセールで入札をした場合に、それに参加するというところまで読めるかというと、法制局の解釈ではなかなかそれは難しいと。従って価格は時価としても、どこまで弾力化するか、つまり銀行のバルクセールに相対で応じるというところまでは、今までは1本1本の債権で損が出ないというようなものの考え方でやってきたわけですね。今回はどれくらいまで弾力化できるかということをぎりぎり詰めた結果、相対なら銀行のバルクセールでも買えるでしょうと、そこまでは進んだわけですね。

では入札に応じられるかというと、そこはなかなか法律の書き方からいって、「申込みがあった場合」と、こう書いてあるもんですから、なかなか難しい。ですから、ここまでなら何とか弾力化できるというところまでは行っているわけですけれども、果たしてそれだけで良いのかというところを党の皆様方にご議論いただいているというのが現在の状況でございます。

問)

相対の場合の時価というのはどういうふうに判断するのですか。

答)

難しいでしょうね。だからそこは、時価というのは要するにマーケットプライスと言った方が分かりが良いのだろうと思うのですけれども、何が時価かと言うと、複数の競争者が札を入れて、その最高値というのが基本的には時価なんだろうと思いますね。そういうものを想定した時の価格みたいなものを、預金保険機構が公正な委員会で、その時その時の債権流動化市場の状況を見ながら考える、そういうものが時価だということだと思いますね。必ずしも銀行の簿価マイナス引当金というわけでもないでしょうし。

問)

そうすると、今日は総理は時価だと仰ったわけですから、それはやはり入札というのが前提になってのご発言ではないのですか。

答)

今私が申しましたように、入札を想定して合理的に判断される価格というものは、もしあるならばそれが時価でしょうということを私は申し上げたのです。

問)

そういう方法があるのでしょうか。

答)

まあ、利害が相対するもの同士のネゴですから、つまり一方は銀行、一方は預金保険機構、これは明らかに利害が相対立しますね。高い値で売る方が良いのは銀行ですし、安く買えば買うほど預金保険機構としては損のリスクは小さくなる。そういうものがぎりぎりの交渉をして出て来た価格というものがあるならば、やはりそれが時価ということではないでしょうか。

問)

民間のサービサーへの圧迫というのはどういうふうに考えておられるのでしょうか。

それと、もう一つ、もしオーバーバンキングというのを解消しようと思っているのならばこの制度というのは逆行するかもしれませんが、その点はどのようにお考えでしょうか。

答)

最初のご質問ですけれども、預金保険機構が基本的には民間サービサーを圧迫するというようなコンセプトというのは好ましくないというふうに思っております。即ち、現在の債権の流動化市場と言いましょうか、債権の売買市場と言ったほうが正確ですね、不良債権の売買市場というものが預金保険機構が出ていかなくても良いほど成熟した売買市場がもし今あるとするならば、我々は骨太の方針なり、今回のパッケージでそういうことを言わなくて済んだと思います。しかし、我々はそう見ておりません。やはり日本はアメリカなんかに比べても、不良債権の売買市場が必ずしも成熟したものになっていない、その補完としてのやはりRCCというふうな位置付けで考えております。

二番目のご質問については、例えばコンセプトとして銀行の不良債権は何でもRCCが買ってあげて、その結果、銀行をベールアウトする、まあ救済するというコンセプトなら只今仰られた記者の方の言う通りかと思います。そうではなくて、我々が骨太の方針以来、日本の主要行に求めておりますのは、要注意先以上は、要管理も含めまして健全化してくださいと。ただ破綻懸念にまで落ちたらできるだけ早くオフバランス化してくださいと、こういうことを主要行にお願いしているわけです。オフバランス化の受け皿の一つとしてRCCの機能の拡充というものを設けたわけでございまして、決して銀行をベールアウトするためのRCCの機能拡充ではなくて、我々としてはこの骨太の方針なり今回のパッケージ、即ちオフバランス化推進という観点からのRCCの機能拡充というふうに考えております。

問)

先程のRCCの買取価格の決定に関して、預金保険機構が公正な委員会でその都度考えてと仰られたのは、どの程度まで固まったスキームなのですか。

答)

いや、すみません。今後の話です。例えばそのような委員会を作るというのも一案かと思いますけれども、具体的に金融庁、預金保険機構、RCCで今いろんな検討会をやっておりますけれども、具体的に何かそういう方法が固まったということは一つもございません。

問)

先行プログラムの件でちょっと伺いたいのですけれども、要注意先債権のところの一般貸引に係る予想損失率の算出なんですけれども、これを過去3年とかではなくて直近のものでやるというのが一つ入っていたと思うのですけれども、あの場合、その異常値の排除というのが金融検査マニュアルでも実務指針でもあると思うのですけれども、テロとかあって今年あたりは異常な状況かなというふうにも思うのですけれども、直近のものというのはそれはそれで良いのですけれども、直近のものが異常値であるというふうになる場合があるのか、あるいはその場合はそれが異常値であるというのは誰がどういうふうに判断するのか、その辺についてちょっと教えてください。

答)

今ご質問になられた記者の方の前提は、異常値は貸倒実績率から排除するということを前提としたご質問かもしれませんけれども、この頃の検査においては基本的に異常値は排除しません、貸倒実績率の中に入れます。余程相手の言うことに理屈のあるもの以外は、言わば異常値としての排除は認めないと言って良いと思います。それを前提といたしますれば、最近の経済状況の趨勢等を勘案してといった場合においても、何か異常値を取り除いてしまったら効果がないではないかというのが今の記者の方のご質問の趣旨だとすれば、そういうことはないというふうに言えると思います。

問)

在野の金融専門家の間で、要注意先にも個別貸引が必要ではないかという意見があって、今まで金融庁は会計ルール上は難しいと言っていたのは、これは真っ赤な嘘であるというような言い方をされています。まあそういう読み方もできるのかなあと、商法とか何とかを見るとなるほどなあと思うところもあるのですけれども、そうすると金融検査マニュアルというのは基本的には要注意のところはやはり一般貸引でいくということになっているので、相当あのマニュアルというのは欠陥のあるものではないかなあと私は思うのですけれども、長官はどういうご見解をお持ちでしょうか。

答)

正確にここでご説明させていただきたい思うのですけれども、償却・引当というのは商法、さらに企業会計原則、そして公認会計士協会の実務指針に基づいて行われ、さらにそれを金融庁内の内部的なマニュアルとして金融検査マニュアルとしてできているわけでございます。

今仰った要注意先一般について個別引当と申しますか、まあ私としては正確には個別的引当という言葉が良いのではないかと思うのですけれども、個別的引当ができる・できないという点について言うならば、もうちょっと正確に物を言わなければなりません。つまり商法上、個別的引当というのは、各債務者のリスクというものを見て引当しないさいと、これが原則であることは今仰られた記者の方が引用した通りだと思うのですけれども、一方において公認会計士協会の実務指針は、何万・何十万あるそういう正常先とか、要注意先について個別的引当というのはなかなか難しいと。従って、そういうものはグループに区分した上で貸倒実績率や倒産確率に基づいて予想損失を出しなさいと、こうなっているわけですね。

それで、「なお」とあって、実務指針でその論者の仰っていることはここだと思うのですけれども、「要注意先債権のうち、債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、当該キャッシュ・フローを当初の約定利子率で割り引いた金額と債権の帳簿価額との差額について貸倒引当金を計上する」と、この部分を言っているのだと思うのですけれども、これは実務指針の中ではどこの部分にあるかと申しますと要注意先一般ではございません。貸出条件緩和債権に限定した記述です。つまり、ザクッと言いますと、実務指針では何が書かれているかというと、「要注意先債権は適当なグループに区分した上でやりなさい」とはなっているのですが、さらにあって、「貸出条件緩和債権については、今言ったように個別的引当をしても良い」と書いてあるのです。ですから、何回も申しますけれども、要注意債権全体の話ではございません。貸出条件緩和債権だけです。

それでは、そこの部分は実務指針にありながら、なぜ金融検査マニュアルはそれを引っ張っていないかと申しますと、実は日本の場合は非常に貸出金利が低いということもあって、これはどういうことを意味するかというと、貸出条件緩和債権は当初利率と緩和した利率の差でキャッシュフローをディスカウントするわけですね。それが日本の場合は当初利率と言いますか、つまり条件緩和する前の利率と条件緩和した後の利率の差があまりにも小さいものですから、これで割り引いてしまいますと現在の一般貸倒引当率よりも小さくなってしまうのです。それは意味のないことなので、金融検査マニュアルにはそれを引用しなかったわけです。それを金融検査マニュアルに引っ張らないことについて公認会計士協会は、「それは当然ですね」というふうに言っているわけです。それが正確な言い方でございまして、公認会計士協会の実務指針の中で要注意全体について個別的引当をして結構だと書いてあって金融検査マニュアルに引用していない、というわけではないのです。貸出条件緩和債権についてのみ個別的引当を実務指針は認めていて、それを金融検査マニュアルが引っ張っていないということです。なぜ引っ張っていないかというと、今申しましたように、それでやると通常の一般貸倒引当率より小さくなってしまうからなんです。

次に、では貸出条件緩和債権だけではなくて、なぜ要注意先一般について個別的引当というものを公認会計士協会が引っ張っていないのかということになるわけでございますけれども、その場合は何と言いましょうか、本来の金利というものが、つまり融資ですから融資で利子が入ってくる時に、その時に要注意先に本来貸出して入ってくるべき利子と、個別的引当ですから当該企業から実際に入ってくる利子との差というものをディスカウントするわけですね、個別的引当金を計算する時には。その時に、本来入ってくる利子というのがいくらなんだと、要注意先については、ということが散々議論しても公認会計士協会でそういう概念というものが固まらない。要注意先は何%あったら本来の利率なんだと、それから要注意先であるがために何%なんだと、その差からディスカウントするという時に、なかなか解が出てこないということで実務指針を作る時も、貸出条件緩和債権のみにそれを限定して個別的引当というものを規定したわけです。金融検査マニュアルがそれを引っ張らなかったのは今申しましたように、くどいようですけれどもそれをやった場合には、貸出条件緩和債権だけで個別的引当をやった場合には、実は一般貸倒率よりも低くなってしまうということから引っ張っていないと、こういうことでございます。

では、直したら良いではないかということになりますが、直してもいいんです金融検査マニュアルは。ただ金融検査マニュアルというのは、出来た経緯でもご承知のように研究会を立ち上げ、パブリック・コメントを求めると、何やかんやで1年はかかります。それだけのことをこれからやる価値のあるものだとも思っておりません。

問)

プログラムでもう一つお伺いしたいのですけれども、いろんな意見があると思うのですけれども、問題はその償却・引当が果たして十分かどうかということが問題の根っこにあると思うのです。それで、やはり問題があると思う大手企業については、なお要注意先であってもやはり個別的に引き当てた方が、銀行も安心できるのではないかと。もしそれが実務指針なりマニュアルによって阻まれているとするならば、長官は今、(マニュアルを)直すのに価値があるかどうかということを仰いましたけれども、それはやはり直す価値があるのではないかと、こういう考え方も私はできると思うのですけれども如何でしょうか。

答)

それは私は一つの考え方であることを否定しませんけれども、我々のやろうとしていることは、むしろ特別検査でそういう個別的引当を必要とするものは、まさに個別的引当の世界に持ってくる方が自然ではないかというふうに考えております。すなわち、いろんな観点から見て、個別的引当を必要とするような企業ならば、やはり破綻懸念先等で見た方が自然なのではないですかと。そういうことを実証することも一つの目的で特別検査というものが行われるわけでございます。

問)

個別引当が必要ならば、その個別引当の世界の破綻懸念先以下に落とすということではなくて、もともと商法の考え方に立ち返れば、個別に引き当てるのが原則であって、十万とか二十万とかいう貸出先がたくさんあって技術的に問題がある場合に一般貸倒引当金を使うということなので、本来の趣旨に沿って個別引当をしたらどうかということなのでしょうか。

答)

だから、それは何回も公認会計士協会で実務指針を作る時に議論されたわけです。記者の方が仰るように言うことは簡単です。では、どうやって何を基準に、何%積むんですかとなる時に、さっきも言ったように皆バッタリ倒れるわけです。つまり引当金というのは結局入ってくるものをディスカウントしたものしかないわけですから、本来要注意先として取るべき金利というものがあるわけですね。それと実際に入ってくる金利との差をディスカウントするわけですね。

では本来取るべき金利というのはどうやって出てくるのだということになりますが、今みたいな超低金利の時代に当てはめてしまうと、超低金利の日本の世界の中における貸出慣行で言えば、大して高い金利ではないでしょう。それが今、入ってくる金利との差というものが、もし低い金利だったら、それでディスカウントしたら、今の要管理より低い引当率になってしまうかもしれない。それが果たして現実的に合うのかどうかですね。私はそれを言っているわけです。ですから、概念として個別的引当を否定するつもりは毛頭ございません。ただ、それは実際の引当率は計算しようがないものですから、グループで貸倒実績率を出して、それでそこから予想損失率という形で引当金を出しているわけです。

ですから、今仰られた記者の方の趣旨も、要注意のところには本来は危ないものがあるんだと、そういうものは何十万の話ではなくて、数が少ないなら個別的引当をしたら良いではないかと仰りますけれども、現実のやり方として何があるかというと引当率は計算のしようがないですねと、それほど危ないものだったら、むしろ資産超過であっても、資産超過であったら破綻懸念にならないというわけではありませんから、資産超過であっても破綻懸念として個別引当した方が、会計のルールとしては整合性がとれますねということを申し上げているわけです。

問)

破綻懸念に落としたらニューマネーは出せないということですよね。

答)

そうですね。だけれども、皆さんも銀行にお聞きになれば分かりますけれども、要注意先で個別的引当をしてもニューマネーは出せないと言っております、そこは同じです。何か要注意先で個別的引当だったらニューマネーが出せて、破綻懸念だったら出せないという、そういう問題ではないと。個別的引当をするような企業にニューマネーは出せないと、これは株主代表責任を負っている銀行の経営陣の考え方だと思います。

問)

もう一つ今のお話で伺いたいのですけれども、要管理のところで、かなりアメリカ流の割引現在価値という考え方を入れているというのが、ちょっと全体の中で見ると違和感を感じるのですけれども。

答)

要管理というのはどういう意味ですか。

問)

条件緩和債権については、そのディスカウント・レートを使って個別的に引き当てても良いと書いてあるわけですよね。

答)

先程申し上げたところでは、カッコ内をちょっと省略したわけですが、つまり「要注意先債権のうち、債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権」として、カッコして(貸出条件緩和債権等)となっています。実務指針がそのように書いてあるわけです。

問)

どうしてそこだけそういうふうな書き方になっているのですか。

答)

つまり、先程申し上げたように要注意一般ですと、本来貸し出しする利子と、今貸している利子の差というのが分からないわけですね。貸出条件緩和ならば、当初利率と今の利率の差が分かるからではないですか。だから、貸出条件緩和に限っては、こういうことをしてもよろしいと。でも現実にはそれをやったら、実に差が小さいですから、それをディスカウントしたら実際の現在の要注意先の一般貸倒引当率よりも小さくなってしまうと、話にならないと、こういうことなんです。

(以上)

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