森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年11月12日(月)17時06分~17時43分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

朝日生命を含むミレアグループの再編について報道がありますが、金融庁としての現状認識はどのようなものでありましょうか。

それと、そもそも株式会社化ということの作業が進んでいる中で、このような一部前倒し的な話が出て来たことは、どのような事情があってのことと認識していますか。生保の取り巻く環境と併せてお話ください。

答)

朝日生命及び東京海上が、仰る通りの構想、あえて言えば前倒し構想ですかね、これを考えておられるということは十分説明を受けております。基本的には昨年の9月18日にミレアグループ構想というものが発表され、さらに今年の1月11日に具体的なスケジュールというものが発表されたと認識しております。そしてそこでは、ミレアグループの持株会社は来年の4月1日、即ち2002年の4月1日に持株会社を作りまして、朝日生命が株式会社化した上でミレアグループに参入するのが2004年の4月1日ということが、今年の1月11日に発表されたと記憶しております。

そうした中で、今回株式会社化の時期を1年早めまして、2003年4月1日に株式会社化すると同時に、東京海上あんしん生命という、既に株式会社化している東京海上グループの生命保険会社と合併をするということが今回報道されたところかと思います。

まあ一般的に申しまして、まずはこの生損保の垣根というのが第三分野の開放とともに、どんどんなくなって行くという状況の中で、損保の雄と生保の大手がこういうふうに手を結んで統合して行くと、そして消費者のニーズに合った商品をどんどん開発して行くということは極めて好ましいことでありまして、当時、金融庁として歓迎の表明をしていたと思います。

今回、さらに速度を、即ち、生保の大手である朝日生命というところが、東京海上あんしん生命と合併して、ミレア生命保険という形でミレアグループの中に入る時期を仮に1年早めることとなればと。私からすれば、当然最初からそういうスケジュールであって欲しかったわけですけれども、やはり大きな相互会社が株式会社化するにはそれ相応の時間が掛かるということで、やむを得ないことなのかなあというふうに私は思っていました。ここに至って、とにかく努力して、大変大きな契約数を抱える、事務量としても大変大きな事務量を抱えるわけですけれども、仮に株式会社化を1年早めようとするのであれば、一般論としてですが、やはりこの時代の流れからして当然そういうこと、つまり統合の速度というのは、スピード感というのはもっともっと早めなければいけないというのがやはり今の時代だと思いますので、そういう時代の要請に応えたスピード感を持った考えであるというふうに評価して良いのではないかと思います。以上です。

問)

あさひ銀行がアメリカの投資銀行とともに不良債権の買取りに関する会社等々を設立して不良債権処理に当たって行くということですが、金融庁としてこのような取り組みと言うか、動きについてはどのような認識でしょうか。

答)

大変評価出来ることだと思っております。即ち、この席で何回も申しましたけれども、足元の景況が厳しい中で、不良債権処理というのは銀行の信認を高めるためにまず取り組むべき課題であって、どこの主要行も懸命に取り組んでいる、当方としては何遍も申しますように、要注意先以上には健全化の努力をして欲しい、破綻懸念以下になれば、2年、3年ルールに基づいて最終処理をして欲しいと、そういうことを金融庁としては要請しているわけでございますけれども、各主要行もそういう要請に応えて、懸命な不良債権処理策というものを練っていただいているものだと思っています。

当該あさひ銀行につきましては、これから十分に外資系との業務提携の内容をヒアリングして行きたいと思っておりますが、とりあえず我々が聞いております内容は、あさひ銀行の不良債権、それをRCC活用に馴染むものはRCCを活用の方向で考えるし、あさひ銀行がむしろ再生に深く関与すべき取引先については、今回、外資系と一緒に作ります債権購入会社が買い受ける、さらに同時にその外資系と別に作りますサービサー会社、そこが再生・回収に当たると、そういう枠組みを今回お考えのようでございまして、私は不良債権処理の選択肢が増えるという意味でも歓迎でございますし、あさひ銀行がそういう不良債権処理に真剣に取り組んでいるということについても非常に評価出来ることではないかと思っております。

問)

昨日のタウンミーティングで大臣の方から、独立した金融検査庁の構想というものについて言及がありましたが、金融庁として、あるいは長官としてのご見解をお願いします。

答)

これはかねがね、柳澤大臣が個人的見解としてお持ちになっておられるようでございまして、柳澤大臣が自民党の行革本部の事務局長時代から仰っておられることと認識しております。昨日のタウンミーティングの様子もお聞きいたしましたが、柳澤大臣はあくまで個人的見解とお断りになっていると思います。

金融庁としてはどう考えるのかと申し上げれば、検査の独立性、これは言うまでもなく極めて重要なことでございまして、柳澤大臣の考え方もそれを強調したいということから来ることと思います。私もこの1月6日に長官を拝命いたしまして、この点についてすぐに柳澤大臣と十分打ち合わせをいたしまして、基本的に検査局の独立性というものは最大限尊重しているつもりでございますし、今日までの行政の中で、検査局のやろうとしている行政を私自身が何か歪めるようなことはしたこともございませんし、言ったこともないという自信がございます。

そういうことで、金融庁といたしましては、検査局の独立性というのが重要なことだと思っております。ただ、組織としてものを考えた場合には、1府12省庁が、この1月6日に発足した、そこに至るまでの考え方というのはいろいろな行政改革の議論の中で煮詰められて来た、その上でこの1月6日から1府12省庁の体制が出発したわけでございまして、そうした中で、現実の行政で何か検査局の独立性が侵されるような懸念があるならば、そういうことを考えなければいけないのかもしれませんけれども、私はこれまでの行政において、そういう面の差し障りはないという自信がございますので、組織としての検査局のあり方というのは現在のまま続けて行くのが適当であるというふうに考えております。

大臣も個人的見解と断った上で、さらに中長期的な検討課題だと仰っているわけでございまして、12省庁の中での新しい金融庁がこの1月6日にスタートして、その行政を執行する上で何か差し障りがあるかないかというのをもうしばらく皆さんも見ていただきたい。何もないのであれば私はこの1府12省庁の体制を維持して行くのが適当ではないかというふうに思っております。

問)

特別検査を巡ってですけれども、株価が急落した銀行、あさひ銀行とかがありまして、風説の流布があったのではないかと自ら指摘などをしておりますけれども、そもそも特別検査の個別企業に着目した検査を実施するに当たっては、金融庁として風説の流布というところを最大限注意すると言っていたと思うのですけれども、これはどういうふうに対処、あるいは今後どうされて行くつもりでしょうか。

答)

正確に言えば2つに分かれると思うのですね。1つは特別検査に絡まる風説の流布と、これは我々は非常に警戒しております。そのために証券取引等監視委員会の中に9人からなる特別チームというものを立ち上げ、そうした風説の流布について日常的な監視を強化するということを既にやっているわけでございます。

もう1つは、私がちょっと違うと申しましたのは、今回あさひ銀行が言って来たことは、特別検査ということ、それも中身に少しは入っているのかもしれませんけれども、それとは別に、あさひ銀行の売り圧力を強めるような風説の流布があるということをあさひ銀行が言って来たというふうに認識しておりまして、それは当然証券取引等監視委員会において、ヒアリングを始める等、適切な対応を既になされているものと認識しております。仮にもそれが真実であるとするならば、証券取引法の風説の流布ということで厳正な対応をしたいというふうに考えております。

問)

土曜日のタウンミーティングでも大臣の方にご見解を伺ったのですが、総務省が2003年に設立を目指しております郵政公社への検査を長官としてはどうお考えになっていらっしゃるのかということと、その他にも政府系の金融機関はいろいろあるのですけれども、この辺に対する金融検査を誰が担当するかというご見解も併せて伺えたらと思います。

答)

今度、郵政3事業がそれぞれ公社化、郵政公社の中で3事業が運営される、その中で金融に絡まるところと言えば今申しました郵貯事業と簡保事業ということになろうかと思います。これまでの郵便局と言いましょうか、郵貯事業でものを申しますれば、これまでは大蔵省の資金運用部に資産サイドのお金は預けられて運用されていたわけでございますので、言わば国の運用ということでございますので、それに対して検査とかそういうことは起こらないわけでございますね。

それに対して、今度公社化されるということになりますと、その郵貯事業の資産サイドというのは、当然自主運用という世界になるわけでございまして、その自主運用ということになるとALM(asset liability management)等を自ら運用して行くと。もちろん預金者にとって何か不安があるというわけではございません。仮に穴が空くならば、それは国が補填するわけですから。ただ金融機関として健全な業務がされているかどうかという点については、そういう資産運用についてもチェックする必要が出て来ることはその通りかと思います。

しかし、そのチェックをどこがするかという今のご質問のポイントはそこにあろうかと思うのですけれども、金融庁が果たして貢献出来るかということになりますと、金融庁は民間金融機関の財務の健全性という観点から、当然民間金融機関のALMも検査の際に十分チェックしている、それを通じていろいろノウハウが検査局にはあるわけでございますので、そういう面で検査局を活用する余地はあろうかと思います。ただ、その場合には組織面、あるいは法令面での体制の整備は当然必要なわけでございます。ただ、そういう可能性は私はあると思うのですけれども、では実際にどこが検査するかということになるならば、何も金融庁の検査局だけが唯一の選択肢でもないだろうと思うので、その辺は小泉総理の私的懇話会なり、あるいは総務省の公社化研究会の議論の推移というものをこれからも慎重に見守って行きたいというふうに思っております。

問)

あさひ銀行の件で監視委員会がヒアリングしている会社というのは、何社あるのでしょうか。

答)

それはちょっとコメントを差し控えさせていただきます。

問)

外資系ですか、国内ですか。

答)

それもコメントを差し控えさせていただきます。

問)

風説を流していたと言われている期間というのは、いつからいつまでなんですか。

答)

それも私は確たることでいつからとは聞いておりません。ただ、先週末辺りからいろいろな話が耳に入っては来ております。

問)

朝銀信用組合の件なのですけれども、先週、9つの朝銀信組で必要性の認定があったと思うのですが、この要件というのは信用秩序維持に重大な支障が生じるおそれがある時だと思うのですが、この認定作業においてどのようなことが論点になったか、顧問会議等でも取り上げられたのか、どういう話し合いがあったか、差し支えない範囲で教えてください。

答)

質問の点につきましては2段階ございまして、適格性の認定という段階と、ペイオフコスト超の資金援助が必要かどうかということを決める必要性の認定という2段階があるわけでございます。御承知のように必要性の認定の方は、もちろんそういう必要性の認定を当方が致しますけれども、実際の必要額というのは預金保険機構の運営委員会で決められることでございます。言わばそちらに任されているところでございます。

今、御質問になられたポイントというのは、むしろ適格性の認定、破綻した9朝銀の受け皿として3朝銀が引き継いだ、事業譲渡を受けるという意味におきまして受け皿となって引き継いだわけでございますけれども、その適格性の認定につきましては顧問会議で十分議論を致しました。

まず、議論のポイントとなりますのは、二次破綻というものが果たして起こり得るのかどうかということがポイントかと思います。預金者全額保護の時代でございますので、いずれにしてもロス額は埋めなければいけないわけですけれども、ただ、受け皿である3信組がそのロス額を、つまり特別資金援助というものを受けた上で、その9朝銀を受け取るのが適当かどうかという適格性の認定、これについて議論した結果、十分この3朝銀は自らも増資もした上でそういう破綻した9朝銀の健全資産だけを引き取ってやっていけるという適格性の認定を顧問会議で御了承頂きまして、適格性の認定を行ったということでございます。

問)

朝銀東京なのですけれども、これはまだ受け皿も何もないので適格性も必要性も認定がまだだと思うのですが、この信用組合を巡りまして我々の取材でですね、朝鮮総連が、朝鮮総連幹部の名の下で26億円を借りていて、それが不良債権化していること等が分かりました。この問題を巡っては国会で一昨年頃から様々な問題が指摘されておりまして、理事長、総連が示していたのではないかと、実質支店扱いではないかとかですね、遠く離れた土地を担保にその事業外に融資していたのではないかとか、そういうような指摘が様々ありまして、何か計画性があるのではないかというような指摘だったのですけれども、こういう要件は認定作業とは関係ないと思うのですけれども、今後そういったことの話し合いとか、議論とかは金融庁内でされることになるのでしょうか。それともそういった点は考慮なしに公的資金が粛々と入って行くことになるのでしょうか。

答)

先程、9朝銀の時に言い損ねた面がございました。何を言いたかったかと申しますと、まず適格性の認定をする際には、受け皿が引き取って二次破綻をするかどうかという経済合理性の判断というものがもちろんがある、これは先程申しました通りなのですけれども、それと同時にですね、受け皿が受け取って、新しい信組として営業を開始した場合には金融整理管財人がいなくなってしまうわけですから。金融整理管財人の任務というのは大きく分けて三つあるわけですよね。一つは適資産・不適資産の振り分けという任務、二つ目はその適資産を受け取る受け皿探し、三番目が旧経営陣の責任追及です。この3つが金融整理管財人に課された大きな任務なわけです。従いまして適格性の認定を金融整理管財人から当方にしてくるわけですけれども、その際には、責任追及ということを果たしたかどうか、そこは大いに議論になります。もちろん、ここでこれ以上は責任追及すべき点がないというわけではないので、時間的制限、証拠力の強さ、いろいろな面がありますので。御承知のように、受け皿が受け取った後も、旧経営陣に対する提訴権というものは預金保険機構が価格ゼロで不良債権と共に引き取ると、こういうことになっております。

以上の前提を置いた上でただ今の御質問に答えさせて頂きますと、朝銀東京につきましては御承知のように告発がされ、強制捜査が入っている段階でございますので、今、御質問になられた記者の方の個々のことについてはコメントは差し控えさせて頂きますけれども、今後、当方としては十分その責任追及という観点からのいろいろなことは、当然注意深く見守っていくことになろうかと思います。

問)

全国的に信用組合の経営破綻が相次いでいるのですけれども、一連の動きに関連致しまして、現時点での経営状況についてどう見ておられるのか、また公的資金を活用しての資本増強への道が残されているわけですけれども、これについての可能性はあるのか、見通しをお聞かせください。

答)

御承知のように一昨年の暮れ、本来のペイオフ解禁の時期である2001年4月というのを1年延長するかどうかという議論の際に、御承知の通り信組につきましては国に監督権・検査権が移行してから、十分な検査もしていないのにペイオフを解禁するのはいかがなものかということもございまして、ペイオフ解禁が1年遅れることとなったわけでございます。そうした中で2000年7月からの昨事務年度の1年をかけて全部の信用組合につきまして、金融検査マニュアルに基づく検査を行いまして、その結果も全て通知してございます。その中には残念ながら、過少資本に陥っているところもございますし、ございました。

そうした中で、特に二つあるわけでございますね。一つは不良債権の処理が十分でなく、要追加引当が多額に上ると、まあ二つあるというのは、自己資本比率を毀損させる要因が私は大きく言って二つあったと思うんですね。一つは不良債権処理が十分でなかったところを指摘されて、要追加引当が大きかったということ、もう一つは時価会計の導入でございます。どうしても中小の信用組合は預貸率が低いわけでございまして、資産運用をせざるを得ない、そうした中での時価会計ということで損を大きく抱えたところが出てきていると、この二つの要素が自己資本毀損のポイントかと思います。

そうした中で、現在どういうふうになっているかというのをこの機会に数字的に申し上げますと、一つは協同組織金融機関ということで、信金にも御関心がおありかと思って両方申し上げますけれども、金融再生法施行時というのは平成10年10月23日です。それ以降ということで申し上げますと、まず信用金庫は、金融再生法施行時に400金庫ございました。それがその後の破綻公表によりまして15金庫減りました、10年度はゼロ、平成11年度は10金庫、12年度は2金庫です。13年度は3金庫、合計15金庫でございます。

一方においては合併によって減少しております、統合によって体質を強化したと。合併による減少が22金庫でございます。従って37金庫減ったわけでございますが、そうすると現在は363金庫です。ただし、現在は今の金庫の数は366金庫でございまして、破綻公表済でまだどこかと統合していないところが3つございます。ですから363金庫なのですけれども、破綻はしましたけれども、まだ金融整理管財人が運営している金庫が3つあるということでございます。ですから今は366金庫と言った方が正確かと思います。

次に信用組合です。平成10年10月23日現在の信用組合数は342組合でございました。信金の場合はその時の破綻公表済金庫数はゼロでございましたけれども、信組の場合はその時の破綻公表済組合数が既に10年10月23日現在で29組合ございました。その後の成り行きを申しますと、その後、平成10年度破綻公表数は1組合です。11年度29組合、12年度12組合、13年度18組合です。合併による減少は、10年度はゼロ、11年度は16組合、12年度は5組合、13年度は1組合。その結果、破綻公表数の合計は60組合、合併による減少は22組合です。その結果、現在の組合数は274組合、うち破綻公表数は43組合ということになっております。

今の御質問に答える際にやはり問題になるのは11月12日、今日現在、破綻公表済組合数43組合。この43組合がどういう成り行きになるのかということと、それからそれ以外の組合はもう完璧なのかということなのだろうと思いますけれども、確かに破綻公表済の所は今、金融整理管財人が一生懸命相手を探している、あるいはもうすでに探したというところでございますね。それで残った231組合の中にはまだ過少資本になっているところが正直言ってございます。そういう所は基本的には増資ができるかどうかということを今、懸命にやっているところかと思います。そういう状況を我々は見守っているということでございます。以上です。

問)

今日時点での特別検査の進捗状況についてですが、いかがでしょうか。

答)

聞いてません。検査局に任せてまして、まだ検査局からは報告はございません。

(以上)

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