英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年11月26日(月)17時30分~18時05分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

先週、大成火災が会社更生法の申請をされましたが、それについて、改めて長官の方からお話を伺えますでしょうか。

答)

朝に会社更生法に基づく申請を大成火災が行ったことに引き続きまして大臣に会見していただきまして、その際大臣も仰られたことと思いますけれども、今回の件は、言わば予想外の中のさらに予想外のことが起こったことに伴う破綻であるというふうに仰っておられたかと思います。私といたしましても、そういう感じを持っているわけでございますけれども、一方において、確かに9月11日に起こったことというのは極めて予想外のことだったわけですけれども、保険会社としてはまさに保険というのはそういうリスクもカバーするのが保険の役割でございますので、事前にそういうリスクもきちんと織り込めないものか、そういう点を含めて今後に検討課題を残したケースだと思っております。

従いまして、今後はこうした事態も起こり得ることも念頭に置きつつ、当然、注意深く監督して行くというか、監督を強化して行かなければいけないというふうに思っているわけでございまして、再保険について、単に年間の収支がプラスなら良いというわけではなくて、もっと根っこからのリスクというものを頭に置いた保険会社の経営というものをしていただきたいと思いますし、当方もそういう目で監督をして行かなければいけないということで、そういう意味で教訓を残したものだと思っております。具体的には今回のような事態が発生したことを踏まえまして、各損保会社の再保険取引の実態について調査を行いまして、各損保会社のリスク管理について再度徹底した管理を促して行きたいというふうに思っております。

問)

大手銀行の中間決算が今日出揃いましたが、不良債権の処理額の積み増しや人員削減の計画などが出されていますけれども、監督当局としてこれをどう見ているのかということと、あと銀行にとっての今後の課題について長官としてどんなふうにお考えかをお聞かせください。

答)

一言で言って、各銀行とも非常に厳しい見通しに立った業績予想修正、すみません、今のご質問が通期で質問をしていられるとするならば、極めて厳しい業績予想修正を立てたというふうに認識しております。

皆さんもう、個々の銀行のことは各銀行の会見で皆様お聞きになった通りかと思いますけれども、我々は15行全体で見てものを申し上げさせていただくと、大体業務純益がこの9月決算で2.2兆円、不良債権処分損が約2兆円、すなわち大体不良債権処分損を業務純益で消している。それでいながら、経常損益が約1兆円の損が出ているわけでございますけれども、これはちょうど株式等関係損益、つまり売却損益と強制評価損、いわゆる償却ですね、これを加えたところが丁度1兆円でございますので、経常の損は丁度株の損、損と申しますのは1万2,999円70銭から9,774円に変わったことに伴う含み損の分はこれはPLに反映いたしませんからちょっと別にいたしまして、強制評価損それから売買益、それを丁度消し合ったのが1兆円でございますので、丁度経常損益と一致しているなあというふうに見ております。

その結果、当期利益で見た場合のこの9月期の15行計の当期利益を見ますと、マイナス6,500億円くらい、これは丁度1兆円の経常損の約65%なんですけれども、これはまあ基本的に税効果といいますか、6割がヒットするということで5%くらいの違いは特別損益等で説明出来る、まあこんなような感じかと思うのですね。それで、以上が中間期の15行計のアグリゲートベースのものの見方です。

これを通期で見ますと、15行、実際には日本信託が10月1日から消えますので14行になるかもしれませんけれども、今年の4月1日から見ますと15行ということですけれども、約3.8兆円の業務純益が出ております。それに対して不良債権処分損と言いますか、処理額は約5.7兆円。これは皆さんちょっと不思議に思われるかもしれませんけれども、2.2兆円前期に稼ぎながら、通期で見ると3.8兆円はちょっと小さいではないかというふうに思われると思いますけれども、ここは実はこの対象になっている銀行の中には合併するところがございます。

従って、つまり合併直前の業務純益というのは合併の時に消えてしまいますので、ちょっと技術的なことを申しますと、3.8兆円というのは4月1日ベースで15行あるという前提でものを考えた場合はちょっと小さく出てしまうと、合併によってということを頭に置いていただくとともに、不良債権処理額の5.7兆円と先程言いましたものもこれも過小でして、合併する時はそこの時点での不良債権処分損は合併差益で消されますので、そういう面では5.7兆円でなくて裕に6兆円は私は超えるのではないかと思います。

そういう点から言って、上半期2兆円の不良債権処分損、そうしますと後半は4兆円を超える処分損、これは非常に通期の見通しとして、これはあくまで見通しですけれども、相当各行とも厳しい見方の下で厳しい不良債権処分損を見込んでいるということを意味しているわけでございまして、そういう面から各銀行、これから特別検査の結果として出て来るものもあるだろうということも念頭に置きながら、厳しい見込みをしている、保守的な見込みをしているということが言えるのではないかと思います。

後半のご質問で金融庁として何を望んでいるかということでございますけれども、これは各行とも人員削減計画の積み増し等、いろいろなリストラ策を既に発表していると思います。やはりこれから厳しい時代を乗り越えていくポイントは業務純益をどう増やして行くかでございますから、我々もそこの収益力の向上ということで、そういうリストラの努力をぎりぎりまで、乾き切ったタオルをさらに乾かすくらいやって行っていただきたいと思うと同時に、それはもう各銀行とも承知の上でそういう計画を立てていると思いますけれども。それに加えまして、やはり貸出についての収益力向上、リスクに見合った金利というものを取る努力というものを、やはり各行とも今後して行く、それが収益力向上に繋がって行く、そういうことも期待したいと思っております。

問)

同じ決算の関係なんですが、剰余金枯渇などのために法定準備金を取り崩すという動きも出ているようなんですけれども、それを長官としてどのようにご覧になっているのかということと、3月期の優先株に対する配当政策と併せて、改めてお聞かせください。

答)

法定準備金取り崩しの意図を表明されたところが2行あるというふうに認識しております。ただその2行も既に皆様方に仰っていると思いますけれども、やはり基本的には2つのリスクに対応するためだと、1つは株の変動リスク、今年から時価会計導入でございますので、当然来年3月の株価というのは予想し得ないものでございますので、そういう株価変動リスクに対するバッファーとして剰余金を豊かにして行こうという点が第1点。

第2点は、何と言っても銀行の信用力確保のためには万全の不良債権の処理をしなければいけない、そういう面で剰余金を気にして不良債権処分の手が緩むなんてことはあってはならない、そういう気持ちを経営者も持って行ってくださるものだと思っています。そういう意味でのリスクのバッファーもこれによってカバーしたいというふうに仰っておられると思っています。

そういう意味において、法律に基づく法定準備金の取り崩しというのは、まさに個々の銀行の経営判断の問題だというふうに思っております。なお、この2行につきまして国が公的資金注入に際して引き受けた優先株についての配当はお払いになるという意図は変わりないというふうに認識しております。

問)

本日、福岡シティ銀行などの第二地銀3行に公的資金の注入を承認されましたですけれども、金融当局としての評価と言いますか、公的資金に対しては非常に世間の目も厳しくなって来ておりまして、経営陣への注文等もあるかと思うのですけれども、さらにはペイオフを控えての地域金融機関の再編についてどういうふうにお考えなのかをお聞かせください。

答)

今日の3行はご承知のように早期健全化法に基づきまして、銀行についてはございますけれども、今年の3月末まで申請があれば資本注入を検討するということの法律の規定から、3月の末頃に申請して来た3行であると思います。この3行につきまして、それから今日まで顧問会議も何回か開きまして、またその前にこの3行についての経営健全化計画を練りに練ってと言うか、練らしてと言いますか、本当に資本注入をしても大丈夫な銀行になるような経営健全化計画を作らせた上で、顧問会議にも何回か懸けた上で、本日、承認という運びになったわけでございます。

それぞれの銀行についてやや意味合いが違うのかなと思いますけれども、福岡シティにつきましては、何と言っても長崎を子銀行にした上、そのうち吸収合併するということを言っているわけですけれども、長崎を抱えた上でどう健全化して行くのかという点を十分に見させていただきましたし、九州銀行につきましては、来年4月1日から親和銀行と持株会社を作る、そうなれば国の資本注入というのは、この九州親和グループへの注入ということになりますので、当然親和銀行の方も、将来の経営健全化計画について合意しているということをきちっと確認した上で承認したわけでございます。

また、和歌山銀行につきましては、単独での資本注入ということになりましたけれども、その経営健全化計画の策定の過程においては十分な深堀りをした上で、あえて言えばV字型回復、どこもそうでございますけれども、来年の3月末においては、むしろ出せる膿は全部出して、配当原資はない、従って転換権付き永久劣後債という形で増強しますけれども、そのあとはV字型回復をして、配当原資を確保出来るという計画に金融庁と先方とが双方努力してそこまで持って行ったというふうに思っております。とりあえず以上でよろしいございましょうか。

問)

地銀の再編についてはいかがでしょうか。

答)

これは、関東でもご承知のように業務提携の発表をしたところもございますし、再編出来るところはその他にもいろいろ模索しているところが有るやにも聞いておりますし、こういう厳しい、来年4月1日からペイオフ解禁を控えて、再編というものも視野に入れた信頼のおける地銀になって行くよう、各行とも努力していると思いますし、それを期待したいというふうに思っております。

問)

中間決算の件で見通しも含めてですけれども、大体90年代は、こういう不良債権処理の抜本的な発表をしたら、各頭取は皆さん、これで完了したと大見栄を切られるのですが、今回そういうことはあまりなくて、長官の方もかなり厳しいお顔で今回のことをいろいろご説明されていますけれども、まだ不良債権問題というのはこれであく抜けしたと楽観するわけにはいかないという認識でしょうか。それともう一点ですが、フォローアップ検査や特別検査等を通じて、これまで金融庁に信認が落ちていたと言われている部分がありますが、これはもう回復されつつあるという認識でいらっしゃいますでしょうか。

答)

問題は、不良債権問題というものと銀行の安定度というのは、一つ要素が違うんですね。銀行の安定度という時は、やはり時価会計導入後はどうしても株価変動リスクにさらされているわけでございますので、そういう意味での各銀行とも備えというのは、それぞれやっておられると思います。

不良債権の問題について言えば、それは相当程度厳しい予想に立っての今回の決算予想、つまり業績予想修正をなさっているわけでございまして、ただそれで不良債権問題が片づいたと言えるかというと、これはなかなか不良債権問題というのは過去のものを単にどれだけ処理していくかというだけではなくて、新規に降ってくるものもあるわけでございまして、そういう意味におきましては足元の景況との関係というのはどうしてもあるわけでございますね。

ただ、我々としては今後3年間を集中調整期間と考えて、かつまた遷移確率におきましても上方に行く確率は一切無視して、担保不動産も10%ずつ下がるという厳しい見方をした上で、3年経てば不良債権問題というものが今のような問題ではなく正常化するであろうと、その予想の範囲には私は今回の業績予想修正も入っていると、そういう面では金融庁の見方というものを変える必要はない、むしろ銀行界というのは戦艦大和のようなとてつもない、やはり大きなものだと思いますけれども、やっと我々の望んでいた舵取りによって銀行界全体が不良債権問題について方向転換してき始めたなあというふうな感じで私自身はおります。

問)

今、長官は方向転換と仰ったのですが、特別検査の影響という意味合いで、9月ぐらいに各大手銀行が考えていた通期の予想とは今回出てきた通期予想とは随分様変わりで厳しくなっている思うのですが、特別検査の実際の影響はまだだとはいえ、特別検査をするといったことのインパクト、そしてそれが今回の中間決算に与えた影響について現時点での長官のご感想をお聞かせください。

答)

今度の中間決算、すなわち不良債権処分損でいえば約2兆円でございますか、これにどの程度アナウンスメント効果といいますか、特別検査のアナウンスメント効果が含まれているのか、そこら辺はまだヒアリングも終わっておりませんし、何とも言えない。ただ私は、一部は中間決算に反映されるかもしれないようなことをちょっと会見で申したかもしれませんけれども、まあ多少のアナウンスメント効果は、その時点で、つまり中間決算をとりまとめる時点でもう一度各銀行はその時点における市場のシグナル等を見ながら自己査定をもう一度深く考えてした部分は、それはないとも言えないと思いますけれども、多くは仰る通り来年の3月に反映されると思います。

そういう面で今回の、あえて言えば上半期2兆円の不良債権処分損に対して、下半期はその2倍以上になるという予想を立てたというのは、やはり具体的な三者協議というのはこれから進んでいくわけでございますけれども、どういう結果にも耐えられなければいけないという銀行の意思がそこに反映されているのかなあというふうに思っております。

ちょっと余計なことを申しますけれども結果としては、これはあくまで各債務者ごとに割り振った不良債権処分損ではないわけですね。来年の3月にどれぐらいになるだろうという大掴みの予想を各銀行はしているわけですね。結果として、この不良債権処分損、つまりちょっと合併差益で消す部分があるのであれでございますけれども、今の会計で言えば5.7兆円というものが将来どうなるかと、そこはまだ分からないところでございますね。

問)

大和都市管財の件についてですが、去年の秋の検査とその後の登録審査を巡って一部の、坂井議員だとか三塚議員だとか、実際は坂井議員なのですけれども、ちょっと不適切かと思われるアプローチをしてきたんですが、前回の検査は平成9年の検査とその後の登録の更新の審査に当たって、そのお二人以外の人物も含めて不適切か適切かはともかく、問い合わせなりアプローチをしてきた政治家がいるのかどうか、それを調査したことがあるのかどうかお尋ねします。

答)

今回、新聞紙上でああいう、つまり近畿財務局幹部に電話したとかどうかというようなことが新聞に載りまして、ご承知の通り副大臣をトップに、あえて言えば私も含めまして調査チームをすぐに組みまして、いろいろ関係部局に、その時々の近畿財務局の幹部にいた方々からいろんなヒアリングをいたしまして、その結果については先般、副大臣から国会答弁という形で申し上げさせていただいた通りでございます。ただ、何分にも受けた方々が何も圧力を加えられたという意識はございませんし、一つ一つ電話の応対についてメモをとっているわけでもございませんので、記憶というものが確実ではない。従って、外にこのヒアリング結果を出さないということを前提に我々はヒアリングをしたものでございますので、そういうことで公表は差し控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、アクセスされてきた政治家が1名であったか複数であったかも含めて村田副大臣がご答弁なされた通りでございます。とともに、私が聞いている限りでは、何か個々具体的なことを聞いてきたとか、あるいは陳情かあったとか、そういうふうには聞いておりませんで、登録更新にまだ時間がかかるのかとか、そういう一般的な問い合わせだったというふうに認識しております。

問)

ちょっと質問の仕方にメリハリがなかったと思うのですけれども、前回の検査は平成9年の時の検査、それからその後の登録を継続するかしないかの審査の際に当たって何かあったのかというのを当時の関係者に調査したことがあるのかどうかということですが。

答)

それも含めてです。平成9年も含めて関係者に聞いております。何も12年だけの話ではございません。

問)

この間、副大臣が答弁されたのは、9年と12年の両方を合わせてということでしょうか。

答)

そういうふうに私は認識しております。我々の調査もそうでございました。

問)

内容的に9年もあったのかどうなのかというのが、答弁の中でよく分かりにくかったんですけれども、その辺はいかがなのでしょうか。

答)

ちょっと突然の質問なものですから、私ちょっと…9年と12年、まあヒアリングした対象は9年もあることは確かですけれども、そこの区別がどういうふうになっているのか、ちょっと資料を持ち合わせてございませんので今日のところは答弁を差し控えさせていただきます。

問)

先程の中間決算のことでもう一つお伺いしたいのですが、いわゆる債務者区分の変更以外に要注意先及び要管理先への引当について、まあ今回の中間決算で一部の大手銀行はいろいろ知恵を巡らせていると思うのですが、秋口以降の、いわゆる要注意先債権への引当問題について、今回の中間決算での銀行の対応というのは一つの答えとして長官はどのように評価されていらっしゃいますでしょうか。

答)

我々は二つのことを各銀行に要請しておりますね。つまり要注意先については、要管理と一般要注意を分けるのは当然のことであって、それ以外にグルーピングの細分化を図って欲しいと。そして貸倒実績率を弾くにしても、そこからまた予想損失率を出すにしろ、もう少し厳密化して欲しいということを言っております。それに呼応して一定の業種を一括りにしたようなところもあるやに聞いておりますし、いろんな動きが出てきていると、これは非常に好ましいことだと私は思っております。

もう一つは趨勢ですね。すなわち、貸倒実績率から予想損失率を弾くに当たっての直近における趨勢を重んじるという動きもあると認識しております。

こと、この二つが相俟って、一般要注意の引当率も厚くなっていると思いますし、また要管理につきましても、より保守的な引当がなされているものだと認識しております。

問)

銀行の大手行の業務純益というのは相当な水準だと思うのですけれども、この点について、まだまだここは引き上げることが可能なのかどうか、長官のご見解をお願いいたします。

答)

私は、どこを例にとるかですけれども、アメリカのROEなりROAと比べますと、まだまだ日本のROEやROAは低いわけでございまして、私はやはり銀行というものは公益性を持った金融仲介機能を果たして行く上で、もうちょっと収益力の向上の余地というのは、いつまでもリストラといってもリストラには限界がございますので、それ以外の収益力向上策というのはあってしかるべきだと思いますし、これから各銀行等も模索していくものだと思っております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る