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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年12月3日(月)17時33分~18時00分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

エンロンの経営破綻の邦銀への影響で、今日の国会でも少し出ていたようですけれども、主要行のエンロンないしはそのエンロン・グループ関連の融資残高といった与信の状況、あるいはその有価証券保有残高、オフバランス取引等、どれくらいの規模なのか、当局として実態を把握しているのかどうかを含めてお願いします。

答)

こういうエンロン事件が起きまして、また日曜日でしたか、チャプター11(イレブン)の過程に入ったという状況を踏まえまして、当方としては、早急に大手14行からエンロン及びエンロン・グループへの総与信額ということで、とりあえずの報告を徴求いたしました。とりあえずでございますので、まだいろいろ調査中の部分もございまして、必ずしも正確というわけではない、そういう留保を付けて申し上げさせていただきたいと思うのですけれども、14行の中ではエンロン・グループに対して総与信はゼロであると答えたところもございました。一方、そうでないところもございますけれども、国会でも答弁しました通り、概ね数十億円~百数十億円というオーダーでございますので、私は邦銀に対する影響という意味におきましては、極めて限定的なものだというふうに認識しております。

問)

電通の上場の最初の取引日に、外資系証券会社が売買注文の入力ミスをしたと報じられていますけれども、オペレーショナルリスクに対する管理体制の問題かと思いますけれども、金融庁としてどのような対応を考えていらっしゃるでしょうか。

答)

これはあえて言えば、とんでもないことが起こったわけでして、一般顧客からの売り注文、「61万円で16株」という売り注文を東証に発注する際に、「16円で61万株」と発注してしまったということでございます。それではやはりこれは、証券会社なり東証なりのシステムにそういうオペレーショナルリスクにきちっと対応したものが出来ていなかったかと言いますと、チェックしてみたところそうではないということが確認されました。

より具体的に申しますと、やや専門的なことでございますけれども、東証の株式売買システム端末には、一定の、このようなとんでもない間違いを防止出来るようなインフラが既に整備されています。即ち、一定数量以上の注文が発注された場合に、証券会社側が東証の端末に自ら最初にインプットしておくわけですけれども、これ以上の注文が出て来たら弾いてください、止めてくださいというのを、東証のシステムに初めからインプット出来ることになっておりました。

当該証券会社、このミスをした証券会社は、もちろん今回の電通株で言えば、売買単位は1株でございますけれども、売買単位の100倍まで、即ち100株ですね、100株以上の注文が出て来たら弾いてくださいというのを、その証券会社は入れておきました。ところが、この売り注文を受けたディーラーが「61万円で16株」というのを「16円で61万株」と勘違いで発注した、これがミスの第一です。それにも関わらず、61万株というのは100株よりも上ですから、当然アラームが鳴るわけです、赤信号が出るわけですが、それを無視してしまったと、こういう個人の二重ミスです。

これに対しては、私共ではなくて、本日東証に対しまして、とりあえず当該証券会社が、東京証券取引所の株式部長に弁明書を出しておりまして、そういうディーラー個人が、いわばとんでもない間違いを二つ、一つ目の間違いは勘違いで入力したということ、二つ目の間違いはアラームが鳴っているのに無視してしまったということを申し出ております。

金融庁としてはこれをどう考えるかということでございますけれども、金融庁としてはこれはとりあえず、今日起こったことを把握しただけでございまして、まあこの通りなんだろうと思いますけれども、当該証券会社から、早速事情を聞き、果たしてそれが当方の法令等に照らしてどうすべきかということを適切に対応して行きたいというふうに考えております。

問)

信金・信組ですけれども、毎週末破綻が相次いでいます。中には3月末には8%近い自己資本比率だったようなところもあるようです。

ペイオフ解禁によって自己責任が問われるようになりますけれども、預金者に開示情報だけで健全な金融機関を選べというのは難しいのではないか、主要行と同様に自己資本比率というのが基本的には健全性を示すということだと思いますけれども、それだけでは分からないということですね。

例えば、非上場金融機関に対しても早期是正措置発動の事実を開示するなど、要するに預金者が選別出来るような情報開示の体制というのを整えてはどうかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

答)

大変難しい質問だと思います。確かに3月末で8%近い自己資本比率があっても、基本的にはそもそも総資産が小さければ、例えば100億円くらいでございましたら、4%減るのに4億円を有価証券で穴を出すと、あっという間に4%になるわけですね。従って、そういう規模の小ささ自体が一つのリスクになるというふうにも、こういう実例を眺めてみますとそういうふうにも感じます。それだけに、ALMと言うのでしょうか、小さい金融機関ほどアセット・ライアビリティ・マネージメントというのは、余程しっかりして行かなければいけない。特に資金規模も小さくてかつ預貸率が低いところでは、貸し出していない資産をどう運用するのかというのは、余程気を付けてやって行かなければいけないという教訓を残しているのではないかと思います。

そうした認識に立ちまして、今ご質問になった記者の方にお答えいたしますと、信金・信組についてもご承知の通り「業務や財産に関する説明書類は開示するように」と、中小企業等協同組合法に書いてございます。そしてそれに従って、言わばディスクロージャー誌という形で、信金・信組も営業所に備え置いて公衆の縦覧に付しておりますですね。そういう意味におきまして、信金・信組といえども、一定の健全性の度合いを示すものはディスクローズしているわけでございます。

それでは今ご質問になられた記者の方の仰るように、非上場金融機関については早期是正措置発動の事実を開示したらどうだと、特にペイオフ解禁になった後には、そのようなものは積極的に開示すべきだというご意見を仰られたのだと思いますけれども、そういう側面から見れば確かに仰る方の主張の意義は良く分かるのですけれども、一方におきまして、預金者等にそういう早期是正措置、例えば4%が検査の結果3.8%になって、それを過小資本行として早期是正措置を打った場合ですね、預金者に不測の動揺を与えかねない。そこはいつも申しますけれども、風説の流布とかこういうものはいかにマスコミの責任が大きいと思うのですけれども、いかに国民に伝えるか、これは非常に難しいところがあると思うのですけれども。と申しますのも、信金や信組のように、お互いに助け合っているような関係の金融機関ですと、4%が3.8%になっても、増資してまた健全行に戻る可能性は合理的に期待出来るわけですね。そういう時に、「ここの協同組織金融機関に対して早期是正措置が打たれた、もうだめだ」というようなことになると、果たしてどうなのかといった懸念があるわけでございます。

そういうことで、現在のところ、金融庁のスタンスとしては、銀行法第56条等によって官報告示が義務付けられている、業務の全部又は一部の停止命令といった事態にまで至らない限りにおいては、原則としてこれまでも非公表としてきましたし、今後とも当局による公表については慎重な取扱いが必要なのではないかという考え方に、現在のところ立っております。

問)

特別検査の進捗状況についてお願いします。

答)

これは毎度の質問で、お聞きになっている記者の方もお答えを承知している上でお聞きになっているかと思うのですけれども、10月29日に予告、まあこの予告という言葉があまり正確ではない、むしろ検査の通告と言うべきものだと思うのですけれども、ちょっと歴史的なある経緯があって予告という言葉を付けてしまったものですから、予告になっているわけですけれども、検査はここをもって開始する。

しかし当然のことながら、いろいろ準備資料を取り寄せたりとか、そういうことがございますので、立ち入り検査ということになりますともっと遅い段階になるわけでございますね。

まあいずれにいたしましても、これは検査局が作りました一定の客観的基準に基づきまして、対象の債務者企業を選定して、その主としてメインバンクに検査に入るということをやっているわけでございまして、極めて風評リスクにさらされるおそれがある検査でございますので、その進捗状況を含めましてコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

大手銀行の中間決算が出揃いましたが、一部の銀行が法定準備金に手を付けて剰余金に振り替えるということを打ち出していますが、それが私から見るとかなり無理な対応をされているなと思えるんですね。株主に対しての優先株の配当も2年なり3年なり棚上げすると、その間に内部留保を固めて早く経営を健全化して欲しいというような対応というのは考えられないのでしょうか。

答)

そういう対応ももちろん考えられると思いますけれども、基本的に配当政策をどうするか等につきましては経営判断の問題でございまして、もちろん我が方としてはそれによって健全性が損なわれては困りますけれども、健全性を損なわない範囲において、法律の許す範囲において、法定準備金をどう取り崩すか、基本的に私は経営判断の問題だと思っております。ただし、当然当局としては監督責任がございますので、それによって当該銀行の健全性が損なわれるのかどうかというのは見ていきたいというふうに思っております。

問)

公的資金の配当も当然見送るというか、そういうことをしないのでしょうか。

答)

それは基本的には銀行側がそういう経営判断をした上で、その結果として優先株に配当できないということになった場合には、我々としてはそれを甘受せざるを得ない、つまり銀行側の方がそこまでしないとなかなかV字型回復ができないと言っている時に、「いや、配当は絶対くれなければ困るよ。」と、「何かどこか手心加えてでも配当を出せ。」と、そんなようなことは我々は絶対に申しません。

銀行の健全性というものを最初に考えて、その結果として「公的資本注入に対する配当も払えなくなりました。申し訳ありません。」と言ってきた場合には、我々はそれをチェックして、その銀行のV字型回復のためにはそれがベストの策であるかどうかというのをもう一度我々も検証して、それが止むを得ないのなら止むを得ないということではないかと思います。

つまり逆に言えば、公的優先株の配当をどうするかが先にありきではないということでございます。

問)

MMFなんですけれども、個人の金融資産を証券市場に取り込むためには有効なものだというような趣旨の御発言を、今日の予算委員会でもされておりましたけれども、やはりそもそもこれはリスクのあるものだというふうに認識してもらった方がむしろ自然ではないかと思うのですが、アセットマネジメントの会社のリスク管理が、もうちょっと何とかならないかとか、そういうことをやったからと言ってリスクはゼロにはならないような気がするのですけれども、それはどのように考えたら宜しいのでしょうか。

答)

仰るとおりです。全くあなたと同じ考えです。私が申し上げているのは、直接金融市場の世界でございますので、どんな商品にもリスクはあります。元本保証のものなんかはないのではないでしょうか。そういう面ではリスクはあります。

ただMMFというのは、そういう直接金融市場の中でもリターンが、いわば最低なわけですね、0.2とか。その程度の商品でございますから、当然ローリターンであればローリスクでなければいけないわけで、それが果たしてローリスクになるようなリスク管理をしているのかどうかということを私は問うているわけでございます。

従ってMMFを運用するアセットマネジメント会社については、そういう面でのリスク管理というものを、より徹底して頂きたい。そういう面から投信協会に問題を投げかけ、考えてもらいたいというふうに思っているということを国会で答弁させて頂いたわけです。

問)

損保の話なのですが、例の海外の再保険取引で巨額の損失が出た件ですけれども、これは金融庁としていろいろ調査を始められていると思うのですが、現在ではどういうことを把握されているのでしょうか。

答)

いや、まだ調査結果については、調査を始めたか、始めたばかりくらいのところでございますので、まだそこは結果というところまでは行っておりません。ただ国会でも答弁させて頂きました通り、これまで再保険部門というのは、その年度年度の収支、つまり再保険を受ければ当然保険料が入ってきます。通常はそれをまた再再保険で出再しますね。受再と出再との差が利益として出てくるわけですね。そういう再保険会社に出資している日本の保険会社を検査する際には、そういう目で再保険部門というのを見ているわけです。そうしますと9月11日のようなことが起こらない限りは年間年間、黒字がどんどん出てきている。そういうことをもって保険会社も良しとし、検査につきましては正直言ってもちろんそれだけ見ているわけではなくて、元々どれだけの確率でどれだけのことが起これば、最悪いくらまで払わなければいけないかというようなことは、当然保険会社は最悪のケースを考える。つまりキャッピングというのが通常の契約にあるはずなんです。そのキャッピングがどれくらいかというのを見た上で、その当該保険会社の資産規模に照らして妥当であるかどうか、これは当方の検査の際も見ているわけですけれども、そこへの見方が力の入れ方が少し足りなかったかなあ、ということを我々は反省しておりまして、今度のいろいろな調査においてもその辺について日本の各保険会社が再保険会社に出再して、再保険という事業をやっているとするならば、ではその最大リスクはどうで、それが当該保険会社の資産規模から言って適当であるかどうかと、そのようなところも見てみたいということでいろいろやっているわけでございます。

問)

普通だったら純引受額だけで今度はリミットが設けてあったわけですけれども、やはりグロス・アマウントの所のリミットというのは当然あってしかるべきだと。それを、まあ契約書に書いてあったのですけれども、それを見逃すというのはそういう形でもいいという判断だったのではないですか。

答)

正直申しまして、平成7年に当該会社に検査に入っております。その際に、このリスクについては指摘しております、敢えて言えば。これはもう破綻した金融機関の検査ですからあえて申し上げます、リスクを指摘しております。それにもかかわらず、きちっとした是正がされていなかったというのは遺憾とするところでございます。

問)

それと、飛行機が一機落ちれば数十億円の被害が出るという契約はまだ続いている形になっているのですが、解約条項だと6カ月前の通知だということで、そういう保険会社が上場企業なんですけれども、まだそのままの形で営業はしていてもいいと思うのですけれども、存在していて、株価が落ち込んでいると、こういう状況は極めて不安定だと思うのですけれども、その辺は監督等でどうかされるという御予定はないのでしょうか。

答)

仰られている意味というのは当該代理店というか、フォートレス・リー社と契約を結んでいても大成火災は破綻致しましたけれども、残ったところということを仰られているのかとも思いますけれども、契約条項にキャッピングがないのかどうか、私自身ちょっとそこは、確認しておりません。

ただ、極めてこれも後から皆さんの新聞報道等で知ったわけですけれども、先程申しましたように、再保険会社としてもリスクをミニマイズしなければいけないわけで、受再をしたら必ず出再もしなければならないわけですね。その出再が本当の意味での出再になっていなくて、いわゆる貸し借りみたいな関係になってしまっていると、もしそうであるならば、リスク分散に本来なっていないわけですね。そういうところに大きな問題があったのではないかなあというふうに思っております。

ただ、今御質問になった方にまともに答える答えではないので、ある程度まで6カ月なら6カ月までについて、また同じようなリスクがある、それでいて上場していて大丈夫かと仰るのは、そういうリスクという観点からそうかと思いますけれども、当該会社の規模、健全度から見て、我が方からすれば当面問題はないということでございます。

問)

一点確認ですけれども、与信額の合計は1,000億円程度ということで宜しいのでしょうか。

答)

これもですね、確かに国会ではそのようにお答え致しました。ただ何度も申しましたが時間がない中での、敢えて言えば先方も調査中の中でのとり敢えずの聴き取りでございますので、あくまでもそういう暫定値という御理解でお願いしたいと思います。もし正確にやっていきますと、一千億円を少し超えること、超えてもそんなに超えないと思いますけれども、ほんのちょっとでも超えていた時に、「また森長官が違った数字を。」と言われましても、ちょっと私も自信がないものですから、慎重になってしまうわけですけれども、とり敢えずのそういう数字ですので、今の所そんな厳密な数字の集計というものはございません。そういうことでご勘弁願いたいと思います。

問)

確認なのですが、先程の再保険の損保会社の調査はもう既に着手されているのか、それともこれからですか。

答)

調査ということですから、いろいろですね、向こうと連絡を取り始めたという意味ではもう取り始めていると思いますけれども、ただ、どこから調査…つまり、「正確にそこを調べておいて下さい、準備して今度来て下さい。」と言った時に、来てくれた時が調査の開始なのか、調べて下さいというのが調査の開始かという、そういう問題だと思います。いずれにしても問題は投げかけております。

(以上)

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