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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年12月10日(月)17時02分~17時31分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

今日開催の「中小企業金融の円滑化に関する意見交換会」ですけれども、金融庁からはどのようなことを要請し、金融機関側からはどのような発言があったのか、また、懇談ではどのようなやり取りがあったのか教えてください。

答)

正直申しますと、前回までは、あえて言えば、政府側の、いわば要請の部分だけ皆様に公開したのですけれども、私はやはり、それにリスポンドする民間側、その中には政府系金融機関も入るわけですけれども、どういうリスポンドをするかも皆様にディスクローズした方が良いと考えまして、今回からは、いわば双方を皆様方にディスクローズしたつもりでございます。

そんなことで、1時間ちょっとの会合のうちの50分くらいは皆様に公表しておりましたので、もう私が論評するまでもなく皆様は良くご承知だと思うのですけれども、まあ一言で言えば、我々からは中小企業を巡る金融情勢が非常に厳しい状況の中で、年末の資金需要期を迎えるわけですけれども、企業の資金繰りに支障が生じないよう、一層の配慮をお願いしたいということと、官民の金融機関が適切な役割分担の下、一層円滑な金融に配意していただきたいということを当方から申させていただきまして、先方からは当方の要請に対しまして、中小企業を含む健全な企業の資金需要に前向きに対応して行きたいし、年末に向けた金融の円滑化には全力を尽くしたいという表明があったと思います。

また、先方からは本日の会議の趣旨を踏まえて、中小企業に対して十分な対応を図るよう、現場への指導を徹底させたいというようなことも仰られたと思います。

懇談の場では、金融機関側の取り組み報告における発言を踏まえまして、特に信用保証協会、皆様もお聞きになってご承知のように、信用保証協会の機能強化の話も出ましたので、そのようなことも話題になりまして、特に皆さんご記憶の通り、改革先行プログラムの中で金融庁の方針といたしまして、信用保証協会の保証が延長になった時に、それをもって直ちに貸出条件緩和債権という判断はしないと。貸出条件緩和債権になりますと、これは要管理先債権でございますから、当然不良債権になってしまいますものですから、銀行も貸出態度が慎重にならざるを得ないのですね。そういうような事情も踏まえまして、金融庁が改革先行プログラムにああいうことを盛り込んだ趣旨みたいなもの、つまりそれをもって直ちに貸出条件緩和債権にしないということも、金融庁はきちっと改革先行プログラムに盛り込みましたので、その点も踏まえて、「中小企業向け金融の円滑化に努力してください」というような説明も、意見交換会の中では大臣がされておりました。以上です。

問)

青木建設の破綻ですけれども、不良債権の最終処理という観点からどのように評価するか。また、特別検査の対象だったのかどうか、あるいは同検査の成果と受け止めて良いのかどうかについてお願いします。

答)

金融庁といたしましては、改革先行プログラム等に沿いまして、不良債権処理のための取り組みをご承知の通り行って行くわけですけれども、個別企業に係る事柄につきましては、大臣も先般の会見で仰ってました通り、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

後半の質問に対しましても、特別検査というのはご承知の通り、一定の客観的な基準を満たす債務者に着目いたしまして実施するという性格を有するものでございまして、対象となる債務者企業を風評リスクにさらすことは是非とも避けたいという観点から、特定企業が特別検査の対象であるか否かについてはコメントを差し控えさせていただきたいと思いますので、ご理解のほどお願いしたいと思います。

問)

格付会社のフィッチですとか、スタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズと、日本国債の格付けの引き下げが相次いでいます。日本の銀行や生命保険会社の財務に与える影響をどのように評価していらっしゃいますでしょうか。

答)

そのご質問に直接答える前に、皆様ご存じかと思うのですけれども、今、質問された記者の方が触れられましたレーティング・カンパニーの格下げがあった後、日本の国債の流通利回りがどう変化したかというのを見ますと、正直申しまして、こういう格付会社の格下げがあったにもかかわらず、利回りはほとんど変わっておりません。フィッチの格下げが11月26日にあったわけですけれども、国債の233回ものが指標的な銘柄だと思うのですけれども、1.305%でございまして、S&Pの格下げが11月28日にありましたけれども、やはり1.305%。ムーディーズの格下げが12月4日にありましたけれども、1.340%、しかし12月5日には1.330というふうに動いておりまして、私は何を申し上げたいかというと、こうした民間のレーティング・カンパニーの格下げに日本の国債の価格というのは今迄のところ、要するに影響をされていないと思っております。

それを前提として申しますと、これは我々の試算ですけれども、主要行ベースで見ました場合、仮に金利が1%上昇したという場合に、一体自己資本比率にどのくらい影響があるかというのを試算しておりまして、9月末を基準にして今後ということでございますけれども、1%上昇した場合には0.2%ほど自己資本比率が下がるという、いわばこれはアグリゲートの数字で試算しているのですけれども、そういう結果が出ております。皆さんお分かりかと思いますけれども、どういうふうなことでこれを計算するかというと、金利が1%上がるというのは国債の残存期間を見るわけですね。ですから残存期間3年で見ますと、国債の価格でいえば約3%下落する、こういう前提で見ているわけでございますけれども、その場合に要するに含み損をどれくらい抱えるか、含み損は時価会計で直接自己資本を毀損するわけですから、そういうことで見ての今の試算でございます。

地銀につきましては、9月を基準にすることはちょっとまだ間に合っていませんので、3月に比べますと、今の0.2%程度の低下というのは0.1%くらいの低下に止まっております。

そんなことで、ある意味で、国債の価格の変動が銀行の自己資本比率に与える影響は限定的だと思いますし、さらに現在銀行は、残存年限の入れ替え等によりまして、価格変動リスクを抑制するべく努力しておりますので、そういうことも相併せて考えますと、私は限定的な影響しかないと思っています。

生命保険会社についてのご質問ですけれども、同様に的確なアセット・ライアビリティ・マネージメント、ALMを各保険会社がやっておりまして、現在、大手生保で見ますと400%以上のソルベンシー・マージン比率、即ち200%の倍以上のソルベンシー・マージン比率がございますので、私は国債の価格変動を懸念するような状況にはないという認識を持っております。

問)

これに関連して新しいBIS規制を導入した後に、日本国債のリスクウェートをどのように定める方針なのか、例えばシングルAに格下げとなった場合に20%で計算するのかについて、お考えをお聞かせください。

答)

これは現在ご承知の通り、国債については自国通貨建ての国債のリスクウェートは、その国の判断によりまして、銀行が引き受ける場合はリスクウェートをゼロに出来るとなっております。それが今のBIS規制ですね。それで新しいBIS規制と今仰られましたけれども、新しいBIS規制はご承知のように来年何とか第3次案を出して、意見を集約させるという方向で今やっているところでございますので、それをなかなか先取りするようなことは申し上げられませんが、この点についての考え方は変わらないと私は思っております。まあ、あまり議論の結論を先取りするわけにはいきませんけれども。つまり、自国通貨建ての国債を当該国の銀行が引き受ける、保有する場合のリスクウェートは、当該国の判断でゼロに出来るというところは私は変わらないと思っております。

問)

ゼロにするというお考えなんですか。

答)

いや、BISのルールは変わらないと思っております。ですから正直言って、どこの国でも自国通貨建ての国債を自国の銀行が持つ場合に、今まで「これはゼロではない、10%にしろ」とか、そんなような国はありませんし、それは何て言いましょうか、ある国が自分の国の信用を否定するようなもので、あまり考えにくいということを申し上げているわけでございます。

問)

今日、また銀行株が大きく値下がりしていますけれども、この要因と言いますか、金融庁としてはこの銀行株の下落をどのように見ていらっしゃるのか、お願い致します。

答)

もちろん、懸念を持っております。市場の情報では、いろいろ銀行の抱える信用リスクというものが大きいのではないかという懸念から銀行株が売られているという認識を、というか市場の認識はそういうものであるということを承知しておりますけれども、私の立場からすれば、先般の業績予想修正で主要行につきまして、つまり通期で6.4兆円の引当をする用意があるという信号を銀行が発しているわけでございますね。それについて、もっとあるのではないか、もっとあるのではないかと、猜疑心が猜疑心を呼ぶようなそういう市場というのは、どうしてなのかなあというワンダリングと申しますかね、理解しがたい。各主要行があれだけ透明性を持っていろいろ示しているわけでございますので、何かそういうようなダウンワード・プレッシャーみたいなものを煽るような、そういう雰囲気というのがどうして出てくるのかなあと疑問に思っています。とはいえ、もちろん市場の評価というものには絶えず注意を払っております。

問)

今の質問に関連すると思うんですけれども、あさひ銀行と青木建設の件ですが、マーケットの方は当初、あさひ銀行に対して青木建設の早期処理を促しているような感じがあったと思うんですけれども、そして、それによって売り込まれている面もあったと思うんですが、あさひ銀行が実際にその処理に踏み切った時、以降ですね、なかなか市場の方はあさひ銀行を評価しているようには思えなくて、売り込んでいる動きもありますけれども、こうした動き、市場の声というものがありますけれども、促しておいてそのような行動を取って、それでも評価されないと、一体銀行はどうしたらいいんだという気持ちもあると思うのですが、こういった動きについてどのようにお考えでしょうか。

答)

先程の私の答えが今の記者の方への答えになると思うんですけれどね、まあ個別企業のことについては申しませんけれども。あさひ銀行も、今、仰られた記者の方が仰ったことが起こった直後に、業績予想修正の必要はありませんという発表をあさひ銀行自体がしておりますね。ですから私はあさひ銀行について、今回起こったことについて、あさひ銀行に与える影響というのは極めて限定的だと思いますし、心配していないわけですけれども、市場が今、仰られた記者の仰るような方向性がある、つまり方向性の予測の段階では方向性がこうだったのが、実際に起こってみるとこうだということについて、今の記者の方は疑問を呈されましたけれども、私も全く同様に疑問を持っております。

ただ、市場はいろんな要因によって動くものでございますので、私のこの発言というのは市場の評価に逆らっているわけでは決してございませんので、その点だけは誤解のないように宜しくお願い致します。

問)

一部の雑誌報道などで、主要銀行との会合において森長官が特別検査などで手心を加えると受け取られるような発言をされたのではないかというような記事が出ておりますが、これについて長官の御見解をお聞かせ下さい。

答)

全く遺憾ですね。あの場の雰囲気を知っている方に私は証言に立ってもらいたいくらいの気持ちなんですけれども、極めて厳粛な、あの会合というのは特別検査を含めて、改革先行プログラムの内容、金融庁が意図しているところを説明した会合でございまして、私は銀行にとって極めて厳しいものだったと思います。そういうことを私が言っていることなのに、あえて言うならば、いい加減なメモが、私から言わせれば不正確なメモがおそらく流出したんだと思いますけれども、それによって手心的なことを言ったというのは、私としては全く意図に反することでございまして、自分の意識も明確に記憶しておりますけれども、私が言おうとした意識と全く正反対なことが書かれているわけでございまして、そういう意味で極めて遺憾でございます。

例えば、特別検査の目的は破綻懸念先にするものではないと、短絡的に書かれていますが、私が言ったのは3者協議というものが重要ですよと。金融庁が一定の基準で選んだ債務者を持ち込んだ時に、その債務者を全部破綻懸念に落とすなんて、そんなことを言っているわけではないと。そこは3者協議で厳格に議論して下さいと。何か金融庁が選んだら、その選んだ企業が全部破綻懸念になるなんて、そんなことを我々は言っているわけではない。会計のルールは重んじますと、そう言ったわけですね。これは極めて常識的なことでございまして、私の会見でも何度も私は同じことを言っていると思いますので、そういう当たり前のことを当たり前に言って、私はそれを誤解されるというのは極めて遺憾なことで、皆さんもおそらく私の会見を聞いているので、金融庁がある基準に従ってある企業を選んできたら、それが即破綻懸念になると思っているわけでは、皆さんもないと私は思いますが。

問)

9月決算への反映の言及とかについてはどうですか。

答)

それもですね、私が申し上げたのは、時期的な関係から3者協議が始まる時期と、それから実際の銀行の中間決算が決まる、決算取締役会の時期の前後関係、あるいはどれくらい時間的余裕があるかから考えると、特別検査の結果を、中間期に反映するのは難しい面があると。ただ、だからと言って銀行がのほほんとしていることではなくて、我々の特別検査の意図、即ち市場のシグナルをタイムリーに反映した査定をするということはもう皆様方に伝わっているので、もういわば特別検査の始まる前から皆様方がそれを意識して自己査定を市場のシグナルとの関係で厳しくして欲しいと。もしそれが実現されているならば、私は敢えて言えば特別検査のアナウンスメント効果であると言えるので、それはですから中間期に一部反映されたと言ってもいいと思いますと、こういうことを言ったわけで、そのことは私確かこの席でもアナウンスメント効果ということで言ったはずでございます。同じことを言っております、私は。

問)

野党にそういうものが渡ったり、週刊誌に渡ったりしているわけですけれども、これもまあ出元はおそらく銀行だと思うんですけれども、何か恨みに思われているような節があるのでしょうか。

答)

それについては発言を控えさせて頂きます。

問)

最初の中小企業の金融の円滑化に関する意見交換会の時の話なんですけれども、不良債権は増やしてはいけないけれども、中小企業に対する融資は配慮するようにとの要請ですが、これをうまくバランスを取るようにという観点からはどのようにお考えなのでしょうか。

答)

正に難しい問題であることは、仰る通りだと思います。一方において、金融機関というのは公益性を持ち、正に銀行免許を持って経済の動脈として働く義務がある、そういう役割を担っている。従って、日本経済の支えになっておりますのは中小企業でございますから、中小企業向け融資というものを真剣に考える、これは当然だと思います。

今、御質問になった記者の方のポイントでございますけれども、だからと言って不良債権になるのが丸々分かっているのに、貸せというのかというところがポイントかと思うのですけれども、これはリスク管理の問題だと思いますね。リスクはいろいろあると思うんです。極めてローリスク、まあ健全な中小企業者に対する、ローリスク、ミドルリスク、ハイリスクと、中小企業と言っても企業によっていろいろあるんだと思うんですね。ですから、やはりこの席でも申しましたように、ミドルリスクに対応する融資というのもあっていいと思いますし、それは当然リターンもある程度なければ銀行も引当ができないでしょうから、ですからそういうものを工夫しながら、銀行は中小企業への貸出に努力してもらいたいということを申しているわけでございます。

(以上)

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