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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年12月17日(月)18時01分~18時26分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

あさひ銀行の株が、後場に一時57円、引けは60円ということですが、押しなべて見ますと銀行株の下落傾向というのが続いているように思われます。大手銀行株が額面割れすれすれになっている要因をどう分析していらっしゃるのか。あと、金融危機だという危機感は持っていないのか。現状が金融危機でないとすれば、どういう条件を満たしていないから今は金融危機ではないのか、それらについてお願いします。

答)

株価はご承知の通り、市場における自由な取引で、いろいろな要素で価格が形成されるものでありますので、政府が株価の水準についてコメントすることは避けるべきであるというふうにかねがね申し上げている通りでございます。

ただ、最近の銀行の株価を見ますと、銀行の財務内容の実態を必ずしも正しく反映していないという感は否めないというふうに思っております。これはもう大臣も先般の会見で仰った通りかと思います。

具体的には、主要行は現在、改革先行プログラムに沿いまして、不良債権処理を積極的に進めているところでございますけれども、本年9月期における自己資本比率は11.1%を維持しておりますし、また、通期で見ましても6.4兆円の不良債権処分損という見込みを踏まえても、14年3月期にも総じて10%~11%台の自己資本比率を確保する見通しとなっております。一言で言えば、財務内容に問題はない状況にあるわけでございます。従いまして、市場関係者におかれましては、冷静かつ客観的な見方による投資行動を期待したいと思っております。

なお、今お聞きになった記者の方の次の質問で、金融危機と思っていないのか、あるいは金融危機でないとすればどういう理由かということでございますけれども、何をもって金融危機と呼ぶかは必ずしも、もちろん定義があるわけではございませんし、銀行の株価というものもその一つの要素にはなり得ることはその通りかと思いますけれども、しかし今、法律の上で何が書かれているかというと、やはり預金保険法102条の規定でございまして、ここではご承知のように「国または地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある」という場合には、ご承知のように3つの例外措置がとれるというふうになっておりますね。そういう観点から言えば、基本的には金融危機というのは、そういう例外的措置をとるような局面を指すのではないかというふうに思っております。以上です。

問)

金融危機とは、例外的な措置をとる局面であるということですか。

答)

いや、例外的措置をとるという、その前提にありますように、「信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある状況」という意味です。

問)

現状はそれには当たらないということですか。

答)

当たっていないと思います。銀行の健全性そのものには、もちろん株価の問題、つまり銀行と株主との関係においてはそういうことはあるわけですけれども、私は銀行の金融仲介業務というのは、基本的には預金者と借り手の仲介業務でございますので、そういうものに支障が生じているというふうには思っておりませんということでございます。

問)

こうした状況を踏まえて、現状で大手銀行の資金繰りや預金残高というのは、直近の動向としてどうなっているのか。万一、資金繰り難や預金流出に直面した場合の危機対応策というのはどのようになっているのかについて教えてください。

答)

前年同月比で見た場合の都市銀行の預金の動向でございますけれども、私の手元にありますのは6月からの数字ですけれども、6月がマイナス5.1%、7月がマイナス3.6%、8月がプラス2.7%、9月がプラス2.6%、10月がプラス3.7%、11月がプラス3.9%と、こういうような状況で、これは全銀協の資料ですかね、そういう速報値の報告を受けておりまして、主要行の資金繰り、あるいは預金動向につきましては、全体として増加傾向にあり問題ないものと承知しております。

なお、金融機関の日々の資金繰りにつきましては、日本銀行において注意深くフォローされているものと承知しておりますし、当庁といたしましても、市場動向等について日頃から日銀と緊密に連絡を取り合っておりますし、今後も密接な連携を図って行くことに変わりはございません。

問)

主要行、大手行という業態全体としては、業態間の預金のシフト等があってそういう状況かと思いますけれども、主要行の中で問題はないのでしょうか。

答)

主要14行を個々に見ましても問題があるとは思っておりません。

問)

与党の一部で相変わらずペイオフ延期論が燻っていますけれども、これに関連して、いわゆる金融危機に直面した場合に、ペイオフの解禁というのはあり得るのか。あともう一つ、延期をする場合の手続きというのはどうなっているのかというのをもう一度確認しておきたいのですけれどもいかがでしょうか。

答)

ペイオフ凍結解除につきましては大臣も仰っておりますし、総理大臣も仰っておることと現時点において変わりはございません。即ち、ペイオフ凍結というのは、平成8年以降にとられた極めて臨時異例の措置でございまして、いつまでも続けるべきものではない、そういうものを続ければ金融機関のモラルハザードや、金融機関及び貸出先企業の構造改革の先延ばしにもつながって、不適当ではないかという考え方に変わりはございません。

そういう考え方に立ちまして、金融庁としては来年4月に予定されているペイオフ解禁に向けて、金融危機が生じないよう、より強固な金融システムの構築に万全を期して参りたいというふうに思っております。

今ご質問になった記者の方のご質問の中に、延期する場合の手続はどうなっているのかということでございますけれども、延期することを考えていない者としては、お答えするのが適当かどうかという問題ですけれども、法律的な極めてリーガリーに物を言えば、それは現在の預金保険法の改正を必要とするということではないかと思います。

一方においてまた、ご質問が金融危機に直面した場合には延期があり得るのかというご質問ですけれども、先程言ったような意味の金融危機、つまり「国または地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じるおそれがある場合」というものが、もし生じたとすれば、それは金融危機対応会議の議を経て、預金の全額保護、これも出来るということになっているのはご承知の通りかと思います。

問)

ペイオフ凍結を解除しても、備えがあるので大丈夫だということですか。

答)

いや、そういう意味で言ったわけではなくて、理屈のことを言ったわけですけれどもね。今は銀行の健全性という観点からも金融危機という局面ではないと申し上げた上で、そうは言っても金融危機が来た時に延期ということがあり得るかもしれないけれども、その場合はどういう手続が必要ですかという質問に対しては、それは預金保険法の改正でしょうと申し上げて、さらに三段階目で、しかし、良く考えてみると金融危機が本当に来たならば、先程申しました預金保険法102条の例外措置の中には全額保護が入っていますよと、私は淡々とそれだけを言っただけでございます。

問)

日興アセットマネジメントの社長がMMFの元本割れを受けて交代したことをどう評価されているでしょうか。もとより直接金融市場の商品に元本割れはあり得るとの見解を示されているところだと思いますけれども、今後、MMFが元本割れするたびにトップが交代するべきなのでしょうか。

答)

もちろん、本日、日興アセットマネジメントがそういう経営体制の変更について発表を行ったことは承知しておりますけれども、そういう経営体制の変更というのは基本的には当該社、即ち日興アセットマネジメント社の経営判断の問題でございまして、金融庁としてコメントを行うのは適当ではないと考えております。

MMFの元本割れの問題については前の会見の席でも私は申し上げました通り、これから間接金融市場から直接金融市場中心へという流れの中で、まずは証券会社の信認を高める、そしてその証券会社に庶民が身近にアクセスできる商品、即ち、ローリスク・ローリターンの商品、あるいはペイオフ解除後の資金の移動の受け皿ともなり得るような、そういうMMFについて、元本割れという事態になったことは極めて遺憾なことでございまして、金融庁といたしましては、各社に対し、その運用管理体制や投資家への対応状況等について、現在報告を求めているところでございます。

さらに、自主規制機関である投資信託協会に対しまして、MMFの安全性の向上に向けた具体策について検討するように要請をいたしましたところ、先方が早速「MMF検討委員会」というものを立ち上げて、検討に入っているわけでございます。検討の中心課題は私は二つあると思うのですけれども、一つは、適切なディスクロージャーの確保という問題と、もう一つは、MMFについてより安定性の確保に向けた運用のあり方の検討と、この二つについて早急に検討していただきたいと期待しておりますし、投信協会の方も、是非それを早くやりたいというように言っておられると承知しております。

問)

12月15日付の日経新聞を長官が御覧になられているかどうか分かりませんけれども、日経新聞によると、株式市場では公的資金の再注入とそれに伴う減資というのがあり得るんだと、こういう噂が出ているということなんですけれども、こういう見方についてどういうふうにお考えになられているのでしょうか。

答)

まず、公的資金の再注入というような、いわゆる預金保険法102条の例外措置を打つような状況にはないと私が申し上げていることを前提にしてですね、しかし今後、仮に、そういう状況が生じた場合には総理大臣も柳澤大臣も仰っておられるように、躊躇なく、そういう例外措置を打つことになりますですね。

その場合には公的資本注入というのが選択肢として生じてくるわけでございますけれども、市場にそういう話が出ているということは、これは正に風評のリスクだと思いますね。即ち、仮に預金保険法102条に基づく資本注入が行われるような場合であっても、減資が法律上義務付けられているということは一切ございません。例えば、ある当該銀行の資本再注入の必要性を認定する際に話題となる当該銀行が、繰越欠損があって、その繰越欠損が資本準備金、あるいは更に資本金まで食い込んでいる場合には、これは当然減資ということになるわけですけれども、今そういう銀行があるとは思いませんですね。そうではなくて、ちゃんと剰余金があるような状況の下で減資されるのではないかと、資本再注入なら減資されるのではないかと、そういう風評が市場に出るというのは、どうしてそういうことになるのかなあというふうに思います。まあ、いずれに致しましても、市場関係者の冷静かつ客観的な見方による投資行動を強く期待しております。

問)

先週土曜日の自民党の、野中元幹事長の講演での御発言があって、金融問題は大きな問題であると。今週、大きな動きがなければいいが、危機対応ができていないのではないかというような発言をされているのですが、これについて長官はどのようにお考えになっておられるでしょうか。

答)

金融庁の考え方は柳澤大臣が仰っている通りでございますし、今、仰られた要人の話というのは、私は直接聞いてございませんのでコメントは差し控えさせて頂きます。

問)

預金保険料の特別保険料の件なのですが、これは一応、平成13年度で打ち切りということなのですが、そこはどのように考えてますでしょうか。

答)

正直申しまして、最近のこれについての預金保険機構の中の議論ですね、おそらく運営委員会で議論されることかと思うのですが、それがどうなっているのか、ちょっと、咄嗟の御質問なものでございますから承知しておりません。ただ、御承知のように、一般勘定の残高は相当な赤字でございますし、特例業務勘定の中の特別保険料の残高も要するに0と言いますか、あれは年間いくら入って、その時に破綻した金融機関に使ったらすぐなくなってしまうという状況ですね。必ずしも幾つもの破綻を処理するだけの財源はないという状況ですね。そういうような状況を踏まえて、あれは0.036%、0.048%というものをどういうふうに考えるか、そこは預金保険機構と保険料の支払い者である金融機関との合意ができるのではないかと思っております。

問)

先程の再注入と減資の関係のお話なのですが、再注入を仮にする場合に、経営者と株主の一定の責任をとるべきで、そうなると減資もするべきではないのかという見方も一つあると思うのですが、これとの関連ではいかがでしょうか。

答)

正直に申しまして、それにコメントする用意はございません。そういうことを前提にしてませんから。株主責任について言えばいろいろ考え方はあろうかと思いますが、株価がいろいろなそういう風説も含めて非常に下がっていること自体がもう、株主責任がとられているという面もあるでしょうし、将来起こり得るダイリューション効果で株主責任をとれるというような考え方もあるかと思います。

ただ一つ現実論として言えば、商法の規定を無視はできないわけですね。即ち、商法の規定というのは減資を行う場合には、2分の1以上の定足数を満たした上で、3分の2の賛成がなければ減資というのはできないわけです。従いまして、株主の経済合理性を持った行動を推測すれば、自らの利益に反するような減資案に賛成が3分の2集まるとは非常に難しいことだということは言えるのではないかと思いますけどね。

言いたかったのは、仮に資本注入する場合に、そういう商法の規定を乗り越えて何かするということはとてもできないと、それは法治国家でございますから。

(以上)

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