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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年2月4日(月)17時06分~17時28分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

東京海上と朝日生命の経営統合問題の件ですが、昨年11月時点での計画が白紙になったと正式に発表がありまして、その後、東京海上の株価は若干持ち直し傾向にありますけれども、朝日生命の方の格付けが下がったりですとか、解約が出るなどといった現象が出ています。経営不安説も一部で出ているようですが、こうした一連の動きに対する金融庁の見方をお話いただきたいと思います。

答)

先週の木曜日でございましたか、ミレアグループの中の決定といたしまして、朝日生命がどのようにミレアグループに、単に業務提携の域を超えて資本的に繋がって行くかということにつきまして、昨年の1月の合意に返るという決定をされたわけですね。

かねがねここで申し上げています通り、どういう統合の仕方をするか、どういう再編の仕方をするかというのは各個社の最高の経営判断の問題でございますので、当局としてはそれを尊重していくという考え方でございますけれども、木曜日のそういう、いわば統合するまでのプロセスについての見直しの発表によって、今仰られた記者の方のような感じが、その後、金曜日、今日と、もし出ているのならば残念なことだと思います。

そのような状況に、もしあるとしたならば、その会社は懸命に契約者の信認回復のために更なる努力を求められるわけでして、基金の積み増し、あるいはリストラの一層の推進、そういうことを当然考えていただいて、契約者の信認回復に努めていただきたいというふうに思っております。

問)

株安が今日も傾向として続いておりまして、市場の方では「不良債権問題の先行き不透明感から、構造改革が進んでいないことの表れではないか」といった指摘も出ております。こうした中で、今後2~3年内で不良債権問題を正常化するという目標は達成出来るかどうかの見通しと、現在の株安についてのご見解をお聞かせください。

答)

確かに株価の下げは極めてきついわけでございまして、日々神経を尖らせながら見守っております。ただ、構造改革という点からすれば、私は日々いろんなところで再建型の法的整理という報道も、記事は小さいながらもいろんな企業について出ておりますし、構造改革が進んでいないということについては、私はそういう認識を持っていないわけで、構造改革は急速に進んでいる、ただもっともっと構造改革を進めなければいけない、本日の総理の施政方針演説にある通りなのではないかというふうに思っております。

それで、今仰られた記者の方は不良債権問題を正常化する目標が達成出来るかと仰られたかと思いますけれども、本日の総理の施政方針演説で「平成16年度には不良債権問題を正常化するのだ」というご決意を総理が述べられておりますし、我々は不良債権問題については施政方針演説で述べられている通り、断固そこまでに正常化しなければいけないものだというふうに思っております。

問)

関連してなのですけれども、先週のモルガン・スタンレー証券に対する処分なのですが、これは空売りと作為的相場形成という処分で、意図的な株価下落を防ぐという狙いがあるのではないかと思いますが、これに対して3月期末の株価対策の意味合いもあるのではないかというような声がありますが、こうした狙いはあるのかどうかお聞かせください。

答)

全くそういうことはございません。

あくまでも我々が目的としておりますのは、改革先行プログラムでも、またその前の骨太の方針でも、あるいはその前の緊急経済対策でも謳っています通り、市場の透明性及び市場の公正性、そういうものをもっともっと日本の市場はそれを確保すべくもっと努力しなければ、投資家の信認が得られないと、そういう考え方から法に違反した行為を取り締まりますとともに、もちろん空売りそのものは、あるいは信用売りそのものは市場の厚みを増すためにどこの市場でも持っております必要なツールでございます。そういうものを否定するつもりは毛頭ございませんで、ただ、そういう空売りなり、信用売りなりについては、透明性、即ち明示義務あるいは既に発表されているルール、例えば現時点における価格より下値では空売りは出来ないとか、そういうものをやはり守って行くと、かつそれを透明な形で空売りがされる、信用売りがされる、そういうルールを守る姿が重要なのであって、それを守らないで市場を玩具にするということについてだけは、それは断固許さないという決意を示しているつもりでございます。

問)

株安が銀行の健全性に与える影響というのはいかがでしょうか。

答)

それはかねがね申している通りでございますけれども、確かに日経平均で見ましてもTOPIXで見ましても、940ポイント台なり9,600円台という、そういう水準で厳しいものがございますけれども、現時点において大手行の3月期に保持するであろうという健全性の見込みを変えるほどのものではないと、現時点においてはそのように認識しております。

ただ、時価会計の下では大変株価というのは、予て申してます通り、銀行の健全性に与えるインパクトが非常に強いものでございますので、毎日最大の関心を持ってウォッチしております。

問)

その銀行株を大量に保有しているのは、例えば機関投資家である生命保険業界だと思うのですが、そういった業界への影響の伝播と言いますか、悪影響はどのように考えておられますでしょうか。

答)

当然それは懸念しておるわけでございまして、時価会計の下での機関投資家、まあ保険会社が一つの機関投資家であるとするならば、それも時価会計を基にソルベンシー・マージン比率が3月に出て来るわけでございまして、一つの懸念材料であることは仰る通りでございます。

問)

銀行等保有株式取得機構が発足しましたけれども、BIS規制との関連に関して取得機構に株式を売っても資産から切り離したことにはならないという見解をBISが示しているというような一部報道があったわけですけれども、その辺りについて教えてください。

答)

これは私は相当前に皆様方にご説明しているつもりであったのですけれども、本日の新聞で改めてそこが報道されているわけですけれども、BIS規制、つまり求償権付資産の売却というのは、BIS規制でその場合はどう取り扱うということが定義されているわけでございまして、それによれば、一部の報道にございます通り、あくまでも自己資本比率計算上は、例えば100の株を100で売っても、リスクアセットとしては変わらないというのは、合意されたBISの規則からいって報道された通りでございます。

ただ、あの報道で一つだけ気になるのは、それはあくまでも自己資本比率計算上のリスクアセットとして、100売った時は売らなかったものとしてというのはその通りなのですけれども、商法上の貸借対照表でものを考えた場合には、これは完全に資産として切り離されます。

ですから、売っても株を持っているのだというふうなお考えは、それは違うのであって、あくまで自己資本比率計算上のリスクアセットの計算の上では、それは100で売ってもリスクアセットからは100、リスクアセットでは100売らなかったことのままなのですけれども、商法上の貸借対照表でものを考えた場合は、100売ったら100の資産が、つまり株という有価証券がなくなって、その変わり100というキャッシュに変わる。もっと言うならば、そのキャッシュの中から100の内8ですね、つまりそれが売却時に出資金になるわけです。その8が機構の方に移り、その8に相当する、何と言いましょうか、出資証券みたいなものが、その資産に置き換わる。つまり貸借対照表の資産サイドに100という株があった時に、売ったら確実に株はなくなります。100の92がキャッシュに変わり8が出資証券に変わると、こういうようなのが商法上の貸借対照表です。

そこがちょっと・・・書いている方はお分かりになって書いているのかもしれませんけれども、いかにも株を売っても資産として切り離せないというようなことでございましたら、それはそうではないと。あくまで自己資本比率計算上のそういう世界においてということでございます。

問)

日曜日の産経新聞の一面に、昨年年末に早期是正措置を受けました中部銀行に対して、日本アジア証券という会社が出資する見通しだという趣旨の記事が出ていたのですけれども、この点についてどのような御見解を持っていらっしゃいますか。というのは、ちょっといろんな話のある会社なものですから、その辺を伺いたいのですが。

答)

これは一つのルールなので御理解頂きたいと思うのですけれども、個々の会社の話になりますとなかなか申し述べにくいわけでございまして、ただ一般論として言えば、今仰られた銀行はすでに早期是正措置の対象になっていると言われている銀行でございますので、そうであるならば、できるだけ早く4%をクリアーする、しなければいけないということになるわけですね。

その際に、どこから増資を受けるかという話になるわけですけれども、そういうエンジェルみたいな所にお願いするのか、地元から地道に自力増資をしていくのか、そこは銀行の経営判断の問題かと思います。いずれに致しましても今、何かで決まっているということではないと認識しております。

問)

出資会社の適格性というのは問わないのですか、問えないということですか。

答)

いや、それは違いまして、異業種参入の際の銀行法改正で御承知かと思いますけれども、ある一定以上のシェアを持つ株主については当局はチェックすることになっておりますので、そういう規制がかかっているのは、銀行法を改正した後の銀行法ではそういうことがチェックできることになっております。ある一定以上でしたらですね、確か15%、人的関係があれば15%、なければ20%以上だったと思いますけれども。そういう、出資者についてのチェックという意味ではそういうことかと思います。

問)

ペイオフの凍結解除が近づいていますが、金融機関の準備体制について、どのように把握されているかお願いします。

答)

いろいろな業態によって若干違うかと思いますけれども、例えば預金と借入金の相殺特約ということにつきましては、大手行は100%、地銀もほぼそういうことかと思うのですけれども、まだ信用組合などはそこまでいっていないという報告が12月にあったと思うのですけれども、そういうところは100%になるべく今、努力しているところかと思います。

常々私が銀行経営者に申し上げているのは、預金者にあくまでも不安を与えないように、自己PRと申しましょうか、いかに自分の金融機関が安全であるかということを具体的に預金者によく説明して欲しいということを言っております。また、先般の財務局長会議においては特に各局に対して、地銀以下、信用組合に至るまでの預金動向については、いろんなリスクがペイオフ解禁まで考えられますので、特別の注意をもって見守って欲しいということを要請しておりますし、各財務局もそれはよく分かっているものだというふうに思っております。

私と致しましては、保険会社についてもそうでございますし、金融機関についてもそうでございますけれども、不合理な、あるいは不正確な風評にさらされないよう、切にそういうことを強く期待しております。

問)

先程の銀行株が下がっているというところについてなのですが、4大メガと呼ばれるところも一部かなり下がっているところがあると思うのですが、これは金融庁が把握されている実力というか、実勢と比べてどういうふうに考えておられるのかというところを教えて下さい。

答)

報道によりますと、不良債権処理の遅れとか、あるいは信用リスクに対する不安感から売られているというふうに市場関係者が見ているというふうに伝わっております。そういうことを前提として、今、仰られた記者の方の質問に答えるならば、我々は不良債権処理という点でものを言えば、大手行6.4兆円の不良債権処理財源を持ち、かつ債務者企業の状況は当該銀行自身が一番よく知っているわけでございますので、銀行自体が十分な備えをしているというふうに我々は理解しています。

そういう理解からすると、銀行株の下げというのは、私は銀行の現在の状況というものからすると、過少評価されているのではないかというふうに思いますけれども、常日頃申しますように、株価はいろんな要素で形成されておりますので、当局者の方が株価について一々コメントするのは、やはり避けるべきだと思っております。

(以上)

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