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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年2月25日(月)17時00分~17時34分)

【質疑応答】

問)

竹中経済財政政策担当相が名古屋での講演で、「金融システム強化には、資本の充実、資本の質に着目することが大事だ」ということを強調されましたけれども、この考えはBIS基準という形式的な基準だけではなくて、公的資本注入に当たっては繰延税金資産とか、それから99年に入れた公的資金を差し引いて、本当の自己資本というものを導き出すということを仰っているのですが、この竹中経済財政政策担当相のご発言についてご意見をお聞かせください。

答)

竹中大臣の講演でのご発言については、いくつかのメディアの記事を読ませていただきました。必ずしもメディアの方の受け取り方というのは一致しているわけでもないような気もいたしますし、また私自身、竹中大臣のご真意を直接お聞きしたわけではございませんので、竹中大臣がどういうことをお考えになってご発言されたかということにつきましては、コメントを差し控えさせていただきます。

ただ、一般的に申し上げれば、今お聞きになられた記者の方の仰られる通り、資本勘定に相当する基本的項目と、資本勘定に準ずるものとしての補完的項目というふうに、今、自己資本というのは2つに分かれる、まあTire1、Tire2ですね。それぞれについて、バーゼル銀行監督委員会での合意を踏まえまして、銀行法第14条の2に基づく告示が定められておりまして、いわばその基準というものが日本の金融機関の自己資本を計る尺度としての統一した基準になっているわけでございます。

竹中大臣のご発言は、この基準を変えるというふうな意味で仰られたわけではないと思いますけれども、我々はある銀行の、あるいは金融機関の健全性を計る基準というのは、これはあえて言えば土俵の上で相撲をとる時の、いわば土俵の大きさみたいなことにも例えて言えばなるわけでございまして、それがやはりその基準というのは一定のものでないと、やはり混乱するのではないかなあと、そういう意味におきまして、自己資本比率を計る基準というものは一定だろうと思うのです。

ただ、竹中大臣が仰るように、ある銀行の健全性を見る時に、唯一自己資本比率だけを基準にして、その銀行を論ずるわけにはいかないのは、それはもっともなことで、もちろんその通りでございまして、いろんな指標を見ながら、その銀行の健全性を計り、適切な監督をして行くと、これは当然の、竹中大臣の仰る通りでございまして、そういう観点で今後とも適切に監督して参りたいというふうに思っております。

問)

次にダイエーの再建計画についてなんですが、ダイエーの方では27日に発表する再建計画に向けて、99%の減資を検討されているようなのですが、併せて大手3行の金融支援についても上乗せする形で検討されているようですが、これについてどう評価なさいますでしょうか。

答)

まず最初にお断りさせていただきたいと思うのですけれども、私はびっくり仰天してしまったのですけれども、一部の報道に「金融庁が金融支援の上積みを要請した」という記事があって驚きまして、監督の一線にある課長に確認したところ、そういう事実はないということなので、私も安心したのですが、これはこの会見の席でも前に申し上げたと思いますけれども、金融庁は銀行の健全性、あるいは不良債権処理という観点から銀行を監督しているのであって、その銀行の向こうにある借り手と銀行との間の再建計画なり、あるいは不良債権の処理の仕方なり、そういうものには直接関与は一切しておりません。

我々が銀行に対して申しておるのは、あくまでも世の中、あるいは市場から問題とされている企業が、当該金融機関がメインバンクとして持っているということであるならば、速やかに再建可能な企業の再生に取り組むことが重要であるという点。そしてさらに一般論として、その再建策というものは市場から評価される思い切った施策を迅速に実施することが重要であるという抽象的なものなのですね、我々が言っていますのは。

では具体的に当該過剰債務企業との間で、どういう再建策が市場から評価されるか、それは当該銀行と当該企業の経営判断の問題でございまして、果たしてどういう策が一番良いのかということについては、金融庁としても関与のしようが、ある意味で、ないわけでございまして、当該企業からすれば、あえて言えば政府側で言えば、所管官庁といろいろ話すことはあるかと思いますけれども、金融庁との間でそういう具体的な再建策について話されるということはこれまでも一切ありません。また我々もそういうことを言った覚えもございません。

それで今27日に発表が出ると仰いましたけれども、我々は静かに最後の、ダイエーからは最初の要請というのが銀行側にあり、銀行がそれを受けて、今細部の詰めを行っている段階だと認識しておりますけれども、27日の直前には報告が上がって来ると思いますし、そこでの再建策というものが市場に評価されることを強く期待しております。

問)

午前中に日銀総裁と経済関係閣僚、それに福田官房長官が都内で会われて、27日の経済財政諮問会議に向けての意見交換をされたようなのですが、金融庁の所管の不良債権処理についてなのですが、特別検査をより強化する形でデフレ対策をするという、既に出ている話のほか、もしくはそれに関して一段と踏み込むことを検討されているのでしょうか。

答)

今、「今朝の会議」と記者の方は仰られましたけれども、私自身は大臣から何も聞いておりませんので、今朝、会議があったかどうかも含めまして、コメントはちょっとしようがないのでございますけれども、デフレ対応策につきましては、2月27日の経済財政諮問会議に報告された後に公表される予定と聞いております。その中で金融庁が何をすべきかということにつきましては、2月13日の水曜日に総理から関係閣僚に対しまして、「早急に取り組むべきデフレ対応策について検討せよ」とのご指示があったことを踏まえまして、その項目につきましては、まず第一に不良債権処理の促進、第二に金融システムの安定、第三に市場対策、第四に貸し渋り対策等、こういう4項目について検討を進めているところでございます。

従いまして、項目としてはこういうものだと思うのですが、その細部につきましては現在、最後の詰めをしているところでございまして、現時点においてその内容についてコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

金融システムの安定化の議論の中で、銀行の資本問題の一方で、もしものための銀行の流動性の問題もあると思うのですけれども、そういった中での日銀特融の果たすべき役割について、長官はどのようにお考えでしょうか。

答)

現時点において、流動性の問題が発生しているとは思っておりません。

しかし、ペイオフ解禁を4月1日に控え、我々、即ち金融庁、そして各財務局、さらに日銀の本店・支店は、細心の注意で流動性の動きをモニターしているところでございます。

そうした中で、仮に流動性に問題が生じるという事態が、これは仮定の問題ですけれども、仮に生じた場合には、それはやはり日銀法の38条に基づきまして、その要件に従って日銀の果たすべき役割というのが期待されているのではないかというふうに思います。

問)

RCCの不良債権の買取を巡って、与党の中で実質簿価とかという話も出ましたが、最終的に総理が「時価が基本」と仰って議論が落ちついたと思いますが、いわゆるその時価の中でどのように弾力的に買取価格を査定していくかということに対してのお考えはいかがでしょうか。

答)

これは、実は先般の臨時国会で、議員立法で金融再生法53条の買取り関連の改正が行われました。その際の議論の時にも実質簿価か、あるいは時価かという議論がいろいろされていたわけでございまして、いろいろな議論の経緯を踏まえて時価となっているわけでございます。

それでは時価とは何かということは非常に神学論争のようなことにもなるわけですけれども、基本的にはマーケットプライスということなのですけれども、あの時に国会での議論も踏まえて、我々がRCCに強く期待していますのは、1本1本の債権にロスが出ないというやり方から、むしろ買取資産全体でロスが出るかどうかを見るという物の考え方、さらに言えば、それを短期的に見るのではなくて、少し中長期的に見てロスが出るか出ないかで見た方が良いのではないかと。つまり、ロスが出たのか出ないのかという議論の時に、時価ですからそれは分からない、入札でしたらそれははっきりするわけで一番高い価格ということに決まるわけですけれども、相対の場合はお互いにディスカウント・キャッシュフロー方等によって、「これが時価だ。これが時価だ。」と議論して、交渉であるところに決まるわけですけれども、果たしてそれが時価だったらロスがないはずだというふうに考えるわけにもいかないわけですね。やはり時間の経過によって、当該買い取った債権の価値というのが、買い取った時には考えられない要素で変化することもあるわけですから、従って、結果的にはある程度束ねてみてロスが出ないと、結局RCCの買取り及び運用というのは、そういう形でやはり運用して行くよりしょうがないのではないかと思います。

ですから1本1本の債権ではなくて、買い取った債権を束ねてみるという物の見方と、プラス、長さの問題で、そんな1年で見るということではなくて、少し中期的に見てロスが出なければ良いのではないかと。私は先般の国会での議論を踏まえて、そういうような考え方でRCCが53条買取りを運用して行くということを期待しているわけでございます。

問)

公的資金の問題なのですが、日銀の方が一段の金融緩和に踏み切る際に、金融緩和をやるより先に、公的資金の投入をむしろ前向きな形で検討される方が追加緩和よりも先決ではないかという考えを持っているようですが、これに関しての長官のお考えというのはどのようなものですか。

答)

結局、早期健全化法というのが去年の3月31日で、新たに注入を申請するという意味での効力はなくなったわけですね。まあ信用組合とか信用金庫の協同組織金融機関はちょっと特別に今年の3月31日まであるわけですけれども、一般の銀行につきましては早期健全化法を使えないと。従って現行の法律体系の下では資本注入というのが考えられるのは、預金保険法102条の1号措置であって、それは102条の要件として「国又は地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障がある時」と、こうなっているわけでございまして、今お聞きになられた記者の方の仰るような、いわゆる予防的な資本注入というのは、早期健全化法では出来たと思うのですが、現在の預保法では法律自体はそういうことを予定していないというか、なかなか難しいということだと思います。

その予防的ということについてどの程度、これはまあ仰られている人の感覚で少し違うのだろうと思うのですね。非常に、見方によっては「おそれ」が出て来たぐらいのところでやれるというのだって予防的だと仰っているのであれば、それは予防的な資本注入も出来ると思うのですけれども、それはその仰られている人の仰られている意味がどの程度のことを考えておられるのか、それが102条の1号措置の要件に該当しているのであるならば出来るのだろうと思いますけれども。

問)

特別検査の検査結果の公表についてですが、その公表時期の問題で、年度内なのか、あるいは年度をまたいで4月になってしまうのか、その辺の見通しというのは現時点でははっきりしているのでしょうか。

答)

正直言って分かりません。

特別検査の一番のポイントは、やはり一つは三者協議ですね。すなわち、市場の評価が著しく低下した債務者企業等を対象にしてやっているわけでございまして、特別検査の一番大きな意味は、通常の検査は直近期、すなわち今で言えば昨年9月期の自己査定が正しいかどうかというのを通常の検査は見るわけですけれども、そうではなくて今年の3月、正確に言えば3月末の時点の当該企業の債務者区分はどこが正しいのかというのを見るのが特別検査ですね。

それを踏まえれば、三者協議というのは3月末まで続くことになるわけですけれども、しかし、ある程度見切り、これはもう今の段階で破綻懸念でしょうがないし、これは要管理、一般要注意だと、そういうことが三者協議で、もしその前に決着がつくのであれば、そこで特別検査についての結論は出るということになりますね。それが3月末までもつれ込むのかどうなのかというのは、今時点では予断を持ってお話することはできないことだと思っております。

問)

RCCに期待する役割についてお伺いしたいのですが、柳澤大臣が「銀行の使える手段の一つである」、鬼追社長が「全ての不良債権を買い取れる仕組みにはなっていない」というふうに仰ったのですけれども、森長官はどの程度の役割を期待されていますでしょうか。

答)

非常に難しい問題だと思います。整理してお話申し上げれば、いわゆる破綻懸念先以下のオフバランス化について言えば、12年9月期から13年9月期の1年間で、主要行については6.9兆円ほどオフバランス化されたわけですね。しかし、オフバランス化=債権売却ではないわけでございまして、いわゆる私的整理もあれば、法的整理もある。法的整理と言っても再建型もあれば、そうでないものもある。そして三番目に来るのが債権売却でして、そして四番目に回収という項目があるわけですね。すなわち破綻懸念先以下であっても、担保処分等によって回収してしまえば、その債権額は減るわけでございまして、その債権額が減ること自体がオフバランス化になるわけで、6.9兆円の内訳でございます。

そして、12年9月期から13年9月期の6.9兆円と言っても、債権売却がそれほど実は大きなシェアを占めていないわけでございます。ただ、12年9月期から13年9月期というのは、RCCは、確かに破綻懸念先以下の債権の買取りですから、法律上は買い取ることはできたわけですけれども、実際上は実質破綻の、しかも反社会的勢力絡みのものしか買っていなかったわけです。すなわち、53条買い取りが始まったのが、11年4月でそれから13年12月まで1兆円強をRCCは買ったわけですけれども、基本的にはそういうものが多かったので、本格的な破綻懸念先そのものまで含めた買い取りというのは、今年の14年1月11日から始まったと思って良いと思うんですね。

そういうわけですから、先程ちょっと申しました6.9兆円というのは、12年9月から13年9月ですから、RCCはほとんど働いていない、その期間だけ取りますと、確か400~500億円しかRCCは買っていなかったと思います。ほとんどは民間のサービサーが買っているわけですね。

そんな中で、この1月11日から、いわばRCCの53条買い取りという新世界が生まれているわけですけれども、その中で民間サービサーとRCCが、お互いに時価ということで買い取りをやっているわけですけれども、それがどのくらいのシェアになるのか。ただこの6.9兆円というのは、たまたま12年9月から13年9月の実績がそうだったというわけであって、今後はやはりこういう足元の厳しい景況の下で、もっと増えることが合理的には予想されるのではないでしょうか。そうした中で、どれだけが民間サービサーに行き、どれだけがRCCに行くかというのは、なかなか予断を持って申し上げられないのではないかなあというふうに思います。

問)

今まで実施してきた、いわゆる空売り規制の評価と、今後米国のいろいろな市場の規制と比べてどういう点が検討課題になるのかということをお願いします。あともう一つは、いわゆるイベントドリブン型のヘッジファンドというのがありますけれども、こういうファンドの動きと日本の金融システムを巡る風評というものに関連があると見ていらっしゃるのか。それと空売り規制というのが、そういうものと関連しているのかどうか、ちょっと多岐にわたりますけれども、ご見解をお願いします。

答)

今度のデフレ対応策の中の、先程ちょっと申しました市場対策という中に、前の空売り規制も入ってくることになるかと思います。と申しますのも、2月14日に総理から柳澤大臣への指示の4番目に、「空売りや信用売りで不正が行われることのないよう監視委員会によく見張ってもらいたい。監視委員会の人員はもっと拡充してもらって結構だ」という項目がございます。

ただ、率直に申し上げれば、我々は空売りを悪だとは思っておりません。空売りは必要なツール、市場の厚みを増していくために、あくまで必要な、不可欠なツールだと思っております。ただ、12月21日、2月1日、2月8日と三段に分けて空売り規制等の強化を実施してきて、まだ実施段階に移していないものもありますけれども、結局米国並みの規制に今なっているというふうに思うのですが、それはあくまでも日本の市場への信認を高める、すなわち不公正な、あるいは違法な形での空売りというものを厳しく処分することも含めて、そういうものをなくしていくことが日本の投資家が日本の市場を見る時の信認というのが高まるだろうと。やはり、そこに一番我々は意を尽くしているわけであって、私が申し上げたいのは、目的とするところはやはり市場の透明性確保だということを申し上げたいわけでございます。

その上で今の記者の方のご質問は、非常に難しいご質問だと思うのですけれども、イベントドリブン型であれ、いろいろなヘッジファンドが空売りを仕掛けてくる、しかしそれは必ずしも今言ったような意味で、不正なものでもなければ違法なものでもないものが私は大部分だと思うのですけれども、それを何か我々は一般的に罪悪説とかそういう気持ちは毛頭持っておりません。日本の市場は自由な市場でございますので、いろんな思惑での空売りはあるでしょうし、逆の動きも出てくると思いますので、何かを我々は罪悪視して何かをするという、そんなようなことでやっているわけではございませんで、あくまで透明性を高めて市場の信認を高めるということが目的でございまして、基本的には米国並みの空売り規制ということです。

まあ一言申し上げますと、制度貸借を利用した信用売りというものは米国にはないわけでございますので、その部分だけはもちろん日本独自のものでございますけれども、制度貸借を使った信用売りと言っても基本的には機能的には空売りと同じでございますし、制度のそもそもから言えば、制度貸借を使った信用売り、いわゆる日本証券金融の制度貸借を使った信用売り、あるいは信用買いというものは、基本的には個人が利用することが最初想定されていたと思うのですけれども、現在において個人のシェアは2割ぐらいに落ちていると。逆に言えば、機関投資家及び証券会社の利用が8割ぐらいになっていると、こういう実態を見て我々は、今までは信用売りそのものは日本証券金融会社の過熱した時のいろんな規制がありましたので、空売りとは別に今まではそれは規制は何もなかったんですね。ところが、やはり個人の利用が2割で、8割がそういう機関投資家なり証券会社が利用しているという実態を踏まえれば、これはまあ通常の一般貸借の空売りと、やはり同一に見るべきだということで信用売りも明示確認義務の対象にしたわけですけれども、ただ、だからと言って制度貸借を利用した信用売り・信用買いについてまで、今のところは価格規制を持ち込むと、空売り規制にあります価格規制を信用売りまで持ち込むということは考えておりません、今のところは考えておりません。やはり、市場の厚みを維持するツールとしての信用買い・信用売りという機能があるわけでございますので、そこまでは今、踏み込んでいないと、こういうことでございます。

(以上)

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