英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年3月4日(月)17時02分~17時25分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

総合デフレ対策がまとまって発表されました。不良債権処理の一層の加速というのが柱なのですけれども、さらに昨日は佐藤工業の会社更生法申請という事態がありました。金融庁の特別検査が進むと、この流れの中でこういった企業整理が今後増えるというふうに見られますが、この辺についての長官のご認識をお伺いしたいと思います。

答)

今、記者の方がお触れになられた通り、富山の名門ゼネコンと言われる佐藤工業が、昨日、会社更生法の申請をするという事態に至ったことは、大変残念なことだと思っております。いろいろな短期的な、デフレ的な影響というのは懸念されるわけでございますけれども、経済産業大臣も仰られている通り、いろいろなセーフティーネットが用意されているわけでございまして、そういうものを活用して、影響を最小限に止めるということが、まずは重要なことだと思いますし、また佐藤工業自体はトンネル工事等、その技術力が高く評価されている企業と聞いております。柳澤大臣がよく言われます通り、やはりミシン目を入れて、当該企業のメリットというものを最大限に活かし、デメリットというものを取り除いて行くということが重要でございますし、今回の会社更生という措置も、そうした方向で今後佐藤工業の技術力のようなメリットが、これを通じて活かされて行くことを強く期待しております。

金融庁といたしましては、度々この席でも申し上げました通り、問題企業を抱えるメインの銀行に対しまして、出来る限りこの3月決算に反映される形で迅速に、かつ今申しましたようにミシン目を入れるような形で処理を進めていただきたいということを申しておるわけでございまして、どういう処理の仕方が適当かというのは、当該銀行と当該債務者企業との最高の経営判断の問題だということで、それに対しては口出しをしておりません。

その結果、いろいろなメイン銀行が、当該債務者企業と十分話を尽くした上で私的整理に進むところもあれば、今出た例のように法的整理、しかも再建型の法的整理に進むというところもある。結果として、「民-民」の判断としてそういうふうになっているというふうに理解しており、これはいわば市場の判断にお任せするのがベストだというふうに思っております。以上です。

問)

特別検査の関係では、3月中に検査を実施して、その結果を何らかの形で公表するということが総理の指示でもあったかと思うのですが、もう3月に入りまして、この公表の仕方等についてのイメージ、考え方についてはいかがでしょうか。

答)

総理のご指示は、金融庁の検査に対する国民の信頼を高めるという点。さらに不良債権処理に対する信頼を確保するという観点、そうしたことから適切なご指示を受けたというふうに思っておりますが、一方において特別検査というのは、市場の評価が著しく低下した企業等を対象として、そのメインバンクに入って、正にその時点での当該企業の債務者区分をどこにするかということについて3者協議で詰めて行くという性格の、今まで金融庁がしたことがない特別な検査です。

従って、公表の仕方によっては当該企業が特定されてしまい風評のリスクに、正にさらしてしまうという危険があるわけでございまして、公表の仕方というのは非常に難しいという認識を持っております。

まだ特別検査は続いている最中でございまして、そうした結果が段々出て来ると思うのですけれども、それも踏まえまして、慎重に、しかし特別検査終了後速やかに発表出来るよう検討をしているところでございまして、まだどういう形でということについての結論を得るには至っておりません。

問)

次に一部報道であった件なのですが、公的資金の注入に関して政府は「必要があらば」という立場だと思うのですが、実際にどういう形で公的資金を注入するかという議論もありますが、4月の商法改正の施行に伴って種類株の発行というのも可能になるというところも踏まえて、公的資金注入の議論、研究を進めていると思うのですが、その辺の研究の具合、勉強の具合というのはどうなっていますでしょうか。

答)

それは、それぞれいろんな様々なケースが考えられるわけでございまして、それぞれのケースによって、いろいろなツールが考えられるわけでございまして、現時点でどういう形で注入するんだということを、何か固定的に考えているということはございません。

今、記者の方が仰られた通り、4月1日を越えれば、株式の世界では普通株と議決権制限株の2つになるのですね。もう言葉の上では、いわば優先株とか、そういうものが全部なくなって、普通株か議決権制限株ということですね。

では、議決権制限株というのはどんなものかと言えば、それは新しい商法では定款で議決権制限株の内容を決めることになってますね。従いまして、議決権制限株というのはいろんなものが考えられるわけですね。まあ、考えようによっては非常に選択の余地が広がるわけでございまして、そうした中からいろんなケースに対応して、こういう場合なら何がベストなのだろうかということを日夜検討しております。ただ、今、そういう状態にあるというわけではございません。

問)

本日の株価は日経平均で600円以上上げているのですが、その株価上昇の要因について、金融庁の施策との関係でどういうふうにご覧になっているのでしょうか。空売り規制の問題、さらに言えば、これによっていわゆる巷間で言われた「3月危機」というのは来ることがないのか、この辺について株価との関連でご見解をお願いします。

答)

いつもこの席でも申し上げています通り、株価は上がることもあれば下がることもあるとともに、その要因も極めて様々な要因でございまして、本日、上がった要因を市場に聞いてもいろんな要因が聞こえて来るわけでございまして、今日の上がりは何が原因かということを特定することは難しいのではないかと思っております。

ただ、今日上がったか下がったかよりも、私がむしろ注目したのは今日の取引高でございまして、14億株近く、1兆円が取引されていると、非常に市場が分厚くなっているということは歓迎出来ることではないかなあというふうに思っております。

問)

先程の種類株の話なのですけれども、公的資金という話ではなくて、4月の商法改正で可能になるのですけれども、どのようなメリットが考えられますでしょうか。

答)

それは各企業、銀行も含めて、いろんな企業の資本政策に多様性が出て来るということではないでしょうか。今まではどちらかと言うと、普通株と優先株、優先株の中では転換権付優先株と社債型優先株と。そういうことで、発行出来る株式の種類というのは極めて限られていたわけでございますけれども、定款の定めに応じていろんな議決権制限株が出て来るということになりますと、資本政策、その中には配当政策も含まれると思いますけれども、いろんな可能性の余地が発行企業側に出て来る、またそれを目指した商法改正ではなかったのかなあというふうに思っております。

問)

与党の一部になんですけれども、ペイオフ凍結解除後に預金保険法の特例を使って預金を全額保護したらどうだという議論があるのですが、そういった議論そのものについて、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

答)

ペイオフは制度と致しましては、4月1日から解禁される予定になっておりますし、その予定を今の段階で変更するというのはいろんな意味で望ましくないと考えております。いろいろ不安があることは承知しておりますけれども、預金者サイドの準備も進んでいると思いますし、金融機関サイドの自己防衛、違う言葉で言えば、いかに自分の金融機関は信頼し得るものだということについてのディスクロージャーを含めたプレゼンテーションを一生懸命各金融機関がやっているところかと思います。

また、相殺特約の整備も進んでおりますし、公金預金の問題もございますけれども、それにつきましても地方公共団体等の情報把握等も進んでいると思いますし、いろいろ工夫がされております。

そうしたことの前提の下で、今の記者の方の御質問に対しては、それは102条の2号措置の要件を、ある状況がその要件を満たすかどうかの、そのケース・バイ・ケースの判断であって、預金保険法を改正しないで、一般的に102条の2号措置を適用していくということは、なかなか考えにくいのではないかなあというふうに思っております。

問)

空売り規制について伺いたいのですけれども、それの是非は別として、タイミング等、やはりいろいろ疑いがあるのですけれども、これは数カ月前から考えられていたと何か報道で見ているのですけれども、それでしたらなぜもうちょっと、例えば東証と証券会社に準備する期間を与えなかったのですか。

答)

「準備する期間」というお言葉がありましたけれども、我々は白地で空売り規制の見直しをしたわけではないのであって、やはり12月21日に起きたこと、更にそれから後にいろいろ起きていること。即ち、日本の株取引が法令違反を含めて不公正に活用されているという実態が、多々出てきたことを踏まえまして、「これではいけない」と、やはり世界で3極と言われるためには日本の取引所が、おもちゃにされているような取引所であってはいけないということから、急遽、見直しをしたのであります。何度も申しますように空売り自体は市場の厚みを増しますし、あるいは株価下落局面においてはヘッジ機能もありますし、極めて重要なツールでございますので、それ自体を罪悪視することなど考えられないわけでございます。

しかし、我々がやろうとしたきっかけというのは、そういう不公正な、あるいは不法な、そういう株取引の活用の実態を踏まえてやったことであって、敢えて言えば、今、御質問になった記者の方の言葉を借りれば、そうやって6カ月先にはこういうことをしますということで準備期間を与えるというような、そんな類のものではなかった。即ち、やはり不公正な、あるいは法令違反の実態があれば、やはり直ちにそれを解消するような施策をするというのが、やはり行政だろうというふうに考えてやったことでございます。

問)

それでも、東証でもやはりちょっと間に合わないみたいですよね。

答)

それはですから、東証はもちろんシステムの問題がございますから、ある程度の時間がかかることは当然我々も承知の上で、しかし、それこそ不公正取引に対する警告の意味も込めて発表は早くしたわけであって、実施は確かにある程度の期間は必要であったということかと思います。

問)

株式取得機構についてですが、自民党の方では生保の株も買い取る、あるいは一般事業会社が持っている銀行株も買い取るという提言がありまして、まあ政府のデフレ対応策にはなかったのですけれども、金融庁としては、この二つを読んでどのように対処するおつもりなのか、お聞かせ下さい。

答)

自民党のデフレ対策特命委員会の提言の中に、今、記者の方が仰られた二つの提言が盛り込まれていることは承知しております。金融庁としては、取得機構がセーフティネットとして積極的に活用されるよう銀行側に要請すると、これは政府のデフレ対応策に入れたわけでございますけれども、自民党の方では本年に入ってからの市場の動向や、その後の影響等を考慮して、このようなご提案を、言わばもっと踏み込んだご提案を出されたものと理解しております。

今の御質問は、これに対して金融庁は今、何を考えているかという御質問でございますけれども、金融庁としても、与党における今後のこれに関する議論を注視していきたいというふうに思っております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る