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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年3月18日(月)16時46分~17時14分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

先週は、茨城県の関東銀行とつくば銀行が合併で合意したという一方で、信用組合の破綻とかがありました。金融庁は4月1日に店を開いている金融機関は健全だという方針で行政を進めていますが、現状の進捗状況というのはいかがご認識なさっているのでしょうか。

答)

これは正に柳澤大臣が先週金曜日の会見で仰られた通りの状況にございまして、「ペイオフ解禁前の体制整備ということについては、銀行については、これは出来上がったということですね」と、大臣は仰られております。その通りかと思います。さらに大臣は、「信金、信組というところについては、もうちょっと、まだ努力してもらっているところがあるという状況です」と。「いずれにしても4月を迎える時には、とにかく基準をパスした健全な金融機関ということで店を開けていただくという体制が出来る展望が見えていると、こういうことは言えようかと思うのです」と仰られています。これは非常に現在の状況を適切に大臣が表現されているという認識を持っております。

問)

それでは、信金、信組はもうちょっとまだ努力するところがあるということですか。

答)

ちょっとです。ただいずれにしても、3月中には必ず間に合わせる、間に合ってもらうという強い期待と、また大丈夫だろうというふうに思っております。

問)

石川銀行と中部銀行なんですが、受皿探しの進捗状況というのはどのようになっているのでしょうか。

答)

石川銀行の方は破綻したのが中部銀行よりか少し早いこともあって、地元の金融機関を中心に鋭意、現在、折衝が行われていると承知しております。ただ、石川銀行は北陸3県に跨った銀行でございまして、私は出来ますればこの3県がそれぞれ石川銀行の善意かつ健全な借り手を受け取る形が望ましいというふうに思っております。そういう観点からは、まだそれぞれの交渉が最終段階に詰まって来ていて、受皿がもう見えて来ているというところまではまだちょっと行っておらないわけでございまして、引き続き金融整理管財人が頑張ってくださってますし、我々も最大限のサポートをしておりまして、出来る限り3月中に受皿が決まることを期待しておりますけれども、まだその点については確実な感じは持っておりません。

中部銀行につきましても、破綻した日に金融庁が皆様方に発表させていただいた大臣談話にもございます通り、「金融整理管財人が早急に受皿を確保すべく努力して欲しい」ということを書かせていただきましたけれども、正にそういうことで、現在、金融整理管財人が地元金融機関を中心に鋭意折衝している状況でございまして、これにつきましても、現在、どこかに焦点を当てて基本合意が結ばれそうであるというところまではなかなか行っていないというのが現状でございます。いずれにいたしましても、3月末ぎりぎりまで金融整理管財人における受皿確保の努力を見極めて、ブリッジバンクで繋ぐかどうかを適切に判断して行きたいというふうに思っております。

問)

特別検査の結果の公表についてなんですけれども、4月中旬を目処ということを大臣は国会で仰っておりましたが、具体的な検討事項についてどのくらい進んでいるのでしょうか。

答)

正直申しまして、3者協議をまだ終えていないところが幾つかございまして、やはり3月末ぎりぎりまで3者協議が続く可能性が大きいなあという感じを持っております。

私は前の会見で、正直申しまして、3者協議が早めに終われば3月中の公表もあり得るかもしれないということを申したかと思うのですけれども、その時の、そういうふうに私が申し上げたことからすれば、やはり3者協議というのが3月末ぎりぎりまで続く可能性が強いと、今の時点では言わざるを得ないと思います。そうであるならば、やはりその結果の取りまとめである公表も4月にずれ込んで、その中で出来るだけ早く公表したいというふうに思っております。

問)

デフレ対応策の中で、銀行側の公表も併せて求めていますが、このタイミングというのは長官はどのように考えられていらっしゃいますか。

答)

これは、その重要性というものを銀行側に訴え、要請しております。

すなわち、ペイオフ解禁という状況になるわけでございますので、各金融機関とも特別検査を含む通常検査、あるいはフォローアップ検査の結果としての健全性度合いというものは、国民が大きな関心を持っておりますし、それを出来るだけ早く公表する必要があるということを各銀行に訴え、要請しておりますけれども、まだそれがいつになるかという、事務量の問題がございますものですから、今、その見通しを言える段階ではございません。

問)

今のご発言ですが、特別検査を含む通常検査、フォローアップ検査の結果を金融機関に公表するように要請するということですか。

答)

つまり、我々が最低求めるのは、健全性基準の示す自己資本比率がどうなっているかということは、少なくともそこは出してもらいたいと思っているわけです。自己資本比率を出すには、特別検査だけではなくて、そういう通常検査、あるいはフォローアップ検査も踏まえた銀行の自己査定が重要であると。その自己査定の結果として自己資本比率が出て来るわけでございまして、そういう意味で私は「いろいろな検査」と申したわけでございます。特別検査だけでは何も出て来ません、と言うか対象が限られているわけですから。つまり、各銀行とも自己資本比率を出すには、各銀行の全借り手、全債務者についての自己査定を終えないと自己資本比率は出て来ないわけでございまして、そういう意味で、私ちょっとなぜそういうことを申したかと言うと、何か特別検査というものが非常に世の中でやや過大視され、特別検査の結果が出れば何かが出て来るという、そういうわけでもないということをちょっと申し上げたかっただけです。特別検査が重要な要素であることにはもちろん変わりはございません。

問)

先程のペイオフ解禁前の体制整備についてなんですが、銀行についてということは、特別検査実施中の大手行も出来上がったということでよろしいのでしょうか。他の省庁の大臣によっては、特別検査の結果次第で公的資金の再投入とか言っている人もいる中でなんですが、その辺はどう考えればよろしいのでしょうか。

答)

ご承知の通り、柳澤大臣が金曜日に仰られたことを先程引用しただけでございますけれども、昨年の3月期の大手行の平均自己資本比率は11.7%でございましたか。それからもちろん不良債権の処理額として特別検査等を踏まえて、各銀行とも相当大きな引当準備金を積んで、昨年の11月にはそれが6.4兆円になるという見通しも言っているわけです。

金融庁としてはそういうものも含めて、また株価について一定の前提を置いた上でいろいろシュミレーションをしているわけですけれども、金融庁としてはこれまでも申しました通り、相当程度の不良債権処理をしたとしても、過小資本行が出て来ることはまずないだろうというふうに思っております。それは現時点においてもその通りでございます。そういうことを踏まえた上での、先週金曜日の大臣の発言でございまして、銀行と言った場合にはもちろん大手行も含んでいるわけでございます。

問)

その関連で、今日の国会の答弁で、日銀総裁が「不良債権処理を進めて行けば、自己資本が毀損し不足することもあり得る」と、「万が一の場合にはタイミングを失さないで、柔軟に対応しなければならない」というふうに、改めて公的資金の注入論について前向きと受け取れる発言をなさったのですけれども、そこはまだ依然、日銀と金融庁との間で見方の違いというものがあるのでしょうか。

答)

日銀総裁のご答弁を私は聞いておりませんでしたけれども、今お聞きする限りにおいて、今質問された記者の方が仰られた、「これからどんどん不良債権が出て来て、おそらく一つ前提が抜けているのだと思うのですが、それが業務純益では賄えない程の不良債権がどんどん出て来て、そういうものがずっと続くならばいずれは」ということであれば、そういう前提の問題ですね。それは自己資本力というのは無限ではございませんので、そういう前提を置けば、いずれは剰余金も枯渇して自己資本比率というものも下がって来る、それは当然、そういう前提を置けばそういうことになると思います。

金融庁からすれば、そういうふうな何か前提を置いて予防的な資本注入を今のうちから出来るのか、つまり1年後に起きるか、2年後に起きるか分からないことについて、今からそれを予防的資本注入として出来るか、それを予防的資本注入ともし言うならばですけれども、それはちょっと預金保険法102条で定めている要件とは少し違うのではないかなというふうに思っております。

ですから、日銀総裁の仰られていることが間違っているとか、そういうことを何も言うつもりは全くないわけであって、それは前提の置き方だろうと思います。

従って金融庁としては予断を持たずに、今後の経済、金融情勢の推移を見守りながら、仮にも金融危機のおそれがあるという状況になるならば、小泉総理も、また柳澤大臣も仰っている通り、その時には柔軟かつ果断に資本注入を含むあらゆる措置を講じて、日本発の金融不安は起こさないということではないかと思います。いずれにしても金融庁としては、何か予断を持って何かということではなくて、日々の金融情勢を注意深くモニタリングしながら適切な判断を行って行きたいというふうに思っております。

問)

損害保険会社のテロ免責の件なのですけれども、保険金が一定額以上の大型物件についてテロ免責を張ると、こういう動きが出てきているようですが、その点をどう見ていらっしゃいますか。それと先進国各国で、イギリスなんか大分早かったと思いますが、公的な再保険機構と言いますか、そういう仕組みを導入していますが、日本はやらないのでしょうか。

答)

まず最初の御質問の点でございますけれども、私も新聞報道を読ませて頂いただけであって、まだ報告は上がってきておりませんけれども、私が考えるには、10億とか15億とか、そういうアッパーリミットと言うのでしょうか、上限をテロによる損害についての再保険金額としてそういうことを設けるというのは、基本的には料率との関連だと思うのですね。

すなわち、もしこれまでの料率算定の中で、テロによる損害リスクというのをどのように測っていたかという問題があると思うのですけれども、それが昨年の9月11日の現実に起こったテロ被害から見て、当然、大数(たいすう)の法則の基礎が変わるんだと思うんですね。大数の法則の基礎が変われば当然料率が変わってくる。従って9月11日に起こったことを前提とした料率の改定をして、しかもかつその商品についてアッパーリミットを設けないとするならば、おそらく保険料率が大変高いものになって、商品としてなかなか成り立ちにくいという、そういう側面があるのではないかと思うのです。そういう点も考えながら、商品性としてアッパーリミットというものが、民の判断、民間の判断として出てくるのではないかと思いますし、そういう民間の判断、大数の法則からして合理性があるという判断であるならば、そういうものを当方の認可に関わることならば、認可していくということではないかと思うのです。

次の質問で、では公的資金でアッパーリミット以上の損害を国が見るかどうかということですけれども、これはまだ私が知る限り日本においてはまだそういう議論が起きていないわけでございまして、ただそういう議論がもし起きてくるならば、それは金融審議会において適正に御議論頂くということになるのではないかと思います。

問)

議論はもう去年のテロの事件以降、ずっと起きていると思うのですけれども、先程、「民の判断」と仰いましたが、その要件の中にやはり金融庁が全然それを作り出そうと動き出さないというのがあって、それでもって上限を作らなければいけないというのが今、損保の業界で起きている動きだと思うのですが、その点は話し合いとか、あるいはビルを実際に建てる側の意向とかを確認されて公的なものは要らないと判断されているのか、何もせずに今のところ要らないと判断されているのか、その辺はどちらなのでしょうか。

答)

すみません。今、聞かれた記者の方が余程お詳しくて、私の方には、まだ下からそういう報告も上がってきていないので、改めてどういう議論が今、損保でなされているか、一体どういう要望が官に対してあるのか、もう一度確認した上で、別途お答えしたいと思います。

問)

銀行等保有株式取得機構の買取りが始まって1ヶ月が経ちましたけれども、長官は大手行との意見交換でも機構の積極活用を仰っていたかと思いますが、1ヶ月経った時点での活用状況についての長官の評価を頂けますでしょうか。

答)

銀行が保有株を売る、売らない、これは銀行の基本的には経営判断の問題かと思います。やはり株価との相談と言いましょうか、含み損がどれくらい実現損になるかとか、あるいは益が出るかどうかとか、いろいろ各銀行の判断ではないかと思うのですけれども、あくまでも機構というものは銀行の株式保有制限法との絡みでリスクのある保有株式を減らしていく、売却していく際のセーフティネットとして機構というものが作られました。従って、銀行の判断で、あれは2004年9月でしたでしょうか、つまり、それまでにTier1相当まで減らしていくという中で、各銀行の経営判断として株価と相談しながら経営判断の下で手放していく。その時に市場の状況を見ながら、「これは市場で売る」、「これは機構に売る」という判断を銀行がしているのだろうと思うのですね。

そんな中で我々が要請したことというのは、現在の市場の状況を見ながらできる限り取得機構を活用して欲しいということを要請したわけです。その結果として、今どの程度になっているか、日々数字が違ってくるものですから、現時点においてどれくらいかということについては確たることは承知しておりませんけれども、それなりの大きな数字になってきているというふうに思っております。

それはやはり、今月に入ってからの株価の回復というのが、一定のそれに寄与していることは確かだと思います。

問)

特別検査の進捗状況で、3者協議を終えていないところが幾つかあるということでしたけれども、これは幾つかの銀行がまだ3者協議を続けているということなのか、それとも対象企業が幾つかあると、残っているところがあると、どちらなのでしょうか。

答)

両方ですね。

問)

それから、各行が個別に特別検査の結果、これだけ不良債権処理損が膨らみますという公表をすることというのはあり得るのか、あり得ないのかということなのですけれども、いかがでしょうか。

答)

我々は各銀行に対しては特別検査を含む、いろんな検査を踏まえた自己査定、またその自己査定を踏まえた自己資本比率というものも出して欲しいと言っているわけであって、特別検査に着目して各銀行がどうだったかということは要請するつもりはありません。特別検査のインパクトというのは金融庁がまとめて公表するつもりでございます。

問)

その自己資本比率を出す時に、もう一つ、含み損なり含み益なりという要素もかなり大きな意味を持つんだと思うのですけれども、自己査定が出来て、3月末の株価を見て、それで自己資本比率を出すと、こういう形での業績修正が3月末なり4月の初めにあるということになるのですか。

答)

3月末の株価を見ないと含み損、含み益は出てきませんので、4月に入って業績修正を必要とするほどのところがあるならば、業績修正という形で出てくるかもしれませんけれども、私はそういうことを念頭に置いているわけではなくて、業績修正の必要があろうがなかろうが、各銀行ともペイオフ解禁に突入して、各銀行の健全度というのは国民の大きな関心事項でありますので、少なくとも大手行は、通常の決算発表時より前に、早急に発表して欲しいということを要請しているわけでございます。

(以上)

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