森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年4月8日(月)16時47分~17時12分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

12日に公表予定とされております、金融機関への特別検査の公表項目についてご説明いただけないでしょうか。

答)

私自身、まだどういう項目を最終的に選び出すかということについて、まだ最終的な報告は検査局から受けておりません。ただ、前々から申し上げています通り、2つの要素、即ち今回の特別検査の結果が主要行の決算に与える影響がどの程度のインパクトを持ったものであるかということを、やはり示さなければいけないという要請がある一方、対象企業につきまして風評のリスクにさらすわけにもいかないという、この2つのなかなか相容れない要請にどう調和点を見つけるかという問題ではないかと思います。

いずれにいたしましても遠からず発表いたしますので、それまでにはきちっと中身を定めまして、また特別検査の結果自体も現在集計中でございますけれども、項目だけではなくて、その中身まで埋めて発表したいと思っております。

問)

既にご存知の通り、みずほ銀行のシステム障害なんですが、この障害はある意味では一つの金融機関に対する不安ではなくて、金融システムに対する信頼をも低下させたという見方があるのですが、長官のご認識と、あとみずほ銀行に対する認識なんですが、統合の準備が不足していたというご認識はあるのでしょうか。

答)

今回、みずほ銀行に起こったことと申しますのは、銀行の言わば生命線とも言ってもいい決済機能に対する国民の信認を揺るがすようなものでありまして、事は極めて重大であるという認識を持っておりますし、それだけにこういうことが起こったことに対しまして、誠に遺憾であるというふうに考えております。

「みずほ」自体が対策本部を立ち上げ、毎日皆様方にどこまで、どういう状況に今あるか、完全修復までにどれくらいかかるかというのは、「みずほ」自体がもう既に先週から発表していると思いますけれども、我々が直近時点で「みずほ」から受けた報告によれば、大きく分けて3点ほど問題があるわけですけれども、第一点でありますATM障害、これにつきましては7日の日曜日までに全て正常化済みということでございます。第二点で、口座振替の遅延等、これはまだ完全には修復が完了しておりませんが、今週半ばまでの完全正常化に向けて全力を挙げているという報告を受けております。第三点は、先週発生した二重引き落とし、あるいは誤送金のトラブルでございますけれども、これについての修復は完了しているということです。なお、完全修復に向けて現在最終点検中というふうに聞いております。即ち、一応過去に起こったことは修復しているけれども、今後絶対起こらないようなシステムになっているかどうかということについて最終点検していると聞いております。

そうしたことを申し上げた上で、ただ今ご質問になられた点でございますけれども、確かにこの145兆円になる大きな資産を抱えることになる統合、その際にシステム関係がどうなるかということは、当然この2年半の準備期間中にチェックすべきことだったと思います。そういう点で結果としてであれ、こういうことが起こってしまったということは、やはり結果として準備不足だったと言わざるを得ず、大変遺憾に思っております。

ただ、では日本の金融システム全体がそういう不安定な状況なのかと言えば、これはかつて他の統合大銀行についても同じ様なことが起こったわけですけれども、幸いこれほど大事ではなくてシステムは正常化されました。それ以外の銀行につきましても、こういう決済機能の面で問題があるとは聞いておりません。そういうことでございまして、「みずほ」にこういうことが起こったから他の銀行の決済機能についても信認出来ないのではないかということは、それはそういうことではありません。きちっと他はやっておるという認識を持っております。それだけに「みずほ」については1日も早く完全修復を期待しておりますし、我々からも強くそれを「みずほ」に促しております。「みずほ」も徹夜体制でやっておるということで、出来ることは「みずほ」としても全力を尽くしてやっていると、こういうことではないかと思います。

問)

先週、岐阜銀行が優先株を無配にするという報道がありまして、母体のUFJ、日銀、金融庁で支援策を協議という話があるのですが、具体的にこういう支援策の中身というのはどうなっているのでしょうか。

答)

これはちょっと少し先走った記事ではないかと思うのですけれども、岐阜銀行は現在、14年3月期の決算状況を取りまとめ中の状況でございまして、何か具体的な数字が固まっているというふうには聞いておりませんし、そういう報告も受けておりません。もし仮にその記事にあるように公的資金、国が引き受けた優先株への配当が払えないというような、そういう状況に本当になるならば、当然、岐阜銀行は上場銀行でありますし、タイムリーディスクロージャーで配当予想の修正もしなければいけませんし、その時点で明らかになると思いますし、また我々にも当然報告があるというふうに思っております。

問)

(特別検査の結果の)発表は12日でよろしいのですか。

答)

そのつもりでおります。

問)

「みずほ」の件ですけれども、先程「準備不足は否めない」ということを仰いましたが、1月に「UFJ」に似たようなことが起きまして、「みずほ」もかなり危ないという専門家の方も結構いたのですね。金融庁としてああいう大きな銀行の統合に伴うシステムの負荷に関わる問題について、検査であるとかオフサイトモニタリング等でどのような対応を取って来られたのか伺いたいのですが。

答)

当然、先程も申しましたように、世界一の資産規模になる銀行が誕生するわけですから、その際のリスクとして、今日起こっているようなことはリスクとして当方も認識しておりましたし、先方も認識していたわけですね。

そういう意味から当然、3行統合の認可申請があった段階で、そういう点につきましても書面審査を十分に行いましたし、また他の金融機関における合併時のシステムトラブル発生といった事態、これは前例があるわけですから、そういうことも踏まえて対応に万全を期すように求めて来ました。結果として、にも関わらず、こういうようなトラブルが発生したことは事実でございまして、それは大変残念、遺憾に思っております。

一言で言えば、いろんなリスクを点検する時には、所謂ストレステストというのをするわけですけれども、このストレステスト、つまり今回の例で言えば4月1日に口座振替をはじめ、巨大な件数の処理が必要になる、それに対する対応が十分だったのかということが問題なんだろうと思います。つまりストレステストのストレスのかけ方が十分だったのかという問題だろうと思います。そういう点も含めまして、現在、銀行法24条に基づく報告徴求を課しておりまして、その結果を仔細に検討させていただきまして、二度とこういうことが起こらないような体制に持って行きたいというふうに思っております。

問)

その「みずほ」の関連なんですけれども、伺い方を変えまして2点ほどあるのですが、4月1日を迎えるまでに当たって、金融庁のチェック体制に不備がなかったかどうかという点が一つと、これは具体的な話なのですけれども、3月の下旬に一部の報道で報じられていますが、1日を迎えるに当たって、「みずほ」がある程度、完全な準備体制が整わずに、ある程度不具合が発生するのを事前に予測しながら見切り発車したのではないかと、これは3月下旬に一部報道であるのですけれども、この件に関して金融庁にはきちんと報告があったのかどうか、この2点を伺います。

答)

当然のことながら、後半部分についてはそのような少々不具合が起きても見切り発車致しますなんていうことは言ってくるはずもございませんし、当方もそんなことを許すはずもございませんし、それは全く3月末にそういう記事が出たこと自体を私、承知致しておりませんでしたけれども、そういうことは聞いておりません。全くそんなような準備不足の段階でしたら当然、我々は4月1日統合を認可するはずもございませんし、あってはならないことだというふうに思っております。

あとは、我々からすれば、先程も申しましたように、こうしたリスクというのは、当然大きな問題点として認識しておりましたし、再三にわたり、その面についてのヒアリングもして参りました。ただ、いくら言っても弁解になるわけですけれども、結果としては、私はやはりストレステストとしてのストレスのかけ方が結局十分ではなかったということ、それにつきましては大変遺憾でございますし、書面審査とヒアリングを中心にしてこういうことについて、行政自身がコンピューターの前に立つわけにもいかないわけで、私が報告を受けた限りについてはリスクを何度も指摘し、ストレステストを促してきたというふうに報告を受けておりますけれども、もしそれが足りないということであるならば我々も反省しなければいけないと。

いずれに致しましても、今重要なことは、一刻も早くこの決済機能についての国民の信認を回復することです。ということは一刻も早く、「みずほ」のシステムが完全修復されることです。それに向けて、我々も血眼になって「みずほ」の努力を促していますし、「みずほ」自体が血眼になって一刻も早く回復に向けて努力しているというのが今日の姿ではないかと思います。

問)

本日、自民党の相沢税制調査会長の講演会がありまして、その中で来年4月に予定されている普通預金のペイオフの凍結解除について、これをやはり延期した方がいいのではないかということを御発言なさったそうなのですけれども、このような意見に対しての長官の御感想、御認識をちょっとお願いできますか。

答)

預保法の改正によりまして、流動性預金、決済性預金についてはペイオフ解禁を一年先にすると、そういうタイムラグを置くということで、預保法を改正してこの4月1日を迎えたわけでございまして、金融庁と致しましてはそのタイムスケジュールに則って、来年4月1日までにこうした流動性預金のトラブルも絶対起きないようなシステムを作るとともに、健全性の点でも更に万全なものに持っていく、そして予定通り来年の4月1日に流動性預金につきましても、ペイオフが実施されると、そういうタイムスケジュールを現在金融庁が考えております。

相沢先生がそういう御講演をなさったということは、今初めてお聞きしますけれども、それは、政治家として、あるいは党としての一つの考え方としてお話になられたのだと思いますし、もしそういう議論について、今後各方面で議論が深められていくということであるならば、金融庁としてもそうした議論を注視して参りたいというふうに思っております。

問)

生命保険の契約者保護機構の財源問題について、長官はどのような御見解を持たれておりますでしょうか。漠然とした質問で恐縮なのですが。

答)

御承知の通り、契約者保護機構は、民間から5,600億円、更に予算措置を伴った上で必要があるならば国から4,000億円という枠がある。それが来年の3月31日までの枠組みとして作られているということが、一般的に言う制度的な枠組みの話のわけで、現在、これまでの生保の破綻によりまして、5,600億円の方は200億くらいを残して使われているという状況にあります。しかし、これで生保についてそういう破綻というものが止まるならば、それ以上のことは別にいいわけでございます。

そういう面で、我々当局として、一番ウォッチすべきは現在の各生命保険会社の健全性という問題だろうと思います。幸いにどの生命保険会社も、ソルベンシーマージン比率200%をはるかに上回るソルベンシーマージン比率を維持しているというふうに理解しております。これはもうすぐこの3月期の決算が我々に報告されれば、より確実な情報になると思うのですけれども。

更に基礎利益の面でも、昨年9月は費差益、死差益、利差益全部合わせて基礎利益は全体で1兆円上げておりますし、いろんな観点から我々は気を緩めずに現在の生命保険会社の健全性を見ているわけでございますけれども、当面そういう懸念はないというふうに認識しております。

一方、枠組みの話として、では来年の4月1日以降どうするのかということを、今御質問になられた記者の方は、お聞きになっているかもしれませんが、これは保険業法の改正の際に附則でその後どうするかについては「より議論を深める」ということにもなっているわけでございますので、今後議論していく問題であるというふうに認識しております。

問)

それは金融審議会で議論するということですか。

答)

そこのところは、まだはっきりと決めているわけではございません。

いずれにしても、4,000億円の予算措置が切れるか切れないかという問題でございますので、それなりの3月31日までに何か結論を出さなければいけないというふうに思っております。

問)

特別検査なのですけれども、これは金融庁の信認を回復する意味でも導入されたと思うのですが、今後も同じような形で続けていかなければならない状態にあるのでしょうか。

答)

結論から先に言えば、この7月から新しい検査事務年度を迎えるわけで、その検査事務年度を迎えるに当たりまして、検査局の新事務年度における検査体制というものはどうするのかということが検査局内部で議論し、私に上がり、大臣に上がっていくと。その中での検討ということでございまして、現時点において、前のめりに何かそれについて申し上げることは差し控えるべきだというふうに思っております。

ただ、いずれに致しましても、私はいわゆる今回の特別検査、市場評価が著しく低下した企業等を一定の客観的基準で選び出して、その選んだ企業のメイン行に立ち入って、その当該企業の資産査定を3者協議で行うと、これが今回の特別検査のポイントかと思いますけれども、そういうものを特別検査という時に、そういう特別検査を更に行う必要があるかどうかということは、十分に大臣のお考えをお聞きしなければいけないと思いますし、今の時点でまたやるということは言えないと思います。

ただ、一般論として言えば、そういう債務者企業を特定して云々ということは別に致しまして、デフレ経済が続き、右肩下がりの経済が続くとするならば、やはり何らかリアルタイムの検査というのは通常検査の中でも、そういう要素を今後入れる余地があると思いますし、そういうように通常検査の中でのリアルタイム検査というものを、やはり拡充していく余地は、こういうように右肩下がりの経済の場合はそういうことも考えられるというふうに思います。ただ、それを特別検査と名打つかどうか、これはまた話は別だと思います。

(以上)

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