森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年4月15日(月)17時03分~17時36分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

先週末に特別検査の結果がまとまって、公表されたわけですけれども、特別検査によって1.9兆円の処理損が計上される見通しということなんですけれども、全体として、この特別検査の結果について長官のご所見、まあマーケットやいろんなところでは様々で「先送り色が続く」とか、なかなか見解が分かれるところがあると思うのですが、そのマーケットの受け止め方とか、外部の評価についても含めてどのようなお考えでしょうか。

答)

特別検査はご承知の通り、市場の評価に著しい変化が生じている等の債務者について、一定の客観的基準で対象企業を選び出した、それが149社だったということでございますけれども、それについて言わばリアルタイムの債務者区分というものを、いわゆる3者協議で確定して行く作業を行ったわけでございます。それを昨年の10月に検査を開始したわけでございますけれども、もちろん我々はどういうものになるのか何ら予断を持っておりませんでした。ただ、結果として処分損のベースで申し上げれば1.9兆円出たということでございます。その1.9兆円の中身を更にヒアリングをしながら分析いたしますと、先週金曜日、皆様方のご質問に答える形で申し上げた通り、昨年の11月、特別検査が行われるということを前提にして主要13行が処分損の見込み値を発表したわけですね。それが6.4兆円だったわけですけれども、今からヒアリングベースで確認いたしますと、6.4兆円の中に、結局、特別検査分が1.5兆円含まれていたと。しかし、結果的には6.4兆円から7.8兆円に膨らんだわけですね。1.4兆円膨れ上がったということですね。これを更に特別検査分とそれ以外の分に分けますと、0.4兆円が特別検査分の更なる追加、1兆円がそれ以外の分の追加と、こういうことに分析されるわけでございます。

これをどう見るかということでございますけれども、149社の内、いわゆる下位遷移したものが71社、更に破綻懸念先にまで落ちた社が71の内34社出たと。その割合を見ても、更に先程申した処分損の数字を見ても、かなり厳しいものがあったというふうに思います。これは基本的には、そもそも対象を市場の評価に著しい変化が生じる、株価とかレーティングとか、そういうもので選んでおりますから、最も下位遷移をされる対象を、言わば相当程度把握してやったものでございますから、結果としてこういう下位遷移率が約5割、更に破綻懸念先は更にその5割ということが出て来たというのは頷けるわけですけれども、まあそれだけ、ある意味で現在の業況というものがこういう検査結果に反映しているのかなというふうに思えます。

今後どういうふうになるのかということは、正に不良債権は業況との相関関係が深いものでございますので、何か予断を持って申し上げるのは非常に難しいと思いますけれども、私は、一つは今回の新しい施策で主要行に要請しました「1年目に5割、更に2年目でその大宗をオフバランス化して欲しい」ということを主要行が実行して行く、これが一つの前提です。もう一つの前提は、今年の1月でしたか、内閣府が発表されました「改革と展望」に示されているような経済回復のシナリオが実現して行く、即ち、14年度、15年度は集中調整期間だけれども、16年度からは名目成長率で見ても2.5%程度の成長を確保すると、こうしたシナリオを前提にすれば、我々は16年度末には不良債権問題というものについて、いわゆる我々が目指している不良債権比率で言って3%台、与信費用比率で言って0.3%台というものが確保出来るのではないか、それに向かって我々は最大限努力して行くと、こういうことではないかと思っております。

問)

今、最後の方で与信費用比率と不良債権比率のことを仰いましたけれども、今回、3月期の各行の取りまとめ数字に基づいて、金融庁としては、実際の大手行の3月期の与信費用比率であるとか、不良債権比率は現時点で把握はされているのですか。

答)

それはまだ決算作業を各銀行がしている最中でございますし、そこまでは各行にヒアリングしても、現在、数字が決算と結び付きが深い数字というものは、まだ我々は把握しておりません。従って、それはもう少しお待ちいただきたいというふうに思っております。

問)

不良債権処理の問題に絡んで、これだけ特別検査で不良債権の処分を進めたということで、結局のところ、大臣も「不良債権処理の二つ目の山を作った」というような表現をされていますけれども、長官ご自身、その不良債権処理の、3月期を踏まえて、今問題になっている公的資金の注入についてお考えというのは変わっていませんでしょうか。

答)

まず申し上げたいのは、やはり7.8兆円の不良債権処理というのは、主要行の業務純益が4兆円程度だとすれば、相当体力に大きなインパクトのある、相当大きな数字であると思います。それは大臣もそこを仰られたのだと思うのですけれども、平成9年度末が約10兆円。平成10年度末が10.4兆円でしたか、約10兆円。平成11年度末、平成12年度末は4兆円少しと。そして平成13年度末に7.8兆円と、そういうことから大臣は「一つの山を築いた」という表現をされたのだと思います。

これは、その間の業況の変化からして、止むを得ないものだったと思いますし、むしろこの13年度末に、ある意味で大変厳しい資産査定をして、言わば現時点における膿は出し切ったというふうに思っております。ただ、現時点における膿を出し切るという問題と、今後大丈夫なのかという問題は、これはまた話は別でございますので、今後につきましてはこれまでも申し上げています通り、収益性の向上、それによる財務基盤の充実というものを果たして行かなければいけないと思いますし、銀行が健全に経営されるためには一刻も早く正常化、即ち不良債権処分損というものは業務純益の範囲内に収めなければいけないと、これはもう当然でございますので、そういう正常化の状態に一刻も早く持って行ってもらいたいと思っております。

そして最後に、ご質問の公的資金の注入はどうかと言われれば、現時点においては、先週金曜日に各行が発表いたしました通り、国内基準行で8%から10%半ば、国際基準行で10%から11%半ばでございましたか、そういうように健全性基準をはるかに上回った状況に現在はあるわけでございますので、現時点における公的資金の注入というのは必要ないのではないかと思いますけれども。

しかし現時点においてこうだということと、今後について何か予断を持つということは別でございますので、今後も毎日毎日、全力を上げてモニタリングをしていますし、適切な監督を行って参りたいと思いますし、それでもなお万が一預金保険法102条に定める要件に該当するようなものが生じるならば、それはやはり果断に公的資金の注入を含む102条に定める施策はとらなくてはいけないことは当然かと思います。しかし、現時点において何かを予断するということはしておりませんけれども、しかし毎日毎日懸命な監督・検査を進めて、金融行政として誤りのなきようにやって行きたいというふうに思っております。

問)

「みずほ」の問題ですが、このところ統合直前の3月30日、31日の時点で、既に1日は処理が遅れそうだということを把握した上で1日の統合、開業に踏み切ったのではないかというようなことが報道されていますけれども、金融庁としてはこういう事実は把握されていますか。

官房長官は「もしそういうことであれば相当に責任は重い」というようなコメントをされているようですけれども、事実関係についての把握状況はどうですか。

答)

「みずほ」からは4月10日に銀行法24条に基づく報告、説明を受けました。ただ結果的には、必ずしも実態を解明しきれていない部分が残っておりますので、4月10日の報告はあくまで中間報告といたしまして、追加的な報告を求めております。その4月10日の報告の際に、今ご質問になられた記者の方がご提起された問題、即ち4月1日のシステム移行の前に何かトラブルが発生していたのを知りながら開業に踏み切ったのではないかといった疑念ですね、これについても当然我々は質したわけでございますけれども、先方の説明は「3月30日からの移行作業の中で、事前作業としての振替作業、これはバッチ処理と言っているようですけれども、その事前作業としての口座振替作業の一部に遅れは確かにありましたが、統合に支障が出るような問題ではないと認識しておりましたし、そういう認識の下で金融庁にも報告をいたしませんでした。」という口頭説明がございました。

今から考えればそういう判断が正しかったかどうかという問題になるわけですけれども、当時からすれば金融庁は一切そういうことは報告を受けておりませんでしたし、また4月10日の段階で、「なぜそういうことが、一部でも作業遅れがあったのならば報告してくれなかったのか」ということに対して先方は、「4月1日の早い段階でそういう遅れは修正出来る。統合には支障がないという判断をした。」という認識を示しておりました。

これについては先程も申しましたように、更に事実関係の解明が必要だと我々は思っております。そういう意味で4月10日の報告を中間報告といたしまして、更に3月30日、31日はどういう状況だったのか。更に4月1日以降はどういうトラブルの内容だったのか、その原因は何だったのか。更に銀行の対応はどうだったのか、そして最後に再発防止策は何を考えているのかということについて、今後の追加報告で厳しく報告を求め、更に実態解明をした上で監督上の対応を考えたいというふうに思っております。

なお、「みずほ」について直近時点で先方に質しましたところ、「ATMについてはもう完全に修復している。更にこれまでの二重引き落とし、あるいは誤送金等についても全て対応は終わっている。」ということです。問題は口座振替の遅延の問題ですけれども、そうした口座振替の遅延については、「今週半ばに完全修復出来るよう、最大限努力している。」という報告を受けております。

問)

この問題は結構、実際に決済機能というか国民生活に非常に密接に関係していて、影響が非常に広がっているわけですが、「みずほ」のこの間の対外的な説明とか記者会見等で国民への説明ですね、こういったもの、あるいは金融庁に対する説明というのは十分な体制だったのかどうか、これについてはいかがでしょうか。

答)

そうした点も含めて追加報告を受けまして、我々としてもそれを分析して、監督上の最終判断に繋げて行きたいと思いますので、今の段階でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

監督上の最終判断ということは、みずほグループとしての経営陣の責任問題、あるいは行政処分も含めたものを考えていくと、そういうお考えですか。

答)

もちろんそういう点も含んでおります。ただ、その実態をまず解明するということ、実態をきちっと把握するということをした上で判断していきたいと思いますし、まず何よりも今の「みずほ」に強く指示し、また期待していますのは、一刻も早く完全修復するということです。それがやはり銀行にとって最大の使命であります決済機能への信認の回復という上で重要なことでございますので、何よりも早く完全修復して欲しい。

なかなか安全宣言というのは難しいのだと思うのです。それには5・10日を、今日も5・10日だったわけですけれども、更に25日、30日、そして翌月の1日と、完全修復した後もそこら辺でテスティングを重ねていかないと、なかなか安全宣言とまではいかないと思いますけれども、そういう時を経た上で、とにかく「みずほ」の決済機能はもう大丈夫だというふうに早く持っていって欲しいというふうに強く期待しております。

問)

追加的な報告を求めた期限というのは決まっているのでしょうか。

答)

期限は定めておりません。もうほぼ毎日のようにやっております。そんな悠長ではなく、こちらももう必死でございます。毎日毎日やっております。ただし、監督上の対応のための、いわば、何と言いましょうか、いろいろな証拠集めみたいなことにもなるわけですけれども、それがあまりにも過重な負担になるが故にまた完全修復が遅れて行く、これは避けなければいけない。それはそう思っております。しかしその中で毎日、報告を求めております。

問)

破綻懸念先を1年目で50%、2年目で80%と、最終処理のオフバランス化ですか‥‥。

答)

1年目で50%ですね、2年目で少なくとも80%を目処にして欲しいと。

問)

これは今、RCCの買取状況というのは進んでいないような状況の中で、どういう形で進めていかれるつもりでしょうか。

答)

私はRCCの買取状況は進んでいないとは思っておりません。やはりこの1月から二千数百億円出てきた、これからまた更に進むということで、RCCの機能拡充による買取の進展というのは大いに期待しております。それ以外に、売却先はRCCだけではないので、それ以外の不良債権市場での売却も当然歓迎でございますし、それ以外の私的整理というものもあると思いますので、私は5割、更に2年目で大宗というのは、高いハードルではありますが、越えられないハードルだとは思っておりませんので、強く主要行に要請していきたいと思います。

問)

みずほの件で、10日の第一の報告の時に、不十分であったというお話だったのですけれども、3月31日、4月1日の未明の段階でもいいのですが、システム障害について何らかの不安が「みずほ側」は認識を持っているという話は、一つもなかったのですか。

答)

全くありませんでした。それを、従って皆さんのそういう疑念の面から我々は聞いたわけですけれども、先方の認識が、先程も申しました通り、バッジ処理における口座振替作業の一部にこれはあったけれども、統合に支障が出るような問題ではないという認識だったわけですから、今を起点にして、それは甘かったかどうかと、これはこれから検証しなければいけませんけれども、当時の先方の認識はそうであったということでございます。

問)

金融庁としても最後の最後まで不安はないのかという問い質しは‥‥。

答)

問い質しはずっとしておりました。検査で指摘をして、昨年の3月から6月における立入検査で、金融庁にもシステムの専門家が検査局におりますので、そういう人が中心に、いろんなコンサーンズを、懸念を先方に示しておりましたし、監督局の方でも3月になって、「大丈夫ですね」ということは十分確認してきたつもりでございます。

問)

主要行に対する特別検査の結果の発表の際、今後の施策として「金融機関の合併促進」についても発表されましたが、少し時間が足らなくて聞けなかったものですから、改めてお伺いしたいのですけれども、今回のいわゆる与信額2,000万円の足切で、逆算をすれば、非常に小規模な金融機関については、合併促進をするというふうにとれないこともないのですが、そこはどういうふうにお考えでしょうか。

答)

小規模なとはどういう‥‥。

問)

大変小さな、ですから資本の部の1%と2,000万円のいずれか小さい額未満の債務者ということになっておりますので、そこから類推をすれば、例えば100億円とか、200億円とかの金融機関は合併とか、再編をしてくださいというふうに促しているというふうなことにとれるのですが、そうでもないのですか。

答)

ちょっと仰っている意味がストンと心に落ちないのですけれども、まず足切との関係で言えば、我々はそこは関連付けているつもりはございませんで、検査局長が説明したと思うのですけれども、これはあくまで敢えて言えば優良金融機関、即ち前回の検査結果が良かったとか、あるいは自己資本比率が非常に高い金融機関だとか、そういう金融機関についての足切でございまして、これは今まではどれくらい足切するかは主任検査官に任せていたところを、一つの、何と言いましょうか、そういう優良金融機関については2,000万円以下ということを示すということの意味でございまして、何か検査を甘くするとかそういう意味ではないつもりでございます。

それと地域金融機関の合併策の促進とがどう関連するのか、ちょっと私の理解力が悪いのかもしれないですけれども、地域金融機関の合併の促進というのは、やはりこれから一つの流れとして考えられるのだろうと思いますし、その合併によりましてリストラ効果が更に上がるとか、それによって収益性がより上がっていくということであれば、それは歓迎なわけでございまして、今回発表致しましたのは、何か確たる合併策というものをイメージしているわけではございませんけれども、何かそういう合併を促進するような策があるならば、打ち出して行きたいということでございます。これはやはり800くらいある金融機関の中でも、基本的には地域金融機関というのが非常に大きな数を占めているわけでございますので、そういう合併促進策を検討することが時宜に即したものであろうという大臣の御判断でございます。

問)

今の件なのですが、合併促進について地域金融機関に限ったところは、これは主要行はもう十分やったということですか。それとも彼らは自発的にできるから放って置いてもいいということですか。

答)

すみません。「主として」という言葉が入っていたと思うのですけれども、決して主要行抜きに考えているわけではございません。主要行ももちろん頭の中に入れながら検討策を考えていきたいと思います。少なくとも主要行に汎用性のあるものを考えていきたいというふうに思っております。従って、もう主要行は今のままでいいのだというふうに我々が判断しているわけでは決してございませんので、そこは誤解のないように。「主として」地域金融機関という意味でございます。

問)

先程の話で、「みずほ」の経営陣の責任ということについてですが、行政処分と経営陣の責任ですね。これは銀行法上の26条でしたか27条でしたか、そいういうことも視野に入れているということなのですか。経営陣の責任というのは金融庁としてはどういうふうなことを考えているのですか。

答)

我々は行政処分というのは、過去に起きたことについてペナライズするという意味はもちろんありますけれども、重要なことは、今後二度とそういうことが起きない体制に持っていくということにもあるわけでございまして、もちろん経営陣の責任というものを含むものでありますけれども、そこだけに焦点を当てた行政処分というものを考えているわけではもちろんないわけです。

なお、経営陣の責任につきましては「みずほ」からは、「まずは全面復旧と原因究明に全力を注いだ上で、しかるべき時期に責任の所在を明確化する所存である」というふうに我々は聞いております。

敢えて言うならば、我々からとやかく言う前に、当然みずほグループとしては、世の中が納得するような責任の所在の明確化というのはやるべきだと思いますし、やってくれるものだというふうに思っております。

(以上)

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