森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年5月20日(月)17時01分~17時21分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

今日、大手損保各社の3月期決算の発表がございましたが、赤字を計上した損保も多かったように聞いています。こうした今回の損保の決算についてどのように認識されているか、受け止め方を教えていただきたいのですが。

答)

本日、上場10社が本年3月期の決算発表を行ったと承知しております。その結果は、10社合計ベースで正味収入保険料が6兆2,739億円、対前年度比で0.4%増ということで、前年度に引き続き増加を果たしたものの、一方、米国テロ等の影響によりまして、保険引受費用が増加したことに加えまして、株式相場の下落の影響を受けまして、減損処理による有価証券損が大幅に増加いたしました。その結果、ただ今の記者の方が仰られました通り、経常利益では10社合計で1,264億円の赤字となったと承知しています。

ただ、保険会社の健全度を示しますソルベンシー・マージン比率につきましては、この10社の中で一番低いところをとりましても700%を超えておりまして、健全性の基準であります200%は大きく上回っているというふうに認識しております。

問)

これも今日の話なのですが、みずほコーポレート銀行で送金システムの障害が起きたということですが、この原因などについてどういうような報告を受けていらっしゃるかということをお願いします。また、今回の障害をどう受け止められているかということと、4月当初の一連のシステム障害との関連について、あと今回の検査の対象になるかどうかということを含めて、どのように受け止めていらっしゃるのか教えてください。

答)

仰られる通り、本日午前にみずほコーポレート銀行の振込み取引の一部につきましてシステムトラブルが発生して、一部の取引に遅延が生じ、障害が起きたと聞いております。ただ、午後1時30分にはシステムは復旧したという報告も受けております。原因につきましては現在、みずほコーポレート銀行自体が調査中でございまして、一部の部店を経由する為替取引に障害が生じた、特にネット証券取引に係る為替取引の部分に遅延が生じたという認識、そういうふうに報告を受けていますけれども、その障害の原因、更に再発防止策につきましては当局の方から報告をするよう、直ちにそういう報告徴求を課しております。

いずれにいたしましても、みずほコーポレート銀行といたしましては、まずは送金障害を復旧することに全力を挙げたわけでございまして、それも午後1時30分には完了したということでございまして、原因究明及び再発防止策は今後のことになると思います。

ただ、ご質問との関連で言えば、現在正に立入検査中でございますので、当然こういうことも含めて原因究明、再発防止策ということを求める、検討する、そういうものの対象に当然なるものと思っております。

問)

先週、銀行等保有株式取得機構の特別勘定による株買い取りの発表があったのですが、政府保証枠の2兆円に対して、第一回目の買い取りは1,301億円という発表だったのですが、どのように評価されているか教えてください。

答)

銀行等保有株式取得機構の方から、2月15日から4月26日までの間の特別勘定による株買い取りの実績値の公表、今仰られた1,301億円の公表がなされたというふうに承知しております。これは取得機構の方に立って、銀行からどれだけ買ったかという実績値の公表でございまして、むしろ、ただ今の質問との関連で言えば、銀行の方から取得機構をどれだけ利用したのかと、つまりセイフティーネットとしての効用をどの程度果たしたのかというのがご質問の趣旨なのではないかと思います。

そういう観点で申し上げれば、我々は、決算とか年度ということに、どうしてもそこに眼が行くものでございますので、先程の1,301億円の期間とは、即ち期間的にはずれておりますが、本年2月15日に買い取りを開始してから3月末までということで主要行に対してヒアリングをかけました。株式の処分総額、主要行で2月15日から3月末まででいくらだったかということをまず把握しようとして各行にヒアリングをかけました。その計数をご紹介させていただきますと、約7,500億円でございます。

この約7,500億円、これは主要行が2月15日から3月末まで、約1ヶ月半の間に株式を処分した総額でございますけれども、これを大きく分けますと、予め機関投資家、発行会社等の株式買取り先が確保されていたもの、つまり売るのですけれども、それは売るのは持ち合いの関係から、相手から市場とか取得機構に売るのではなくて、「ここに売る」ということが、言わば相手つまり発行会社との間で約束されていたもの、これは言わば、もちろん市場価格というもので売るわけですけれども、言わば市場への影響がないものでございます。この部分が今の約7,500億円の部分の大きな一つとしてあるわけでございます。もう一つはそういうものではなくて、株式市場の価格形成に影響を与えるような株式処分、つまり今買い取り先が予め決められているもの以外ということになるとその範疇になるのです。一体この割合が約7,500億円の内、何対何ぐらいだろうということをチェックいたしましたところ、予め買取り先が確保されているものは約7,500億円の約6割でございます。それに対して、買い取り先が確保されていないために市場に影響のある株式処分と言えるものは約4割でございます。ではその約4割、当然取得機構向けに売ったものはこの約4割の方に入るわけですけれども、4割の中で、ではその中で市場に売却しないで機構に売却したものはどのくらいかというと、この4割の中の更に4割でございます。

そのように考えますと、予め買取先が決まっている物というのは、今回のこのセーフティーネットという物の考え方をすると対象外でございますから、それはちょっと約6割の話は別にすれば、残った物の、つまりセーフティーネットとして期待されている総体の約4割が機構に行ったという意味におきまして、私は2月15日から3月末という1ヵ月半の実績ではございますけれども、この取得機構というものが一応期待されたセーフティーネットとしての効果を発揮したのではないかなというふうに考えております。

問)

みずほコーポレート銀行についてなんですけれども、正式に24条報告に基づいた報告を求めたということですか。

答)

いや、そういう意味ではございません。24条報告の前の、いつもそうでございますけれども、24条報告の前には当然、とりあえずということで報告を求めているわけです。今、その段階でございます。

問)

正式には求められるのですか。

答)

最初のヒアリングの内容によりけりですけれども、前の遅延と何か原因等においてそんなに変わったものでないのでしたら、当然それは前の時に24条報告でやったわけですから、今回も24条報告ということになるのではないでしょうか。

問)

みずほ側からの連絡なのですけれども、トラブルが起きた時に連絡があったのか、それとも後で時間が経ってから連絡があったのか、長官がお知りになったのはいつ頃でしょうか。

答)

これは、私は今日ちょっと事務次官会議等がございましたから、実は私の机の上にはメモとして早い段階に来ていたようですけれども、私が実際に知ったのは次官会議から戻った時ですから12時半くらいだと思いますね。ただ、担当課には、ほぼ同時に(連絡が)入ってきているというふうに聞いております。

問)

検査、考査で連携されている日銀との連絡なのですけれども、確かみずほコーポレート銀行には日銀の考査が入っているかと思うのですが、その連絡体制について何かコメントはありますでしょうか。

答)

これは仰る通り、現在やっている立入検査との関係では日銀の分野でございますので、当然日銀からこの件についての原因究明、再発防止策については我々の方にも連絡があると思いまして、それについて十分に日銀と意見交換をした上で、しかるべき対応を取ることになるというふうに思っております。

問)

今日の損保決算の絡みなのですけれども、新しく今期から時価利回りというものを指標として出していると思いますが、保険契約者にとっては重要な指標の一つになるかと思うのですけれども、生命保険会社がこれを開示しないということを聞いておりまして、保険会社で情報開示が泣き分かれしているという状況について、長官はどのように御覧になっていますか。

答)

これはいわば、法令に基づく義務付けの分野ではなくて、各社が契約者の信認を得るために自主的にやる分野の措置だと思っております。そういう面では銀行において預金者の信認を得るために積極的に開示を進めると同様、保険会社についても契約者の信認を得るために積極的に開示をするということは好ましいものだと思っております。

今、御質問になられたのは、業態間で生保と損保に泣き別れがあるというふうに仰られましたけれども、私は業態間で談合して、こちらは開示する、こちらは開示しないということではなくて、生保についてのご指摘の点について、よく聞いてみたいと思いますけれども、それは何か事情があるのであろうというふうに思っております。まあ、できるものは開示した方がいいと思いますけどね。

問)

指標がかなりマイナスだからということで、出したくないという見方もあるのですが。

答)

いや、いずれに致しましても、生保につきましても、いわば基礎利益、つまり三利源合計の世界で言えばプラスなのでございますから、その一部についてマイナス部分というのはあるわけでして、その全体がプラスだという世界の中で、一部についてマイナスだから隠したいと思われるのか、そういうふうには私は思わないのですけれども、よく聞いてみたいと思います。

問)

システムトラブルの件なのですけれども、最近、そういうシステムトラブルが起きたということが目立つのですけれども、これは「みずほ」の件を契機に、そういうものが報じられるようになって目立つようになっているのか、それとも今まで「みずほ」以前にもずっとそういうものが同じような頻度で起きていたのだけれども、小さなトラブルなので表に出ることなく終わっていたからなのか、どちらなのでしょうか。

答)

まあ、その両方の要素があるのでしょうね。率直に言いまして、マスコミの皆様の発信力というのは強烈なものなのだろうと思います。やはり、「みずほ」の問題が起きて、件数が250万件ということを契機に社会問題化した、そういうことで極めて報道に大きく取り上げられるようになった。よく見てみますと、それほど規模は大きくないけれども、いろいろシステムトラブルというのは、他の金融機関なり、私の管轄で言えば、金融機関で起きているということが分かってきた。それからいろいろ、記事の大小はあるけれども、いろいろ取り上げられるようになったということではないかと思うのですけれども。

私はその中身というのは、プログラムミスと人為ミスに分かれるわけですけれども、そういうミスがないことがもちろん最高なわけですけれども、しかし重要なことは、そういうものがトラブルが出てきた時に、可及的速やかに復旧させる能力、これがやはり重要なのではないかなと、これがまた国民の安心感にもつながるのではないかなと、そういうふうに思っております。決してこういう障害というのは絶対に起きないというわけでも、そういうことをギャランティできるわけでもないし、各国でもこれだけコンピュータライゼーションが進んでいても、やはりそういう障害というのは起こり得るという認識なんだろうと思います。問題はそれをどれだけスピーディに復旧させるかという能力を、やはり、そういうシステムに依存している企業は持つかというその能力が、これから非常に重視されるのではないかなあというふうに思います。すみません、私の感想でございます。

(以上)

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