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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年5月27日(月)17時02分~17時39分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

金融グループの決算についてお伺いしますが、先日、大手金融7グループの2002年3月期決算の発表がありまして、不良債権の残高が総額27兆円の規模に膨らんでいるということで、各行ともその処理原資を食い潰して、法定準備金を取り崩すというようなこともやっていて、財務体質も低下しています。

今後、デフレ経済が続けば更に企業倒産なり、業況の悪化というようなことが考えられて、不良債権の新規発生が続くということが簡単に予想されるのですけれども、本年度の予想で各行は不良債権の処理が業務純益の範囲内に収まるという見通しを発表していますけれども、そういうことを踏まえて長官のご認識をお聞かせ願いたいのですが。

答)

今ご質問になられた記者の方のご認識の通り、先週金曜日に発表になりました主要13行の今年3月期末の不良債権残高は、昨年9月期比で6.1兆円も増加しておりますし、更に昨年3月期比で言えば8.8兆円増加しているわけでございます。その不良債権の増加を要管理先債権と破綻懸念先債権以下に分けて、更に分析してみますと、先程「1年間で8.8兆円増えた」と申しましたけれども、その内、要管理先債権の増え方は約4.9兆円、破綻懸念先債権以下は約3.7兆円ということになるわけでございまして、まあ何でこんなに大きな不良債権の増加があったのかということにつきまして、その要因を考えてみますと、やはり私は大きく言って3つの要因があるのではないかと思います。

一つは、ただ今申された記者の方もお触れになりましたように、やはりデフレ下で足元の景況が今年3月に向けて非常に悪化したという景況の問題がやはり第一にあると思います。第二の問題としては、要管理先債権がこれだけ大きく伸びたということでお分かりの通り、一部の銀行が13年3月期にやったことを他の大手行が14年3月期にやった、つまり要管理先債権の基準の厳格化ということで、大幅に要管理先債権を増やしたということが不良債権の増加に繋がっているということかと思います。三番目の要因は、やはり特別検査にあったと。特別検査の結果が何でこんなに響いたのかというのは、単に149社についての話に止まらず、特別検査の一番の特徴はリアルタイムでの資産査定というところにあるわけでございまして、そういう特別検査がなされた、あるいはなされることを踏まえまして、主要13行は他の債権についても相当リアルタイムの査定というものを進めたと。これは13年3月時点の資産査定という意味において何も、現実の意味での前倒しではないのですけれども、今までの査定のやり方からすると、相当な前倒し効果があったと言わざるを得ないと思います。そういう前倒し効果がこの不良債権の増加に繋がっていると。私が見るところ、この3つの要因があろうかと思います。

では今後、大手13行が発表した来年3月期に向けた2.5兆円という不良債権処分損の予想が、果たして甘いのかどうか。我々の担当部局におきましてヒアリングを重ねて参りました。先方の説明では、一番大きい要素としては特別検査によりまして、大口問題企業についての処理に目処が付いたということ。つまり、今後1年間に渡ってそうした大口債務者についての不良債権処分損、それは勿論これからオフバランス化する部分もありますので追加的な部分は出て来ますけれども、それによる不良債権処分損の増というのは極めて限定的であるということが一つ言えることだということ。あとは直近の貸倒実績率を用いているということ。更にオフバランス化に伴う追加ロス、最終処理費用もきちんと計算していると。その上で、大手13行について個別に積み上げた結果を単純に足し合わせると、この2兆5,000億円という数字が出て来ているものでございまして、今質問された記者の方はどちらかと言うとマクロ経済的に見られたご質問をされましたけれども、各行ともそういう個別積み上げでこれを出しているということで、我々としてもそういう個別積み上げの結果として聞いておりまして、それはそれなりに合理性のあるものだというふうに思っております。

ただ、各行とも、勿論景況によりますと。つまり新規発生分がどれくらい出て来るかによるということは、どこの銀行も勿論リザーブをしているわけでございまして、そういう意味におきまして、やはり今後1年の景況が今年1月に内閣府が発表した「改革と展望」に沿った成り行きを示して行ってくれることが勿論重要な点であり、一つの前提になるのではないかというふうに思っております。

問)

内閣府の示したその前提、成り行きが一つの前提というお話がありましたが、それも踏まえて、金融庁の方で不良債権処理のシナリオというのを描いていらっしゃると思いますが、その2005年3月には不良債権問題を正常化するというようなシナリオについて、この今の段階でその見直しをする必要性というものについてはあるのかないのか、どういうふうにご認識されていますか。

答)

私が先程申した理由、即ち1年度をとって見れば確かに、昨年8月に経済財政諮問会議に提示いたしました「不良債権問題正常化に関する試算」という金融庁が一つの試算を出したわけですけれども、そこの13年度分、即ち今年の3月期の部分だけをとったら、そこから相当乖離した上振れをしている、それは事実でございます。しかし、それだけをもってこのシナリオは狂うのかというと、私はそうではないと思っておりまして、それは先程申しましたように、相当な前倒し部分がこの13年度に含まれておりますので、13年度、14年度、15年度の合計で物を考えた場合には、今の段階でその試算で描かれているシナリオを変える必要はないというふうに考えておりまして、16年度には不良債権問題が正常化するということが可能であろうというふうに思っておりますし、それに向けて全力を尽くして行かなくてはいけないというふうに思っております。

具体的に言えば、去年の8月以降に当局が示しました「原則2年で、破綻懸念先以下については概ねオフバランス化をする」という要請、更に「特別検査結果については2年を待つことなく速やかにオフバランス化をする」という要請、こういうものを踏まえればオフバランス化が進み、26.8兆円の不良債権も急速に縮小して行くことが可能であろうというふうに思っております。

勿論、繰り返しになりますが、26兆円というものは、オフバランス化政策によって急速に縮んでも、景況が悪くなれば新規不良債権が落ちて来るわけでございますので、それにつきましては「改革と展望」に示されたシナリオ、即ち名目成長率で言いまして13年度マイナス1%近いようなデフレであっても、14年度はデフレを克服し、15年度はプラス2.5%の名目成長率というような、そういうシナリオが現実のものとなるならば、そう今回の不良債権増加によって不良債権問題の正常化が16年度中までよりもっと延びるのではないかという悲観的な考え方にならなくても良いのではないかと思います。

問)

24日に国会で「政府系金融機関検査法」が成立しまして、政府系金融機関に対する金融庁の検査が実施される運びになりました。ただ監督権限は所管省庁に残ったままということで、その検査の結果がどれくらい運営面に反映されるかということについてはちょっとまだ疑問が残るような気がします。金融庁検査の実施によって政府系金融機関の運営に与える影響というのはどういうふうに変わって行くかということについて、どう予想されているかお聞かせ下さい。

答)

この問題については、昨年12月25日の閣議口頭了解において明らかな通り、金融庁検査の導入というのはリスク管理の分野に限られる、主務大臣はリスク管理についての検査の権限を金融庁長官に委任するということになっているわけでございまして、政府系金融機関検査法の中での金融庁の期待される役割というのは、先般、柳澤大臣が国会で答弁されている通り、政府系金融機関のリスク管理面における健全度をレントゲン写真に撮りまして、当該政府系金融機関の主務大臣にお届けする、報告するということでございまして、その後、そのレントゲン写真をどう活かして主務大臣が、あるいは主務官庁が当該政府系金融機関の監督を改善して行くかということにまで当方が口を挟むことを期待されているものではないというふうに思っております。

問)

最近の株価動向に対する認識についてお聞かせ願いたいのですが、今日、取引時間中では年初来高値というものを付けましたが、こうした株価の動向について金融機関への影響も含めてどのように認識されているかお聞かせ下さい。

答)

いやもう、時価会計導入以降、金融機関への影響というものは株価について当然あるわけでございまして、我々としては最大の関心を持って市場の動向を注視しております。ただ、株価自体についてはいろんな要因によって上がったり下がったりするものでございまして、それに対して一喜一憂することなく客観的に眺めているわけでございますけれども、基本的には株価は中長期的には日本経済のファンダメンタルズの先取りの面が多いわけでございますので、日本経済自体が強くなって行くという認識が広く行き渡ることが株価上昇に一番繋がることではないかと思っておりまして、そういう面では、政府の5月の月例経済報告で景気底入れ宣言がなされたこと、またそれに伴う我が国景気の回復期待感の高まり、そういうものが最近若干ではありますが株価が上がっている要因なのかなあと、こういうような上昇傾向が日本経済が強くなること、つまり実力を伴ってそういう株価の上昇が続いて行くことを期待しております。

問)

昨日、テレビで自民党の亀井静香議員が、相変わらず中小企業の破綻について、金融庁の検査マニュアルを画一的に当てはめるから破綻しているんだというようなお話をなさっているわけですが、いくつかの改善というか、いろんな努力をなさっていると思うのですけれども、なお、そういう見方が政治家を中心に多いわけですが、どうしてなのかということと、今、金融庁として現時点でどういう対策を考えていらっしゃるのかお聞かせ下さい。

答)

ご承知の通り、今、仰られたような方の意見も踏まえまして、4月12日でございましたか、金融検査マニュアルの中小企業融資編というものを皆さんに公表致しまして、パブリックコメントを受付まして、そして現在そのパブリックコメントをいろいろ精査して、より良いものに出来るかどうかを今、検査局でやっているところでございます。

まあ、中小企業金融機関と言えども、預金取り扱い金融機関でございまして、その求められる健全性については大手行と同じでございまして、当局と致しましては、金融検査マニュアルそのもののダブルスタンダードということについてはいかがなものかということが一方にあり、しかし他方において、大手行が融資している大企業の健全性の検査と、中小零細企業の健全性の検査、あるいは貸し倒れリスクの検査というものは、やはり相当違いがあるのだろうということも事実でございまして、この二つの狭間の中で我々としては金融検査マニュアルの中小企業融資編というものを具体的な検査の違い、つまり大企業の検査と中小企業の検査では着眼点がこれだけ違いますということを世に出して、皆様方の御批判を仰いだわけでございまして、それをまとめてこれからそのマニュアルを完成させて、新事務年度から適用したいというふうに思っておりまして、私としては是非そういう一線の検査官は、この実態を踏まえた検査をすることによって、そのような、つまり金融庁の検査に欠点があるから中小企業が倒れるとか、そういうような話がなくなっていくということを強く期待しております。

問)

そうすると、確認なんですけれども、中小企業融資編という、別冊のマニュアルの見直しによって、中小企業の資金繰りが今、苦しいと言われているのが改善するというふうにお考えということですか。

答)

いや、今仰った記者の方は資金繰りという点に触れられましたけれど、その点については資金需要の問題とか、あるいはいろんな要素があると思うのですけれども、少なくても、例えば中小企業が銀行に借り入れに行った時に、その中小企業が健全であるにも関わらず、銀行側が、「こういうのは、金融庁の検査であなたのようなところには貸し出してはいけないと言われているのです」とか、そのような声が今回の話でなくなっていくということを期待しております。

つまり、私が心配していたのは、いろんな時に何か金融機関が金融庁の検査を理由に貸し渋りとか、そういう話がいろいろ全国津々浦々にありますよということを聞いて私は心配しているわけでございまして、そういうような誤解は、今度の中小企業融資編を良く見ていただければ、借り入れする中小企業の方も当然それを読んでいくわけでございますので、そういうことはなくなっていくのではないかというふうに期待しております。

問)

先程の不良債権残高の話なのですけれども、一応4月に「5割8割ルール」というものを発表されていますが、これも含めてシナリオに変更がないということを仰られたわけですよね。

答)

これも含めてシナリオに変更がない‥‥。

問)

3年以内にオフバランス化、その前提として5割、8割で処理していくと。それも含めて今のところは不良債権は増えているけれども‥‥。

答)

もう一つありますよ。特別検査について破綻懸念先になったものは速やかにと、今年度内にと。それも新しい要素に入っております。つまり私が言いたかったのは、去年の8月に比べますと前提となるものが相当厳しくなっているということです。

去年の8月では3等分でオフバランス化していくみたいなことを想定しておりました。それが、その後のいろいろな状況の変化に応じて、当局が大手13行に要請する水準が相当高くなっているということを言いたかったわけです。それを踏まえれば、26.8兆円についても、例えば単純に計算すれば、先程ちょっと破綻懸念先について13年度を分析すれば、26.8兆円の内訳は、要管理先が11.3兆円、破綻懸念先以下が15.4兆円と申しましたけれども、我々が先程のすごく厳しくなった我々の方の要請を前提にすれば、約15兆円の破綻懸念先も、来年度に3分の2くらいはオフバランス化できるのではないかと、それは単純計算です。ただ、いろいろな事情がありますから、あくまで原則8割とか、原則今年度内とか、やはりどうしても原則が付きますから必ずそうなるとは申しませんけれども、そういうものを目標にしたいというふうに思っております。

問)

それは今でもお変わりになっていないと。

答)

「今でも」というか、今回、そういう試算をしているわけです。

問)

新たな追加的な施策というのは特に必要ないと。

答)

それはもうこれ以上、今のところ頭の中にはございません。非常に厳しいハードルを、今、大手13行にかけているわけでございます。大手13行は、破綻懸念先を1年間に10兆円無くすなんていうのは、それは大変なハードルでございます。

問)

先程、去年のシナリオについて質問が出ていたので、改めて長官に伺いたいのですけれども、あのシナリオを作った時からすると、そもそもあのシナリオはいろんな前提があって、それがあたかも公約のように伝えられているということについてちょっと疑問があるのと、それと相当制度的な前提が変わっているので、この際あのシナリオを参考にするとか何とかということはちょっと不良債権の将来像を考える上で、あまり有用ではないのではないかというふうに思うのですけれども、長官はどういうふうにお考えですか。

答)

全く同感です。去年の8月、当方のプレゼンテーション、つまり試算という言葉の意味についても皆様方への説明が誤解を生んだという反省を私自身、持っております。何も見通しでもなければ、そういうものではなかったわけですけれども、どうしてもああいう試みの算というものを出しますと、見通しみたいに受け取られる面もあるのかなあという反省を持っております。 そういう意味におきまして、ただ今、御質問になられた記者の方と同じ気持ちを持っております。

ただ、先程も申しました通り、あのシナリオからは、確かに多分、相当な上振れをしているのではないかと思いますけれども、しかしよくよく要因を、前倒し要因とか、あるいはオフバランス化の前提もその当時より厳しくなったとか、そういうことを噛み合わせると、今考えても数字はともかくとして、16年度中には正常化、即ち不良債権比率で言って3%台になる、4%を割るということ、与信費用比率で言って0.3%程度という、そういう見込みについて、そう私は狂いはないのではないかなあという考えを持っているということでございます。

問)

先程のオフバランス化のハードルについてですけれども、仮に達成できなかった場合、原則という言葉が勿論付いているとしても、そのハードルを越せないような結果になってしまった場合には、何らかの対応なんていうものは‥‥。

答)

いや、そういうこととはちょっと違うのではないかと思いますね。勿論、その時まで待つわけではなくて、いろいろ先方と非常に定期的に我々はヒアリングしております。各銀行のオフバランス化の状況を相当な頻度で我々はヒアリングで確認していきますので、ある日突然、何か違ったものが出てくるということはないだろうと思いますけれども。しかし、今、質問された記者の方の趣旨というのは、何かそれを達成できなかった時には何かということですけれども、我々は当然のことながら相手に対してそれを達成すべく最大限の努力をして頂きますし、その報告は頻度をもって受けますし、もし達成できないところがあるとすれば、それはそれなりの合理的な理由があるところだというふうに思っております。

今、ご質問された記者の方の趣旨が業務改善命令とか、24条、26条の世界というのであれば、そういうような頭で私は物を言っているわけではないということでございます。あくまで監督上の措置でございます。

問)

優先株が無配になった銀行に対する議決権の行使なのですけれども、これは今のところ3行ということで宜しいでしょうか。

答)

そう認識しております。

問)

利益処分案とか人事案件とか、いろいろ出てくるんだろうと思うのですけれども、これから総会に向けてどういう作業をされていくのでしょうか。

答)

これは、金融庁が、あるいはその前身である金融再生委員会が公表致しました、いわゆる「3割ルールの明確化」というガイドラインをよく読んで頂きたいと思うのですけれども、そのような国の優先株に対する無配行が出現した場合には、抜本的な収益改善策を求めるということでございます。

従いまして、来年の3月に向けて抜本的収益改善策を作って頂きまして、それを実現してもらわなければいけないわけです。その作業が、これから株主総会までの間に、当該3行はきちっとやって下さるものだと思いますし、その抜本的収益改善策は、当然我々もチェックさせて頂きます。その結果として、我々も納得したものを収益改善策として、当該3行に株主総会前に、当方の納得したものを公表して頂くことを考えておりまして、抜本的収益改善策を前提に当局としては株主権を行使したいと、こういうふうに考えております。

まあ平たく言えば、我々が賛成できるような策を各無配行には作って頂くということを考えているということでございます。

問)

確認なんですが、先程の昨年8月に公表されたシナリオの話ですけれども、そのシナリオを遵守するのは適切ではないというふうに考えているわけではないのですよね。

答)

そうは思っておりません。適切とか、そういうことを言っているわけではございません。

問)

去年のシナリオとしてはあくまでも‥‥。

答)

それは昨年8月に発表したものですから撤回はできませんから、それはそれとしてあるわけでございます。

ただ、私が申し上げたかったのは、多くのメディアが、あるいはマーケットが、何かその経済というものがどう推移していくかに関わらず、必ずこうなるというふうに金融当局の見通しとして発表したというふうに若干受け取られた節があって、それは不適切だったなあと、そういう受け取られ方がですね。そういうことであって、それが不適切だったということは、当方のプレゼンテーションが、やや誤解惹起的だったのかなあというふうな反省をしているということを申し上げたかったわけでございます。

(以上)

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