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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年6月3日(月)17時05分~17時30分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

先週の金曜日ですが、米格付会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債の格付けを2段階引き下げました。その格下げをどう受け止めていらっしゃるかということと、今のところは市場なんかは平静を保っていますけれども、今後、長期金利の上昇とか民間企業の格下げということが予想されるのですが、金融機関への影響を含めて、影響ということのご認識をお聞かせください。

答)

先週金曜日付けでムーディーズが「A2」に格下げしたということですけれども、これに対しましてはその見直しの前に、まず発行体である財務省がいろいろと質問状を発したり、あるいは先方のそれに対する回答に対して再質問状を出したり、そのポイントとなるところは皆様もご承知の通り、敢えて言えば一番のポイントは格付けというのは、いわばデフォルトのリスクを評価すべきものであり、そうであるならば国債の償還可能性についてどういうリスクがあるかということを定量的に示すのが当然ではないかということに対して、いつまで経っても然るべき回答のないままに今回の見直しが行われたということかと思います。まあ民間会社の勝手格付けに対して、今申しました通り財務省は適正に、言わば反論しているわけでございまして、金融庁の方が、それに対して更に付け加えてコメントすることは特にないというふうに考えております。

そうしたことを前提に申し上げれば、今質問された記者の方が民間企業、特に金融機関への影響をどう認識しているのかという点でございますけれども、この点についてはムーディーズ自体が「民間企業の格付けは直接にも間接にも今回の格下げで全く影響を受けない」ということを述べているわけでございまして、金融機関もその民間企業の一つでございまして、ムーディーズ自身が「影響ない」と言っているわけですが、まあ事実、5月31日のムーディーズから格下げを受けた国債を大量に保有している銀行が、ではどういう影響を受けたかと言えば、まあ皆様ご承知の通り、特に影響はなかった、株もむしろ上がった、本日も上がっているという状況かと思います、また、銀行自体ALMをしっかりやっておりまして、保有国債の残存期間を短く設定する等、リスク管理をきちっとやっているというふうに認識しております。

ちなみに、日本の国債そのものの価格も、5月31日昼の12時に発表された後も若干価格は上がったくらいでございまして、まあ金利にして0.005%下がった、つまり価格はその分だけ上がったということでございまして、特に影響は受けなかったと、まあ市場は冷静に見ているということかなあというふうに思っております。以上でございます。

問)

同じく金曜日に整理回収機構が2002年3月期決算を発表しまして、初の赤字決算となったのですが、債権回収益を預金保険機構へ納付したというようなことなどを理由に挙げておりますが、今後時価による債権の積極的な買取りを続けて行くということを踏まえまして、今後、また赤字ということが起き得るのかということと、今後のそういった見通しと国民負担が発生するような懸念の可能性ということについてはどういうふうに受け止めているかということをお聞かせください。

答)

これは非常にテクニカルな面を含んでいますので、なかなか説明し難いのですけれども、まあ皆さんもよくご存知のように、RCCの決算というのは「住専勘定」と「RCB勘定」の2つに分けて決算処理がなされているわけでございますね。今ご質問になられた記者の方が触れられたのは、正にそのRCB勘定の回収益の話で、これは言わば法律の改正によりまして、昨年の4月1日以降、この回収益というのは預金保険機構に上納と言うのでしょうか、預金保険機構の特例業務勘定に積んでいくということになったわけでございます。

一方、住専勘定の方は前からルールがございまして、まずロスの内の2分の1は金融安定化拠出基金の運用益等で補填される。従って、住専勘定のロスの内の2分の1だけを見るわけですけれども、その2分の1と回収益とを見て、どっちが上かで見るわけですけれども、この2002年3月期においては、かろうじて回収益の方が2次ロスの2分の1を上回っていたわけですね。

従って、今ご質問になられた記者の方のポイントとなるのは来年度以降、住専勘定の債権回収も相当岩盤に突き当たっているのではないかと、これからはなかなか回収し難い債権が残っているのではないかと言われておりますので、そういう観点から言えば、本年度つまり来年の3月期決算において今の傾向が続くのならば2次ロスの2分の1と回収益を比べた場合は2次ロスの2分の1の方が大きくなるという可能性があるということを仰りたかったのだと思いますね。それはその通りだと思います。そういう可能性があると思います。その場合にはその翌年度以降においてRCCの資金繰り等を見ながら、そういう損失補填措置を採るかどうかという判断をしなければいけないということになっておりますので、まあおそらく16年度予算要求の中でそういうことは検討されることに、もし今私が申し上げた通りのシナリオで推移するならばそういうことを検討しなければいけないかと思います。

ただ、私が申し上げたいのはちょっと今の説明は非常に技術的で、住専勘定とRCB勘定を分けた説明なんですね。それは処理のルールが違うものですからどうしても分けざるを得ないのですけれども、しかし、漠とした物の言い方をすれば、住専勘定もRCB勘定も両方とも、それはRCCの中でございまして、私が申し上げたいのは住専勘定で例えロスが出ても、RCB勘定でそれを上回る回収益がある、その回収益は確かに預金保険機構に上納されてしまうわけですけれども、実質を見ればそういう国民負担が生じて行くというような事に果たしてなるのかなあと、そんなふうに思っております。

問)

みずほフィナンシャルグループに対する立入検査が間もなく1ヶ月を迎えますが、検査の現状と今後の見通しについてお聞かせください。

答)

まだ立入検査をやっている最中でございまして、今の段階で立入検査がいつ終わる予定だということは、まだ検査局長から報告を受けておりませんのでコメントのしようがないわけですけれども、いずれにしても厳格な検査をやっておると聞いておりまして、その立入検査結果、更にそれに対して検査結果通知というものをまとめて検査結果通知を通知する、それで検査が終わるわけですけれども、出来る限り立入検査から検査通知までの間は短くすることによって、全体はなるべく早く結論を得られるように最大限の努力をして行きたいと思っております。

問)

格付会社の指定をするというのが今度の新BISの基準が出来るに当たって、長官の指定格付会社制と言うのですか、今回のいつまで経っても財務省の質問状に然るべき回答をしないままに格下げしたという、こういう行為というのは長官の目から見てどう考えられているのでしょうか。

答)

指定格付機関との絡みの質問かと思います。これにつきましてはご承知の通り内閣府令によりまして指定格付機関を定めておりまして、更に告示で具体的には5つの格付機関を指定格付機関として指定しているわけでございます。

そうした格付け機関、一般的に申し上げればそういう格付機関の格付けに対しましては、社債の発行体からいろいろ不満の出る事もあるでしょうし、個々をとれば絶えずそういう不満がいろいろあるのだろうと思います。金融庁といたしましては、もしこれが指定格付機関として1つしか指定していないのだったら、これは勿論すぐにでも考えなくてはいけない問題ですけれども、そうではなくて5つの指定格付機関を指定しているわけでございまして、そういう格付機関の1つの格付けについて異論が出ているからといって、直ちに金融当局がそれに対して直接の対応をする事柄でもないのではないかと、逆に言えば今、市場もメディアも、あるいは国民の皆さんもこういう格付機関がこういう社債についてこういう格付けの見直しを行ったということは広く承知しているわけでございまして、そういう格付けを支持するのか支持されないのか、言わば皆がその格付機関を評価しているのだろうと思います。ですから、もし評価されない格付けをし続けるような格付機関がもしあるとするならば、我々がどうこうする前に、言わば市場関係者の支持が得られなくなって行くのかなあと、そういうふうに思っておりまして、まあ一言で言えば、一つの発行体から異論が出たからといってすぐに金融庁が指定格付機関の見直しに入るということでもないのではないかなあと、しばらくマーケットなり皆さん方がどうその格付機関の格付けを見て行かれるのか、そういうものを注視して行きたいというふうに思っております。

またもう一方において、米国におきましてもエンロン債の問題を契機として、この格付機関と言いますか、格付会社に対する規制の問題、あるいは逆にこの寡占状況が問題ではないかという問題意識もあるようでございまして、いろいろ議論が始まったところだと聞いております。引き続きそうした議論を注視しながら幅広い観点からこの問題を考えて行きたいというふうに思っております。

問)

13事務年度が間もなく終わりになりますが、人事異動のシーズンだと思います。金融庁の人事では、いわゆるノーリターン・ルールというのがこれまで敷かれておりまして、これは継続されるのか否か。それともう一つは、大蔵省時代の接待問題での処分者で、ある一定の水準以上の者は金融庁には入っていないのですが、このルールは継続されますでしょうか。その二つについてお願いします。

答)

まず最初に申し上げたいことは、今、国会についていろいろ延長問題も俎上に登っているやに聞いておりまして、そうした中で人事問題というのは考えにくい話でございまして、今時点において具体的に人事を考えているということはございません。

まあ、そう申した上で一般論として今の記者の方のご質問に答えるならば、今、記者の方が仰られた二つの問題、これは過去のいろいろな経緯から出てきた問題でございますけれども、その問題は十分に認識しておりますし、仰ったようなことに何か逆らうようなことを考えているということは全くございません。

問)

先程の格付会社の指定機関の問題なのですけれども、新BISで標準的手法を使う格付け会社はどこかということと、それから内閣府令の指定格付機関というのは、ちょっと違うのでしょうか、それとも同じなのでしょうか。

答)

基本的には、今、新BIS規制と仰いましたけれども、現在のBIS規制におきましては、いわば標準的手法や内部格付手法というものはないわけですから、基本的には現在においてはそういう指定格付け機関というのは、今のBIS規制の下では基本的には起きない。もっと細かく言えばマーケットリスクを計る時に、どういう債券を買った時のリスクウェイトをどうするかというような時に格付機関が関係してくるのですけれども、今のところはご承知かと思いますけれども、内閣府令・告示で言う格付機関をそのまま活用しております。

今ご質問の新BIS規制に移りまして標準的手法ということになった場合に、その格付け機関というのはどの格付機関なんだというご質問かと思うのですけれども、各国当局が客観性・独立性・透明性などに関する基準を元に、格付け会社が基準を満たしているかどうかを判断するということでございまして、まあその時に、新BIS規制が出来上がった時に、もう一度考えてみなければいけない問題かと思いますけれども、素直に考えれば今の指定格付け機関をそのまま活用するという方法がひとつ考えられるのではないかと。何か他の今の指定格付機関と違った物差しを持ってきて、違う格付機関を作るということにはならないかもしれません。いずれにいたしましても、新BIS規制に移る時にもう一度考えてみる問題かと思っております。

問)

先週の会見でありました不良債権のオフバランス化の問題なのですけれども、5割、8割という新しいルールとか、あるいは特別検査でやったものは今年度中に処理するというようなルールが達成できない時の対応について質問があったかと思うのですけれども、いろいろ銀行の方の受け止め方も混乱があるようで、これは任意なのか、あるいはやらなければやはり業務改善命令とかあるのかどうかというところが、多少業界に迷いがあるようなのですけれども、ちょっと長官からもう一度ご説明いただけないでしょうか。

答)

先週の月曜日の会見の翌日の新聞で、私の会見の中のいろんな部分を捉えて書いていただいているわけですけれども、その中の一部に、今ご質問になった側面が取り上げられて、「義務化を考えず」というタイトルでしたか、そのように書かれていて、「あ~、ちょっと私の言い方が少し短絡的過ぎたかなあ」と思ったのですけれども、正確に申し上げれば、それはケース・バイ・ケースだと思うんですね。我々は監督上の措置として既に大手行に対して、「1年で5割、2年で大宗を」ということを要請しております。これは監督上の措置であります。それに対して各銀行がどう対応するかという問題でございまして、それを真剣に受け止めて対応している限り、私が申しましたように24条、26条の問題にはなりにくいと、こういうふうに理解していただきたいと思います。それを、敢えてそういう監督上の措置、あるいは要請に対して全く一顧だにせず、オフバランス化の目標を達成出来なかった場合というのは、それはやや別なのではないかなあと。

例えば、これはちょっと例として良くないかと思うのですけれども、中小企業向け貸出に関して資本注入行に対しては、少なくとも増加させなければいかんということに対して、増加が出来なかったところがあるとして、増加が出来なかった原因についてヒアリングした結果、いろんな工夫を凝らし、各支店ごとに中小企業向け貸出を増加させようと努力したにも関わらず出来なかった場合と、全くそうではなく、その銀行の政策として中小企業向け貸出というものを減らそうとしている場合とは、これは当然対応が違うわけでございまして、後者の対応の場合には業務改善命令ということも考えられたわけでございます。そういうふうに、敢えて言えば銀行の当方に対する要請に対して、銀行の対応をケース・バイ・ケースに見て判断していくことではないかと、それがまあ正確な答えではないかというふうに思っております。

(以上)

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