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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年6月17日(月)17時01分~17時32分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

今日、デフレ対策に関連して与党三党が合意したわけなのですけれども、その中に金融の部分もありまして、その点で何点かお伺いしたいのですが、まず第一点は、中期ビジョンを早急に策定するようにという事と、証券市場の構造改革の一層の推進というものが入っていますが、この辺についてどういうふうな事を考えていらっしゃるのかお願いします。

それから二点目が、与党の話し合いの中で、相当ペイオフの完全実施の延期論というのが強かったと聞いているのですけれども、現時点での長官のお考えをお聞かせください。

答)

まず第一点目でございますけれども、本日、与党三党の党首会談が開催されまして、総理から「経済活性化策等の推進について」の方針が示され、それが三党首合意事項とされたと承知しております。

その中の金融庁関連部分では三つございまして、一つ目が「不良債権処理の着実な実施」、二番目が「証券市場の構造改革の推進」、三番目が「金融システムの安定化と中期ビジョンのとりまとめ」というふうに整理されておるものと思っています。

その中で「不良債権処理の着実な実施」は、もう既に4月12日に不良債権処理の目標も定めて、着実に実施して行く事を金融庁は世の中に明らかにしているわけでございまして、正にそれを着々として行くという事かと思います。

二番目の「証券市場の構造改革」につきましては、昨年の8月に「証券市場の構造改革プログラム」を発表いたしまして、更に本年2月には、「早急に取り組むべきデフレ対応策」の中にも証券市場の事に触れさせていただきました。それを更にもっと深掘りした証券市場の構造改革という事が、今、宿題として出て来ているというふうに認識しておりまして、証券市場の中長期的な在り方について、有識者や関係者から幅広くヒアリングを行っておりまして、今後、そのヒアリング結果を踏まえて、対策を、即ち証券市場の構造改革を一層推進するための対策を考えて行きたいというふうに思っております。

まあ金融システムの安定化は二番目の質問に関連しますので省略いたしまして、三番目の「中期ビジョンのとりまとめ」につきましては、先般の会見でも申しました通り、今、柳澤大臣の私的懇話会であります「ビジョン懇」が行われておりまして、その取りまとめを行う。ただその取りまとめたものというのは、言わば大臣のお言葉を借りれば、「居間で議論したもののとりまとめでございますので、それを客間で議論したものとするには、そのビジョン懇の報告を基礎にして、金融審議会に諮りつつ、中期ビジョンというものを早急に取りまとめて行きたい」と、こういうふうに考えております。

二番目のご質問でございますけれども、流動性預金の全額保護の特例措置につきまして、与党において延期すべきといったご意見があることはよく承知しております。ただ、この点に関しましては、本年4月にペイオフ解禁をしたばかりでございまして、本年4月のペイオフ解禁に伴いまして、預金者が自らの判断と責任において金融機関を選択する枠組みに言わば移行したばかりでございます。ペイオフ解禁後の現在において金融機関は、まずはそうした預金者の信頼を得られるよう、緊張感を持って懸命な収益向上策、あるいは不良債権処理策に取り組んでいるところでございまして、金融庁としては今そうした各金融機関の懸命な努力が最も大切な時期であると考えております。また、確かに預金動向というもの、これも非常に重要な点でございまして、それを毎日、毎週モニタリングを財務局と一体となって今やっているところでございます。金融庁といたしましては、ただ今申しましたように、預金者の信頼を勝ち取るよう、緊張感を持って経営に取り組み、経営の健全性を高めて行く事が今一番重要であるというふうに認識しておりまして、大臣が先週金曜日の会見で仰られているように、流動性預金の全額保護の延期といった事を今考えるべき時ではないというふうに認識しております。

問)

次に株価についてなのですが、まあ水準は別としてなのですが、このところずっと株価の下落が続いていまして、何となく不安感が高まっているのですが、この辺の株価下落の要因などについて、もし何か金融庁として分析されているものがあればお聞かせください。

答)

いやもう、株価は前々から申しておりますように、いろんな要因によって日々変動するわけでございまして、ここのところの要因と言えば、市場関係者の話では、米国株式市場、あるいは欧州株式市場の下落に影響されているという面、あるいは為替が円高ドル安に振れているといった面、まあいろいろな事が市場関係者で言われております。

金融庁としては日々の株価で一喜一憂することなく、5月の月例経済報告で示されているように、日本経済が底入れしているという状況であるならば、いずれ日本経済のファンダメンタルズは、株価に好影響して行くのではないかというふうに期待しております。

問)

次に「みずほ」のシステム障害の件なのですが、先週、検査結果を通知されたということですが、仰れる範囲と仰れない範囲があると思うのですが、改めてシステム障害の原因をどういうふうに捉えているのかという点と、報告の期限がそろそろ迫っているという事が言われているのですが、今後の行政の対応ですね、この辺をお聞かせください。

答)

これまでの「みずほ」の説明や当庁のヒアリングを総合して、今回のシステム障害の原因について考えてみますと、一つはシステムの機能を確認するシステムテストや運用テストが適切に実施されていなかったなど、最低限必要な準備が出来ていなかったのではないかなあというのが第一点ではないかと思います。

第二点としては、テストが不十分であった等の重要な情報が、一部の開発責任行のシステム開発部門内に止まっていたことなど、グループ内での報告、連絡体制に重大な問題があって、十分なチェックが働かなかった事が挙げられると思います。

更に、この様な最低限の準備が出来なかった根本原因を考えてみますと、旧経営陣がシステム統合に伴うリスクを十分認識していなかったのではないか、そうした事から統合に伴うシステム開発等の前提となる基本的事項の意思決定が遅れて、システム統合に必要な期間が確保出来なかった事が今回のシステム障害の大きな原因であったのではないかというふうに思われます。

ただ今の記者の方のご質問で「今後」という事でございますけれども、ご承知の通り、検査結果の通知を今月の11日に行いまして、同時に銀行法24条に基づく報告徴求を課したところでございます。そしてその報告期限も非常に短くして、明日に報告提出を求めておりまして、当然その中身は今回の検査結果通知についての先方の認識と、更に今後の再発防止のための抜本的改善策というものが出て来ると期待しておりまして、それを精査した上で、当局として厳正な対応をして行きたいというふうに考えております。

問)

欠損金の繰越期間を金融庁が5年から延長することの検討を始めたという一部報道が出ていましたけれども、それは事実なのかどうか。また、それを税制改正要望に盛り込んでいくという、そういった検討をされているのか、その辺を教えて下さい。

答)

税制改正要望は、通常御承知の通り、概算要求の締切り辺りを目処に致しまして、具体的には8月中にまとめて税制改正要望を出すことになっております。これまでも節目節目でいろいろ税制改正要望を出しておりますし、私の記憶では、ただ今御質問になったような事項もこれまで確か税制改正要望の中に入っていたことがあるのではないかと思うのですけれども、そこは担当に確認して頂きたいのですけれども。

ただ、今回何を税制改正要望にするかという検討は、これからでございます。十分にいろいろな関係者の意見を聞きながら、適切にまとめ、要望していきたいというふうに思っております。

問)

「みずほ」のトラブルの件なのですが、コーポレート銀行などを中心に一部で勘定の不突合があったと指摘されているということですけれども、それの今後への影響、まず指摘された事実と、今後これは尾を引く内容なのか、あるいはもう終息に向かって何も今後には影響を残さないのか、その辺を教えて下さい。

答)

これはあくまで、いわばグループ内、あるいはみずほコーポレート銀行内の内部の勘定間の未整理といったことが、いわば4月の初めに起きた大規模な口座振替遅延の影響を受けて、そういう内部の勘定間の未整理というものが起きていたというふうに聞いていますと、同時に、今はどうなっているかと申しますと、それが急速に整理が進みまして、まだちょっと残っているようでございますけれども、数日内にそうした問題は解消するという認識を持っております。

問)

今日の一部報道で、銀行と証券会社の共同で店舗が開設できるよう、業法の見直しの検討を始めたという内容の記事が出ていたのですけれども、その辺りは長官はどのようにお考えですか。

答)

これは先程ちょっと申しましたように、正に証券市場の構造改革の推進という大きな課題の中で考えられるべき問題でございまして、今、有識者から広く意見を聞いている中にも、そういう意見は出てくる可能性があると思っております。そうした際に、適切に検討していきたいというふうに思っております。

問)

「みずほ」の問題でちょっと質問したいのですけれども、旧経営陣、特に3CEOの責任問題について、退職金の見送りということが伝えられています。まあ決まったかどうかは知りませんけれども、そう伝えられているのですが、資本注入を1兆円受けている銀行が、なお3CEOに巨額の退職金を出そうとしているのかと、つまり今回の責任に見合ったような、これを返上することで責任を取ったというようなことになるような巨額の退職金を、なお「みずほ」は出そうと、この3月末には考えていたのかという点について、長官はどういうふうに聞いておられますか。

答)

資本注入行の経営陣の退職金につきましては、これまでも国会等で取り上げられ、当方も適切な意見を述べてきたつもりでございます。

今の御質問でございますけれども、今回、いろいろ報道では、ニュアンスの差はあれ、何か見送るというような報道が目についているわけですけれども、私はまず今の質問された記者の方の言葉で言えば、「そもそもこんなことが起きなかったらどうだったのか」ということは、当然当局としては、それはやはり意見を言うべき立場だと思いますし、更に、この「みずほ」のことが起きてどうかということについては、これは明日の報告でどう「みずほ」がその責任を報告してくるか、責任の明確化ですね、どういうところに原因があって、どういう責任があるというふうに自覚しているか、明日報告を見なければ分からないと思うのでございます。

ただ、いずれにしても、私が申し上げているのは、それも明日報告徴求の結果を見てみなければ今から予断を持って物を言うべきではないと思いますけれども、3人の前CEO、あるいは他の方のも含めて、今回はそもそも株主総会の通知というのは総会の2週間前に出さなければいけない。その時点でそういう「みずほ」側が、どういう方にどういう退職金を支払うかはこれは全て総会事項でございます。それをいわば「みずほ」側が検討する時間もなければ、検討の基になる事実関係がはっきりしていなかったということなのではないかなあというふうに思いまして、いわばそういう時間的な制約、総会前2週間には総会にかける事項を確定して、退職金の話であれば、明確に名前と金額を載せて株主に送らなければいけない、そういうような状況にはなっていなかったということから、今回いわば結果として見送りになっているというふうになったと理解しております。

問)

証券取引等監視委員会が、来月で発足から丁度10年になると思うのですが、この間、どの程度の役割を果たしてきたかというのはなかなか評価が難しいところだと思うのです。ただ、今年の感じを見ていますと、去年の秋から相当証券市場の透明性とか、構造改革の中で、やはりウォッチドッグの役割は重要だと言われながら、出てきた結果を拝見しますと、今のところ告発の件数も例年よりやや少ないですし、勧告もそんなに多くはないと、多くはないというか、むしろ少ないと、6、7割方というところではないかと思うんです。件数だけで見ればそうです、質の問題はいろいろあるかと思うのですけれども。

人が増えなければできないという側面もあるかと思いますけれども、やはりもう少しドライブをかけて仕事をするとか、そういう工夫がなかったのかどうか、その点については長官はどういうふうに見ていらっしゃいますか。

答)

ちょっと今、御質問になった記者と私の認識が、ちょっとというか随分違っておるのでございますけれども、私は高橋委員長の下で、限られたマンパワーの下で懸命にやっておられますし、その成果は十分に出つつあるというふうな認識を持っております。今後、間接金融市場から直接金融市場へ、更にその直接金融市場に個人を一層取り込むためには、正に今、記者の方が仰られたように市場の透明性、信頼性というのが生命線だと思うわけでございまして、そういう観点から証券取引等監視委員会が果たすべき役割というのは大変大きなものが期待されていると思います。

また、そういう期待がいろいろな所で言われていて、先程もちょっと触れました昨年の証券市場の構造改革プログラムの中でもその点を取り上げたと思うのですけれども、またマンパワーの面でも今、金融庁の本庁と外局である証券取引等監視委員会全体で見て、一番定員が伸びているのは証券取引等監視委員会でございまして、そういう点からも、今後、証券取引等監視委員会に対しての期待というものは大きいと思いますし、私は着実に高橋委員長以下がそうした期待に応えて行って頂けるものというふうに認識しております。

問)

ペイオフの問題ですが、先程、「延長を今、考えるべき時ではないと認識している」と仰いましたが、その「今」が入ると、ちょっと決意の程がよく分からないのですけれども。

答)

私が申しましたのは、私の認識というか、金曜日の大臣会見で大臣が仰られたことをそのまま言った、つまり大臣の仰ったことを申し上げた、それが今の金融庁の考え方だということです。

問)

例えば、延期することについて、何かこういうような場合はという条件等は検討されているのでしょうか。

答)

そんなことは、全く今考えておりません。今考えておりますのは、どうやって日本の金融機関に対する預金者の信頼を高めるか、不良債権処理、収益性の向上、そういうことを懸命に考えておりますと共に、日々の預金動向には目を凝らしているという状況でございまして、それ以上でもそれ以下でもございません。

問)

「みずほ」の関連なのですけれども、みずほホールディングスの方は25日に株主総会を控えてまして、株主、または利用者に今回のシステム障害についてどういう責任を取ったのかという銀行側の対応を示す必要もあると思うのですが、それとの関連で業務改善命令を、報告を受けてからどれくらいで出すかというのも、タイミングに関して重要になってくると思うのですけれども、その見通しと、業務改善命令を出した時にも、世の中への公表というのも併せてどういう形でやられるのか、その辺をお聞かせ下さい。

答)

24条の報告徴求を課して、明日報告が出てくるわけですけれども、それと必ず26条の業務改善命令がリンクしているわけではございませんので、今の時点で業務改善命令を打つということは、予断を持って言うべきではないと思います。

ただ、もし報告内容を精査した上で、業務改善命令を打つ必要があるとするならば、それはその期間は可及的速やかに、今回の場合は、いろいろな社会問題にもなりましたので、どうするのかという憶測だけが飛び回っても適当ではないと思いますので、できる限り可及的速やかに、行政処分を打つか、打たないかの判断をすべきだと思います。

次の御質問ですが、もし打った場合に、どういうふうな公表の仕方をするのかということですが、基本的には検査結果通知そのものは公表できない性格のものでございますので、受けた内容について、みずほ側からも然るべくアカウンタビリティーを果たして頂くことになると思いますし、当局も、もし行政処分を打ったならばという仮定ですけれども、打った根拠についてのアカウンタビリティーは果たさなければいけないというふうに思っております。

問)

業務改善命令の発動と、公表が同じタイミングになる可能性もあるということでしょうか。要するに検査結果を国民にもお知らせするといった‥‥。

答)

それは一緒になることがあるでしょうね、それは。何らかの公表と業務改善命令、観念的にいえば、業務改善命令が先にあって、それに対して何が起きたかということを公表するということだと思いますけれども。それはもう同日だということだって大いにあると思います。

問)

報告を受ける日と、業務改善命令を出す日は‥‥。

答)

それは何とも申しません。今、申し上げたのは、その間はなるべく短くすべきだという私の考えを申し上げただけです。

(以上)

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