高木金融庁長官記者会見の概要

(平成14年7月29日(月)17時02分~17時19分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

株価なのですが、先週末、日経平均で1万円を切って9,500円台まで下がったというところで、銀行の経営に与える影響等はどうなのか改めてお伺いしたいと思います。

答)

これはもう前からご説明している通りなのですが、大体TOPIXで14年3月末からどのくらい下がっているかというと、まあ11%くらいなのですね。それで、保有株の状況も14年3月期と変わらないという前提で機械的に試算しますと、まあ四捨五入の関係で0.4%から0.5%ぐらいなのですね。ですから、主要行で10.8%から10.3%か、10.3%強くらいの水準なのですね。まあ状況は良く注視して行く必要はあると思いますけれども、現状で何か問題があるというふうには全く思っていません。

問)

次に、またペイオフの話ですが、今日、自民党のデフレ対策特命委員会の方で、デフレ対策としてペイオフの延期を正式に決めたのですが、ペイオフに対する考え方は現時点でどうお考えになっているかお願いします。

答)

これはもう前からご説明している通りなのですけれども、今、我々日本の金融システムに求められているのは、やはりそれぞれの金融機関が緊張感を持って経営の健全性に真剣に取り組んで行くということだと思うのです。そういう基本的な枠組みは、やはり堅持して行く必要があるというふうに思っています。勿論、金融システムが不安定になってはいけないわけですから、そういう認識については与党とそんなに隔たりがあるとは思っていませんけれども、基本的な考え方は今申し上げた通りで、我々も十分預金の動向等については注視して行きたいと思っていますが、基本的には冒頭に申し上げたような考え方でおります。

問)

今言われた基本的な枠組みは動かさないということですが、金融が不安定になってはいけないという話で、官房長官の方でペイオフ完全実施を前提として、それが出来るような金融の状況、金融システムの安定を作るための方策を考えるというようなことを仰っているのですが、現在、金融庁の方で進めております地域金融機関を中心とした合併等促進策の他に、何か方策というのは考えられますでしょうか。

答)

そういう話は我々はまだ特に聞いていないのですが、ペイオフ解禁を巡って我々がどういう事をして来たか、あるいはどういう事をしようとしているかということを整理して申し上げますと、まず、今年の4月1日の大臣の記者会見でも申し上げましたように、ペイオフ解禁に向けた環境整備として、金融機関のディスクロージャーの充実だとか、あるいは預金者への積極的な広報の推進だとか、まあ場合によってはセーフティーネットの整備というものも入ると思いますが、そういった環境整備をやって来たわけですね。同時に、当然ですけれども厳正な検査・監督ということで、金融機関の健全性確保に努めて来たということです。

それから更に、今お話がありましたけれども、4月12日にいくつかの施策を一つのパッケージで発表したわけですけれども、その中には地域金融機関を中心とした合併等の促進の他に、不良債権の最終処理を一層促進するということで、具体的な目標も更に厳しい目標を設定して取り組んでいると。それから、経営の健全性確保という観点から、主要銀行グループに対する通年検査ですか、そういう検査も導入してきちっと厳正な検査・監督をして行くということをやっているわけですね。我々としてはこういった施策を一層徹底して、金融機関の健全性の確保に取り組んで行きたいというふうに思っています。

問)

先程の自民党のデフレ特命委の話に戻るのですが、今日、デフレ対策として決めた中に、金融検査マニュアル、主に中小企業向けということなのですが、そこについて見直しを盛り込んでいるのですが、金融検査マニュアルの見直しについてどう思われますか。

答)

これは、まさに取りまとめたところで、それについて(人事)異動も挟んで研修等に取り組んでいるところですね。ですから今、徹底的にこのマニュアルについて、教育・研修をして、その適切な運用に努めて行きたいと。今作ったばかりですから、やはり少し時差があるのかも分かりませんですね。現実の運用はいよいよこれからですから、運用の実態を良く見極めた上で議論が出て来ることは仕方がないと思いますけれども、現時点で検査マニュアルの見直しということは、我々行政当局として有り得ないと思います。とにかく我々の運用を良く見ていただきたいという気持ちでおります。

問)

ペイオフの話なのですけれども、全面解禁に当たってて何らかの激変緩和措置と言えば良いのでしょうか、例えば預金保護額の引き上げとか、公金については全額保護するとか、そのような事を講じるお考えはあるのでしょうか。

答)

ないです。激変緩和措置というものは考えていません。

勿論状況は先程から申し上げているように注意深く見て行きたいというふうに思っていますけれども、それで、今日の報道にもありましたけれども、定期から流動性預金の方に40兆円シフトしているという報道もありましたけれども、それはどういう数字かちょっと私も良く分からないのですけれども、いずれにしても、それは今の低金利の状況ということもあると思うのですね。ですから、いずれにしても状況は良く注視して行きたいというふうには思っておりますけれども。

問)

蝋山先生も仰っているようですが、決済機能を保全する観点からナローバンクみたいな議論は今後、金融庁としてやって行きたいというようなお考えはあるのでしょうか。

答)

この前の蝋山先生のビジョンにも、ある程度決済機能の話も出ておりますけれども、あれは中長期のビジョンとして書いていただいたので、あれを基にまた中期ビジョンを我々政府として作るわけですけれども、特にそこの部分を意識して何か考えているということはありません。

問)

将来の課題みたいな話としても、あまり考えないと。

答)

その部分というか、中期ビジョンはそれなりに全体の絵を描いていただいて、全体をよく参考にしながら、金融の構造改革と言いますか、あるべき姿に向かってどういうことをするか、よく考えて行きたいというふうに思っています。

問)

金融庁は地域金融機関の合併を促進するということで、公的資金の活用とかいろいろ検討されていますけれど、民間側から一生懸命、経営改善の努力があって欲しいという、それを後押しするということなのでしょうけれど、他方で肝心の民間の側からはペイオフ全面解禁を延期してくれと、信金と第二地銀と信組が言っているわけで、その辺の前提が全くずれているというか、おかしいなという感じがするのですけれど、その辺りは長官はどのようなご認識でしょうか。

答)

これも前から申し上げていますように、一般的な不安をいろいろお持ちになるというのは理解できるわけですけれども、具体的に我々がいろいろ細かく見る中で、具体的な不安が生じているという状況にはございませんから、それでまだ、来年の4月1日まで随分あるというと変ですけれど、そもそも定期性預金をこの4月1日に解禁して、それでまだ7月ですよね。ですから、4ヶ月ですよね。それで残りはまだ8ヶ月あるわけですから、そういうご心配も分かりますけれど、来年の4月1日に向けて一層の経営の健全性の確保に向けて最大限の努力をしていただきたいというふうに思っています。

問)

預金動向を注視するというのは、何がどういう状況になった時に違うことを考えなければいけないというか、また次のステップに進むというか・・・。

答)

よく聞かれるご質問ですけれども、あまり仮定のお話に答えてもいけないと思いますが、いずれにしても預金の動向についてはこれまでずっと注視して来ましたし、はっきりしていることは、現状で何か問題があると、具体的に問題が生じているという状況にはないということなのですね。勿論それでは仮定の話としてはどういう状況か、すぐにペイオフと結び付けますけれども、それは延期と必ずしも結び付くものなのか、いろいろな方策があるかも分かりませんし、いずれにしてもどういう状況になったらというのは、やはり只今ご質問された記者の方の頭にあるような状況なのではないでしょうか。

とにかく、ペイオフ解禁の延期というのと、預金の動向を注視して、我々は金融システムの安定のために、預金の動向には当然、十分注視しますけれど、何だか議論が一点に集約しすぎているようで、いろいろ言われているような方策もあるのかもしれませんし、あまりにも議論がちょっと偏っているというか極端だと思いますけれど。

問)

極端というと。

答)

ある意味でいうと、金融機関の合併の促進だってそういう側面はあるかもしれませんし、我々は頭の整理としては元々は別途の話だと整理していますけれどね。そういう意味で、多少それを利用するといって、一層の健全化を図るということで、プラスになるかも分かりませんし、とにかく議論が極端ですよね。そういう状態は、預金の動向を注視して記者の方の頭にあるようなそういう状況になったら何が起こるかというと、繰り返しになりますけれども、先のことは分かりませんけれども、現状でそういう問題は生じていないと、ですからそういう心配をする暇があれば、一層の健全化に是非取り組んでいただきたいということを金融機関には強く期待しています。

問)

預金動向のお話ですけれども、マクロ的に見ていくのか、それともミクロで、個別金融機関で見て問題が生じたという状態なのか。

答)

当然マクロで見て、ミクロでも見る必要がありますね。

問)

先程の官房長官からのお話ですけれども、まだお話を伺っていないということですけれども、仮にあった場合、今進められている合併の促進策とは別に何か他の方策を新たに考えるというようなことはありますか。

答)

現状で聞かれると、私はありませんけれどもね。

問)

仮にもし、政府サイドから、官邸サイドから要請があれば、促進策が今あるのでそれを基にやっていきますというか、そういうような説明をされるというふうに理解すればよろしいでしょうか。

答)

基本はやはり、ペイオフは予定通り解禁する必要があるということを申し上げることになると思いますけれども。

(以上)

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