高木金融庁長官記者会見の概要

(平成14年9月2日(月)17時05分~17時23分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

今日、金融審議会のプロジェクト・チームが第6回目の会合を終えまして、大枠の報告書をまとめて5日の金融審議会総会に報告するということで、「要求払いである」、「無利息である」、「決済に使う」という3つの条件を満たした預金を全額保護するという事を提案するということなのですけれども、与党の中で、引き続きペイオフ解禁を全面延期してはどうかという考えが非常に燻っているのですけれども、これについて長官はいかがお考えでしょうか。

答)

前から申し上げていますように、ペイオフの基本的な枠組みは、やはりきちっと実施する必要があるというふうに思っています。それはやはり、こういう厳しい金融システムを巡る状況を乗り越えて来て、更に一層の健全化の努力が求められているわけですから、行政も当然いろんな努力はいたしたいとは思いますけれども、やはりそのために一番効果的なのは市場の力だと思います。ですから、そういったものが働くような仕組みに移行することは必要だと思っています。

問)

与党の中で全面延期論が出て来る背景には、決済に限った預金を保護するというのは分かり難いという先生方がいらっしゃるのですが、その分かり難さについてはどのようにお考えでしょうか。

答)

それはご報告をいただいたところで良くご説明をして行きたいというふうに思っていますけれども、当然それは与党の先生方もそうですし、預金者と言いますか、利用者の皆様方にも良く理解していただけるように、きちっとご説明して行く必要があるというふうに思っています。

問)

「無利息で、要求払いで、決済に使う」という全額保護の条件を満たした預金について、報告書には「導入を強く期待する」という表現に止めて、あまり義務付けはしないと、要するに一斉導入しないということなのですけれども、例えば導入した金融機関と導入しない金融機関が出て来るというところで、信用不安が高まったりだとか、そのような問題点というのは出て来ないのでしょうか。

答)

これは、本件はあくまでセーフティネットの問題ですから、当該金融機関が健全だとか、あるいは健全でないとか、そういう議論とは別の議論だと思います。各経済主体が円滑な経済活動を行っていく上で、決済まで安全・確実に結了するということは各経済主体にとって極めて重要な事だと思います。勿論、そのために基本的には各金融機関の健全性が維持されるということが基本だと思うのですが、更に、いわゆるセーフティネットですから、セーフティネットとして各経済主体が誰でも容易に安全・確実な決済手段を利用したいという期待に応えると言いますか、利用出来るようにするという事が極めて重要だという認識だと思います。そういう認識の下に必要な制度整備をしようということですから、冒頭に申したように、健全だとか健全でないとかという議論とは別な話だと思っています。

問)

平成11年の金融審議会から全額保護終了後のいろんな対策について議論されて来ていますが、その報告書等を見ますと、今と同じ様な議論をされて来ていましたが、今どうして、来年4月まで時間も残すところ僅かなこの時期に、決済性の預金に限って全額保護を検討するという措置を講じなければならなかったのか、そこを改めてご説明いただけますか。

答)

今仰ったように、金利自由化の時も決済についていろいろ議論がなされていますね。それで、また平成11年にペイオフ解禁との絡みでそういった議論がなされていますけれども、結局ペイオフが延期されたということで、そこで議論が中断しているのですね。そういう経緯もあって今回、金融審議会の方では総理の指示を受けて、そこの部分をきちっと議論して結論を出そうということでやっていただいているのだというふうに理解しています。

問)

改めて聞きますけれども、金融システムに何か現状で問題があるという認識ではないわけですね。

答)

そのような事は全くありません。先程申し上げたように、健全性の問題は健全性の問題として、当然それが全ての基本ですから、それはきちっと取り組んで行くと、そういう下でのセーフティネットとして預金者と言いますか各経済主体のニーズに応えた、安全で確実な決済手段を提供するというニーズに応えようというものですから、個々の金融機関が健全だとか、今、各金融機関について、我々が一生懸命にやって来た結果、現状、特に問題のある金融機関はないというふうに思っていますけれども、いずれにしても理屈の上でも個々の金融機関の健全性とは、この制度整備は別な話だというふうに思っています。ですから、各金融機関はそういう経済のインフラと言いますか、決済システムを担っているわけですから、そういった各経済主体のニーズに応えるというのも随分期待されているのだというふうに思っています。

問)

大手銀行を中心に伺いたいと思いますけれども、9月に入りまして、中間決算の大体の概要が分かって来るような時期だと思うのですけれども、例えば業務純益の状況だとか、不良債権処理の進捗状況だとか、その辺の大きな見通しに変わりはないというようなご認識でしょうか。

答)

今は特に何も聞いていませんので、まだそのご質問に答える状況にはないというふうに思っています。不良債権処理等々については、見通しを発表する時点で各金融機関がそれなりにいろんな合理的な方法で見通しを立てているわけで、それについて何か変えなければいけないという話は現時点では何も聞いておりません。

問)

今回の金融審議会の答申を受けて、金融庁として各金融機関に新型預金の導入を要請されるのはいつぐらいになるのでしょうか。

答)

要請すると言いますか、別にまだそこまで詰めていませんけれども、今いろいろ議論していただいている訳ですから、ご報告がまとまったところでそれを踏まえてきちっと対応したいと思っております。

問)

何らかの形で要請するというお考えもあるのですか。

答)

報告もまだいただいておりませんから、いずれにしても次の予定としては金融審議会の総会に諮って、そこで議論をいただくというということになっていますから、その議論を見て対応を考えたいと思っています。

問)

長官としては、できれば足並みを揃えて新型預金というものを導入してもらいたいというお考えですか。

答)

それは先程ちょっと申し上げましたけれども、決済という経済のインフラを金融機関は担っているわけですよね。一方で各経済主体は、やはり経済活動をする中で、決済まで安全確実に結了するということに対するニーズが強くあるということですね。ですからそういう決済システムを担う金融機関として、そういった預金者といいますか、経済主体のニーズに応えていくということが、ある意味で期待されているというふうに私は思っております。

問)

期待するだけではなくて、義務付けるということができなかったということはどういうふうに思われますか。

答)

それは今日の議論もまだ聞いておりませんから、いずれにしても決済機能の保護という話と同時に、先程のペイオフ解禁の趣旨といいますか、各金融機関に健全化のために緊張感を持っていろいろ努力していただくということと両方考えていかなければいけないわけですよね。そういう中での先生方のご判断の結果ではないかと思いますけれども、いずれにしても結論をいただいてから良く考えたいと思います。

問)

決済性機能の保護の話なのですけれども、その理由や狙いなのですが、個別の金融機関やシステムには不安がないということですけれども、なぜそうした中でセーフティネットを強化するのかという理由、今の経済状況についてもう少ししっくりとした理由を説明していただけないでしょうか。

答)

経済状況と言いますか、金融システム云々の問題ではないと思っています。前から申し上げていますように、金融機関の決済機能というのは経済のインフラですから、それについて問題が生じるようなことがあってはいけないという認識はこれまでもあったし、金融審議会の議論もされて来たわけです。そのための保護の方策というのは、少額貯蓄の保護以外にですね、例えばアメリカですと預金債権に優先弁債権があるとか、あるいは金融機関の破綻処理の過程において決済中の資金について、決済について優先的に処理される制度があるとか、いろいろ各国で司法制度とかそういった面でも違いがあるのですね。ですからそういう点も踏まえて、日本の実情に応じた決済機能の保護の方策についてご議論いただいたのだと思っております。

問)

なぜそのセーフティネットをしっかり整えないといけないのでしょうか。やはり経済がいま一つ良くないからということではないのでしょうか。金融不安はともかくとして・・・。

答)

それはやはり先程も申し上げましたけれども、前の金融審議会でペイオフを解禁するかどうかという中でペイオフが延期されたことで議論が中断したという経緯もあるのですが、やはりペイオフを解禁するに当たって、これは一つの契機だと思いますね、決済機能についてどう考えるかということは。ですからこの機会にきちっと議論して、整備するものは整備したいということだと思いますけれども。

問)

金融不安があろうがなかろうが、経済が良くなかろうが良かろうが、やはりいずれは必要なセーフティネットだというご見解ですか。

答)

そうです。セーフティネットは危なくなってから整備するものではありませんから、基本的なインフラ的な制度ですから、それはやはりこういうペイオフを解禁する契機にきちっと整理・整備することはおかしなことではないと思います。セーフティネットというのは何かおかしくなったから整備するものでもなくて、議論をしてそれが必要ということであれば前広に導入していくことが良いのではないかと思いますけれども。

問)

あおぞら銀行の株の売却の件なのですけれども、金融庁の方で20%ルールでやるとか、そういったものを超えて保有したいというような興味を持っている機関というのは把握されているのでしょうか。

答)

いえ、聞いておりません。そもそも今日の記事でしたでしょうか、ソフトバンクが売却したいと。以前も国会の財務金融委員会で「検討はしています」という孫氏のご答弁は承知しておりますけれども、それ以上の話は聞いておりません。

問)

一般的な条件を付けたりとか、そういうことはないのですか。

答)

それはないですね。基本はとにかく譲渡に当たって、あおぞら銀行を将来にわたって収益力のある健全な銀行にしていただきたいという前提で譲渡しているわけですから、その方向での努力をお願いしたいと思っておりますけれども。

問)

株を売るという行為自体は認めるということですね。

答)

ですから、健全化するということで譲渡しているわけですから、その基本的枠組みは維持して欲しいと思っております。いつまでもという訳ではないですけれども、今お話したようにあおぞら銀行は、将来にわたってそこまで責任を持って対応していただきたいというふうに思っております。

問)

「将来にわたって」というのは、例えばどれ位の長さなのでしょうか。

答)

「将来にわたって」と申し上げたのは、将来にわたってあおぞら銀行の経営が健全化されるということですけれども、ご質問の趣旨は何年ぐらい持ってというご趣旨ですか。ですからそこはざっくり言えば、経営について健全化が図られる時点だということだと思いますけれども。

問)

健全だと判断される材料というのですか、どの辺りを見て・・・。

答)

それは財務内容等を良く分析してという話になると思います。

(以上)

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