高木金融庁長官記者会見の概要

(平成16年5月24日(月)17時01分~17時18分)

【質疑応答】

問)

銀行の今年3月期の決算が今日発表されておりまして、まだ終わっていないので若干伺い難いところもありますけれども、大臣もこれまでの講演などの折に着実な不良債権比率の減少といったことをお話になっているようですが、この銀行の決算全体について、長官としてはどのように御覧になっていらっしゃるかを教えてください。

答)

今お話にありましたように、順次、主要行が決算を発表しているところでございます。そういう状況の中で、主要行全体の、我々が把握しておりますところで、全体の感じを申し上げますと、不良債権処理が進展してきているということで、不良債権処分損が減少し、実質業務純益の範囲内に収まる見込みであるということ等がございまして、経常利益・当期利益共に全体で見れば黒字となる見込みでございます。それから不良債権比率につきましても5%台前半となる見込みでございまして、16年度末までに不良債権比率を半減するという目標に向けて着実に低下しているというふうに認識をいたしております。引き続き、不良債権処理、強固な金融システムの構築に向けて、最大限の努力を期待したいというふうに思っております。

問)

個別のお話になりますけれども、UFJグループが大幅な赤字の決算を発表しました。それに伴いまして、トップの交代なども発表しております。このUFJの決算についてどのように御覧になっているか教えてください。

答)

UFJにつきましては、本日決算発表が行われたということは承知しておりますけれども、個別金融機関の決算内容につきましては、大変恐縮ですけれどもコメントは差し控えさせていただきたいと思います。今お話しのございましたトップの交代を含めた対応策ということでございますが、まず役員人事につきまして発表されたようでございますが、これは経営判断の問題でございますので、当方からのコメントは差し控えたいと思います。いずれにいたしましても、新しい経営陣の下で、今後真剣な経営改革努力が行われることを期待したいというふうに思っております。

また、先週の金曜日にUFJ信託と住友信託銀行の経営統合について、公表がなされております。本件は、グループを超えた選択と集中と言いますか、そういったことを実現して競争力の強化、それから収益力の抜本的な改善を図るものだというふうに聞いております。本件につきましても個別銀行の経営判断に関する事柄でございますので、当局としてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

また、今御質問のございました今後の行政上の対応ということでございますけれども、これは今後決算内容等を十分に分析して、必要な行政上の措置につきまして検討していきたいというふうに考えております。

問)

行政上の対応というところですけれども、これはいわゆる2年連続の3割ルールを適用するかどうかというところの分析、そして判断をどうするかということですか。

答)

御承知のように、ガバナンス強化ガイドラインというものがございまして、そこで、業務改善命令を受けた翌年度につきましては、改善が見られない行について、経営責任の明確化等を含む業務改善命令の発動を検討するということになっているわけでございます。これを踏まえまして、本日、UFJに対しまして、当期利益が計画から乖離している理由等につきまして、報告徴求を行ったという状況でございます。その銀行からの報告を受けて、よく具体的な計画の未達の原因等を分析した上で、このガイドラインに沿って適切に対応したいというふうに考えております。

問)

報告徴求はいつ頃までに。

答)

報告徴求についての期限は、今までも申し上げていないと思います。我々としては、できるだけ早くいただきたいというふうに考えております。

問)

判断が固まるのは、昨年はりそなの話もありましたけれども、8月1日で判断が一応示されたわけですね。やはり7月、8月頃に判断ということになるのでしょうか。

答)

いずれにしても、まさに今日決算発表があって、乖離の原因等について報告をお願いしているところですから、その報告を待って、分析した上で判断したいというふうに思います。

問)

確認ですが、今仰ったUFJというのは、ホールディングスですか、個別行ですか。報告徴求をされたのは。

答)

計画そのものは、傘下銀行合算でできていましたので、報告徴求そのものは、ホールディングスに対して報告徴求しているということでございます。

問)

不良債権比率が5%台前半というお話だったと思うのですけれども、そういった中でUFJの場合は8%台ということで、よく周回遅れとか言われていますけれども、不良債権比率の目標達成という意味合いで、今後新経営陣に望むことを伺いたいのですけれども。

答)

新経営陣につきましては、私が聞いておりますところによりますと、今日6時過ぎから新旧6人で会見をされるというふうに聞いております。そこで新しい経営陣の取組姿勢についてお聞きいただければと思いますが、いずれにしても当然ですけれども、不良債権比率半減の目標に向けて新しい経営陣はしっかり努力されるというふうに私は理解しております。

問)

UFJ が4月下旬に業績を一回修正して、今回大幅に引当金を積み増した形で発表しているわけですけれども、UFJ側は自主的な判断であると言っているわけですが、短期間で引当金についての経営判断が大きく異なってくると、それからその都度開示していたにも関わらず異なってくると。こういう状況についてはどのようにお考えで、どのように対応されますか。

答)

お話はタイムリー・ディスクロージャーの話だと思いますので、それはその時々にその経営陣が認識したことを基に公表されてきているのだと思います。ですから、いずれにしても経営としてしっかりとしたガバナンスの下で、しっかりしたその時々に判断をしていく必要があると思いますけれども、いずれにしてもそれは銀行の判断で、監査法人とも相談しつつだと思いますけれども、その時々の認識に基づいてタイムリー・ディスクロージャーをしたのだというふうに理解しております。

問)

その時々の認識が、この僅かの間にぐらぐらと揺れる状況、これはどうお考えになりますか。

答)

まさに経営の判断の問題ではありますけれども、決算作業といいますか、そういう中で色々判断が変わってくることはあると思うのです。ただいずれにしてもその時々に、経営としてしっかりとしたガバナンスの下で、しっかりした判断をしていく必要があるというふうに思います。

問)

今、大きなことを仰ったわけですけれども、「しっかりしたガバナンスの下でしっかりした判断をしていく必要がある」と未来形で仰ったわけなのですが、この一ヶ月位ですね、今、前の記者さんが指摘した通り、大きくぐらついたわけです。これについてのガバナンス上の問題点というのは、認識はされていらっしゃるのでしょうか。

答)

いずれにしても決算内容等の分析は先程申し上げましたように、これは報告徴求等を通じてこれからよく分析していきたいということであります。それでその中で、その結果ガバナンス等も含めて改善すべき点がないかどうかよく分析していくと。その上でどういう業務改善命令を求めるかということもまた判断してくることになると思うのです。

今時点ではまずは決算内容等をよく分析するというところから報告を求めたという段階ですから、今後それをよく踏まえた上で色々検討していきたいというふうに思います。

問)

UFJの決算について、引当金を大きく増やした背景には金融庁が積み増しを求めたのではないかという書かれ方を色々な報道でなされていますけれども、これについては事実関係の確認も含めて、どういう経緯なのでしょうか。

答)

個別金融機関の決算の話ですから、詳細に御説明するのはどうかと思いますけれども、いずれにしてもこれは検査を受けて、そしてそれを銀行自身も受け止めて、更に監査法人とも相談しながら、またそれが的確に織り込まれているかどうか金融庁の検査・監督部局とも協議しながら詰めていったということだと思います。

問)

確認なのですけれども、不良債権半減目標について全体で4%台ということなのですけれども、UFJについてもやはりその4%という数字を求めていくということでよろしいでしょうか。

答)

個々の銀行について4%台とかいう目標を設定しているわけではないのですが、ですから半減するというのは主要行全体で半減するということで目標を設定してあるということであります。その全体の枠の中でそれぞれ各行は不良債権の処理に向けて最大限の努力をいただくと。各個別行はそういう金融再生プログラムを受けて、それぞれ自分達の目標を公表しております。

例えばUFJグループについて申し上げますと、14年12月に改革加速プランというものを公表してですね、そこで16年度末の不良債権比率を3%台にするという公表をされております。この目標がそのままかどうかは今後よく我々もお聞きしてみる必要があると思いますけれども、いずれにしてもUFJも含めて主要行はそれぞれ目標設定して、その達成に向けて最大限で努力されているというふうに理解しております。

問)

昨日の夜に新生銀行とイ・アイ・イの破産管財人がサイパン訴訟について和解したと、今後、預金保険機構と新生銀行で負担について協議が行われていくと予想されるわけなのですけれども、これについての御所見をお伺いします。

答)

これはそもそも事柄の本質として、民事上の争いについて当事者間での和解が成ったということですから、その中身について我々がコメントする立場にないというふうに思います。契約に基づいて新生銀行の方から預保に請求があるかどうかということなのですが、私が承知している限りでは、今時点では請求がなされていないというふうに聞いておりますので、今後請求があれば預保と新生銀行の間で色々議論がなされることになろうというふうに思います。

問)

預保の大株主である政府としてどうお考えですか。

答)

もちろん大きな意味で適切な処理がなされる必要があるということは当然だと思います。ただ具体的にどう判断していくかは、それぞれのケースについて、預金保険機構においても法律の専門家といいますか、そういう方々もたくさんいらっしゃいますし、そこで的確な判断がなされていくというふうに思います。

(以上)

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